自宅の断熱性を高めるリフォームでは、補助金制度が適用される場合があります。断熱リフォームで利用できる補助金制度は、主に次の3つがあります。
- 次世代省エネ建材支援事業
- 高性能建材による住宅の断熱リフォーム支援事業
- 各自治体が独自に行う断熱リフォームの補助金
それぞれで特徴が異なるため、違いを知っておくことが大切です。制度ごとの違いを把握して、自分の場合はどれが利用できそうか考えてみましょう。
POINT
- 断熱リフォーム補助金は、次世代建材使用で最大200万円、断熱リノベでは最大120万円受けられる
- 断熱リフォーム補助金制度は、自治体が独自に行っている場合もある
- 断熱リフォーム補助金の申請は早めに。複数の業者で見積もりを取ることがおすすめ
【最大200万円】次世代建材を使用することで受けられる補助金
次世代建材を使用したリフォームでは、「次世代省エネ建材支援事業」から補助金が受けられます。
条件 | 対象商品の種類 | 補助率 |
---|---|---|
・戸建てや集合住宅を個人で所有している ・戸建てや集合住宅を個人で所有予定 ・賃貸住宅の所有者 |
・断熱パネルや潜熱蓄熱 ・補助商品として窓・断熱材・玄関ドア・ガラス・調温建材など |
・戸建て最大200万円/戸 ・集合住宅で125万円/戸 ・補助対象経費の1/2以内 ・1戸あたり20万円以上が下限 |
適用するための条件や対象となる工事、商品、補助率など細部まで理解を深めておくことが大切です。
次世代建材で補助金を申請できる人の条件
次世代建材の補助金は、個人と法人の両方で申請できます。ただし、法人は賃貸住宅の場合のみ申請可能であり、法人で居住用の住宅は対象にはなりません。
個人の場合は、戸建てと集合住宅の両方で適用可能です。基本的な条件は住宅を所有していることですが、今後所有する予定のものにも適用できます。新しい家を購入し、対象となる工事を行う場合は補助金の支給対象となるため、積極的に活用するとよいでしょう。
次世代建材の対象となる商品の種類
補助金の対象となるのは、断熱パネルや潜熱蓄熱建材といった、特定の建材を使用した工事のみです。これらを使用していない工事では、補助金の適用対象にはならないため、工事前にきちんと確認しておかなければなりません。
また、断熱パネルや潜熱蓄熱建材に加えて、窓や断熱材、玄関ドアやガラス、調温建材を使用した場合も、補助金の適用対象となります。補助商品を使用した工事も適用対象ですが、そもそもメインとなる断熱パネルや潜熱蓄熱建材の使用が必須であることは覚えておかなければなりません。
メインとなる対象商品を使用し、かつ補助対象商品として指定されているものを使った工事において、補助金は支給されます。
次世代建材での補助率
補助金の支給額は戸建てと集合住宅で異なり、戸建ては1戸あたり最大200万円で、集合住宅は1戸あたり最大125万円となっています。1人あたりではなく、1戸あたりであるため、マンションの大規模なリフォームを行う場合は、それぞれの部屋ごとに補助金を適用させることも可能です。
また、下限も決められており、1戸あたり20万円以上であることを条件としています。さらに補助対象経費の2分の1以内という制限もあり、戸建てなら200万円、集合住宅なら125万円支給されると決まっているわけでもありません。
あくまで最大額は条件を満たした場合の金額であり、実際には細かい取り決めによって支給額が決まることは覚えておきましょう。
次世代建材で補助金が交付されるリフォーム例
実際にどのようなリフォームで補助金が適用されるのか、具体的に知るために例を参考にしてみましょう。
断熱パネル製品名 | 潜熱蓄熱建材製品名 |
---|---|
プレスパネルKK | 株式会社ネギシ・EB-20AL09など |
カネライトパネル | 住化プラステック株式会社・32P9BXなど |
スタイロモイス | 千代田インテグレ株式会社・蓄熱ボード |
ネオマフォームFS | 三木理研工業株式会社・PB-25-3など |
ネオマ断熱ボード | 永大産業株式会社・エコ熱プラス フローリング 全面パネル |
あったかべ |
リフォーム例 | 工事内容 | 工事金額 | 補助金額 | 特徴 |
---|---|---|---|---|
戸建て | 断熱パネル+窓 | 50万円 | 25万円 |
・断熱性が高くなった ・冬場は室温が逃げにくく快適になる ・簡単な工事で行える |
戸建て | 潜熱蓄熱建材+調湿建材 | 100万円 | 50万円 |
・室内の温度変化が少ない ・結露ができづらい ・オールシーズン快適に過ごせる |
