カバー工法とは、古い屋根のうえに、新しい屋根材をかぶせる工事方法です。
工事費用や工事が短期間で済むメリットがある反面、屋根内部の点検ができない工事でもあります。- 費用や所要日数でメリットを得る代わりに、安心面でリスクを負うこともある
- 他の手段を説明せず、カバー工法だけを積極的に勧めてくる業者には注意
記事内容は動画でもまとめています。ぜひご覧ください!
私の家だといくら?
監修者:外装劣化診断士 小林 成光
600件以上の現地調査を実施する過程で得た専門性を生かし、日本発のネット見積もりシステムでビジネスモデル特許を取得。ヌリカエにて、外装工事の専門家として、顧客・加盟企業のサポート・コラムの監修に従事。
▼略歴・プロフィール |
屋根カバー工法とは?
項目 | 詳細 |
---|---|
工事内容 | 今の屋根の上から、新しい建材を張りつける |
費用相場 | 80~140万円 |
工期 | 約5日間 |
工程 |
|
屋根カバー工法の工事内容は、既存の屋根の上に、新しい屋根材を張る作業となります。
古い部分の上に重ねて新しい部分が作られるため、“カバー工法”という名称が付けられています。
別名を「重ね葺き」といい、こちらの呼称を用いる業者もいます。
カバー工法の工期と工程
- 既存の棟板金を撤去する
- 既存の屋根の上にルーフィング(防水シート)を張る
- ルーフィングの上に新しい屋根材を張る
- 貫板・棟板金を設置する
- 仕上げ後、完了(約5日間)
屋根のカバー工法に必要な日数は、約5日が目安です。
工事中、家に出入りできなくなったり、使用できなくなる部屋が発生することはありません。
それぞれの工事工程について画像とセットで解説をします。
既存の屋根棟を撤去する
カバー工法でまず行うのが、棟板金の撤去です。
棟板金は、屋根の頂点にある板金のことで屋根材の隙間を覆い、雨漏りなどを防ぐ役割があります。
既存の屋根の上にルーフィング(防水シート)を張る
次に行うのがルーフィングの設置です。
ルーフィングは、屋根材の間から浸水する雨水を防ぎ、下地を保護する役割を持っています。
棟板金と同様に、屋根材にはパーツごとにすき間があるため、屋根内部の下地は屋根材とは別で保護する必要があります。
▼「ルーフィング」について詳しく知りたい方は、下記の記事もご覧ください。
>>ルーフィングシートとは?種類ごとにメリット・デメリットを解説
ルーフィングの上に新しい屋根材を張る
次に、ルーフィングの上に新しい屋根材を張ります。
屋根材は、屋根の形状に合わせて1つずつパーツを張り付けていきます。
貫板・棟板金を設置する
屋根材の張り付けが終わったあとは、貫板・棟板金を設置します。
貫板・棟板金を設置することで、屋根同士をつなぎ合わせます。
仕上げ後、完了
最後に、棟板金のつなぎ目にコーキングを埋めていきます。
コーキングは、板金のつなぎ目からの浸水も防ぐための工事です。
場合によっては、コーキング処理に加えて、雪止めを設置することもあります。
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屋根カバー工法のメリット
続いて、カバー工法のメリットを抑えておきましょう。
カバー工法のメリットは下記3点です。
ここからは、カバー工法のメリットを、ひとつひとつ解説をします。
解体作業・廃材が出ないためコストを抑えられる
カバー工法は、廃材が出ないためコストを抑えることが可能です。
カバー工法は、既存屋根を撤去せずに、新しい屋根材を上から重ねる工事となります。
その工事の特徴から、既存屋根の解体作業・廃材が発生しない分、コストを抑えることができるのです。
「屋根工事の費用」について詳しく知りたい方は、下記の記事もご覧ください。
>>「屋根修理の費用相場はいくら?雨漏り、台風、瓦の修繕…部位・トラブル別に全解説」
>>「屋根葺き替えの費用はいくら?工事のメリットデメリット、屋根材の選び方」
「アスベストのリスクと対処」について詳しく知りたい方は、下記の記事もご覧ください。
>>「アスベスト含有住宅の見分け方3つを徹底解説!リスクや除去方法まで知っておこう」
工事期間が短い
カバー工法は、工程が少ない分、工事を早く終わらせることが可能です。
工事を行っている間は、騒音が発生したり、業者の出入りが多くなります。
工事期間中の日常生活へのストレスやご近所さんにかかる迷惑は、工期が短くなる分、軽減可能です。
家の断熱性が上がる
最後のメリットは、家の断熱性が上がるという点です。
カバー工法をした屋根は、古い部分と新しい部分の二層構造になります。
そのため、屋外の暑さ・寒さが室内に伝わりにくくなる効果が期待できます。
