外壁塗装の耐用年数は、一般的に10年~20年です。しかし、耐用年数は使用している塗料などで変わってくるため、一概には言えません。
また、外壁塗装にかかる費用の経費処理や減価償却年数は、国税庁が定める法定耐用年数を確認する必要があります。
そこで本記事では、一般に言われる外壁塗装の耐用年数や、国税庁が示す法定耐用年数、経費処理する際の勘定項目から、塗料・外壁材ごとの耐用年数などについて詳しく解説します。
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監修者:外装劣化診断士 小林 成光
600件以上の現地調査を実施する過程で得た専門性を生かし、日本発のネット見積もりシステムでビジネスモデル特許を取得。ヌリカエにて、外装工事の専門家として、顧客・加盟企業のサポート・コラムの監修に従事。
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国税庁が示す外壁塗装の耐用年数
建物の構造や用途ごとに法定耐用年数が異なります。下記は、国税庁が示す建物自体の耐用年数をまとめたものです。
構造・用途 | 細目 | 耐用年数 |
---|---|---|
木造・合成樹脂造のもの | 事務所用のもの | 24 |
店舗・住宅用のもの | 22 | |
飲食店用のもの | 20 | |
旅館・ホテル用・病院用・車庫用のもの | 20 | |
工場用・倉庫用のもの(一般用) | 15 | |
木骨モルタル造のもの | 事務所用のもの | 22 |
店舗・住宅用のもの | 20 | |
飲食店用のもの | 20 | |
旅館・ホテル用・病院用・車庫用のもの | 20 | |
工場用・倉庫用のもの(一般用) | 15 | |
鉄骨鉄筋コンクリート造のもの | 事務所用のもの | 50 |
店舗用のもの | 47 | |
飲食店用のもの | 41 | |
旅館・ホテル用のもの | 41 | |
店舗・病院用のもの | 39 | |
車庫用のもの | 38 | |
工場用・倉庫用のもの(一般用) | 38 | |
れんが造・石造・ブロック造のもの | 事務所用のもの | 41 |
店舗・住宅用・飲食店用のもの | 38 | |
旅館・ホテル用・病院用のもの | 38 | |
店舗・病院用のもの | 36 | |
車庫用のもの | 34 | |
工場用・倉庫用のもの(一般用) | 34 |
木造の事務所の外壁を塗装した場合は24年、鉄骨鉄筋コンクリート造で飲食店の外壁塗装をした場合は41年が減価償却できる年数となります。
なお、日ほどでご紹介する塗料ごとの耐用年数は、塗料メーカーが定めた次の塗り替えまでの目安であって、減価償却できる年数とは全く関係ありませんので混同しないようにしましょう。耐用年数の長い塗料で塗ったからといって、減価償却期間が長くなるわけではありません。
一般的な外壁塗装の耐用年数は10年~20年
メンテナンスが必要ないという外壁はなく、いつかは必ず外壁塗装が必要になります。
外壁塗装のおおよその耐用年数は10年です。耐用年数が過ぎた外壁では、外観が損なわれるだけではなく、雨漏りの危険性が非常に高まってしまいます。雨漏りによって建物内部にまで浸水が及ぶと、外壁材自体にダメージがかかり、高額な修繕費用がかかってしまうでしょう。
このため、耐用年数を迎える頃に外壁をメンテナンスすることが大切なのです。
また、上記の耐用年数は、法定耐用年数ではない点に注意してください。
塗料別の耐用年数を比較
塗料ごとに素材や成分の配合量が異なるため、塗料の種類によって耐用年数が異なります。下記は、塗料ごとの耐用年数の一覧です。
※塗料名をタップすることで、解説記事をご覧いただけます。耐用年数別にコストを比較
利用する塗料の耐用年数別に、1回の塗り替えにかかるコストと約30年間の長期的なコストで比較していきます。
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塗料は種類によって耐用年数が異なるため、長期的に見ると塗り替えの回数も変わり、かかるコストも変わってきます 。