マンション | 断熱パネル+窓 | 42万円 | 21万円 |
・断熱性が高くなった ・室温の変動が少ない ・導入がしやすい |
断熱パネルや潜熱蓄熱建材は必須商品であるため、必ず選ばなければなりません。補助金の支給金額に達するならこれだけでも構いませんが、金額が足りない場合は補助商品を選ぶことをおすすめします。補助商品でなにを選ぶか、どこに導入するかによって得られる効果は違ってきます。
次世代建材の申請に必要な書類
補助金制度を利用するには、対象となる工事を行うだけではなく、申請手続きもしなければなりません。申請時には複数の書類が必要であり、次のものを集めておいてください。
書類名 | 特徴 |
---|---|
交付申請書 | 申請か手続代行者の印鑑登録印を捺印 |
暴力団排除に関する誓約事項・役員名簿 | 申請者が法人の場合のみ役員名簿を提出 |
実施計画書 | 申請する住宅の改修工事の仕様を記入する |
総括表 | 明細書をもとに記入する |
明細書 | 材料費と工事費をわけて経費を記入 |
見積もり書 | 工事請負契約予定の見積もり書の一式をすべて提出 |
平面図など |
・改修前と改修後の1/100~1/50程度の平面図を提出 ・改修工事を行う箇所を網掛けか着色で明示する ・床の改修を行う場合は、求積図は求積表を記載する ・集合住宅の改修は、棟の平面図と立面図を提出する ・潜熱蓄熱建材を使用する場合は平面図に正確な方位を記入し、居室の中心から真南±30°の方位にある開口部の面積が対象居室の床面積の10%以上であることを計算により明示する |
展開図 | 天井や壁の改修を行う場合は、改修部が判別でき る図面と求積図、求積表を記載する |
姿図 | 窓やガラスの改修をする場合に提出する |
求積表 | 平面図や展開図などに求積表を記載しない場合は別途提出する |
既存窓などが判別できる写真など |
・ガラス交換をする場合に提出する ・既存窓やドアフレームの材質がわかる写真や図面を提出する |
住民票の写し |
・居住者が申請する場合に提出する ・改修後に居住予定の場合は提出不要 |
設計チェックシート |
・潜熱蓄熱建材を施工する場合に提出する ・メーカーが発行した設計チェックシートをSIIホームページからダウンロードして設計者が記入する ・設計者の捺印が必要 |
居室の断熱性能が確認できる書類 |
・潜熱蓄熱建材を施工する場合に提出する ・建設住宅性能評価書の写しや築時の仕様書、断熱リノベ事業などで発行された補助金交付額確定通知書の写しなどが必要 |
誓約書 | 申請者自身が署名して印鑑登録印を捺印する |
書類は自身で作成するものだけではなく、業者が作成するものもあります。数が多くて複雑であるため、リフォームを依頼する業者と相談しながら用意するとよいでしょう。
次世代建材を申請できる時期
平成31年度における次世代建材の申請の受付は、2019年12月時点では終了しています。現時点では終了していても、翌年度から引き続き同制度が実施されるケースは多いため、申請時には最新の情報を確認しておくとよいでしょう。補助金制度は早いうちに応募を締め切ることもあるため、利用するなら素早く申請をしなければなりません。
【最大120万円】断熱リノベ制度での補助金
通常断熱リノベとも呼ばれる「高性能建材による住宅の断熱リフォーム支援事業」は、次の条件で補助金が適用されます。
条件 | 対象商品の種類 | 補助率 |
---|---|---|
・戸建てや集合住宅を個人で所有している ・戸建てや集合住宅を個人で所有予定 ・管理組合の代表者 |
・断熱材 ・ガラス ・窓 ・戸建てのみ家庭用蓄電システムや家庭用蓄熱設備 |
・戸建ては最大120万円(窓のみは40万円) ・集合住宅は15万円 ・高性能建材の使用で補助対象経費の1/3以内 ・戸建ては詳細条件あり |
戸建てと、集合住宅で異なる部分があるため、その点も含めて理解を深めておきましょう。
断熱リノベで補助金を申請できる人の条件
断熱リノベは戸建てや集合住宅を所有している、あるいは所有予定の個人が申請できます。管理組合の代表者は集合住宅全体の断熱リフォームでも適用できますが、個人で賃貸利用する場合は適用対象外となるため注意しなければなりません。
断熱リノベの対象となる商品の種類
補助金の対象となるのは、戸建てと集合住宅ともに、断熱材やガラス、窓などの商品を使用したリフォームです。戸建ての場合はさらに家庭用蓄電システムや家庭用蓄熱設備も対象となっています。戸建てのほうが選択肢が多く、実施できる工事内容も豊富です。
断熱リノベでの補助率
