スレート屋根・ガルバリウム鋼板・アスファルトシングル‥、屋根材にはたくさん種類があります。屋根材は住宅のデザインへの影響はもちろん、風や雨から住宅を守る役割を果たします。自分好みのデザイン、求める機能がある屋根材を把握するためにも、各屋根材の特徴をチェックしておくことは重要です。
本記事では、主要屋根材に絞って、「種類・メリット/デメリット・耐久性・メンテナンス・価格」といった屋根材のリフォームを検討する上で知っておきたい基礎知識をまとめました。
また、屋根のリフォームを成功させる上で、知って頂きたい「業者選定のポイント」や気になる近年の屋根材トレンドについても解説しています。
屋根のリフォームを検討している方は、ぜひ本記事を参考にしてください。
💬屋根材の正しい選び方がわからない…
屋根材の種類と特徴、メリット・デメリットの違い
本記事では、住宅によく使用されるものから、以前主流だったもの、やや珍しいものまで9種類の屋根材について解説します。
屋根材の種類 | メリット | デメリット | 価格 | 耐用年数 |
---|---|---|---|---|
スレート | ・価格が安い ・色やデザインが豊富 |
・メンテナンスが多め ・やや割れやすい |
4,000円/㎡~ | 25年~30年 |
ガルバリウム鋼板 | ・耐用年数が長め ・軽量、耐震性に優れる |
・断熱性が低い ・キズやへこみに弱い |
6,000円/㎡~ | 30年~40年 |
ジンカリウム鋼板 | ・耐用年数が長め ・防音性、断熱性が高い 再塗装が不要 |
・価格が高め ・石粒が剥がれ落ちてくる |
8,000円/㎡~ | 30年~40年 |
陶器瓦(日本瓦) | ・耐用年数が非常に長い ・再塗装が不要 ・再利用が可能 |
・価格が高め ・重量が大きく、家を選ぶ |
9,000円/㎡~ | 50年以上 |
アスファルトシングル | ・防音性が非常に高い ・重量が軽め |
・強風で剥がれることがある ・熟練した業者が少ない |
3,500円/㎡~ | 20年~30年 |
セメント瓦 | ・陶器瓦よりも安価 | ・現在では選ぶ理由がない | 6,000円/㎡~ | 30年~40年 |
トタン | ・軽量、耐震性が高い | ・現在では選ぶ理由がない | 5,000円/㎡~ | 15年~20年 |
陶板 | ・陶器よりも軽い ・再塗装が不要 |
・陶器よりも価格が高い | 16,000円/㎡~ | 50年以上 |
銅板 | ・耐用年数が非常に長い ・再塗装が不要 |
・価格が非常に高い | 25,000円/㎡~ | 60年以上 |
屋根材①スレート屋根

主原料 | セメント、繊維素材 |
---|---|
メリット |
・価格が安い ・色やデザインが豊富 ・防火性に優れている ・対応できる業者が多い |
デメリット |
・塗装の周期が短め ・割れやすい。気候変化や人の重さに注意 ・防音性、断熱性に劣る ・凍害に弱い。寒冷地には不適 ・濡れると乾きにくい。コケや藻が生えやすい |
材工価格 | 4,000円~8,000円/㎡ |
耐用年数 | 25年~30年 |
メンテナンス目安 |
5年おき:点検・ヒビの補修 15年目:棟板金の交換 30~40年目:葺き替え 任意:塗装(美観のため) |
主要メーカー・製品 | ケイミュー「カラーベスト」 大和スレート「ファイバーコルゲート」 |
スレート屋根の特徴
スレート屋根は現在の我が国の新築住宅で最も多い屋根材です。
色やデザインが豊富で安価であることに加え、「多くの家がスレートだから」という理由で採用されるケースが多いと思われます。
スレート屋根の最大のメリットは、価格が安いことです。
スレート屋根を選ぶことによって、葺き替えリフォームの費用を最大限に安くすることができます。
スレート屋根の注意点
スレート屋根は、、薄いセメント板であるため強度が弱く、5~10年もするとクラック(ひび割れ)が生じたり、塗装が退色したりします。
