一般的な2階建てのお家の屋根の塗装は、おおよそ80万円が相場です。
しかし、実際の屋根塗装の費用は、住宅の坪数や使用する塗料、劣化症状の程度など、様々な条件によって変動します。
そこでこの記事では、「自宅の屋根塗装の費用を知るための知識」を一から解説していきます。
これから見積りを取得される方・すでに見積もりを手元にお持ちの方、いずれの方にも役立つ情報なので、ぜひ最後まで確認してみてください。
屋根塗装の費用相場は80万円
2階建ての戸建ての屋根のみを塗装する場合、相場価格は足場代込の総額で80万円です。
とりあえず大まかな費用だけ知りたいという場合は、上記の価格を目安にすると良いでしょう。
実際の塗装費用は、塗装する面積や塗装に用いる塗料で大きく異なります。自分の家の場合の概算を知りたい場合は、以下の坪数別の屋根塗装の費用相場を確認してください。
【坪数別の屋根塗装の費用相場】
延べ坪数 | 塗装面積の概算 | 工事費用相場(総額) |
---|---|---|
10坪 | 25㎡ | 20万~40万円 |
20坪 | 50㎡ | 30万~55万円 |
30坪 | 75㎡ | 40万~75万円 |
40坪 | 100㎡ | 50万~95万円 |
50坪 | 125㎡ | 60万~125万円 |
60坪 | 150㎡ | 70万~145万円 |
【コラム:自宅の延べ坪数・塗装面積を知るには?】
最も正確な延べ坪数・塗装面積の調べ方は、お家を建てた際の図面を確認することです。
図面が手元にない場合は、以下の方法で計算することもできます。
■延べ坪数=各階の坪数の合計
例:1階部分が20坪、2階部分が15坪の2階建ての場合
延べ坪数 = 20坪+15坪 = 35坪
階ごとの坪数が不明な場合は、1階の坪数×階数で概算の延べ坪数を出すこともできます。
■屋根の塗装面積 = 1階の坪数 × 3.3 ×1.5
例:1階部分が20坪、2階部分が15坪の2階建ての場合
屋根の塗装面積 = 20坪 × 3.3 ×1.5 = 99㎡
屋根の塗装面積は1階の延床面積に1.2をかけることで概算することができるので、まずは1階の延床面積を出します。
1坪=約3.3㎡なので、延べ坪数×3.3㎡で延床面積を算出することが可能です。
お家の面積が全くわからないという場合は、以下の間取りごとの指標を参考にしてください。
①間取りが2階建て・3~4LDK・家族構成3~5名の場合:延べ坪約30坪
②間取りが2階建て・4~5LDK・家族構成4~6名の場合:延べ坪約40坪
③間取りが2階建て・5~6LDK・家族構成5~8名の場合:延べ坪約50坪
屋根塗装費用の全国平均
また、参考として、ヌリカエで収集した実際の工事費用データも確認してみましょう。
以下の図は、過去のヌリカエ利用者約16,912人のデータをもとにした、屋根塗装の費用分布です。

屋根塗装の工事費用は、平均的な30~40坪の住宅の場合で、80万円が平均でした。
この金額には、屋根塗装の作業に使う足場代(約15万円~20万円)の費用も含まれます。
下記で、都道府県別の屋根塗装の費用相場をまとめました。
都道府県によって、人件費、家の建築面積が異なるため、お住いの都道府県の費用相場を把握することでだいたいの目安を知ることができます。
費用相場を掴む参考にしてください。
屋根塗装の費用内訳と相場
屋根塗装工事の費用相場がおおまかに分かったところで、次は見積書をもとに工事の費用内訳を見ていきましょう。
以下の画像は、屋根塗装の見積書の例です。
上記の見積書からも分かるように、屋根塗装工事は①足場、②屋根塗装、③タスペーサー、④コーキング、⑤高圧洗浄、⑥諸経費の6つの要素に分けることができます。
それぞれどのようなものなのか、一つずつ解説していきます。
足場
足場の組み立て・解体・運搬にかかる諸費用の相場は、1㎡あたり600円~800円です。
これに加えて、高圧洗浄水や塗料が隣の家や前面道路に飛散しないように足場をメッシュシートで覆って養生する必要があります。
このシート代は1㎡あたり100円~200円です。
足場代=700~1,000円/㎡ (足場の架設面積)
屋根塗装
屋根塗装は、文字通り屋根の塗装の工程を指します。
屋根塗装にかかる費用は、塗装に使用する塗料の種類で大きく変化するので注意が必要です。
塗料のグレードは主に7つに分かれ、価格帯と特徴は以下の通りです。
グレード | 耐久性 | 単価(㎡)*3回塗りの合計 |