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屋根カバー工法のデメリット
続いて、カバー工法のデメリットを紹介します。
カバー工法のデメリットも、ひとつずつ解説していきます。
屋根内部の点検ができない
カバー工法は、屋根内部の点検ができない工事です。
カバー工法は、新しい屋根材をかぶせる工事なので、屋根内部のキズや経年劣化が直せるわけではありません。
以後の修理やリフォームが高額になる
カバー工法による工事では、以後の修理やリフォームが高額になることもあります。
もしもカバー工法で工事をした後に屋根工事が必要になった場合は、修理や再リフォームの金額は通常よりも高くなります。
カバー工法を行った状態の屋根は、通常よりも一層多く重なっています。
そのため、二重となった屋根材を剥がす手間がかかり、費用もかさむことになります。
使用可能な屋根材が限られている
カバー工法を行うと、使用可能な屋根材が限られているというデメリットもあります。
カバー工法を行うと家の重量が増加することでどうしても耐震性が下がってしまいます。
その影響を抑えるため、軽量な屋根材を利用しなければなりません。
カバー工法で工事をする際は、使用できる屋根材に限りがあることを覚えておきましょう。
耐震性が下がる
最後のデメリットは、耐震性が下がるという点です。
先ほど解説した通り、カバー工法後は、古い屋根と新しい屋根の二層構造となるため、屋根の重量が増えます。
建物の重心が高くなると、揺れによる影響を受けやすくなってしまいます。
カバー工法を行うと、屋根の重量が増え、建物の重心が高くなるため、耐震性が低下します。
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屋根カバー工法が実施できないケース
ここまでカバー工法のメリット・デメリットを紹介しましたが、デメリットを許容できるのであれば実施する価値はあるでしょう。
ただし、中にはカバー工法ができないケースも存在しますので本章で紹介いたします。
カバー工法が実施できないケース
NGパターン①:屋根から雨漏りを起こしたことがある場合
過去に屋根からの雨漏りを起こしたことのある家は、屋根下地や躯体に傷みが発生していると考えらます。
そのような屋根をカバー工法でリフォームすると、気づかないうちに内部で腐食等が進行する恐れがあります。
そのためカバー工法は、屋根から雨漏りを起こしたことがある方は実施できません。
NGパターン②:過去に一度カバー工法を実施したことがある場合
屋根のカバー工法を2回実施することはできません。
カバー工法は既存の屋根の上に新しい屋根材を貼り付ける工事になりますので、建物全体にかかる負荷は大きくなります。
すでに2つ分の屋根材の重さがかかっている建物に、さらに負担をかけるのは耐震性の観点で好ましくありません。
よって、カバー工法は1度しか実施することができないのです。
NGパターン③:いま現在瓦屋根を使用している場合
瓦屋根を使用している場合、カバー工法は実施することができません。
カバー工法では既存の屋根材の上に防水紙や新しい屋根材を取り付けることになりますが、波状に凹凸が存在する瓦屋根の上から施工するのは難しいです。
また、瓦屋根は重い素材のため、そこからさらに新しい屋根材の重さが加わると耐震性の観点でも危険となります。
補足:不可能ではないが非推奨のパターン
以下に当てはまる場合は、カバー工法ではリスクが大きいため、「葺き替え」という方法で屋根リフォームするほうがおすすめです。
将来的に増改築などの工事予定がある場合
カバー工法後に別の工事をすることになった場合、分厚くなった部分を剥がすのに余計な費用がかかってしまいます。
そのため、将来的に屋根リフォームを行う可能性が高い方は、避けたほうがよいでしょう。
地震でよく揺れる家である場合
カバー工法では、多少なりとも家の重量の増加が発生し、耐震性の低下が起こります。
地震のたびによく揺れる、揺れに敏感な家族がいる方には、カバー工法はおすすめできません。
屋根にスレートや瓦を使いたい場合
カバー工法では、使用できるのが金属系の建材に限られてしまいます。
そのため、希望する屋根材が決まっていて、それが金属系以外のものである方は、カバー工法では希望が叶いづらいため、向いていません。
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屋根カバー工法を勧めてくる業者の本音
ここまでの解説で、あなたにカバー工法が向いているか、他の工事方法のほうが向いているかが、ご判断いただけたでしょうか?