美観を維持するためには、10年~15年程度をめどに再塗装が必要となり、他の屋根材と比べるとお手入れが必要になる屋根材です。
2005年以前に販売されたスレート屋根材には若干のアスベストが混入されているものがあります。一般的には、製造年月日が古いほどアスベストの混合比率が高くなっていると言われており、2004年以前に設置したスレート屋根の葺き替え工事をする場合、注意が必要となります。なお、現在販売されているスレート屋根材にはアスベストは使用されていません。
スレート屋根のより詳しい特徴については以下の記事で解説しています。
屋根材②ガルバリウム鋼板

主原料 | アルミニウム、亜鉛、シリコン |
---|---|
メリット |
・耐用年数が長め ・防火性が高い ・カラーバリエーションが豊富 ・軽量。耐震性にも優れる ・緩い勾配でも施工可能 |
デメリット |
・断熱性が低い。断熱材の使用が前提 ・キズやへこみに弱い ・遮音性が低い。雨音が響きやすい ・現場加工には職人の熟練を要する |
材工価格 | 6,000円~12,000円/㎡ |
耐用年数 | 30年~40年 |
メンテナンス目安 |
15年目:棟板金の交換 30~40年目:葺き替え 任意:塗装(美観のため) |
主要メーカー・製品 |
アイジー工業「スーパーガルテクト)」 ニチハ「横暖ルーフS」 日鉄住金鋼板株式会社「SGL(スーパーガルバリウム)」 |
ガルバリウム鋼板屋根の特徴
ガルバリウム鋼板は、トタンに次ぐ金属屋根材として登場した素材です。
トタンの弱点であった錆びやすさが大きく解消されており、20年以上の長期にわたって錆びが広がるのを防げる優秀な金属屋根材です。
価格・耐用年数・性能などを見ても、現行の屋根材のなかでも総合力の高いことから人気上昇中の素材です。
ガルバリウム鋼板は、その軽量さから屋根のカバー工法(重ね葺き)にも多く使われています。
ガルバリウム鋼板屋根の注意点
ガルバリウム鋼板は薄い金属板金であるため、遮音性・断熱性が低く、キズやへこみに弱いことがデメリットです。
このうち、遮音性・断熱性については、ガルバリウム鋼板に断熱材を張りつける方法や、建物の屋根・天井に断熱遮音材を使用することで対策されます。
キズやへこみについては、対策をしながら住み続ける必要があるでしょう。
小さな子どものボール遊びや、物を移動させる際の接触には常に注意する必要があります。
また、現場で板金加工しながら柔軟に施工するためには、屋根工事業者の熟練が必要になります。
多くの場合、地域の板金業者が施工することになりでしょう。
▼「ガルバリウム鋼板」について詳しく知りたい方はコチラ
▼「ガルバリウム鋼板の屋根」について詳しく知りたい方はコチラ
屋根材③ジンカリウム鋼板(石粒付きガルバリウム鋼板)
主原料 | 天然石粒、アルミニウム、亜鉛、シリコン |
---|---|
メリット |
・耐用年数が長め ・防音性、断熱性が高い ・耐火性が高い ・再塗装がいらない |
デメリット |
・ガルバリウム鋼板よりは重い ・徐々に石粒が剥がれ落ちる ・価格が高め ・断熱性の向上は、別の手段で可能 ・施工が慣れた業者が少ない |
材工価格 | 8,000円~14,000円 |
耐用年数 | 30年~40年 |
メンテナンス目安 |
5~10年おき:業者点検 15年目:棟板金の交換 30~40年目:葺き替え |
主要メーカー・製品 |
ディーズルーフィング(アメリカ)「ディプロマット」 LIXIL「Tルーフシリーズ」 メトロタイル(フランス)「メトロスレート」 |
ジンカリウム鋼板の特徴
ジンカリウム鋼板は、ガルバリウム鋼板と同じ金属屋根材です。
「石粒付きガルバリウム鋼板」とも呼ばれています。
ガルバリウム鋼板との違いは、表面が砂状の自然石でコーティングされていることです。
このコーティングにより、ガルバリウム鋼板の弱点であった遮音性・断熱性の低さが解消されているのが特徴です。
