外壁塗装では「適切に見積もりを行うこと」が何よりも大切と言っても過言ではありません。
なぜなら適切な見積もりでなければ、払う必要のない金額を支払ってしまったり、必要のない工事をしなければならなくなったりする可能性があるからです。
本記事では外壁塗装の見積もりにおける注意点を、見積書の良い例と悪い例を確認しながら解説します。
この記事のポイントは下記の通りです。
- 複数の業者に相見積もりを依頼するのがおすすめ
- 良い業者の出す見積もりは「作業工程ごとに記載」「製品名や使用量が明記」
- 悪い業者の出す見積もりは「“一式”が多い」「値引き金額が大きい」
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監修者:外装劣化診断士 小林 成光
600件以上の現地調査を実施する過程で得た専門性を生かし、日本発のネット見積もりシステムでビジネスモデル特許を取得。ヌリカエにて、外装工事の専門家として、顧客・加盟企業のサポート・コラムの監修に従事。
▼略歴・プロフィール |
外壁塗装の見積書の比較ポイント5つ
外壁塗装の見積書では、以下の5つの比較ポイントを確認していきます。
①具体的な塗料製品名が書かれているか
②「一式」の表記が多用されていないか
重要度 ★★☆
③塗装面積がかさ増しされていないか
④工程が省略されていないか
重要度 ★☆☆
⑤合計費用が適正価格からかけはなれていないか
見積書の比較ポイント①:具体的な塗料製品名が書かれているか(重要度:★★★)
▼OK例
▼NG例
まずは、具体的な塗料製品名が記載されているかを確認します。
塗装会社によってはNG例のように「シリコン塗装」「フッ素塗料」などの大まかな種類(グレード)でしか書いてないケースがあります。
しかし、同じグレードの塗料であっても価格はピンキリであるため、メーカーや製品によっても大きく値段が異なります。
-
○○塗料ではなく、具体的な塗料製品名が記載されているかを確認してみてください。
見積書の比較ポイント②:「一式」の表記が多用されていないか(重要度:★★★)
▼OK例
▼NG例
見積書のなかで「◯◯一式」という表記が多用されていないかも確認しておくべきポイントです。
-
一式の表記が多い場合は、悪質業者の可能性が考えられます。
なぜなら建物は一軒一軒の大きさが細かく変わってくるため、外壁塗装においてはきちんと計測した数量で出すことが求められるからです。
「○○一式」は運搬費や諸経費など数えられない部分に適用します。それ以外の部分に「一式」が多用されている場合は、きちんと計測がされていない可能性があります
見積書の比較ポイント③:塗装面積がかさ増しされていないか(重要度:★★☆)
▼OK例(30坪の場合)
▼NG例(30坪の場合)
塗装面積によっても外壁塗装の費用は大きく変わります。 塗装の必要のない範囲まで見積書に含まれている場合、払う必要ないお金を支払うことになってしまいます。
なぜ、その数値になっているかをきちんと確認しておくと安心できます。また、以下の表から塗装面積の目安を掴めますので、参考にしてみてください。
延床面積 | 塗装面積(目安) | 塗装面積(平均値) |
---|---|---|
20坪 | 65~85㎡ | 75㎡ |
30坪 | 105~145㎡ | 125㎡ |
40坪 | 135~155㎡ | 145㎡ |
50坪 | 145~165㎡ | 175㎡ |
60坪 | 230~250㎡ | 240㎡ |
70坪 | 270~290㎡ | 280㎡ |
-
悪質業者の手口として、わかりづらい塗装面積をかさ増しすることがあるため、注意が必要です。
見積書の比較ポイント④:工程が省略されていないか(重要度:★★☆)
▼OK例
▼NG例
見積書に外壁塗装に必要な工程がきちんと書いてあるかもポイントです。
外壁塗装では、以下が主に必要な工程となります。
- 仮設足場工事
- 飛散防止ネット
- 高圧洗浄
- 下塗り・中塗り・上塗り
- コーキング処理
- 付帯塗装
- 下地補修
- 諸経費
上記の工程が見積書に記載がない場合、手抜き工事などのトラブルにつながる可能性があります。
