屋根は高所にあるため、頻繁に塗り直すものではありません。そのため多くの方は屋根の塗り直しをしようと思っても、どのように選べばよいか迷ってしまうものです。そもそもどの塗料が必要か、わからない方も多いでしょう。
屋根塗料の製品は多いですが、あなたに適した塗料を選ぶことはできます。それは、塗料を選ぶポイントは限られているためです。どれだけ製品が多くても、ポイントさえ押さえて選べば間違いはありません。
この記事では屋根に使われる塗料の種類と特徴、および選び方を解説していきます。この記事をお読みになることで、それそれの事情に合った塗料を適切に選ぶことができます。
監修者:外装劣化診断士 小林 成光
600件以上の現地調査を実施する過程で得た専門性を生かし、日本発のネット見積もりシステムでビジネスモデル特許を取得。ヌリカエにて、外装工事の専門家として、顧客・加盟企業のサポート・コラムの監修に従事。
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屋根の塗料は、下塗り用と上塗り用に分けられる
屋根に使う塗料は、大きく分けて下塗り用と上塗り用に分けられます。両者の使われる目的は、それぞれ異なります。このため、塗装を行う上では下塗り用の塗料を塗った後、上塗り用の塗料を塗る必要があります。
下塗り用塗料の目的
下塗り用塗料の目的は、以下のものがあげられます。
・下地と上塗り塗料とを接着する
・下地の色を隠し、塗料の吸い込みを防止することで、効果的な上塗りにつなげる
・下地が金属の場合は、さび止めをする
一般の方が塗装と聞くと、色のことなど上塗り用塗料に目が向きがちです。しかし美観を保ち建物を守るためには、下塗り用塗料も重要な役割を果たしています。このため下塗りといえども、しっかり塗装することが必要です。
一方で下地の状態が悪い場合は、下塗りを複数回行う場合もあります。状態を確認した上でシーラーを複数回塗るというケースもあれば、シーラーとフィラーを組み合わせる場合もあります。
上塗り用塗料の目的
上塗り用塗料の目的には、以下の3点があげられます。
・美観を保つ
・外気や水、さびなどから建物を保護する
・遮熱により室温を下げるなど、快適な暮らしを提供する
上塗りは、通常複数回に分けて行われます。また業者によっては、最後の塗装以外の工程を中塗りと呼ぶ場合もあります。
参考記事:上塗りとは?外壁塗装に欠かせない上塗りの役割と、他の工程との違いを解説
屋根塗料の種類
屋根の上塗り用塗料は、「アクリル」「ウレタン」「シリコン」「フッ素」「無機」の5種類に大きく分けられています。それぞれの塗料の特徴は大きく異なりますので、順に説明していきます。
アクリル塗料
アクリル塗料は、アクリル樹脂を主成分とする塗料です。単価は1㎡あたり1,500円前後と最も安価な塗料です。耐用年数は5年~7年とその分短くなっています。
希釈や拡販といった塗料の取り扱いがそこまで難しくなく、カラーバリエーションも豊富であることから、DIY用の塗料としては人気です。また、お店や店舗など常に外観をきれいにしておきたい場合に、アクリル塗料でこまめに塗装を行うケースもあります。
安価ではあるものの、耐用年数が短くコストパフォーマンスが低いことから、一般住宅の屋根の塗装にはほとんど利用されなくなりました。
ウレタン塗料
ウレタン塗料は、ポリウレタンを使ったウレタン樹脂が主成分となっています。単価は1㎡当たり1,500円~2,200円です。耐用年数は7年~10年と、現在主流となっているシリコン塗料と比べると短くなっています。
ポリウレタンは伸縮性を持つ衣料製品でよく使われているため、名前を聞いたことがある方もいらっしゃるのではないでしょうか。ウレタン樹脂を塗料に配合して使った場合は、柔軟性や弾力性を発揮、ひび割れが起きにくい特徴があります。