また外見的にも、ヨーロッパの歴史ある街並みのような屋根デザインになっています。
代表的なメーカーのひとつであるメトロタイル社、ジンカリウム鋼板屋根について「天然石を使用しているため、紫外線やサビに強くメンテナンスフリー」であると謳っています。
同社のシリーズ製品は、「製品保証30年・美観保証10年」がついており、これほどを保証期間が長い屋根材は、なかなかありません。
材質としての耐久性の高さのあらわれと考えてよいでしょう。
ジンカリウム鋼板の注意点
ジンカリウム鋼板のメリットにある「断熱性の高さ」は、中価格帯(9,000円~)以上の多くのガルバリウム鋼板でもすでに実現されています。
その方法とは、断熱材をガルバリウム鋼板の内側に張り合わせることです。
断熱性の高い金属屋根を使いたい場合、石粒つきのジンカリウム鋼板だけが選択肢ではないことを覚えておいてください。
ほかにも、ガルバリウム鋼板と比較して「価格が高めである」「年月が経つうちに、砂粒が屋根から落ちれくる」「ガルバリウム鋼板の強みである軽さが失われている」といったデメリットがあります。
屋根材④陶器瓦(釉薬瓦)
主原料 | 粘土、釉薬 |
---|---|
メリット |
・耐用年数が非常に高い ・再塗装が不要 ・遮音性・断熱性が高い ・結露を起こしづらい ・一度取り外しても再利用が可能 ・一枚単位で交換が可能 |
デメリット |
・価格が高め ・重量が大きい。建物に強度が求められる ・葺き替えの選択肢にしづらい ・施工できる職人が減少中 |
材工価格 | 9,000円~16,000円 |
耐用年数 | 50年以上 |
メンテナンス目安 |
15年目:棟の取り直し 30~40年目:葺き直し |
主要メーカー・製品 |
近畿セラミックス「スーパーセラブライト」 栄四郎瓦「カパラス」 東洋瓦「Earthシリーズ」 |
陶器瓦の特徴
陶器瓦とは、粘土を高温で焼成して作った、日本の伝統的な屋根材です。
「釉薬(ゆうやく)瓦」「日本瓦」と呼ばれることもあります。
陶器瓦の特徴は、なんといっても50年以上と言われる長い耐用年数です。
京都・奈良の古い寺院の屋根瓦がまだ残っていることからも分かる通り、百年以上の寿命を発揮することもあります。
寿命が長いおかげで、陶器瓦はスレートやガルバリウムなどは違い、屋根から取り外しても再利用ができます(破損がある瓦を除く)。
このため、リフォームのたびに屋根材を買い換える必要がありません。
陶器瓦には塗装がいらないこともあって、維持・メンテナンスの手間や費用が少ない、非常に経済的な屋根材なのです。
ほかにも、遮音性、断熱性、透湿性にも優れ、性能面ではこれといった弱点がない屋根材です。
陶器瓦の注意点
陶器瓦の最大のデメリットは、高重量なため、強度がじゅうぶんにある建物でないと施工ができないことです。
陶器瓦の重さは、スレートの約3倍、ガルバリウム鋼板の約10倍あります。
そのため、新築時点から陶器瓦を想定して設計した家でないと使いづらい屋根材です。
「スレートやガルバリウムから、陶器瓦に変えたい」と思っても、使用できない場合が多く、リフォームの選択肢には事実上ならないでしょう。
また、施工価格が高く、扱える職人も年々減ってきているのもデメリットです。
陶器瓦は、予算に余裕のある人向けの高級素材と言っていいでしょう。
▼「陶器瓦の種類や特徴」について詳しく知りたい方はコチラ
▼「陶器瓦の修理方法」について詳しく知りたい方はコチラ
屋根材⑤アスファルトシングル

主原料 | アスファルト、ガラス繊維、砂粒、顔料 |
---|---|
メリット |
・防水性が非常に高い ・防音性が高い ・複雑な形状の屋根にも施工可能 ・重量が軽め |
デメリット |
・強風で剥がれることがある ・濡れると乾きにくい。コケや藻に弱い ・国内普及率が低い。対応業者が少ない ・塗装経験のある業者が少ない |
材工価格 | 3,500円~12,000円 |
耐用年数 | 20年~30年 |