しかしご自宅の状況によって変わることもありますので、抜けている工程があれば必ず確認するようにしましょう。
見積書の比較ポイント⑤:合計費用が適正価格からかけはなれていないか(重要度:★☆☆)
見積書に記載されている価格が適正価格と大きく離れていないかも、確認したいポイントです。
-
適正価格から離れている場合、ぼったくりなどの可能性が考えられます。
戸建て住宅(約30坪)の外壁塗装をシリコン塗装で塗装する場合の相場価格は、70万円~90万円ほどです。
屋根も外壁と一緒に塗装する場合には、80万円~110万円ほどが相場の金額です。
外壁塗装工事の価格は使用する塗料のグレードによっても異なりますが、相場価格より50万円以上ズレている場合は「なぜ、この金額になるのか」の理由を必ず確認しましょう。
外壁塗装の見積もり実例
最も一般的な30坪の住宅で、よくある工事内容の見積書を紹介しています。
外壁塗装の費用感を掴む参考情報として活用してみてください。
工事内容 | 見積もり金額 |
---|---|
外壁塗装(ウレタン塗料使用) | 748,717 円 |
外壁塗装(ラジカル塗料使用) | 810,592 円 |
外壁塗装(フッ素塗料使用) | 975,592 円 |
外壁+屋根塗装(シリコン塗料) | 1,243,072 円 |
外壁+屋根塗装(フッ素塗料) | 1,515,322 円 |
データ出典
各試算例は、一般社団法人 経済調査会『積算資料ポケット版 リフォーム編2023』の算出例・作業規格・単価等をもとにヌリカエ編集部が作成しました。
①外壁をウレタン塗料で塗装
- 建物:一戸建て 延べ坪数30坪
- 工事内容:外壁塗装(125㎡)のみ
- 使用塗料:ウレタン系樹脂塗料(耐用年数8~10年)
リフォーム用としてはもっとも安価な「ウレタン(系樹脂)塗料」で外壁塗装をし、最低限の付帯部(軒天・破風板)も同時に施工した場合の見積もりです。
合計費用は約75万円となりました。
外壁塗装のリフォーム金額は家の大きさが同じなら、基本的には使用する塗料のグレードによって変わります。
この金額を基本として、次以降のパターンを見ていきましょう。
「ウレタン塗料」について詳しく知りたい方は、下記の記事もご覧ください。
②外壁をラジカル塗料で塗装
- 建物:一戸建て 延べ坪数30坪
- 工事内容:外壁塗装(125㎡)のみ
- 使用塗料:ラジカル(制御型)塗料(耐用年数12~16年)
現在人気が増している「ラジカル(制御型)塗料」で外壁塗装をし、加えて最低限の付帯部(軒天・破風板)も施工した場合の見積もりです。
合計費用は約81万円となりました。
ひとつ前のウレタン塗料使用の場合と違うのは、「外壁塗装」の項目の単価とそれに伴う同項目の「金額」の計算結果、「業者諸経費」、「消費税」、「合計」の5箇所のみです。
塗料の単価が450円上がると、30坪住宅ではおおよそ6万円の総工費アップとなることがわかりました。
「ラジカル(制御型)塗料」について詳しく知りたい方は、下記の記事もご覧ください。
③外壁をフッ素塗料で塗装
- 建物:一戸建て 延べ坪数30坪
- 工事内容:外壁塗装(125㎡)のみ
- 使用塗料:フッ素塗料(耐用年数15~20年)
住宅用の樹脂系塗料ではもっともグレードの高い「フッ素塗料」で外壁塗装をし、加えて軒天・破風板も最低限施工した場合の見積もりです。
合計費用は約97万円となりました。
「フッ素塗料」について詳しく知りたい方は、下記の記事もご覧ください。
④外壁と屋根をシリコン塗料で塗装
- 建物:一戸建て 延べ坪数30坪
- 工事内容:外壁塗装(125㎡)+屋根塗装(100㎡。うち板金部30㎡)
- 使用塗料:シリコン塗料(耐用年数10~15年)
ここからは、外壁塗装と同時に屋根塗装を行う場合の見積もり例です。
もっとも普及率の高い「シリコン塗料」で外壁・屋根ともに塗装をし、加えて付帯部も最低限施工した場合、合計費用は約124万円となりました。
金額の差は、屋根塗装関連の作業が加わっている他にも、施工範囲が広がったとこによって外壁塗装単独のパターンよりも上がっています。
- 足場代の増加(架設高が若干増えるため)
- 諸経費の増加(全体額の増加のため)