安価ではありますが、紫外線による劣化に弱く、日当たりのよい屋根をウレタン塗料で塗装する場合は、再塗装が必要になることがよくあります。
シリコン塗料
シリコン塗料はシリコン樹脂が主成分となっている塗料です。単価は1㎡当たり2,500円~3,500円とウレタン塗料よりは高めです。一方で耐用年数は10年~15年となり、価格と耐用年数のバランスが優れた塗料として、現在最もよく使われている塗料となります。
耐候性や耐水性に優れるほか、近年ではセラミックを配合して、汚れにくさを向上させたシリコン塗料もあります。
しかしながら、シリコン塗料はシリコンの成分量によって性能が大きく変わるため、なるべく大手メーカーの製品を選ぶと安心です。
フッ素塗料
フッ素塗料は、フッ素樹脂を主成分とする塗料です。単価は1㎡当たり3,500円~4,500円となります。耐用年数は15年~20年となり、シリコン塗料よりも高い分だけ耐用年数も長くなります。
密着性が高い特徴を持つため、色あせや劣化がしにくいなど、耐候性に優れること特徴です。
また熱にも強いため、太陽光にさらされる屋根に使うことで性能を発揮します。このため一度塗装すると、長期にわたって、美観を維持することができます。
無機塗料
無機塗料は、鉱物やガラスなど無機物を配合した塗料です。単価は1㎡あたり4,500円~5,000円と高価ですが、耐用年数は20年~25年と優れた対候性を備えています。
色あせ・カビやコケといった代表的な塗装の劣化症状は、有機物の劣化に伴って生じるものです。実は、ほとんど塗料は有機物が主成分となっています。
無機物が配合された塗膜は経年劣化を起こしにくいため、無機塗料で塗装をすれば、他の塗料を使った場合と比べて、長期にわたり美観を維持することができます。
一回あたりの塗装費用は他の塗料と比べて高くなりますが、その分耐用年数も長いため、住宅のメンテナンスにかかる総合的なランニングコストは他の塗料を使う場合と比較して、お得になるケースが多くあります。
無機塗料は、工事費用は高くなりますが、それを初期投資と割り切れる方や、塗装のメンテナンスをできるだけ少なくしたい方にはおすすめの塗料です。
特殊機能をもった屋根塗料の種類
屋根の塗料の中には、「遮熱」「断熱」「光触媒」「ラジカル制御」といった特殊な機能を備えた塗料もあります。
「ノーマルなシリコン塗料」か、シリコンの塗料の中でも特殊な機能がついた「ラジカル制御型のシリコン塗料」か、どちらかを選ぶことができるということです。
ここからは、「遮熱」「断熱」「光触媒」「ラジカル制御」、4つの特殊塗料の特徴を紹介します。
遮熱塗料
遮熱塗料は赤外線を反射する特殊な機能をもった塗料です。単価は1㎡当たり4,500円~5,500円で、耐用年数は15年~20年となります。
遮熱塗料には、夏場の室内の暑さを和らげる効果があります。エスケー化研によると、遮熱塗料を塗った場合の室内温度は、夏季の場合で3℃程度下がるという実験結果が出ています。
加えて塗料によっては、汚れにくい性能を持った製品もあります。
遮熱塗料を使って塗装をすれば、冷房使用量の削減・電気代の節約が期待できます。
断熱塗料
断熱塗料は、「屋外の熱の侵入を抑え、屋内の熱を逃げにくくする」といった暑さと寒さ対策の両方に効果的な塗料です。単価は1㎡当たり5.500円~6,500円で、耐用年数は10年~15年ほどとなります。
遮熱塗料は「紫外線を反射し、屋根の温度上昇を抑制する」といった暑さ対策にのみ効果を発揮することに対し、断熱塗料は、暑さと寒さ両方の対策が可能です。
遮熱塗料と比較して1,000円~2,000円ほど単価が高くなりますが、屋根塗装の効果として、暑さと寒さ両方の対策を期待される方には、おすすめの塗料となります。
光触媒塗料
光触媒塗料はセルフクリーニング機能をもつ、対候性に優れた塗料です。単価は1㎡あたり5,000円~6,000円、耐用年数は15年~20年程度となります。