メンテナンス目安 |
5年おき:剥がれの点検・補修 10年~15年:棟の交換 30年目:葺き替え 任意:塗装(美観のため) |
主要メーカー・製品 |
オーウェンスコーニング(アメリカ)「オークリッジスーパー」 ニチハ「アルマ」 テゴラ(イタリア)「シングルラインマスター」 |
アスファルトシングルの特徴
アスファルトシングルとは、アスベストでコーティンされたシート状の屋根材です。
他の屋根材と比べた最大のメリットは、シートを接着剤で貼り付けて使うため継ぎ目や釘穴がなく、防水性が非常に高いことです。
また、雨音がほとんどせず遮音性が高いこと、金属屋根に次いで軽量で建物に負担をかけないこともメリットです。
日本では2007年から使用可能になった
アスファルトシングルは、アメリカやカナダでは80%以上の普及率があるメジャーな屋根材です。
一方、日本では2007年の建築基準法の改正により、ようやく一般の住宅やマンションで使用されるようになりました。
アスファルトシングルの注意点
アスファルトシングルの主なデメリットは、「強風に弱い」「水はけが悪い」ことの2つです。
シート状の素材であるため、台風後には部分的にめくれたり剥がれたりしている場合があり、5年ごとを目安に定期チェックが必要になります。
また、表面がデコボコした砂状であることから水はけが悪く、水分の定着によるコケや藻の発生に悩まされる場合があります。
▼「アスファルトシングル」についてもっと詳しく知りたい方はコチラ
屋根材⑥セメント瓦・コンクリート瓦

主原料 | セメント、砂 |
---|---|
メリット |
・陶器瓦よりも安価 ・遮音性・断熱性が高い |
デメリット |
・現在ではあえて選ぶ理由がない ・陶器瓦とは違い、塗装がいる ・重量が重め ・コケ、藻が生えやすい |
材工価格 | 6,000円~8,000円 |
耐用年数 | 30~40年 |
メンテナンス目安 |
5~10年おき:割れのチェック 15年目:棟の取り直し 30~40年目:葺き替え 任意:塗装(美観のため) |
主要メーカー・製品 |
ケイミュー「ROOGA(ルーガ)」 井桁スレート「アメリカン瓦」 モニエル「センチュリオン、ホームステッド、NEWシャブレ」(いずれも廃盤) |
セメント瓦の特徴
セメント瓦(別称:モニエル瓦、コンクリート瓦、プレスセメント瓦)とは、セメントと砂を原料とした屋根材です。
20年ほど前までは主流な屋根材でしたが、現在では新しく使用されることはほぼありません。
いまセメント瓦について調べている方はのほとんど、そのメンテナンスや寿命についてでしょう。
かつては、住宅の屋根材が「陶器瓦」「セメント瓦」「トタン」のほぼ3択だった時代、セメント瓦は価格・性能的にもっとも平均的な選択肢でした。
陶器瓦よりも安く、見栄えは同等の重厚さがあり、トタンよりも断熱性・遮音性が高かったからです。
しかし、スレートやガルバリウムなどの優れた屋根材が登場し、新しい屋根材にセメント瓦が選ばれることは少なくなっています。
セメント瓦の注意点
セメント瓦は陶器瓦とは違い、風雨で侵食が起こりやすいため、ひび割れの点検やメンテナンスが必要です。
経年で色褪せも起こるため、見栄えを維持しようとすると塗装の必要になります。
また、水分を含みやすいため、コケや藻も生えやすい屋根材です。
総合すると、見た目と重さは粘土瓦に近く、原料や必要なメンテナンスはスレートに近い屋根材と言えます。
価格は、粘土とスレートのちょうど中間あたりです。
セメント瓦とスレートは、どちらもセメントを主原料としていますが、両者の違いは「厚み」です。一般に、1cm以上ならセメント瓦(もしくは厚型スレート)、1cm未満ならスレートと呼ばれて区別されることが多いようです。
屋根材⑦トタン

主原料 | 鉄、亜鉛(めっき) |
---|---|
メリット |
・軽い ・価格が安め |
デメリット |
・現在ではあえて選ぶ理由がない ・遮熱性・遮音性が低い ・(ガルバリウム鋼板に比べて)錆びやすい |