補助率は戸建てが1戸あたり最大120万円で、集合住宅は最大15万円です。ただし、戸建ては窓のみのリフォームだと40万円という制限があるため、注意しなければなりません。
また、高性能建材を使用する場合は、経費の3分の1以内という決まりもあります。戸建てのみで利用できる家庭用蓄電システムや家庭用蓄熱設備は、別途次のように補助率が定められています。
対象商品 | 補助率 |
---|---|
家庭用蓄電システム |
・設備費:20,000円/kWhまたは補助対象経費の1/3、または20万円のいずれか低い方 ・工事費:1/3以内または50,000円/台のいずれか低い方 |
家庭用蓄熱設備 | 設備費と工事費の両方で1/3以内または50,000円/台のいずれか低い方 |
高性能建材と家庭用蓄電システムや家庭用蓄熱設備は、それぞれ別に申請可能です。
断熱リフォームで改修の基準値を超えよう
補助金を適用するには、断熱の改修率が基準値を超える必要があります。改修率の基準は地域によって異なることもあるため、事前に業者に確認しておきましょう。計算式は以下のとおりです。
改修率=(断熱改修床面積合計÷延べ床面積)×100
断熱リノベの申請に必要な書類
申請時には次の書類が必要です。
書類 | 特徴 |
---|---|
交付申請書 | 申請者、手続代行者の印鑑登録印を捺印する |
暴力団排除に関する誓約事項・役員名簿 | 暴力団排除に関する誓約内容を熟読する |
総括表 | 明細書をもとに補助対象経費の合計金額を記入する |
明細書 |
・戸建住宅の場合は家庭用設備は設備費と工事費をわけて記載 ・集合住宅の場合は対象経費にもとづいて、製品区分ごとに記入する |
見積もり書 | 該当する見積書のコピーを提出する |
平面図 |
・総括表に記載の「断熱改修床面積」の対象部を網掛け、または着色にて明示の上、求積図や求積表を記載する ・改修前、改修後の1/100~1/50程度の平面図を提出する |
求積表 | 平面図に求積表を記載しない場合は別途提出する |
姿図 | ガラスの改修(ガラス交換、カバー工法)をする場合に提出する |
改修前写真 | 改修対象ではない換気小窓、300×200mm以下のガラスを用いた窓と、換気を目的としたジャロジー窓の写真を提出する |
住民票の写し | 改修後に居住予定の場合は提出不要(ただし、完了実績報告書提出時に申請した住宅に住み、その住所が記載された住民票の写しを提出する) |
電力契約書など |
・戸建て住宅の家庭用蓄電システム、または家庭用蓄熱設備を設置する場合に必要 ・FIT契約(もしくは余剰電力買取制度)の契約開始月が2010年3月以前、あるいは契約終了月が2020年3月以前であることを示す電力契約書が必要 |
家庭用蓄熱設備の要件が確認できる書類 | 仕様書、カタログなどのコピーを提出する |
個別エネルギー計算書・外皮平均熱貫流率・暖房期の平均日射熱取得率・冷房期の平均日射熱取得率算出計算書 |
・個別計算を行う場合のみ原本を提出する ・個別計算による計算書、および平面図や立面図、矩計図や配置図のすべての開口部の寸法がわかるものと併せて提出する |
誓約書 | 申請者自身が署名し印鑑登録印を捺印する |
工事内容によって必要な書類は変化するため、業者と相談しながら用意しましょう。
断熱リノベを申請できる時期
2019年12月現在では、平成31年度の断熱リノベの受付は終了しています。次世代建材の補助金制度と同じく、来年以降も実施される可能性が高い制度であるため、最新の情報をこまめに確認しておき、タイミングを逃さないようにすることが大切です。
自治体が独自に行う断熱リフォームの補助金
断熱リフォームの補助金制度は、国が実施するものに加えて、自治体が独自に行っているものもあります。自治体ごとの制度は地域によって異なるため、居住している地域で使えるものがあるか、確認しておくことが大切です。
補助金制度の有無は住宅リフォーム推進協議会で確認する
「住宅リフォーム推進協議会」というサイトを参考にすることで、自治体ごとの補助金の有無を検索できます。サイトから市町村を指定して検索すると補助金制度が表示されるため、利用できそうなものがあるなら積極的に活用しましょう。
補助金以外でも融資や減税といった各種優遇制度もあるため、これらも利用することがおすすめです。断熱リフォームに限定して探したいなら、「省エネルギー化」の支援分類から絞り込みができます。
参考:住宅リフォーム推進協議会
東京都での断熱リフォームの補助金例
実際に東京都で実施されている断熱リフォームの補助金制度の例を見ていきましょう。
