葺き替えは、屋根の修理工事のなかでも一番大がかりなものとなり、費用も大きいものです。
本記事では、屋根の修理を控えた方に向けて、
「葺き替え工事がどのようなものか知りたい」「うちの場合、葺き替えがほんとうに最適な修理か知りたい」
「費用の目安が知りたい、自分の見積もり額が適正か知りたい」
という疑問にお答えできる解説をしていきます。
- 葺き替え工事が必要なのは「屋根瓦全体に傷み・劣化がある場合」
- スレート屋根に葺き替える場合、費用は約140~180万円
- 金属屋根(ガルバリウム鋼板)に葺き替える場合、費用は約160~200万円
私の家だといくら?
屋根の葺き替え工事はいくら?
屋根の葺き替え工事にかかる費用をお伝えします。
屋根の葺き替え工事にかかる費用相場や工期
屋根の葺き替えの費用相場は、一般的な30坪住宅の場合で120~200万円です。
費用の主な内訳は、新しい屋根材の購入費と設置費が45~90万円、下地の補修が20~30万円、既存の屋根の撤去費用が12~20万円となっています。
葺き替えは、屋根の工事方法のなかでも最も費用が高額な作業になります。
工事に必要な日数も最も長く、約7~15日必要です。
工程には、足場設置、既存屋根材の撤去、新しい下地と屋根材の敷設などが含まれます。
とくに、新しい屋根材を搬入するスペースが必要なため、規模のもっとも大きい工事と言えます。
屋根の葺き替え費用と単価の相場一覧
工事内容・費用項目 | 費用(単価)相場 |
---|---|
足場費用 | 700円~1,000円/㎡ |
養生費用 | 200~300円/㎡ |
既存屋根の撤去費用 | 1,200円~2,000円/㎡ |
下地(野地板)の補修費用 | 2,000円~3,000円/㎡ |
防水シートの敷設費用 | 600円~1,000円/㎡ |
新しい屋根材の材工費 | 【和瓦】9,000円~1万5,000円/㎡ |
【スレート】4,500円~6,500円/㎡ | |
【ガルバリウム鋼板】6,000円~9,000円/㎡ | |
棟の設置費 | 2,000円~3,000円/m |
軒先、ケラバの設置費 | 1,500円~2,000円/m |
アスベストの撤去設置費(※) | 60万円~200万円/戸 |
この他にも、屋根の形状や既存屋根の種類などによっても単価や合計費用は変化します。
既存屋根がアスベストを含んでいる場合は、法令により特別な撤去方法が必要なため、別途60万円~200万円という高額な費用がかかります(※)。
この出費を回避するために、アスベストを含む屋根ではカバー工法が採られることも多くあります。
屋根の葺き替え工事費用の内訳
屋根の葺き替え費用の相場は、一般的な30坪住宅の場合で120~200万円です。この章では、費用の内訳にどんなものがあって、いくらなのかを解説していきます。
【スレートからスレートへ葺き替える場合】
費目 | 単価 | 数量 | 金額 | 備考 |
---|---|---|---|---|
足場代 | 750 | 200(㎡) | 150,000 | ・単価700~800円が相場 |
養生代 | 200 | 200(㎡) | 40,000 | |
既存屋根材の撤去・処分 | 1,600 | 100(㎡) | 160,000 | ・単価1,200~2,000円が相場 |
下地(野地板)の撤去・新設 | 2,000 | 100(㎡) | 200,000 | ・省略できる場合あり |
防水シートの敷設 | 650 | 100(㎡) | 65,000 | ・省略不可 |
新しい屋根材の敷設 | 5,250 | 100(㎡) | 525,000 | 単価相場 ・スレート:4,500~6,000円 ・ガルバリウム鋼板:約6,000円 ・粘土瓦:約12,000円 |
新しい棟の設置 | 2,500 | 12(m) | 30,000 | ・単価2,000~3,000円が相場。板金の場合 |
新しい軒先、ケラバの設置 | 1750 | 30(m) | 52,500 | ・単価1,500~2,000円が相場。板金の場合 |
業者 諸経費 | – | – | 122,250 | ・工事費の10%と設定 |
合計 | – | – | 1,344,750 |
|
税込 |
– | 10% | 1,479,225 |
*足場面積200㎡、屋根面積100㎡、棟12m、軒先・ケラバ30mと仮定
ここでは、現在最も普及している化粧スレート屋根から、同じスレート屋根へ葺き替える際の、工事手順と費用についてご説明します。
1.足場の敷設、周囲の養生
まずは高所作業用の足場を設置した後、足場とその周辺に飛散防止用の養生シートをかけます。
足場代は平米単価で700円~800円/㎡、養生代は200円/㎡前後が目安です。
足場代を節約しようとして足場の一部を省略すると、安全性や作業性が低下して良い仕事ができません。
葺き替えを、外壁塗装と同時におこなうと、足場代が一度で済むので効率的です。
>> 足場料金の単価・費用相場はいくら?見積もりで損しないコツとは?
