ペニンシュラキッチンは開放感やコミュニケーションが取りやすさが魅力で、キッチンレイアウトの中でも近年人気のタイプです。この記事では、ペニンシュラキッチンのメリット・デメリットや選ぶ際のポイントなどを解説していきます。
- ペニンシュラキッチンのメリットはリビングの様子が分かり、調理にもある程度集中できること
- ペニンシュラキッチンのリフォーム費用は約90~170万円
ペニンシュラキッチンとは?
「ペニンシュラキッチン」とは、キッチン本体の左右どちらかが壁に接しているタイプのキッチンのことで、一般的には対面式キッチンに分類されます。「ペニンシュラ(peninsula)」は英語で「半島」を意味しており、キッチンの片側が壁に面した半島のような形であるというのが名前の由来です。

ペニンシュラキッチンの人気の理由
リビングを見渡しながら料理ができるため、小さな子どもがいる家庭でも目が届き、安心して調理することができると、子育て中のママにも人気のキッチンスタイルです。
キッチンの全ての側面が壁に接していない「アイランドキッチン」のような開放感が魅力ですが、完全なオープンスタイルではない分、目隠し効果もあり、調理がしやすいのもペニンシュラキッチンの特徴と言えます。
ペニンシュラキッチンは対面キッチンに分類されるため、壁付けキッチンや独立キッチンと違って家族とのコミュニケーションがとりやすいという点も人気です。
キッチンの形状の種類については「ペニンシュラキッチンと他タイプの比較」で解説しています。
ペニンシュラキッチンにリフォームする費用
ペニンシュラキッチンのリフォーム費用は90~170万円程度です。特にI型やL型キッチンからペニンシュラキッチンに交換する場合は、電気・ガス・水道などの配管工事が必要となることもあり、高額になる傾向があります。
ペニンシュラキッチンに変えるためにかかる費用は「ペニンシュラキッチンの価格・費用」で解説しています。
ペニンシュラキッチンと他タイプの比較
キッチンの形状 | 特徴 |
---|---|
![]() I型 |
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![]() II型 |
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![]() L型 |
|
![]() U型 |
|
![]() ペニンシュラ型 |
|
![]() アイランド型 |
|
I型キッチン

I型キッチンとは、壁に向かって設置されていてシンクやコンロが一直線に配置されているキッチンです。
もっともスタンダードな形状で、価格が安く設置に必要な面積も少ないかわりに、調理中の移動距離が多くなる傾向があります。
アイランド型と混同しやすい
リビングに向かって設置されたまっすぐなキッチンをI型と呼べなくもないですが、その形状のものは通常「アイランド型」と呼ばれます。
「I型キッチン」については、下記の記事もご覧ください。
II型キッチン

II型キッチンとは、2つの並行に設置されたテーブルにシンクとコンロが分かれているキッチンのことです。
シンクとコンロを振り向くだけで使い分けることができるため、移動あまり発生しないのが特徴です。複数人での作業にも向いています。
L型キッチン

L型キッチンとは、L字型のカウンターにシンクとコンロを90°傾けて配置したキッチンのことです。
II型キッチンには及ばないものの、調理中の移動が少なくて済む形状です。かわりに、コーナー部分を作業や収納に利用しづらく、空間効率がやや落ちます。
「L型キッチン」については、下記の記事もご覧ください。
U型キッチン

U型キッチンは、L字型のカウンターにシンクとコンロを離して配置したキッチンのことです。
L型キッチンのメリットとデメリットをさらに強調したような性能で、移動距離はII型と同程度に少なく、収納効率などはL型よりさらに落ちます。
ペニンシュラ型

ペニンシュラ(型)キッチンとは、対面式のキッチンのうち、カウンターの左右どちらかが壁に接しているものを指します。
リビングを向いて作業するため、子供の様子などが見守りやすく、リビングにいる家族とコミュニケーションがとりやすいため近年人気があります。
アイランド型