どちらの場合でも、今接触している業者に決めるのはまだ早すぎるかもしれません。ここからは、業者の利益の観点から、カバー工法について解説をします。
カバー工法は業者にとって得が多い工事
実はカバー工法は、リフォーム業者、なかでも板金業者にとっては非常に「おいしい」工事なのです。理由は以下のとおりです。
工期が短く、回転率が上げられる
カバー工法のメリットに工事日数の短さを挙げましたが、これは業者にとっても「施工の回転率が良い」という旨味があります。
前述の工事金額を日数で割って1日あたりの売り上げ額を計算すると、屋根のカバー工法は「30~36万円」です。
対して屋根葺き替えの場合は「20~33万円」ですから、業者にとってはカバー工法を勧めるほうが1日あたりの売上が高くて得ということになります。
金属系素材のほうが、利益率が高い
カバー工法で使えるのは金属系の屋根材に限られるとご説明しました。
屋根工事業者のうち「板金業者」にとっては、この金属系の建材が専門で、利益率も高い主力商品なのです。
板金業者にとっては、金属系以外の屋根材も選択肢に入る葺き替えを選ばれると、高利益率商品を売り逃す可能性が生まれます。
そのため、カバー工法が一番うれしい工事なのです。
カバー工法を強く勧めるのは「顧客より利益が優先」な疑いあり
このように、カバー工法は業者にとっても都合の良い工事だという本音が分かりました。
もしあなたがやりとりをしている業者が、あなたに、カバー工法のデメリットをほとんど説明しなかったり、葺き替えという選択肢を示さなかった場合、その業者は顧客の利便性よりも自社の都合を優先する業者である可能性があります。
注意をしてください。
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悪い業者にひっかからないための対策
業者から提示された見積り金額や提案内容を不信に思った際、どのような対応を取ればよいのでしょうか?
悪い業者にひっかからないための対策には、下記があります。
- 即決しない
- 口コミを検索する
- 相見積もりでセカンドオピニオンをとる
- 契約をしてしまった場合はクーリングオフをする
最後に、悪い業者にひっかからないための対策をそれぞれ簡単に解説します。
即決しない
まず大事なのが、即決しないことです。
「即決をしていただけるなら割引をします」といった値引き営業や、「今すぐ工事をしないと危ない状況です」と不安を煽り、契約を迫ってくる業者もいます。
少しでも迷いがある場合は、即決を避けましょう。「お得に工事できるならばまあいいか」といったような安易な気持ちで契約をしないでください。
口コミを検索する
もし業者の名刺や見積もりをもっていて、業者の名前がわかる場合は、口コミを調べてみてください。
悪徳業者の場合、「不必要な工事をしてしまった」「相場とかけ離れた金額を支払ってしまった」といった悪評が検索結果としてヒットする可能性があります。
相見積もりでセカンドオピニオンをとる
相見積もりでセカンドオピニオンをとるのもとても有効です。カバー工法の工事内容や施工費用は、工事を行う業者によって異なります。得意とする工事や、安く使える建材は業者によって違うため、カバー工法には定価というものが存在しません。
そのため、見積もりを複数とらずに契約業者を決めてしまうのは、悪徳業者かどうかを問わず損をする可能性が高いです。相見積もりでセカンドオピニオンを取り、業者から提示される工事金額を見比べてみましょう。
契約をしてしまった場合はクーリングオフをする
万が一納得のいかない業者と契約をしてしまった場合は、クーリングオフを検討してください。
クーリングオフの適用にはいくつか条件がありますが、「契約してから8日以内」「業者が突然訪問してきた」「訪問販売や電話勧誘などで契約をした」といった場合は、クーリングオフが行える可能性が高いです。
▼「クーリングオフ」について詳しく知りたい方は、下記の記事もご覧ください。
>>外壁塗装はクーリングオフできる?適用事例や手続き方法も解説。診断チャートも
▼そのほかカバー工法や屋根修理の詐欺に関しては、下記の記事でも詳しく解説しております。
>>これって屋根修理の詐欺手口?詐欺の被害事例や未然に防ぐ方法
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まとめ
今回は、屋根のカバー工法を検討中の方に向けて、カバー工法のメリット・デメリットを中心に解説しました。
カバー工法は、工事費用を抑えることができるメリットがあるものの、屋根内部の修理ができないといったデメリットがあり、ややリスクを負う工事方法です。カバー工法が自身のニーズにマッチするかどうか、慎重に検討することをおすすめします。
また、カバー工法は業者にとってお得な工事ですので、他の手段を説明せず、カバー工法だけを積極的に勧めてくるような業者には注意してください。
最後までご覧いただきありがとうございました。
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