---|---|---|
アクリル塗料 | 5~7年 | 1,400~1,600円 |
ウレタン塗料 | 8~10年 | 1,700~2,200円 |
シリコン塗料 | 10~15年 | 2,300~3,000円 |
ラジカル制御型塗料 | 10~15年 | 2,500~3,000円 |
フッ素塗料 | 15~20年 | 3,800~4,800円 |
光触媒塗料 | 15~20年 | 4,200~5,000円 |
無機塗料 | 20~25年 | 4,500~5,500円 |
日本の屋根で頻繁に使用されるのは、シリコン塗料です。
初めて屋根塗装をする場合は、まずシリコン塗料をメインに見積もりを取ることをおすすめします。
塗料代=1,500~5,500/㎡ (屋根塗装面積)
タスペーサー
タスペーサーは、スレート屋根の塗装の際などに用いられる道具で、塗料が屋根材同士の隙間を塞いでしまうのを防ぐ役割があります。
屋根材と屋根材の間には適切な隙間を設ける必要があり、これが埋まってしまうと雨漏りに繋がります。
以前はタスペーサーではなく「縁切り」という工程で隙間を作っていましたが、屋根材の痛みにつながる可能性があることから、昨今ではタスペーサーを使用する業者が多いです。
タスペーサーは、塗装面積1㎡あたり400円~600円です。
タスペーサー代=400~600円/㎡ (屋根塗装面積)
コーキング
コーキングは屋根材のひび割れ箇所を埋めるために使用するゴム材です。
シリコンやウレタンなど安価な素材でできているので施工費は高くはありませんが、1mあたり500~900円ほどかかります。
コーキング代=500~900円/m(穴埋めが必要な長さ [m])
高圧洗浄
高圧洗浄とは、勢いよく噴射した水で屋根の表面の汚れを落とす工程のことです。
この工程を行うことで屋根の表面が綺麗になり、塗料がなじみやすくなります。
高圧洗浄は、塗装面積1㎡あたり200円~350円です。
高圧洗浄代=200~350円/㎡ (屋根塗装面積)
諸経費
上記で解説したもののほかに、諸経費として、工事金額の5~10%が上乗せされます。
諸経費とは、移動費・現場管理費・廃棄物処理費用などをまとめたものです。
上記の合計金額の5~10%
屋根塗装にかかる費用を安くする方法
数十万円の費用がかかる屋根塗装。決して安い工事ではないので、少しでも安くできたら嬉しいですよね。
この章では、どうしたら1円でも安く塗装をしてもらえるのか、具体的な方法をご紹介します。
もちろん以下を実行したからといって必ず安くできる訳ではないので、参考としてご確認ください。
相見積もりを取る
屋根塗装の見積もり金額は、業者によって大なり小なり変わります。
業者によって足場・塗装面積の測定方法や使用する塗料、人件費や会社の運営費などが異なるためです。
相見積もりを取ることで、以下のようなメリットが挙げられます。
相見積もりのメリット
- 見積書に記載された費用が相場通りか、営業マンや業者が信頼できるか比べられる
- 極端に請求金額が高い・安い、見積書の書き方に透明性がないなど不自然な点が明確になるので、悪徳業者に騙されるリスクが下がる
- 複数の業者のチェックを受けることで、自宅の屋根の状況を多角的に知ることができる
- 見積書が他の業者との価格交渉の材料になるので、値下げできる場合がある
複数の業者に問い合わせることは少し面倒ではありますが、メリットが多いので是非とも行いましょう。
業者の数は多すぎると時間と労力を使って疲れてしまうので、3~4社が理想です。
ハウスメーカーではなく、地域の施工店に依頼する

ハウスメーカーや大手の塗装業者に依頼すると、実際に施工をするのは下請け企業や孫請け業者である場合がほとんどです。
すると、中間マージンが発生するため、請求金額が高くなる傾向にあります。
中間マージン分を払わずに屋根を塗装するには、お住まいの地域に居を構えている工務店や塗装の専門業者に直接依頼する方法が挙げられます。
工務店や専門業者では自社で塗装職人を雇っていることがあり、下請け企業や孫請け企業を介さずとも施工してもらえる場合があるので、費用を安く抑えられるかもしれません。
自治体の助成金や火災保険を利用する
自治体の助成金や火災保険を使えば、屋根塗装費用を安くできる可能性があります。
適用される条件や受け取れる金額の上限、支給のタイミングなどは自治体・保険会社によってまちまちですので、必ず申請・受理できそうか前もって確認しましょう。