材工価格 | 5,000円~6,000円 |
耐用年数 | 15~20年 |
メンテナンス目安 |
5年おき:錆び・穴の点検補修 10年目:棟の交換 20年目:葺き替え 任意:塗装(美観のため) |
主要メーカー・製品 | 久宝金属製作所「平板トタン」(DIY用) |
トタンの特徴
トタン(板)は、鉄の表面に亜鉛めっきを施した屋根材です。
亜鉛めっきにより、鋼板(鉄)本体が錆びにくく長持ちすると、30年以上前までは大変人気のあった金属屋根材でした。
トタンは、価格も安く、耐水性があり、素人でも扱えるほど軽く加工もしやすいため、業者による施工ばかりでなく、DIYも盛んでした。
トタンの注意点
トタンは、薄い金属板であるため、屋根裏や屋内の寒暖差が大きく、雨音が響くデメリットがあります。
また、より錆びにくく価格もさほど変わらない「ガルバリウム鋼板」が登場したことにより、現在ではあえて選ぶ必要がない素材となってしまいました。
▼「トタン屋根」についてもっと詳しく知りたい方はコチラ
屋根材⑧陶板
主原料 | 粘土、釉薬 |
---|---|
メリット |
・陶器瓦に比べて軽い ・塗装が不要 |
デメリット | ・陶器瓦より価格が高い、ないし変わらない |
材工価格 | 16,000円~ |
耐用年数 | 50年以上 |
メンテナンス目安 |
15年目:棟の取り直し 30~40年目:葺き直し |
主要メーカー・製品 |
鶴弥「スーパートライ美軽(みがる)」(中空陶板瓦) 三州野安株式会社「セラマウント」(軽量瓦) |
陶板屋根の特徴
陶板屋根材とは、陶器瓦の耐久性を保ったまま、軽量化を実現した屋根材です。
耐震・耐荷重の理由で陶器瓦が選べない住宅でも、陶器瓦と同様の性能・見た目を得ることができます。
重量を比べると、陶器瓦の重さが1㎡あたり約50kgであるのに比べて、軽量化対策がされた陶坂屋根は約24kg/㎡(鶴弥「スーパートライ美軽」の場合)と、約半分となっています。
メンテナンス面では、陶器瓦と同様に粘土を焼成した焼きものであるため、色落ちせず再塗装が不要なのがメリットです。
陶板屋根の注意点
陶板屋根の注意点は、主に価格についてです。
陶板屋根の施工価格は、陶器瓦と同じか、それより高くなることがほとんどです。
もともと陶器瓦が選べる建物で、あえて陶板瓦を選ぶ理由は無いでしょう。
「塗装メンテナンス不要の屋根の家に住みたいが、屋根材は少しでも軽いほうがいい」と希望する人向けの製品です。
屋根材⑨銅板
主原料 | 銅 |
---|---|
メリット |
・耐用年数が非常に長い ・塗装が不要 ・錆びても問題なく使い続けられる ・軽量、耐震性が高い |
デメリット |
・価格が非常に高い ・施工業者が非常に少ない |
材工価格 | 25,000円~ |
耐用年数 | 60年以上 |
メンテナンス目安 |
5年おき:錆び・穴の点検補修 10年おきの点検・適宜補修 |
主要メーカー・製品 | ― |
銅板の特徴
銅版屋根は、古い日本家屋や寺社仏閣などで用いられてきた伝統的な屋根材です。
屋根として葺いたばかりの時は新品の10円玉に近い赤茶色をしていますが、使い込むにつれて緑青(ろくしょう、銅により生成される錆び)が生じることで耐久性が増し、そのまま60年以上はもつと言われている素材です。
この非常に長い耐用年数に加えて、経年劣化によるメンテナンスもほとんど必要ないのが魅力です。
金属屋根材に共通の、軽さと耐震性の高さも備えています。
銅板の注意点
銅板の最大のデメリットは、価格が非常に高いことです。
現在の施工価格は、陶器瓦(日本瓦)の2~3倍以上(25,000円/㎡以上)が目安となります。
一般住宅の屋根材としては需要がほとんどなくなってから久しく、施工可能な業者も減っています。
そのため、対応可能な業者を探すのにも苦労するでしょう。