セルフクリーニング機能は次のような仕組みにより、効果を発揮します。
①酸化チタンと呼ばれる物質が光(紫外線)と反応して触媒作用を起こし、塗膜の表面についた汚れを分解する
②そこに流れ込んだ雨水が汚れを洗い流す
汚れの付着力を弱めるだけでなく、雨水によって汚れを洗い流しすることができる画期的な塗料となります。
光触媒塗料はこのような光や紫外線を原理に効果を発揮する塗料のため、日当たりのよい住宅にお住いの方には特におすすめです。
ラジカル制御型塗料
ラジカル塗料は、劣化の原因となるラジカルの発生を抑制する塗料です。単価は1㎡あたり2,500円~3,500円で、耐用年数は12年~15年となります。
ラジカルとは、ごくわかりやすく言い換えると、塗料に配合された有機物を劣化させるエネルギーのことで、ラジカルは塗膜が紫外線によるダメージを受けて発生するものとなります。
この劣化の原因となるラジカルの発生を抑制する、特殊な成分を配合した塗料がラジカル塗料です。このような機能があるため、同価格帯のシリコン塗料と比べて、耐用年数が2年ほど長くなります。
また、ここまで紹介した、遮熱塗料、断熱塗料、光触媒塗料といった特殊な機能をもつ塗料は単価が高いことに対して、ラジカル塗料は、特殊な機能をもつ塗料であるものの、屋根の塗装でよく使用されるシリコン塗料と、ほとんど値段が変わらないことも特徴的です。
できるだけ安く、長持ちする塗料を使いたいといったコストパフォーマンスを重視される方にはおすすめの塗料です。
同じ種類の屋根の塗料でも、さらに細かく分けられる
ここまで、下塗り用塗料と上塗り用塗料を種類別に解説してきました。実際に塗装に使う塗料を選ぶ際には、他にもいくつかのポイントがあります。この点について、解説していきましょう。
色の種類
色は外観を決めるという点で、塗料を選ぶ際の最も重要な要素となります。
基本的には塗りたい色がある塗料を選ぶことになりますが、業者による調色サービスを利用することもできます。また塗装業者に依頼する場合は、現地で色の調合を行う場合もあります。
水性と油性
塗料は大きく分けて水性と油性に分けられます。両者の違いはうすめ液であり、それぞれ以下のものが使われます。
・水性塗料:水
・油性塗料:指定のペイントうすめ液(有機溶剤:シンナーが代表的)
油性塗料は製品自体にも有機溶剤が入っているため、強い臭いがします。吸い込むと健康被害を起こすおそれがあるため、取り扱いに注意が必要です。一方で水性塗料は臭いが少ない一方で、耐久性や艶は油性塗料に劣ります。このため屋根の塗装には、油性塗料が多く使われます。
なお水性塗料の上に油性塗料を塗ると、先に塗った塗料が溶けるなどのトラブルを起こすおそれがあります。このため下塗りを水性、上塗りを油性で行う場合は、事前に問題がないことを確認しておきましょう。
艶ありと艶消し
塗料には艶ありと艶消しがあります。これは2つにきっちり分けられるものではなく、艶の度合いによって以下の5段階に分けられます。
・艶あり
・7分艶(3分艶消し)
・5分艶(半艶)
・3分艶(7分艶消し)
・艶消し(マット仕上げ)
艶があるとピカピカした仕上がりになり、表面がつるつるしているため汚れもつきにくくなります。一方で艶消しの場合は、落ち着いた仕上がりとなることが特徴です。7分艶・5分艶・3分艶の場合はこの中間となり、数字が下がるほど艶がなくなっていきます。
屋根の塗料を選ぶポイントは?
ここまで、屋根塗料の種類についてさまざまな観点から解説してきました。塗料を選ぶにあたっては、いくつか考慮すべき点があります。また塗装業者に依頼する場合は、塗料選びは業者に任せることがベストです。
本記事での最後では、塗料を選ぶポイントとその理由について解説します。
どんな外観にしたいか?