詳細は以下の記事で紹介していますので、是非ともご覧ください。
「火災保険で屋根塗装修理できる」と言われている場合は要注意
屋根の工事で保険が使えるのは、台風などによる破損の原状回復であることが原則です。ただの「再塗装」では、保険金が下りるケースはまずありません。
万一、保険金が下りることを売り文句に屋根塗装をすすめてくる業者がいる場合は、悪徳業者の可能性が高いと思われます。
その業者とはすぐに契約せずに、他の業者から見積もりをとってから判断しましょう。
外壁塗装も併せて行う
屋根にしかり外壁にしかり、住宅を塗装する際は足場を組まれることがほとんどです。
足場代だけで20万円前後はかかりますので、屋根塗装と外壁塗装を異なるタイミングで行うと40万円ほど支払わねばなりません。
もし屋根塗装と外壁塗装を一緒に行うと、足場を組む回数が1回で収まるので20万円分の費用を節約できます。
屋根が劣化しているということは、外壁も同様に劣化している可能性が高いので、一緒に塗装する必要があるか業者に相談してみましょう。
「塗装」について詳しく知りたい方は、下記の記事もご覧ください。
>>「塗装ってどんな意味があるの?外壁の修繕を検討している方へ」
屋根塗装の相場が変動する理由
ここまでで、屋根塗装の相場は自宅の坪数や塗料の種類によって変動することを紹介しましたが、そのほかにも相場が変動する要因がいくつかあります。
ここからは、坪数や塗料以外の観点から屋根塗装の費用相場が変動する要因を解説します。
屋根の形・勾配
屋根の形・勾配によっても費用相場は変動します。
たとえ同じ坪数の家であっても屋根の形は家によってそれぞれ違います。
塗装面積は屋根の勾配が緩やかなほど広くなり、急なほど狭くなります。屋根の形が変わるにつれて、塗料代の算出要素となる塗装面積が変わってきますので、坪数ごとの塗装面積はあくまで目安であることに注意をしておきましょう。
▼「屋根の塗装面積」についてもっと詳しく知りたい方はコチラ
足場設置スペース
屋根塗装に欠かせない足場ですが、大きい住宅ほど足場の設置スペースも必要になるため費用が上がります。
足場面積は足場の外周の長さ×家の高さで求めることができ、30坪の2階建て住宅では概算で250㎡以内です
平米単価の相場は700~1,000円/㎡程度なため、足場代としては20万円前後が目安となります。しかし、この足場の費用は見積もりの中でもごまかしやすい要素もあり、注意が必要です。
相場よりも大きくかけ離れているようなら、計算の内訳について問い合わせるか、他の業者からも見積もりを取るようにしましょう。
▼「足場の費用」についてもっと詳しく知りたい方はコチラ
建物の階数
屋根面積が同じでも、2階建てと3階建ての住宅では3階建てのほうが費用は上がります。屋根塗装では安全に作業するための足場や、塗料、粉塵などの飛散を防止するネットを設置する必要があるためです。
3階建て住宅は2階建て住宅に比べて、より高い足場とネットが必要になるため、相場が変動する要因になります。
屋根塗装塗料の選び方
屋根の塗装をする際に、重要になるのが塗料に関する知識です。
使用する塗料によって自宅での過ごしやすさや安全性、また次回メンテナンスまでの期間が大きく変動します。ここからは屋根塗装を行う方が必ず抑えておきたいポイントを2点解説します。
要望に応じたおすすめ塗料
屋根の塗料には様々な種類がありますが、何を重視するかによって使用すべき塗料にはだいたいのあたりをつけることができます。
以下は、塗料を選ぶ際によく上がってくる要望の例です。
要望の例 | 使用する塗料 |
---|---|
頻繁に塗り替えたい 今の家に長く住む予定がない |
ウレタン塗料 |
ある程度長持ちする塗料を希望する 多くの実績を持つ塗料がよい |
シリコン塗料 |
塗り替えはこれで最後にしたい 塗り替えの手間を極力省きたい |
フッ素塗料 |
特にポイントになるのが、次の塗装まで何年持たせたいかというところです。メンテナンスを中心に使用する塗料を選ぶというのはよくある選び方として抑えておくとよいでしょう。
塗料の選び方については、下記の記事でも詳しく解説していますので、参考にしてください。
色・デザインの決め方
屋根の色は自宅の外観を決定づける要素の一つです。外壁との配色も同時に考慮することが要され、屋根の色選びに苦労する方も多くいらっしゃいます。
さらに屋根の形状や屋根材の種類によっては、遮熱性の高い機能色を選んだほうがよいこともあります。