条件 | 対象商品 | 補助率 |
---|---|---|
・都内の既存住宅において、平成29年4月1日以降に新たに高断熱窓を設置する ・最低1居室の全ての窓を改修する |
・高断熱窓(窓・ガラス) |
・1戸あたり50万円 ・対象経費の1/6以内 |
自治体が実施するものは、その地域に住んでいることが基本条件となっています。これから移住する場合には利用できないことが多いため、地域住民のみ利用できる制度と考えましょう。
そのほかの補助金と減税制度
その他の補助金や減税制度としては、介護保険による補助金や、バリアフリーリフォームを行った場合の減税制度があげられます。
制度 | 適用条件 | 補助金額や税金控除 |
---|---|---|
介護保険 | ・要支援1~2、要介護1~5と自治体から認定された人が居住する住宅であること ・バリアフリーリフォームすること |
20万円 |
バリアフリーリフォーム | バリアフリー改修をした際に所得税控除が受けられる | ・(投資型)20万円控除 ・(ローン型)25万円控除 |
バリアフリー化を目指すリフォーム内容なら、これらのうちいずれかが使える可能性が高いため、適用条件などの詳細を確認しておくとよいでしょう。リフォーム内容によって使える制度は異なるため、リフォーム業者に相談して、どれが使えそうか確認しておくことがおすすめです。
断熱リフォームの種類・相場
断熱リフォームには様々な種類があり、費用の相場は次の通りです。
リフォーム内容 | 費用相場 |
---|---|
窓の断熱化(内窓やペアガラスなど) | 5~60万円 |
外壁、屋根の断熱化 | 80~350万円 |
高断熱浴槽付きの浴室リフォーム | 55~90万円 |
窓の断熱化では、内窓の設置やペアガラスへの交換があげられます。外壁や屋根の断熱化では、断熱材を入れたり、断熱性の高い屋根材や外壁材を使用することが多いです。
高断熱浴槽付きの浴室リフォームは、壁材や床材などに断熱材を組み込み、浴室全体の断熱性を高めます。どのような断熱材を使用するかによってもかかる費用は異なり、リフォーム箇所が増えるほど、コストは高額になります。
断熱リフォームを依頼する場合の3つのポイント
上手に断熱リフォームを行うために、業者に依頼する際の3つのポイントを押さえておくことが大切です。
- 1.補助金の申請は早めにする
- 2.断熱リフォームをできる複数の業者で見積もりを行う
- 3.ある程度絞り込めたら断熱リフォームの実績を確認する
これらの点を意識しながら、スムーズにリフォームの準備を進めていきましょう。
補助金の申請は早めにする
断熱リフォームで利用できる補助金制度は多数ありますが、これらは常に使えるとは限らないため、早めに申請することが大切です。そもそも補助金制度は予算が決められており、当初予定していた公募期間より前倒しで受付が終了することも少なくありません。
また、国が実施しているものなら翌年も引き続き実施とされることが多いですが、自治体のものだと当該年度のみで終了することもあります。タイミングを逃すと制度自体が利用できなくなってしまうため、使えるうちに早めに申請することは大切です。
断熱リフォームできる複数の業者で見積もりを行う
同じ工事内容でも利用する業者によって費用は異なることが多いため、見積もりは必ず複数社で行いましょう。補助金が出るといっても、もともとの工事費が高いと出費も増えて損をするため、適正価格で請け負ってくれる業者を比較して探す必要があります。
業者ごとの費用を比較するなら一括見積もりサイトがおすすめです。「ヌリカエ」なら信頼できる業者を探せます。リフォーム知識の豊富な相談員が、工事内容に合った業者を紹介してくれるため、依頼先をスムーズに見つけたい人にもおすすめでしょう。
ある程度絞り込めたら断熱リフォームの実績を確認する
複数社で条件を比較し、ある程度業者の絞り込みができたなら、断熱リフォームの実績をチェックしてさらに精査していきましょう。
断熱リフォームは正しく行わないと十分な効果を発揮しないため、快適に過ごせるようになるかどうかは、業者の技術力にかかっています。実績のない業者では工事の質が悪い可能性もあるため、過去の実績をもとにどこに依頼すべきか決めていきましょう。
補助金がもらえる断熱リフォームの計画を立てよう
費用負担を抑えて断熱リフォームをするには、補助金制度を賢く活用しましょう。利用できる制度は数多くありますので、まずは現時点で使えるものはどれかを見極めておきます。補助金制度の適用も計画に組み込み、念入りにプラン作りをして断熱リフォームの成功を目指してください。