アイランドキッチン(型)キッチンとは、対面式のキッチンのうち、カウンターの四方がすべて壁から離れているものを指します。
開放的でモダンな空間になる効果があるほか、移動や立ち位置の自由度が高く、大人数での調理・食事に向いています。
「アイランドキッチン」については、下記の記事もご覧ください。
ペニンシュラキッチンのメリット
ではあらためて、ペニンシュラキッチンのメリットを紹介していきます。メリットは以下4つです。
- 開放感がある
- コミュニケーションがとりやすい
- レイアウトの自由度が高い
- 壁を活用して手元を隠せる
開放感がある
ペニンシュラキッチンはアイランドキッチンと同様にコンロの前がオープンになっているので、リビング全体を見渡すことができる開放感が最大の魅力です。料理をしながらでも子どもや家族の様子を見ることができるほか、キッチンに光が入りやすく明るい空間になります。
コミュニケーションがとりやすい
ペニンシュラキッチンは対面キッチンなので、リビングにいる家族や来客とコミュニケーションをとりながら料理ができます。また、作業スペースが広いので複数人で会話を楽しみながら料理することもできるので、料理時間を存分に楽しむことができます。
レイアウトの自由度が高い
広いスペースが求められるアイランドキッチンと比べ、片方を壁付けにするペニンシュラキッチンは限られたスペースでもレイアウトの自由度が高く導入しやすい点が魅力です。
キッチンの前にカウンターを設けて、テーブルカウンターとして使用したり、片側の壁の横に通路スペースを設けることで、アイランドキッチンのような一周回れる動線を作り出すことも可能です。
壁を活用して手元を隠せる
対面キッチンの場合は「手元が見えやすい」というデメリットがありますが、ペニンシュラキッチンは目隠し効果のあるパーテーションを立てたり、カウンターの高さを高くしたりなどで対策が可能です。手元を隠して料理ができるので、調理や料理の盛り付けを見られるのが苦手という人にもおすすめです。
ペニンシュラキッチンのデメリット
続いてはデメリットについて。多くのメリットを持つペニンシュラキッチンですがもちろんデメリットも存在します。以下のデメリットを把握して、想定外のトラブルを避けましょう。
- 収納が減る可能性がある
- ニオイや油はねでリビングが傷む可能性がある
- リフォームではコンセントの位置や数に制限がある
収納が減る可能性がある
I型やL型キッチンは壁に吊戸棚を設置しやすいため、豊富な収納スペースを確保できます。ペニンシュラキッチンの場合も上部に収納スペースを設けることはできますが、開放感を優先すると吊り戸棚などは避けたいため、収納スペース不足になりやすい面もあります。
▼対処法
- ワークトップの下収納が大きいものを選ぶ
- キッチン背後にパントリーや収納棚を設置する
- 収納するものを最低限に抑え、不要なものはキッチンに置かない
ニオイや油はねでリビングが傷む可能性あり
コンロの前に壁があるI型キッチンなどの独立型のキッチンとは異なり、リビングと一体を成すタイプが多いペニンシュラタイプは調理中の匂いが広がりやすく、油ハネで床が汚れたり痛んだりする可能性もあります。見た目や衛生面を考えると掃除の頻度を高くして清潔な状態を保ちましょう。
▼対処法
- 換気能力が高い換気扇を設置する
- 空気清浄機を使う
- 油はね防止用ガラスパネル(オイルガード)を設置する
- コンロ前に壁を設置する
リフォームではコンセントの位置や数に制限がある
リフォームの場合はコンセントの位置や数を変更するのが難しいケースもあります。使いやすいキッチンにするためには、既存のコンセントの位置を変更したり、数の増設を考えた方がよい場合もあるでしょう。リフォームする際は、あらかじめ変更が可能かどうかリフォーム業者に相談しておくと安心です。
▼対処法
- コンセントの位置を変更する
- コンセントの数を増やす
- 今あるコンセントに合わせてレイアウトを決める
ペニンシュラキッチンの価格・費用