このように外壁との組み合わせや、屋根の形状、種類に応じて使用する色を選択することを把握しておくとよいでしょう。
屋根の色や配色については、下記の記事でも詳しく解説していますので、参考にしてください。
おすすめは遮熱塗料
屋根に人気な塗料が遮熱塗料です。
遮熱塗料は太陽光を跳ね返すことで、建物内部に熱が伝わりにくくする機能をもつ塗料のことです。
通常は、太陽光を吸収した屋根がその熱を建物内部にまで吸収させてしまい、建物内部の温度が上昇してしまうことに対し、遮熱塗料を使用すれば太陽光が原因となる温度上昇を抑制することができます。
遮熱塗料については下記の記事でも詳しく解説しています。
屋根塗装が必要な劣化症状【写真あり】
ここまでで、屋根の塗装にかかる費用を、これから屋根塗装を進めたい方に必要な基礎情報について解説しました。
しかし、そもそも屋根の塗装が必要かどうかはどう判断すべきなのでしょうか。
一般的には、屋根は10年~15年に一度の塗装が必要であると言われています。
しかし、10年に達していなくても、以下のような劣化症状がある場合には早めに塗装を検討しましょう。
- コケ・カビ
- 色あせ
- 屋根材の割れ・破損
以下でそれぞれどのような症状なのか、画像つきで確認してみましょう。
コケ・カビ
屋根材に緑のコケや黒ずみが見え始めたら、屋根を塗り替えるサインです。
コケや黒ずみは、屋根の表面の防水性能が落ちていることを意味します。
防水性能が落ちている屋根は雨漏りをしやすく、屋根材の内側の腐食にもつながる可能性があるため、早めに再塗装をしましょう。
色あせ
屋根の色が薄くなったり、変色していたりする場合も、防水性能が落ちています。
コケやカビといった症状と同様に雨漏りにつながりやすい状態なので、再び塗装をすることで防水性能を復活させましょう。
屋根材の割れ・破損
屋根材が割れていたり、欠けていたりする場合には、屋根材の交換が必要になります。
破損した屋根材は雨水を防ぐことができず、家の基礎部分の腐食や雨漏りを引き起こしてしまうためです。
破損している屋根材は一部でも、傷みは屋根全体に広がっているというケースは珍しくないので、屋根材の交換の際には一緒に塗装も検討することをおすすめします。
塗装以外の屋根のメンテナンス方法
お家の屋根の劣化がかなり進行している場合、塗装では対処しきれないということもありえます。
そのような場合に塗装以外のどんなメンテナンスを行えばいいのかを、この章で解説していきます。
メンテナンス1.屋根の葺き替え
塗装とは異なり屋根材自体を新しくすることができるので、屋根材の耐用年数が過ぎている場合などに行われます。
また、屋根の葺き替えなら、以前とは違った屋根材にすることも可能です。
建材の耐久性・断熱性などは日々進化しているので、築30年以上の家などであれば、屋根材を変えることで生活の質の向上も考えられます。
葺き替え後の耐用年数は、使用する屋根材によって変わりますが、30年~60年ほどです。
屋根葺き替えの工事費用は、30坪の戸建ての場合、140万円~200万円が相場となっています。
メンテナンス2.屋根の重ね張り(カバー工法)
屋根の防水性に問題がある場合や、屋根材自体の劣化が激しい場合などに行われます。
現在の屋根材を撤去する必要がないので、葺き替え工事よりも安価なのが特徴です。
しかしながら、「瓦屋根には施工できない」「重ね葺きの上に重ね葺きはできない」といった制約もある工事です。
重ね葺きを行ったあとの耐用年数は、重ねた屋根材によって変わりますが、20年~30年ほどです。
重ね葺きの工事費用は、30坪の戸建ての場合、80万円~120万円が相場となっています。
記事のおさらい
屋根塗装の相場はいくらですか?
屋根塗装費用の相場は30坪だと35~52万円、40坪だと40~65万円、50坪だと50~85万円です。詳しく知りたい方は屋根塗装の相場は30坪なら35万円~52万円をご覧ください。
屋根塗装の施工内容と単価相場はどのくらいですか?
例えば足場や養生が700~1,000円/㎡、コーキングが500~900円/mほどかかります。詳しくは屋根塗装の施工内容と単価相場をご覧下さい。
屋根塗装にかかる費用を安くする方法は何ですか?
自治体の助成金や火災保険を利用したり、外壁塗装も併せて行ったりすることで、費用を抑えられる場合があります。詳しくは屋根塗装にかかる費用を安くする方法をご覧ください。