葺き替えは、屋根のリフォームのなかでも一番大がかりなものとなり、費用も大きいものです。
本記事では、屋根のリフォームを検討中の方に向けて、葺き替え工事について知るべき知識をまとめました。
カバー工法との違いも簡単にまとめているので、ぜひ参考にしてみてください。
- ・屋根の葺き替え工事が必要なのは「屋根瓦全体に傷み・劣化がある場合」
- ・スレート屋根に葺き替える場合、費用は約140~180万円
- ・金属屋根(ガルバリウム鋼板)に葺き替える場合、費用は約160~200万円
屋根の葺き替えとは?カバー工法とどう違う?
屋根の葺き替えとは、今ある屋根材をすべて撤去して、その上から新しい屋根材を葺き直す工事のことです。
一度すべての屋根材を取り除くので、屋根材だけでなく屋根材の下のルーフィングシートなども新しくすることができます。
屋根材・ルーフィングシートの両方を変えることで、防水性が新築時と同等まで戻るため、葺き替えは「最も防水性に優れた屋根リフォーム」といえるでしょう。
ただし、ほかの屋根リフォームと比べると工事費用が高くなりがちで、工期も長いです。
一般的な30坪の戸建て住宅の場合、屋根の葺き替えの工事費用は120~200万円ほど、工期は7日~15日ほどです。
なお、葺き替えと似た屋根リフォームに「カバー工法(重ね葺き)」があります。
カバー工法(重ね葺き)の場合は、既存の屋根材の上から新しい屋根材を被せます。
そのため、既存の屋根材の撤去費用などがかからず、葺き替えよりも安く工事を行うことができます。
葺き替える屋根材の特徴と選び方
ここからは葺き替えの際の屋根材の特徴とその選び方について解説していきます。
ここでは「スレート屋根」「ガルバリウム鋼板」「アスファルトシングル」「日本瓦(陶器瓦)」の4種類を取り上げて解説します。
「屋根材」について詳しく知りたい方は、下記の記事もご覧ください。
「屋根材10種を徹底解説!特徴・代表商品・耐用年数とおすすめランキング」
スレート屋根(コロニアル・カラーベスト)の特徴
スレート屋根は現在日本での新築住宅で一番多く使用されている屋根材です。
スレート屋根のメリットは色やデザインが豊富なので選択肢が多い、且つ安いことです。
費用相場は4,500~6,000円/㎡で、耐用年数は25年~30年あります。
選択肢が多いことに加え、最もポピュラーな屋根材なので、施工できる業者が多いことも特徴です。
デメリットは強度や耐久性が低いことです。
5~10年ほどで劣化し、場合によっては割れてしまう。ということもあります。
また気温差が大きいエリアだと、屋根材が反り返りやすくなるので劣化を早めてしまうことがあります。
そのため10年に一度は再塗装などメンテナンスが必要になるため、屋根材自体は安いですが、手入れに手間とお金がかかる屋根材です。
「スレート屋根」について詳しく知りたい方は、下記の記事もご覧ください。
「スレート屋根とは? 特徴・修理方法・メンテナンス周期・費用を全解説」
ガルバリウム鋼板(屋根)の特徴
ガルバリウム鋼板はその価格面・性能面から、とても人気な金属製の屋根材です。
ガルバリウム鋼板の屋根にするメリットは、耐用年数が30年~40年ととても長いことです。
また防水性・防火性も高く、素材が軽量なため耐震性も高いハイスペックな屋根材です。
これだけ優れているにも関わらず費用相場も6,000円/㎡と他の屋根材と比較してもそれほど高くありません。
ガルバリウム鋼板の屋根にするデメリットとしては、断熱性・遮音性が低い点です。
ただ、どちらも断熱材・遮音材を使用することで軽減が可能です。
「ガルバリウム鋼板の屋根」について詳しく知りたい方は、下記の記事もご覧ください。
「ガルバリウム屋根のおすすめ商品・メーカー7選!メリット・デメリットや費用も解説」
アスファルトシングルの特徴

アスファルトシングルは2007年から日本で使われ始めた新しい屋根材で、洋風な外観になるおしゃれな屋根材です。
アスファルトシングルのメリットは、防水性・防音性が高いことです。
アスファルトシングルは継ぎ目がなく、葺き替え時に釘が不要なため、水が浸入しにくいことが特徴です。
耐用年数も20~30年あり、費用相場は3,500~6,500円/㎡です。
アスファルトシングルのデメリットは、強風に弱いことです。
釘を使用せず接着剤で張り付けるシート状の素材なので、台風などの強い風が吹き付けると剥がれてしまうことがあります。
一部がめくれているとそこから徐々に剥がれてしまう可能性があるので、5年ごとを目安に点検を行いましょう。