以下の表は、戸建て30坪で足場代を含む想定で塗料別にまとめてみましたので、参考にしてみてください。
塗料名 | 耐用年数 | 1回あたりのコスト目安 | 30年間でかかるコスト目安 |
---|---|---|---|
アクリル塗料 | 5年~7年 | 約71万円 ※1,500円/㎡想定 | 約284万円 ※4回塗り替え想定 |
ウレタン塗料 | 8年~10年 | 約77万円 ※2,000円/㎡想定 | 約231万円 ※3回塗り替え想定 |
シリコン塗料 | 7年~15年 | 約84万円 ※2,500円/㎡想定 | 約168万円 ※2回塗り替え想定 |
ラジカル塗料 | 12年~15年 | 約90万円 ※3,000円/㎡想定 | 約180万円 ※2回塗り替え想定 |
フッ素塗料 | 15年~20年 | 約103万円 ※4,000円/㎡想定 | 約103万円 ※1回塗り替え想定 |
無機塗料 | 20年以上~ | 約122万円 ※5,500円/㎡想定 | 約122万円 ※1回塗り替え想定 |
「塗り替えの想定」は耐用年数に応じて30年間で発生する「塗り替え回数の目安」で考えています。たとえばアクリル塗料であれば、耐用年数は約7年なので30年間で4回の塗り替えが発生する可能性が高くなるという考え方です。
1回あたりのコスト目安はアクリル塗料やウレタン塗料が少ないですが、30年間の長期でみると塗り替えが複数回発生するため、コストは高くなります。
一方でシリコン塗料やフッ素塗料などは、1回あたりのコストはかかってきますが、耐用年数が長いため長期的なコストパフォーマンスは優れています。
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現在のコストを抑えたい場合はシリコン塗料を基本として考え、より長期的なコストパフォーマンスを考えたい場合はフッ素塗料などを考えるとよいでしょう。
外壁材ごとの耐用年数を比較
外壁材ごとに素材が異なることから、耐用年数にも大きな差が出てきます。
下記は、外壁材ごとの耐用年数をまとめた表です。ご自宅の外壁材とその耐用年数を確認してみましょう。
外壁材 | 耐用年数 |
---|---|
モルタル外壁 | 30年 |
窯業系サイディング | 40年 |
金属サイディング | 40年 |
ALCボード | 60年 |
コンクリート | 60年~100年 |
耐用年数が近い場合は、塗装や補修などのメンテナンスが必要なタイミングです。劣化が酷くなる前にメンテナンスをしておきましょう。
モルタル外壁
モルタル外壁とは、セメント(2)・水(1)・砂(6)の割合で混ぜられて作られた外壁材です。
耐用年数は30年で、つなぎ目のない見た目で高い防火性能が特徴です。90年代以前の日本では最も高いシェアを誇る外壁材として知られていました。モルタル外壁の詳しい解説については、以下の記事をあわせて確認してみてください。
窯業系サイディング
窯業系サイディングとは、セメントと繊維質を混ぜて板状に成形し、窯で焼いて作る外壁材のことです。
現在、日本でトップシェアを誇っている外壁材となっており、約8割の戸建て住宅で採用されています。
デザイン性が豊富だったり、初期コストを抑えて設置できるなどのメリットがあります。
窯業系サイディングの詳しい解説については、以下の記事をあわせて確認してみてください。
金属サイディング
金属サイディングとは、金属製の外壁パネル材のことです。
非常に軽量なのが特徴で、建物への負荷を軽減できるため、耐震性に優れています。
耐用年数は約40年とされており、凍害にも強い外壁材です。金属サイディングの詳しい解説については、以下の記事をあわせて確認してみてください。
ALCボード
ALCポートとは、珪石・セメント・石灰・発泡剤などから作られる「軽量気泡コンクリート」のことです。
金属サイディングと同様に軽い素材であることが特徴で、東京スカイツリーや都庁などにも利用されています。
耐久性、耐震性、耐火性、断熱性などさまざまななメリットがある、質の高い外壁材です。
ALCポートの詳しい解説については、以下の記事をあわせて確認してみてください。
外壁塗装は減価償却できる?