屋根の色は、家のイメージを決める主な要素の1つです。このため、塗料を選ぶうえで色の選択は大変重要です。特に屋根をこれまでと異なる色に塗り替える場合は、色見本などを入念に調べた上で、求める家のイメージと異ならないかチェックが必要です。あわせて、近隣と比べて不自然な色にならないかという点も確認しておきましょう。
また屋根を艶あり塗料で塗ると、近隣に反射する太陽光がそのぶん多くなります。このため近隣がまぶしくなるというおそれもありますから、事前に問題がないかチェックが必要です。
どちらの点についても、可能なかぎり塗装業者など専門家の判断を仰ぐことがオススメです。特に艶については艶ありや艶消しよりも、7分艶・5分艶・3分艶の方が適する場合もあります。
次の塗装まで何年持たせたいか
塗料を選ぶ場合は、次の塗装まで何年持たせたいかという点も選択のポイントになります。この点については、以下の表が参考となります。
要望に応じたオススメの塗料要望の例 | 塗料 |
---|---|
頻繁に塗り替えたい 今の家に長く住む予定がない |
ウレタン塗料 |
ある程度長持ちする塗料を希望する 多くの実績を持つ塗料がよい |
シリコン塗料 |
塗り替えはこれで最後にしたい 塗り替えの手間を極力省きたい |
フッ素塗料 遮熱塗料 |
但し長期間持つ塗料を塗ったとしても、下地が先に劣化し、修理が必要になる場合もあります。もしフッ素塗料など長持ちする塗料を塗る場合は、下地の状態もチェックすることが必要です。
住まいの課題を解決する塗料を選ぶ
住まいの課題は、適切な塗料を塗ることで解決できる場合もあります。代表的な例として、以下のものがあげられます。
・屋根のさび対策:さび止めの入った塗料(主にプライマー)
・家の中が熱くなる:遮熱塗料を使う(主に上塗り塗料)
このような課題を解決する場合は、その機能が含まれた塗料を使わなければなりません。
塗装業者に依頼する場合、製品の選択は業者に任せることがベスト
皆さまの中には塗料の製品を指定した上で、塗装業者に依頼したいと考える方もいるでしょう。たとえば前回塗った塗料の名前を知っている場合は、同じ塗料で依頼すれば間違いないといった理由が挙げられます。しかしこの方法は、オススメできません。
理由の1つとして、前回の塗装時と現在では家の状態が異なるという点があげられます。特に家の劣化度合いは大きく異なる場合があるため、塗料も現在の状態にあわせて選択する必要があります。
もう1つの理由として、塗装業者が扱う塗料の種類は限られるという点があげられます。塗料にはさまざまな種類がありますが、塗装業者の仕入れ先は限られますから、希望する塗料を使えるとは限りません。また同等の機能を持つ塗料は多数あるため、製品名を指定することにはあまり意味がありません。
したがって塗装業者へのリクエストは遮熱性などの機能面や、色や艶、求める家のイメージなどを伝えるとよいでしょう。具体的な製品の選択は、塗装業者に任せることがベストです。
まとめ
いかがでしたでしょうか?ここまで解説してきたポイントをまとめると、以下の通りとなります。
・屋根用の塗料は上塗り用だけでなく、下塗り用の使用も必須
・上塗り用塗料の主な種類はウレタン、シリコン、フッ素、遮熱の4種類
・塗料を選ぶには、住まいの課題の解決や外観、どれだけ塗装を持たせたいかといったことを考慮する
屋根塗料の種類はいろいろありますが、外壁塗装に使う塗料とは多少異なることに注意が必要です。屋根は頻繁に塗装できない場所ですから、長持ちする塗装がよいと思いがちです。しかし下地が傷むと補修が必要となりますから、ウレタン塗料やシリコン塗料で塗装し、10年から15年で塗り替えることも選択肢の1つです。
また塗料を選ぶ際には、快適に生活することも考慮に入れましょう。遮熱塗料を選ぶと、夏場のエアコンの効きが良くなることが期待できます。外観という観点では、色や艶の有無も重要な要素となります。
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