- 消費税の増加(同上)
⑤外壁と屋根をフッ素塗料で塗装
- 建物:一戸建て 延べ坪数30坪
- 工事内容:外壁塗装(125㎡)+屋根塗装(100㎡。うち板金部30㎡)
- 使用塗料:フッ素塗料(耐用年数15~20年)
もっとも高級な「フッ素塗料」で外壁・屋根ともに塗装をした場合、合計費用は約152万円となりました。
さらに高価な塗料には、特殊塗料の「光触媒塗料」「断熱塗料」「無機塗料」などがありますが、概ね150万円上記が外壁と屋根をセットで塗装する場合の上限額とみてよいでしょう。
「光触媒塗料」「断熱塗料」「無機塗料」について詳しく知りたい方は、下記の記事もご覧ください。
見積もりの取得方法を比較【一括見積もりサイトvs自分で探す】
見積もりの取得方法には、一括見積もりサイトを利用する方法と自分で探す方法の2つの方法があります。
それぞれの取得方法について「手間」と「リスク」の観点から比較していきます。
取得方法 | おすすめの人 | 手間 | リスク |
---|---|---|---|
一括見積もりサイト | どこから見積もりをとればいいかわからない人 手軽に複数の見積もりを取得したい人 |
少ない | 比較的低い |
自分 | 自分で納得して業者をイチから探したい人 | 多い | 判断を誤ると高くなる |
-
基本的にはヌリカエをはじめとした一括見積もりサイトの利用がおすすめです。
手間で比較する
手間がかからないのは、圧倒的に一括見積もりサイトで取得する方法です。
一括見積もりサイトでは、簡単な質問にいくつか答えるだけで、複数社から見積もりの取得が可能なためです。さらに専門のアドバイザーがサポートしてくれるなど、取得の手間はほとんどかかりません。

自分で取得する場合は、口コミサイトなどを見たり、実際に自分で見積もり依頼の連絡をしたりする必要があるため、どうしても手間は増えてしまいます。
また、一括見積もりサイトだと条件の入力などは一度で済みますが、自分で探す場合は見積もり依頼をする業者に都度同じ条件を伝える手間も発生します。
自分で取得:個別に業者に連絡する必要があり、手間と時間が必要。
リスクで比較
悪質業者に依頼してしまうなどのリスクを回避する可能性が高いのも、一括見積もりサイトで取得する方法になります。
一括見積もりサイトの多くは、業者を事前審査していることが多く、悪質業者が登録できないような仕組みだからです。
-
ヌリカエでも登録に際して、厳しい審査基準をクリアした業者のみを登録しています。
一方で自分で取得する場合は、業者の信頼度も自分で調べる必要があります。中にはサクラを利用し、自社の評価をよく見せている業者もあるため、慎重な判断が必要です。
信頼できる業者を見つければリスクは少ないですが、判断を誤ってしまうとトラブルに巻き込まれるリスクも高くなってしまうため、注意が必要です。
自分で取得:信頼できる業者を見つければリスクは少ないが、悪質業者に依頼してしまうリスクも一定数ある。
良い業者・悪い業者を見極める比較ポイント4つ
外壁塗装を依頼する際、良い業者か悪い業者かを見極める比較ポイントは、以下の4つです。
- 実績や良い口コミが豊富にあるか
- 丁寧なヒアリングがされているか
- 診断結果を画像や動画で説明してくれるか
- 調査内容が適切に見積書に反映されているか
比較ポイント①:実績や良い口コミが豊富にあるか
見積もりを依頼した業者の実績や口コミを確認しておくと比較が可能です。
具体的には3社以上から相見積もりをとったうえで、施工実績や良い口コミが豊富にあるかを確認するとよいでしょう。
また、実績は数はもちろんのこと、地元での実績はあるかも確認すると安心ができます。
-
ヌリカエでは掲載している業者ごとに口コミが掲載されているので、ぜひ参考にしてみてください。
比較ポイント②:丁寧なヒアリングがされているか
優良業者は見積もりを提出する前に、丁寧なヒアリングを行います。
なぜなら見積もりを作成するためには、必要な建物の情報を取得したり、利用者の要望を反映させる必要があるからです。
ヒアリングを行わずに見積書を提出してくる業者は、ずさんな測定などが行われている可能性があります。
-
