屋根の張り替えとは、今の屋根材を撤去して新しい屋根材に張り替えるという工事です。雨漏りなど屋根に起因する様々な問題を解決できる反面、費用がかかる、工期が長いといったデメリットもあります。
そこで本記事では屋根の張り替えの相場や内訳、張り替える屋根材ごとの比較などについて詳しく解説していきます。
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監修者:外装劣化診断士 小林 成光
600件以上の現地調査を実施する過程で得た専門性を生かし、日本発のネット見積もりシステムでビジネスモデル特許を取得。ヌリカエにて、外装工事の専門家として、顧客・加盟企業のサポート・コラムの監修に従事。
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【屋根材別】屋根張り替え費用の比較
屋根張り替えの費用相場は、平均的な30坪の自宅の場合で、140万円~200万円となります。費用相場に開きがある理由は、使用する屋根材ごとに単価が異なるからです。一般的な戸建てより屋根面積の小さい家でも100万円以上かかるでしょう。
また、屋根の張り替えは「何の屋根材から何の屋根材に変えるか」で費用が大きく変わります。
下記は、張り替え前後の屋根材の組み合わせとその費用についてまとめた対照表です。
元の屋根材↓ / 新しい屋根材→ | スレート | ガルバリウム | 瓦 |
---|---|---|---|
スレート | 100万円~150万円 | 150万円~200万円 | – |
ガルバリウム | 100万円~150万円 | 150万円~200万円 | – |
瓦 | 120万円~160万円 | 150万円~200万円 | 200万円~250万円 |
データ出典:「ヌリカエ」が行った2025年5月のデスクリサーチより
なお、スレート・ガルバリウムから瓦への張り替えは推奨されないため、ここではご紹介しません。
スレートとガルバリウムはどちらも軽量な屋根材のため、重量のある瓦に張り替えると屋根に負担がかかり耐震性が弱まる可能性が高いためです。
スレート屋根を張り替えるときの費用
- スレート→スレート:100万円~150万円
- スレート→ガルバリウム:150万円~200万円
スレート屋根の張り替え費用は、100万円~200万円が相場です。ガルバリウムの方が屋根材自体の価格がスレートよりも高いため、新しいスレートに変える場合よりも高めになるでしょう。
ただし、スレート屋根にはアスベストが含まれているものもあり、その場合はアスベスト処分費用が別途にかかるため注意してください。
ガルバリウムを張り替えるときの費用
- ガルバリウム→スレート:100万円~150万円
- ガルバリウム→ガルバリウム:150万円~200万円
ガルバリウムの張り替え費用は、スレート屋根と同じく100万円~200万円が相場です。
ガルバリウムには各屋根材メーカーが独自で開発しているものがあります。例えばアイジー工業の「スーパーガルテクト」など、耐久性や断熱性能に優れているものに張り替えた場合も費用が高くなりやすいです。
軽量なガルバリウムは、張り替えだけでなくカバー工法でも多く採用される屋根材となります。
瓦屋根を張り替えるときの費用
- 瓦→スレート:120万円~160万円
- 瓦→ガルバリウム:150万円~200万円
- 瓦→瓦:200万円~250万円
瓦屋根の張り替え費用は、120万円~250万円が相場です。瓦から瓦の張り替えでは、ある程度の重量がある瓦を一枚一枚を撤去し葺いていくため、他のケースよりも施工費用が高くなる傾向にあります。
ただし、瓦屋根は瓦自体の耐久性が高いため、他の屋根材ほど頻繁にメンテナンスする必要がありません。
次章では、スレート、ガルバリウム、瓦ごとの特徴比較をしていますので、張り替える際の屋根材決めの参考にしていただければと思います。
張り替えで使う屋根材の特徴比較
本章では、張り替えで採用されることの多い「スレート」「ガルバリウム」「瓦」それぞれの特徴やメリットデメリットなどを比較しています。