2.既存屋根材の撤去・処分
続いて、もとからある屋根材を剥がします。
アスベストが含まれていない場合、作業費は1,200円~2,000円/㎡が目安です。
費用には処分費用も含まれています。
平米あたり3,000円~4,000円/㎡の撤去費用と、別途処分費用として2,000~3,000円/㎡、さらに処分場への運搬費として約30,000円~50,000円がかかります。
3.下地(野地板)の撤去・新設
屋根材を撤去した既存の野地板の上に、下地の合板を重ねて貼ります。野地板自体を新設する場合もあります。
費用は材料と施工費を合わせて、2,000円/㎡前後です。
野地板の補強は省略できる場合もありますが、野地板の経年劣化は屋根瓦より早いので、屋根材を新しくする際に同時に工事しておいた方が安心でしょう。
4.防水シート
下地(野地板)の上に防水シート(ルーフィング)を設置します。
費用は材料と施工費を合わせて、650円/㎡程度です。
葺き替え作業では、下地合板(野地板の補強)を省略する場合でも、防水シートは必ず施工します。
5.新しい屋根材
防水シートの上に新しい屋根材を葺きます。
一般的にはスレートで葺き直すか、より軽量でかつ耐久性の高いガルバリウム鋼板で葺き替えを行います。
費用はスレートの場合4,500円~6,000円/㎡、ガルバリウム鋼板の場合約6,000円/㎡です。
葺き替えでは、元が瓦屋根であった場合以外、瓦材はほぼ使われません。 屋根の重量が7~10倍になるため、住宅が重さに耐えられなくなったり、耐震性が下がってしまうからです。
6.棟板金、軒先・ケラバ板金等
葺き替え工事の最後に、棟や軒先、ケラバなどの納まり上、板金の加工が必要になります。
費用は板金の長さで決まり、棟板金が2,000円~3,000円/m、軒先・ケラバ板金が1,500円~2,000円/mです。
葺き替え前 | 葺き替え後 | 税込相場目安 |
---|---|---|
スレート | 金属屋根(ガルバリウム鋼板) | 約1,560,000円 |
石粒吹きガルバリウム鋼板(ジンカリウム鋼板) | 約1,890,000円 | |
金属屋根 | 金属屋根(ガルバリウム鋼板) | 約1,620,000円 |
スレート | 約1,500,000円 | |
石粒吹きガルバリウム鋼板(ジンカリウム鋼板) | 約1,560,000円 | |
和瓦 | スレート | 約1,790,000円 |
金属屋根(ガルバリウム鋼板) | 約1,850,000円 | |
石粒吹きガルバリウム鋼板(ジンカリウム鋼板) | 約2,000,000円 | |
和瓦 | 約2,200,000円 | |
ガルバリウム鋼板 | 和瓦 | ほぼ行われない(強度不足のため) |
スレート | 和瓦 |
本章で解説した以外の組み合わせでは、葺き替え工事の価格は上記が目安になります。価格差は、新しい屋根材の材工費によって生まれます。影響は少ないですが、既存屋根の撤去費用も屋根材により変わる場合があります。
屋根葺き替えで補助金制度を使う方法
屋根葺き替え工事で費用を安くする1つの方法として、ただ新しい屋根板に変えるだけでなく、リフォームする方法があげられます。リフォームの方法には、下記2つの種類が存在します。それぞれのリフォームの条件や補助金額を解説していきます。
- 省エネリフォーム
- 耐震リフォーム
方法①:省エネリフォーム
省エネリフォームとは、環境に優しい家へと改修することを指します。省エネリフォームで補助金を受けるには、下記の条件を満たす必要があります。
- ・ソーラーパネルの設置
- ・断熱性や遮熱性の高い屋根に改修
- ・LED照明の設置
- ・屋根材に含まれるアスベストの除去
断熱・遮熱性の高い屋根に改修するには、断熱・遮熱シートを屋根に取り付ける、ガルバニウム鋼板、セメント瓦、粘土瓦といった遮熱性の高い屋根材に葺き替える、
遮熱塗装を行うと良いでしょう。
また屋根材に含まれるアスベストの除去を行うには、アスベストを含むスレートやセメント以外の瓦に葺き替えると良いでしょう。
省エネリフォームを行うと、最大50万円の補助金が支給されます。補助金額は、自治体によって異なるので、注意しましょう。
方法②:耐震リフォーム
耐震リフォームとは、基準値よりも低い耐震性の建物を補強することです。耐震リフォームで補助金を受けるには、下記の条件を満たす必要があります。
- ・昭和56年5月31日以前に建てられた建物であること
- ・地上3階建てで、木造部分が2階以下の住宅であること
- ・工事後の判定値が1.0以上であること
昭和56年5月31日以前に建てられた建物でなければならないのは、昭和56年5月31日に耐震基準法が改正されたからです。そのため、耐震基準法以前に建てられた建物は、改正後に建てられた建物よりも耐震性が低いのです。
また工事後の判定値(Is値)は、建物の強度や粘りの指標を指します。判定値が1.0であると、地震によって崩壊する危険性か低いとみなされ、耐震リフォームの補助金を受けることができます。
屋根の耐震リフォーム方法の1つとして、屋根の軽量化があげられます。なぜ屋根の軽量化によって、耐震性をあげられるのかというと、軽量化により家の重心を低くし、地震による揺れ幅を短くすることができるからです。
瓦屋根やスレート屋根である家であれば、金属屋根への葺き替えを行うと良いでしょう。屋根の重さを1/10~3/10までに減らすことができます。耐震リフォームを行うと、最大100万円の補助金が支給されます。補助金額は、自治体によって異なるので、注意しましょう。
屋根の葺き替え工事費用を安くするには「相見積もり」が有効
「葺き替えの施工判断と費用」について、内訳なども交えてご説明してきました。
葺き替えに限らず、屋根修理の費用は
同じ坪数の家でも、屋根の形状や傾斜によって面積が大きく変わるため、家の大きさが工事費用の目安にならず、予想が難しくなっています。
そこで、できるだけ複数の業者から相見積もりを取り、費用や工事内容に一番納得のいく業者を選ぶことで、コスト的にも効果的にも最適な工事を行うことができます。
業者の得意分野によっては、葺き替え以外の工事を提案してくることもあるので、費用や内容に納得のうえで葺き替え工事より安い工事で済むこともあるかもしれません。
本記事が、屋根の葺き替えをご検討中の方々のお役に立てば幸いです。
私の家だといくら?