経費処理において、外壁塗装の費用を減価償却しようと考えてる方は多いでしょう。
もちろん外壁塗装にかかる費用は経費となりますが、減価償却できるかは勘定項目によって異なるため注意してください。
外壁塗装にかかる費用の勘定項目は「修繕費」か「資本的支出」として処理しますが、修繕費だと減価償却できません。
それでは、各勘定項目について詳しく解説していきます。
修繕費だと減価償却できない
外壁塗装にかかる費用の勘定項目を「修繕費」とした場合、減価償却はできずその年の経費として一括計上します。
比較的小規模な修繕や定期的なメンテナンスにかかる費用は修繕費として分類されることが多いです。
修繕費として計上するケースは、主に下記の通りになります。
- 外壁の軽微な劣化の修理
- 維持管理のためのメンテナンス
- かかった費用が20万円未満
続いて、資本的支出とそれに分類されるケースについて詳しく解説します。
資本的支出だと減価償却できる
外壁塗装にかかる費用の勘定項目を「資本的支出」とした場合、法定耐用年数をもとに減価償却できます。
資本的支出は、性能や資産価値を上げるためにかかった費用の勘定項目です。「付加価値が付くかどうか」が、修繕費か資本的支出かを考えるためのポイントになります。
資本的支出として計上するケースは、主に下記の通りです。
- 高耐久の塗料で塗装する場合
- 遮熱塗料など特殊な性能をもつ塗料で塗装する場合
- デザインを変えるための塗装
修繕費になるか資本支出になるかについては、明確に決められていません。不安な場合は税理士などに相談されることをおすすめします。
外壁塗装を費用計上する際の勘定科目
外壁塗装にかかった費用は収益敵支出なのか、資本的支出なのかによって勘定科目が変わってきます。
建物・付属設備:資本的支出
減価償却費:減価償却
修繕費:収益的支出
外壁塗装が収益的支出に該当するのであれば、「修繕費」が勘定科目となります。
収益的支出とは、建物などの固定資産の修理や改修に必要な費用のうち、通常の維持管理や原状回復であると認められる部分を指します。
そして修繕費とは建物や車、業務用のPCなどの修理を目的にした支出に利用する勘定科目です。
たとえば外壁の日々を修復させ、現状に戻すために使ったお金などは修繕費として処理します。仕訳例としては以下のようなものです。
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
修繕費 | 700,000円 | 当座預金 | 700,000円 |
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あくまでも例題になるため、最終的には税理士に必ず確認するようにしてください。
建物・付属設備:資本的支出
外壁塗装が資本的支出に該当するのであれば、「建物」「付属設備」などの勘定科目を用いて処理します。
資本的支出とは、固定資産の修理や改良のために支出した費用であり、対象の固定資産の耐久性を高め、価値を向上させた支出です。
たとえば建物の外観のデザインを一新するなどのケースが該当します。
事業のために所有している建物であれば「建物」として処理し、建物に付随している設備に外壁塗装を行った場合は「付属設備」として処理します。
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
建物 | 1,800,000円 | 当座預金 | 1,800,000円 |
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建物の付加価値を与えたかどうか が資本的支出の処理の基準になります。
減価償却費:減価償却
外壁塗装を資本的支出として「建物」や「付属設備」として計上した場合は、毎期末に「減価償却費」として減価償却の処理を行っていきます。
減価償却とは「10万円以上かつ1年以上利用する資産)の費用を、一度で計上せず、対応年数に応じて一定額や一定の割合を計上していく処理方法のことです。
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2007年4月1日以降に取得した建物は、定額法に沿った定額法償却率を用いて計算を行います。
まとめ
外壁塗装の耐用年数は、一般的におよそ10年になります。耐用年数は使用した塗料によって異なり、代表的な塗料では、ウレタン塗料は8~10年、シリコン塗料は7~15年、ラジカル塗料は12~15年、フッ素塗料は15~20年です。
メンテナンスをする際には外壁塗料の耐用年数ばかりに注目してしまいがちですが、優良業者を探すことが重要なポイントになることを忘れてはいけません。
外壁塗装はメンテナンス時期を見誤ると、建物ごと建て直すことが発生するかもしれません。
修繕費用を抑えるためにも、外壁塗料の耐用年数を把握しておきましょう。