スレート | ガルバリウム | 瓦 | |
---|---|---|---|
特徴 | 国内の戸建て住宅の1/3のシェアを占めている屋根材。各メーカーから様々なデザインが出ている。 | 近年急速に普及している屋根材。軽量で汚れにくいという特徴をもつ。 | 国内では古くから使われている屋根材。重量があり耐久性に優れている。 |
メリット | ・施工費用が安め ・耐震性が高い ・ラインナップが豊富 |
・耐震性が高い ・耐用年数が長い ・汚れがつきにくい |
・耐用年数がトップクラスに長い ・独自の雰囲気を出せる |
デメリット | ・ひび割れのリスクが高い ・汚れがつきやすい |
“・スレートよりも施工費用が高くなる ・太陽光の熱を吸収しやすい |
・施工費用が高い ・耐震性が弱まる可能性がある |
耐用年数 | 25年~30年 | 30年~40年 | 50年以上 |
軽さ | ◯ | ◎ | × |
耐風性 | ◯ | ◯ | ◎ |
遮音性 | ◯ | △~◯ | ◎ |
断熱性 | ◯ | △~◯ | ◎ |
費用相場 | 100万円~200万円 | 100万円~200万円 | 200万円~250万円 |
各屋根材について詳しく解説します。
スレートの特徴
スレート屋根(コロニアルなど)は、もっとも材工費が安価なことが特徴です。
色やデザインが豊富にあり、黒や、茶などの定番色から、グリーン、レッドまで幅広い色の製品が販売されています。しかし、地震への強さに関わる軽量さでは金属屋根に一歩譲り、耐用年数も10年ほど短くなります。
また、スレート屋根は他の屋根材と比較して、ひび割れのリスクが高く、異常がなくても定期的に点検・補修を受ける必要があります。
メリット
スレート屋根は、他の屋根材に比べて施工費用が安めで、コストを抑えたい方に人気があります。
さらに軽量な素材であるため、ガルバリウムはほどではありませんが住宅全体の耐震性を高めやすい点もメリットです。デザインやカラーのバリエーションが豊富で、住宅の外観に合わせた選択肢が多いのも魅力です。
デメリット
スレートは比較的割れやすい素材で、強風や落下物によってひび割れが生じやすい点がデメリットです。
また、表面に凹凸があり汚れやコケが付きやすく、定期的なメンテナンスや洗浄が必要になることもあります。そのため、長期的な耐久性は他の屋根材に劣る傾向があるでしょう。
ガルバリウムの特徴
ガルバリウムは近年急速に普及してる屋根材です。軽量でありながらメンテナンスがしやすいため、スレートとシェアを二分しています。
金属ならではの独特の質感やデザインに惹かれて採用する方も多いです。しかし、熱を伝えやすいため遮熱塗料や断熱などの使用も検討するとよいでしょう。
メリット
ガルバリウムは軽量で耐震性が高く、金属屋根としては錆びにくい構造が特徴です。
耐用年数も長くメンテナンス頻度を抑えられるため、長期的なコストパフォーマンスが高い屋根材となります。また、表面が滑らかで汚れがつきにくく、美観を保ちやすい点も魅力です。
デメリット
スレートに比べて施工費用はやや高めです。また金属素材であるため、夏場には太陽光を吸収して屋根表面が高温になりやすく、断熱対策が必要になる場合があります。
雨音が響きやすい点も、気になる方にはデメリットとなるでしょう。ただし、通常は室内とガルバリウムとの間に断熱材や下地があるため、そこまで気になるようなケースは少ないといえます。
瓦の特徴
瓦は、古くから国内にで使用されている歴史の長い屋根材です。、耐用年数は50年以上と、屋根材のなかで最も耐久性のあるものの一つとなります。
瓦にはいくつか種類があり、一般的に瓦と言われているのは「陶器瓦」です。近年では、より軽量かつデザイン性の高い瓦が各屋根材メーカーから出ています。
メリット
瓦屋根は重厚感のある美しい外観が魅力で、日本家屋ならではの落ち着いた雰囲気を演出できます。
耐用年数が非常に長く、正しく施工すれば50年以上持つことも。メンテナンス回数が少なく済むため、長期的に見るとコスト面で有利な場合もあります。
デメリット