「アスファルトシングル」について詳しく知りたい方は、下記の記事もご覧ください。
「アスファルトシングルとはどんな屋根?特徴・費用・メンテナンス方法を解説」
日本瓦・陶器瓦屋根の特徴
日本瓦(陶器瓦)は最近はあまり見なくなりましたが、昔ながらの屋根材です。
日本瓦のメリットは、50年以上と言われる長い耐用年数です。
条件によっては100年以上もつことがあるくらい長持ちする屋根材です。
またリフォーム・リノベーションなどの際に再利用可能という点もメリットとなります。
日本瓦は再塗装をする必要が無く、他の屋根材と比較するとメンテナンスにかかる費用が少ないです。
ただ、大きなメリットとして屋根材自体が高額なことがあげられます。
費用相場は9,000~16,000円/㎡とかなり高額です。
またかなり重たい素材なので家の耐震性が下がってしまうことと、お家の設計によっては日本瓦が使えない。という場合も多くあります。
葺き替え時の屋根材の選び方
ここからは葺き替え時にどういった基準で屋根材を選ぶべきかについて解説していきます。
基準は大きく3つ「耐久性・耐用年数」「価格」「見た目・デザイン」となります。
耐久性・耐用年数を基準にして屋根材を選ぶ場合
耐久性だけを重視して考えるのであれば、日本瓦(陶器瓦)を選択しましょう。
先述の通り日本瓦は50年以上の耐用年数があるため、今の家に長く住み続ける想定であれば最適でしょう。
しかし今の家の設計次第では日本瓦が適さない場合があります。
もし業者に日本瓦は使用できない。と言われたら、無難な耐用年数が30年はあるガルバリウム鋼板を選択することをおススメします。
価格を基準にして屋根材を選ぶ場合
「リフォームにそこまでお金をかけられない」という場合や、「劣化を直したいだけだから、とにかく安い屋根材にしたい」という場合は、アスファルトシングルがオススメです。
今回紹介した屋根材の中では比較的安く施工ができます。
しかし先ほど解説したように、耐久性が低いことに注意しましょう。
海が近い場所や台風が良く発生する地域だと、本来の耐用年数に届かずに再メンテナンスが必要になる可能性があります。
もしもう少し費用をかけることができるのであれば、スレート屋根を選択した方がよいでしょう。
見た目・デザインを基準にして屋根材を選ぶ場合
屋根に使いたい色がある、ただ葺き替えるだけではなくデザイン性を重視したい。という場合はスレート屋根を選択しましょう。
スレート屋根は黒や茶などの色だけではなく、青や緑、黄色など選択できるが色多岐にわたります。
また様々な形状や質感のスレートがあり、自分の好きなデザインにすることも可能です。
屋根の葺き替えのメリット・デメリット
つづいて、屋根を葺き替えることで得られるメリット・デメリットについてご紹介します。
屋根の葺き替え工事のメリット
まず、屋根葺き替えのメリットから見ていきます。屋根葺き替えには、主に以下の3つのようなメリットがあります。
1.ルーフィングシートの交換ができる
先述のとおり、屋根の葺き替え工事では既存の屋根材をすべて撤去するので、屋根材の下のルーフィングシートを交換することができます。
ルーフィングシートが傷んでいると、屋根材が新品でも雨漏りをしてしまいます。
そのため、ルーフィングシートのメンテナンスができるということは、防水性の観点では大きなメリットとなります。
2.耐震性を向上できる
もともとが重量のある瓦などの屋根材だった場合、スレートやガルバリウムなどの軽い屋根材に葺き替えることで耐震性を向上することができます。
重い屋根材は地震に弱く、特に旧来の工法(瓦を下地に止めつけない施工)で葺かれた瓦は地震の際に脱落やズレが起こりやすいです。
地震に強い家にするのであれば、軽い屋根材に葺き替えるのが無難です。
参考(外部リンク):屋根瓦を落とさない・飛ばさないための7つのQ&A
3.屋根材の寿命が伸びる
葺き替えの場合は屋根材を一新するため、屋根材の寿命が伸びます。
現在の家に長く居住した方にとってはメリットと言えるでしょう。
屋根の葺き替え工事のデメリット
一方、屋根の葺き替えには以下の2つのようなデメリットもあります。
1.工事費用が高い
屋根の葺き替えは、屋根のカバー工法や屋根の塗装と比較すると圧倒的に工事費用が高いです。
30坪の家の屋根にカバー工法を施工する場合、工事費用は100万円~120万円が相場です。
しかし、葺き替え工事の場合は120万円~200万円の費用がかかります。
2.工期が長くなる