業者ときちんとしたコミュニケーションがとれたか も重要な比較ポイントです。
比較ポイント③:診断結果を画像や動画で説明してくれるか
建物の診断後、建物がどのような状態であるか、画像や動画で説明してくれるかも重要なポイントです。
たとえば屋根の状況の説明を受けたとしても、画像や動画なければ噓を付いている可能性もあるからです。
口頭だけではなく、写真や動画などを利用して目視で確認させてもらえるかも大切です。具体的には劣化症状のある部分を写真付きで説明を受けられるかなどで判断するとよいでしょう。
比較ポイント④:調査内容が適切に見積書に反映されているか
調査内容がきちんと見積書に反映されているかを確認することも大切です。
事前に劣化症状に関する説明を受けたり、塗る塗料についての説明を受けたりしていても、説明と異なる内容が見積書に反映されていると不信感につながります。たとえば劣化症状に適切な塗料の説明を受けていたにも関わらず、自社でおすすめのグレードの高い塗料を勧めてくる場合などです。
-
調査内容がきちんと見積書に反映されているかを確認し、疑問点は必ず質問するようにしましょう。
外壁塗装の見積書の内訳相場
見積書には、細かい作業項目と単価・数量(=施工面積)が記載されているかと思います。
本章では各項目の費用相場をご紹介しますので、見積書に記載の内容が適正価格かどうかを見極める判断材料としてご活用ください。
塗料別の相場目安
平米単価は使用する塗料のグレードによって大きく異なりますが、1500円~5000円ほどです。
実際に使用する製品やメーカーによって価格は異なりますので、あくまで参考価格としてご参照ください。
塗料の種類 | 耐用年数 | 参考価格 |
---|---|---|
アクリル塗料 | 5~7年 | 1,500円/㎡ |
ウレタン塗料 | 8~10年 | 1,950円/㎡ |
シリコン塗料 | 10~15年 | 2,300円/㎡ |
ラジカル制御形塗料 | 12年~16年 | 2,400円/㎡ |
フッ素塗料 | 15年~20年 | 4,300円/㎡ |
無機塗料 | 25年~30年 | 5,300円/㎡ |
工事項目別の相場目安
外壁塗装の見積もりに登場する項目と、それぞれの単価相場は以下の通りです。
内訳(工程名) | 概要 | 単価相場 |
---|---|---|
仮設足場工事 | 塗装をするうえでの足場の設置工程 | 700円~900円/㎡ |
飛散防止ネット | 塗料が塗装現場から飛び散ってしまうことを防ぐための工程 | 100~200円/㎡ |
高圧洗浄 | 塗装工事に入る前に壁を水で洗浄する工程 | 150~300円/㎡ |
下地補修 | 塗装する箇所の下地を整え、外壁塗装を長持ちさせるための工程 | 500円~1,000円/㎡ |
下塗り(外壁塗装) | 外壁の下地と上塗り塗料をうまく接合させるための工程 | 600円~1,000円/㎡ |
中・上塗り(外壁塗装) | 実際の塗装工程 | 800円~4,000円/㎡ |
コーキング処理 | サイディングボードの間の目地の部分の補修工程 | 500円~1,000円/㎡ |
付帯塗装 | 住宅の壁と屋根以外の箇所(付帯部)の塗装工程 | 500円~1,500円/㎡ |
諸経費 | 塗装工事で発生したゴミの処理や職人の交通費など | 10~20% |
記事のおさらい
外壁塗装の見積書のチェックポイントは?
外壁塗装の見積書は以下の点に注意してチェックしましょう。
- 具体的な塗料製品名が書かれているか
- 「一式」という表記が多用されていないか
- 塗装面積がかさ増しされていないか
- 工程が省略されていないか
- 合計費用が適正価格からかけはなれていないか
良い業者の特徴や選び方は?
真摯にヒアリングしてくれる、丁寧な現地調査をする、調査内容を画像や動画で説明するなどの特徴があります。詳しくは「良い業者・悪い業者を見極める比較ポイント4つ」をご覧ください。
以上、最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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