瓦は重量があるため、新しく瓦に張り替えると建物全体の耐震性が弱まる可能性があるため注意してください。元が瓦屋根ではない場合、新しく瓦に張り替えることはおすすめしません。
また、施工費用が高くなりがちで、他の屋根材と比べて初期費用がかさむ点もデメリットです。
屋根張り替え費用の内訳
屋根の張り替えには、足場代や養生費など様々な内訳があります。
以下に、屋根の張り替えで必要になる費用の内訳をまとめました。
内訳項目 | 工事内容 | 費用(単価)相場 |
---|---|---|
足場費用 | 高所作業用の仮設足場設置 | 700円~1,000円/㎡ |
養生費用 | 飛散防止用の養生シートがけ | 200円~300円/㎡ |
既存屋根の撤去費用 | 元屋根材の撤去 | 1,200円~2,000円/㎡ |
下地(野地板)の補修費用 | 下地木材の補修 | 2,000円~3,000円/㎡ |
防水シートの敷設費用 | 下地の上に防水シートがけ | 600円~1,000円/㎡ |
新しい屋根材の材工費 | 防水シートのうえに新しい屋根材を設置 | 【和瓦】9,000円~1万5,000円/㎡ |
【スレート】4,500円~6,500円/㎡ | ||
【ガルバリウム鋼板】6,000円~9,000円/㎡ | ||
棟の設置費 | 屋根どうしが交差する部分 | 2,000円~3,000円/m |
軒先、ケラバの設置費 | 屋根の壁からはみでる部分 | 1,500円~2,000円/m |
アスベストの撤去費(※) | 既存屋根にアスベスト含まれる場合のみ | 10万円~30万円/戸 |
費用の内訳として大きな割合を占めているのは、足場代です。30坪の戸建てであればが15万円~20万円が相場となります。足場は作業に欠かせないものなので、削ることはできません。
また、今ある屋根がアスベストを含んでいる場合は、法令により特別な撤去方法が必要なため、別途10万円~30万円の費用がかかります。この出費を回避するために、アスベストを含む屋根は、張り替えではなくカバー工法が採られることもあります。
屋根の張り替え費用を抑える5つの方法
屋根の張り替え費用は100万円以上の費用がかかるため、できるだけ安く抑えたいところです。
そこで本章では、張り替え費用を抑える方法を5つご紹介します。
助成金を使う
自治体によっては、屋根のリフォームに対して助成金制度を設けているところがあります。特に、耐震改修や省エネ対策、防災性の向上を目的とした工事は対象になりやすいです。
制度の有無や条件は地域によって異なるため、工事を始める前に市区町村の窓口やホームページで確認しましょう。
火災保険を使う
台風や強風、大雪などの自然災害による屋根の損傷であれば、火災保険の補償対象になる可能性があります。
自己負担を大きく減らせるため、該当する場合は保険会社に連絡し、申請の手続きを進めるとよいでしょう。申請には被害写真や見積書が必要なので、業者に協力してもらうことも大切です。
地元の業者に依頼する
地元密着型のリフォーム業者は、大手に比べて広告費や中間マージンがかからない分、価格が抑えられることがあります。
また、土地の気候や建物の傾向を把握しているため、適切な施工が期待できます。アフターサポートが迅速なのも、近隣業者の強みです。
相見積もりを取る
複数の業者から見積もりを取ることで、費用相場が明確になります。一社だけの見積もりでは高いか安いか判断が難しく、不要な工事項目が含まれている可能性もあります。
3社以上から比較することで、適正価格での施工ができ、納得のいく業者選びにもつながるでしょう。
屋根の張り替えについてのまとめ
屋根の張り替えは、今ある屋根をその下地から新しくできる工事です。雨漏りなどあらゆる症状やリスクを解消でき、家自体の耐久性もアップします。
しかし、屋根の修理方法のなかで最も費用がかかることに加え、工期も1か月前後と長いです。また、今の屋根にアスベストが含まれている場合は相場よりも工事費用が高くなります。
ご自宅の屋根の張り替えを検討されている方は、複数の業者を比較検討し、納得のいく状態で工事に踏み切れるようにしましょう。