キッチンのリフォーム費用は大きく分けて
- キッチン本体の価格
- キッチンの設置工事の費用
- その他の工事費用
の3種類の費用がかかります。
台所をペニンシュラキッチンにリフォームする場合の費用を見ていきましょう。
キッチン本体価格
ペニンシュラキッチンの本体価格は、低価格帯のもので45万円~55万円、中価格帯のもので60万円~75万円、高価格帯のもので85万円~115万円です。
キッチンリフォーム費用
ペニンシュラキッチンの取付工事の費用は12万円~16万円が相場です。
取付工事とはキッチンの組み立てと設置作業のことを指します。
その他の工事の費用
キッチンをペニンシュラ型にリフォームする工事には、古いキッチンの撤去や給排水管の切り替え、床や壁の張り替えなどの作業も発生します。
これら取付工事以外の施工費用は30万円~40万円が目安です。
合計は「約90~170万円」
キッチンの本体価格や必要な施工費用を合計すると、キッチンをペニンシュラ型にリフォームするのにかかる金額は以下のようになります。
- 低価格帯のキッチンを使った場合で87万円~111万円
- 中価格帯のキッチンを使った場合で102万円~131万円
- 高価格帯のキッチンを使った場合で127万円~171万円
ペニンシュラキッチンのおしゃれなリフォーム事例
ペニンシュラキッチンを使いつつ、配色・レイアウト・装飾などをおしゃれに仕上げたリフォーム事例を紹介します。
コーディネートの参考としてお役立てください。
モノトーン×暖色ライトの映えるペニンシュラキッチン
表面に凹凸仕上げがほどこされたオールステンレスが印象的なペニンシュラキッチン。
キッチンはシルバー、椅子やソファーはブラック、壁はホワイト、ダウンライトと床はウッド&暖色光と、インテリアごとにはっきり色分けされているのも大変おしゃれです。
モノトーン部分の存在感とシックさに照明の温かみが加わって、リビング全体としての一体感も感じられます。
- トーヨーキッチンスタイル「iNO [イノ](スタイル「PENINSULA」)」
温もりと可愛さのあるカラフルなLDK
ブラウンとネイビーをテーマカラーにした、ペニンシュラキッチンのあるリビング。
ラグやソファ、おもちゃなどの緑・赤とも色味がケンカせず、ひとつの可愛らしい空間に仕上がっています。
キッチン側面とテーブルを「木目」、椅子の座面カバーと内壁を「ネイビー」でそれぞれ合わせることで、空間に統一感を持たせています。
- タカラスタンダード「エーデル」
白黒の空間に鮮やかなポイントカラーが映えるLDK
床・天井・内壁は「白」、扉やキッチンの側面は「黒」と反対色を用いたシックなリビングダイニング。
一方、観葉植物やテーブルクロス、椅子のクッションなどは鮮やかで上品なカラーをポイント使いすることで、シンプルすぎない大人な雰囲気の演出に成功しています。
今のキッチンやリビングがシンプルすぎるという方に、ぜひ採り入れていただきたコーディネートです。
- リクシル「システムキッチン シエラ」
高級ホテルのフロントのようなペニンシュラキッチン
マンションの一角を、高級メーカー「トーヨーキッチンスタイル」のシステムキッチンでリフォーム。
奥の壁で輝くタイルと陶器・花が生活感を消し、さながら高級ホテルのカウンターのようなペニンシュラキッチンに仕上がりました。
- トーヨーキッチンスタイル「BAY [ベイ](Sチタニウム)」
モノトーン×グリーンのペニンシュラキッチン
キッチン側面と高めに配置された観葉植物・アクアリウムが、黒×緑で空間全体を引き締めつつ統一しているLDK。
やや狭めのリビングとのことですが、部屋の色数を絞り、シンプルな形状の家具・家電を多様することで広がりと高級感を感させるキッチン空間に仕上がっています。
- タカラスタンダード「システムキッチン レミュー」
濃淡の木目調で統一したマンションのキッチン
リビングに合わせてキッチンにもウッド調のデザインを採用。
同時に天井から吊り戸棚をなくすことでペニンシュラキッチンとリビングがひとつながりの空間となり、リフォーム前には無かった開放感が生まれました。
ペニンシュラキッチンのカウンターに垂直にテーブルをつなげることで、配膳のしやすさと調理中のコミュニケーションのとりやすさを叶えています。
- クリナップ「CENTRO(セントロ)」
アンティーク照明の似合うラブリーなLDK
アンティーク好きの奥様のいる家庭でのペニンシュラキッチンの導入事例