屋根の葺き替え工事は、既存の屋根材を撤去する工程、下地を補修する工程などが含まれるため、工期が長くなります。
2週間ほどは生活に影響が出るので、その点に留意して施工時期を考える必要があります。
屋根の葺き替えの費用相場
屋根の葺き替えの費用相場は、一般的な30坪住宅の場合で120~200万円です。
費用の主な内訳は、新しい屋根材の購入費と設置費が45~90万円、下地の補修が20~30万円、既存の屋根の撤去費用が12~20万円です。
葺き替えは、屋根の工事方法のなかでも最も費用が高額な作業になります。
ここからは、「屋根葺き替えの費用内訳」「屋根葺き替えの単価」の相場を解説します。
屋根の葺き替え費用の内訳
工事内容・費用項目 | 費用(単価)相場 |
---|---|
足場費用 | 700円~1,000円/㎡ |
養生費用 | 200~300円/㎡ |
既存屋根の撤去費用 | 1,200円~2,000円/㎡ |
下地(野地板)の補修費用 | 2,000円~3,000円/㎡ |
防水シートの敷設費用 | 600円~1,000円/㎡ |
新しい屋根材の材工費 | 【和瓦】9,000円~1万5,000円/㎡ |
【スレート】4,500円~6,500円/㎡ | |
【ガルバリウム鋼板】6,000円~9,000円/㎡ | |
棟の設置費 | 2,000円~3,000円/m |
軒先、ケラバの設置費 | 1,500円~2,000円/m |
アスベストの撤去設置費(※) | 60万円~200万円/戸 |
この他にも、屋根の形状や既存屋根の種類などによっても単価や合計費用は変化します。
既存屋根がアスベストを含んでいる場合は、法令により特別な撤去方法が必要なため、別途60万円~200万円という高額な費用がかかります(※)。
この出費を回避するために、アスベストを含む屋根ではカバー工法が採られることも多くあります。
参考記事:セメント瓦とは?他の屋根材との見分け方と特徴、メンテナンス方法を解説
ではここからは費用内訳の各項目について解説していきます。
1.足場の敷設、周囲の養生
まずは高所作業用の足場を設置した後、足場とその周辺に飛散防止用の養生シートをかけます。
足場代は平米単価で700円~800円/㎡、養生代は200円/㎡前後が目安です。
足場代を節約しようとして足場の一部を省略すると、安全性や作業性が低下して良い仕事ができません。
葺き替えを、外壁塗装と同時におこなうと、足場代が一度で済むので効率的です。
>> 足場料金の単価・費用相場はいくら?見積もりで損しないコツとは?
2.既存屋根材の撤去・処分
続いて、もとからある屋根材を剥がします。
アスベストが含まれていない場合、作業費は1,200円~2,000円/㎡が目安です。
費用には処分費用も含まれています。
平米あたり3,000円~4,000円/㎡の撤去費用と、別途処分費用として2,000~3,000円/㎡、さらに処分場への運搬費として約30,000円~50,000円がかかります。
3.下地(野地板)の撤去・新設
屋根材を撤去した既存の野地板の上に、下地の合板を重ねて貼ります。野地板自体を新設する場合もあります。
費用は材料と施工費を合わせて、2,000円/㎡前後です。
野地板の補強は省略できる場合もありますが、野地板の経年劣化は屋根瓦より早いので、屋根材を新しくする際に同時に工事しておいた方が安心でしょう。
4.防水シート
下地(野地板)の上に防水シート(ルーフィング)を設置します。
費用は材料と施工費を合わせて、650円/㎡程度です。
葺き替え作業では、下地合板(野地板の補強)を省略する場合でも、防水シートは必ず施工します。
5.新しい屋根材
防水シートの上に新しい屋根材を葺きます。
一般的にはスレートで葺き直すか、より軽量でかつ耐久性の高いガルバリウム鋼板で葺き替えを行います。
費用はスレートの場合4,500円~6,000円/㎡、ガルバリウム鋼板の場合約6,000円/㎡です。
葺き替えでは、元が瓦屋根であった場合以外、瓦材はほぼ使われません。 屋根の重量が7~10倍になるため、住宅が重さに耐えられなくなったり、耐震性が下がってしまうからです。
>>【参考記事】「ガルバリウム鋼板の価格を知りたい!実勢価格と工事費内訳、安くするワザ」
6.棟板金、軒先・ケラバ板金等
葺き替え工事の最後に、棟や軒先、ケラバなどの納まり上、板金の加工が必要になります。
費用は板金の長さで決まり、棟板金が2,000円~3,000円/m、軒先・ケラバ板金が1,500円~2,000円/mです。