予算やスケジュールに大きな余裕があり、日本古来のエッセンスを取り入れた家にどうしても住みたい、という方向けの屋根材と言えます。
💬屋根材の正しい選び方がわからない…
屋根材を変える場合、勾配を要チェック
専門的な内容になりますが、屋根を新しい屋根材にリフォームする場合、現在の屋根勾配が新しい屋根材に適合するかどうかを必ず確認しなければなりません。
なぜなら、屋根材には最低限必要となる勾配*の目安があり、現在の屋根の勾配では新しい屋根材の最低限必要となる勾配に満たない場合があるからです。
例えば、現在の屋根がガルバリウム鋼板だった場合には、スレートや瓦で葺き替えができない場合があるため注意が必要です。
実際に必要な屋根勾配は、屋根の長さや積雪量によっても異なるため、屋根材メーカーのカタログや専門家に相談して確認しましょう。
主な屋根材の最低限必要な勾配の目安は以下の通りです。
屋根材 | 最低必要な勾配の目安 |
---|---|
スレート屋根 | 4寸以上 |
アスファルトシングル | 3.5寸以上 |
瓦 | 3寸以上 |
ガルバリウム・ジンカリウム鋼板 | 2寸以上 |
屋根のリフォーム費用
屋根のリフォームは主に以下の3つの方法があり、費用が異なってきます。

上記のパターンで建坪約30坪の木造2階建住宅のスレート屋根をリフォームした場合、以下が目安の費用となります。

屋根の大きさ・使用する屋根材・塗料により費用は大きく変わるため、上記はあくまで例となります。
屋根のリフォームをする際は、以下のステップで様々な角度から検討してリフォームプランを練ります。
屋根材の種類と特徴を参考にして、予算・今後のメンテナンス計画たてて最も自分の要望にあったリフォームプランを決めましょう。
「とはいっても、屋根のことは素人だし、自分でメンテナンス計画をたてるのは難しい」 上記のように考える方が多いかと思います。そのため、屋根を的確に診断し、施主の要望に沿ったアドバイスできる業者を選定することが、リフォーム成功のポイントになってきます。
以下の章では、「屋根のリフォーム業者選定のポイントとは?」をテーマに解説します
屋根のリフォーム業者選定の3つポイント
①業種の異なる複数の工事業者の意見をきき、比較検討すること
②大手業者ではなく、専門業者に診断してもらう
③金属屋根にリフォームする場合、屋根専門業者に相談する
①:業種の異なる複数の工事業者の意見を聞き、比較検討すること
複数の業者から意見を聞きましょう。特に、「塗り替えでいいのか?」「新しい屋根材に葺き替えるべきか?」迷っている方は、なおさらとなります。
なぜなら、屋根のリフォームは業種によって提案内容が変わってしまう可能性が高いからです。
塗装業者・金属屋根業者・瓦屋根業者・・・屋根の修理業者は複数いますが、これらの業者は使用する技術や道具が異なるため、得意な領域がバラバラです。
各業者は、差別化のために得意な領域を提案してきます。
そのため、塗装業者は塗装による提案をベースに、瓦屋根業者は瓦の提案を、金属屋根業者は金属屋根への葺き替え提案がメインとなります。
誤解を恐れずに言えば、「施主にとって」最適な提案をしてもらえるとは限りません。
したがって、「複数の業種に診断してもらい、比較検討すること」が重要になってきます。
②:大手業者ではなく、専門業者に診断してもらう
「安心・安全なイメージがある」「定期点検で案内がきたから」という理由で、ハウスメーカーなどの大手リフォーム業者に大手を依頼する方は少なくありません。
しかし、正直なところ、大手業者はあまりオススメできません。理由は2点あります。
①高額な中間マージン

大手業者は、地元の名もない下請け業者に大手を依頼し、大手金額に上乗せした50万円~150万円程度の手数料を工事費用にのせています。
そのため、同じ工事内容でも金額が割高となります。
もちろん、全ての下請け施工が悪いわけではありませんが、「あわよくば品質も良くて価格も安い業者に頼みたい」というのが正直なところではないでしょうか?