ロココを感じさせるやわらかなホワイト・ベージュと、インテリアと台所スポンジで少しだけブルーグリーンが使われているのが大変おしゃれです。
かわいらしい雰囲気の醸成に一役買っているのが、つなぎ目がなく丸みのあるキッチンカウンター。
写真のようなかわいらしいワークトップは、人造大理石の品質と加工技術に定評のあるメーカー「トクラス」社の得意分野です。
鮮やかなブルーの映える明るいペニンシュラキッチン
光がよく入る大きな窓と、それに向かって配置されたセルリアンブルーのキッチンの腰壁がさわやかなキッチン。
鮮やかなカラーをアクセントに、部屋のベースをホワイトと明るいウッドで揃えると、地中海のテイストに近づけることができます。
- タカラスタンダード「システムキッチン リフィット」
ペニンシュラキッチンを選ぶときのポイント
ペニンシュラキッチには「収納スペースが狭い」や「においが広がりやすい」「油汚れが飛びやすい」などいくつかのデメリットがあります。ではどのような点を意識してペニンシュラキッチンを選べばいいのでしょうか?ここでは、ペニンシュラキッチンを選ぶ際のポイントについて紹介します。
- 高性能な換気扇の設置と壁の工夫でにおい対策を行う
- 収納力のあるキッチンの本体を選ぶ
- 動線を考えてキッチンの設置スペースを決める
- コンセントは事前に業者と相談する
高性能な換気扇の設置と壁の工夫でにおい対策を行う
ペニンシュラキッチンは調理中のにおいがリビング・ダイニングに広がりやすいため、高性能なレンジフード(換気扇)を設置したり、コンロ前に壁を設置することでにおい対策を行いましょう。
壁の圧迫感が気になる場合は、透明や半透明の「オイルガード」を設置するのもおすすめです。オイルガードには全面を覆うものや視界を邪魔しない高さのものがあります。
また、リビング周辺の壁には、エコカラットや珪藻土・漆喰などの自然素材を使用すると消臭効果が期待できます。
ペニンシュラキッチンでは換気力の高さが重要になってくるため、以下のような機能があるレンジフードがおすすめです。
- 24時間換気(常時換気)
- ノンフィルター機能
- 洗浄機能
収納力のあるキッチンの本体を選ぶ
収納スペースを確保しにくいペニンシュラキッチンを導入する際は、キッチン本体に収納力のあるものを選ぶのがポイントです。また、キッチン本体だけでカバーできそうにない場合は、吊戸棚や背面収納、または壁面に棚を設置して壁面収納にするのも良いでしょう。
キッチンメーカーやおすすめ商品について詳しく知りたい方はこちらの記事もご覧ください。
>>【2022年】人気のキッチンメーカー12選を比較!|おすすめ商品や選び方も紹介
キッチンの設置スペースを計測する
ペニンシュラキッチンを導入する際には、キッチンの設置スペースを正しく計測し、ペニンシュラキッチンを設置できるスペースが十分にあるかを確認しましょう。
- 今のキッチン本体の横幅・高さ・奥行
- 部屋の横幅・縦幅・天井の高さ
- 冷蔵庫や収納棚との距離
また、距離を計測する際にはキッチンでの作業動線を具体的にイメージしておきましょう。冷蔵庫や収納棚などの使用頻度が高い場所までの動線は、2~3歩で行ける距離(120㎝程度)が望ましいと言われています。
コンセントは事前に業者と相談する
コンセントの位置や数で失敗しないためには、事前にリフォーム業者側と相談することが重要です。相談する際には、冷蔵庫や電子レンジ、炊飯器などの常設家電の他にも、電源が必要な家電の個数とコンセントの希望の数を確認しておきましょう。
また、キッチン本体にコンセントがついているものを選んだり、消費電力の大きな家電を多く使用する家庭では「専用コンセント」を設けて大元のブレーカーが落ちない工夫も必要です。
まとめ
ペニンシュラキッチンは、アイランドキッチンに比べると、コストがかからないことから、キッチンのリフォームの中でも注目度の高いレイアウトです。
また、開放的でコミュニケーションが取りやすく、インテリアの一部にもなるデザイン性の高さも人気の秘密です。ただ、壁づけ・独立型キッチンと比較すると、油ハネやニオイ・収納など、気になる問題点もあります。
快適で使い勝手の良いキッチンにするためにも、ペニンシュラキッチンを導入する際は、前もって問題点を洗い出し対策をしっかり行いましょう。
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