葺き替え前 | 葺き替え後 | 税込相場目安 |
---|---|---|
スレート | 金属屋根(ガルバリウム鋼板) | 約1,560,000円 |
石粒吹きガルバリウム鋼板(ジンカリウム鋼板) | 約1,890,000円 | |
金属屋根 | 金属屋根(ガルバリウム鋼板) | 約1,620,000円 |
スレート | 約1,500,000円 | |
石粒吹きガルバリウム鋼板(ジンカリウム鋼板) | 約1,560,000円 | |
和瓦 | スレート | 約1,790,000円 |
金属屋根(ガルバリウム鋼板) | 約1,850,000円 | |
石粒吹きガルバリウム鋼板(ジンカリウム鋼板) | 約2,000,000円 | |
和瓦 | 約2,200,000円 | |
ガルバリウム鋼板 | 和瓦 | ほぼ行われない(強度不足のため) |
スレート | 和瓦 |
本章で解説した以外の組み合わせでは、葺き替え工事の価格は上記が目安になります。価格差は、新しい屋根材の材工費によって生まれます。影響は少ないですが、既存屋根の撤去費用も屋根材により変わる場合があります。
屋根の葺き替えで補助金制度を使う方法
屋根葺き替え工事で費用を安くする1つの方法として、ただ新しい屋根板に変えるだけでなく、リフォームする方法があげられます。
リフォームの方法には、下記2つの種類が存在します。それぞれのリフォームの条件や補助金額を解説していきます。
- 省エネリフォーム
- 耐震リフォーム
方法①:省エネリフォーム
省エネリフォームとは、環境に優しい家へと改修することを指します。省エネリフォームで補助金を受けるには、下記の条件を満たす必要があります。
- ・ソーラーパネルの設置
- ・断熱性や遮熱性の高い屋根に改修
- ・LED照明の設置
- ・屋根材に含まれるアスベストの除去
断熱・遮熱性の高い屋根に改修するには、断熱・遮熱シートを屋根に取り付ける、ガルバニウム鋼板、セメント瓦、粘土瓦といった遮熱性の高い屋根材に葺き替える、
遮熱塗装を行うと良いでしょう。
また屋根材に含まれるアスベストの除去を行うには、アスベストを含むスレートやセメント以外の瓦に葺き替えると良いでしょう。
省エネリフォームを行うと、最大50万円の補助金が支給されます。補助金額は、自治体によって異なるので、注意しましょう。
方法②:耐震リフォーム
耐震リフォームとは、基準値よりも低い耐震性の建物を補強することです。耐震リフォームで補助金を受けるには、下記の条件を満たす必要があります。
- ・昭和56年5月31日以前に建てられた建物であること
- ・地上3階建てで、木造部分が2階以下の住宅であること
- ・工事後の判定値が1.0以上であること
昭和56年5月31日以前に建てられた建物でなければならないのは、昭和56年5月31日に耐震基準法が改正されたからです。
そのため、耐震基準法以前に建てられた建物は、改正後に建てられた建物よりも耐震性が低いのです。
また工事後の判定値(Is値)は、建物の強度や粘りの指標を指します。判定値が1.0であると、地震によって崩壊する危険性か低いとみなされ、耐震リフォームの補助金を受けることができます。
屋根の耐震リフォーム方法の1つとして、屋根の軽量化があげられます。
なぜ屋根の軽量化によって耐震性をあげられるのかというと、軽量化により家の重心を低くし、地震による揺れ幅を短くすることができるからです。
瓦屋根やスレート屋根である家であれば、金属屋根への葺き替えを行うと良いでしょう。屋根の重さを1/10~3/10までに減らすことができます。
耐震リフォームを行うと、最大100万円の補助金が支給されます。補助金額は、自治体によって異なるので、注意しましょう。
屋根の葺き替えを安くするには「相見積もり」が有効
「葺き替えの施工判断と費用」について、内訳なども交えてご説明してきました。
葺き替えに限らず、屋根修理の費用は同じ坪数の家でも、屋根の形状や傾斜によって面積が大きく変わるため、家の大きさが工事費用の目安にならず、予想が難しくなっています。
そこで、できるだけ複数の業者から相見積もりを取り、費用や工事内容に一番納得のいく業者を選ぶことで、コスト的にも効果的にも最適な工事を行うことができます。
業者の得意分野によっては、葺き替え以外の工事を提案してくることもあるので、費用や内容に納得のうえで葺き替え工事より安い工事で済むこともあるかもしれません。
本記事が、屋根の葺き替えをご検討中の方々のお役に立てば幸いです。