施工品質の高さ
施工の品質を重要としている業者であれば、「営業力」「広告宣伝」よりも品質を高めるために、職人教育に力を入れています。
なぜなら、ブランド力や集客ノウハウで大手企業に劣るため、品質の高さを「ウリ」にするからです。
上記の理由から、大手業者に安易に飛びつかず、
・自社施工をしている
・施工実績が豊富
これら3点を満たしている業者に頼むことをおススメします。
③:金属屋根にリフォームする場合、屋根専門業者に相談する
金属屋根の施工において、業者選びは特に重要です。なぜなら、板金工事業者の数が少ないということもあり、技術が不十分な塗装職人やリフォーム業者が現場では金属屋根の施工を行っているともいわれているためです。
金属屋根の代表であるガルバリウム鋼板のリフォームで、適切な施工ができておらず、後々後悔したという声も実際、当社ヌリカエをご利用のお客様からもいただいております。
ではどうすれば、本職の屋根専門職人を見分けられるのでしょうか?
以下に、チェックリストを記載しましたので、ぜひ実際に業者に直接聞いてみたり、業者HPをご見るなどして、活用してみてください。業者に直接聞きにくいという場合は、当社ヌリカエの無料相談窓口でもチェックリストを満たす業者を探すことが可能なため、ヌリカエへご連絡ください。
💬屋根材の正しい選び方がわからない…
コラム:近年の屋根トレンド | 躍進しているのはあの屋根材
これから屋根のリフォームをお考えであれば、現在の屋根の市場トレンドは検討する際の参考になるでしょう。
35年固定金利の住宅ローンを提供する、住宅金融支援機構は4年に一度「フラット35住宅仕様実態調査」で屋根材のシェアを公表しています。
以下のグラフをみて分かる通り、日本の屋根は「粘土瓦・スレート屋根」から「金属屋根」に急変しています。
金属屋根がシェアを伸ばしている背景には、地震による瓦屋根の崩壊・寿命を迎えたスレート屋根の上から金属屋根を重ねるリフォームが増えてきていることにあると考えられます。
スレート屋根の寿命は20年~30年が一般的なため、1990年代にシェアNo1だったスレート屋根からの入れ替え需要が2010年~20年ごろに発生します。また、2016年熊本大地震、2018年の広島の大豪雨など、相次ぐ自然災害。こうした状況を追い風に、近年金属屋根が屋根材のシェアを伸ばしつつあります。
一方、スレート屋根もシェアを維持するためにラインナップの多角化を進めています。
スレート屋根市場において9割以上のシェアを占めるケイミュー社は遮熱機能を強化した「コロニアルグラッサ」デザイン性を高めた「グランネクスト」など新商品を投入しています。
金属屋根・スレート屋根、主要な屋根材は近年メーカー努力により、高性能・多機能の製品が増えつつあります。
本記事の最後には、メーカーの一覧を纏めた「【付録】主要メーカー・商品」をつけました。
気になる屋根材があった方は、メーカーのホームページでカタログを見てはいかがでしょうか。
【付録】主要メーカー・商品
屋根材 | メーカー | 製品 |
---|---|---|
スレート屋根 | ケイミュー | カラーベスト |
大和スレート | ファイバーコルゲート | |
ガルバリウム鋼板(金属屋根) | アイジー工業 | スーパーガルテクト |
ニチハ | 横暖ルーフαs | |
福泉工業 | efルーフ(エフルーフ) | |
ジンガリウム鋼板(金属屋根) | ディートレーディング | ディプロマット |
伊藤忠建材 | スカイメタルルーフ | |
リクシル | T・ルーフ | |
陶器瓦(日本瓦) | 近畿セラミックス | スーパーセラブライト |
栄四郎瓦 | カパラス | |
東洋瓦 | Earthシリーズ | |
アスファルトシングル | 田島ルーフィング | SHINGLE |
ニチハ | アルマ | |
丸鹿セラミックス | シングルラインマスター |
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メトロタイル社:メトロタイルの屋根がストロングな3つの理由
▼書籍
最もくわしい屋根・小部屋の図鑑 株式会社エクスナレッジ
▼専門家(ヒアリング)
株式会社POD 代表 長谷川佳広 氏