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カバー工法とは、古い屋根の上から新しい屋根材をかぶせる工事方法です。
ご自宅の屋根の劣化や雨漏りなど、屋根トラブルに見舞われている方の中には、「屋根のカバー工法どんな工事?」、「カバー工法するとどんな良いことがあるの」といったお悩みや疑問を抱えている方も多いでしょう。
そこで本記事では、屋根カバー工法のメリットやデメリット、実際にカバ-工法をした事例のビフォーアフターなどをご紹介しています。
カバー工法にするかどうか迷ったときに使いたいチェックリストもご紹介していますので、屋根のリフォームを考えている方の参考となれば幸いです。
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監修者:外装劣化診断士 小林 成光
600件以上の現地調査を実施する過程で得た専門性を生かし、日本発のネット見積もりシステムでビジネスモデル特許を取得。ヌリカエにて、外装工事の専門家として、顧客・加盟企業のサポート・コラムの監修に従事。
▼略歴・プロフィール |
屋根カバー工法とは?

項目 | 詳細 |
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工事内容 | 今の屋根の上から、新しい建材を張りつける |
費用相場 | 80~140万円 |
工期 | 約5日間 |
工程 |
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屋根カバー工法の工事内容は、既存の屋根の上に、新しい屋根材を張る作業となります。
古い部分の上に重ねて新しい部分が作られるため、“カバー工法”という名称が付けられています。
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別名を「重ね葺き」といい、こちらの呼称を用いる業者もいます。
屋根カバー工法のメリット・デメリット
屋根カバー工法のメリット
カバー工法のメリット
カバー工法は、既存の屋根を撤去せずにその上から新しい屋根材を被せるため、解体作業が不要で廃材も発生せしません、処分費や人件費が抑えられることから、全体の工事コストを軽減できるのが大きな魅力です。
また、既存の屋根を活かしながら施工を進めるため工程がシンプルで、天候に左右されにくいという特徴があります。そのため、工事による日常生活への負担を減らせるでしょう。
そして、既存屋根と新たに重ねる屋根材との二重構造が生まれることで断熱性が向上する可能性があります。夏の暑さや冬の寒さが屋内に伝わりにくくなるため、室内環境の快適さにもつながるでしょう。
屋根を張り替えるよりも費用が安く工期も短いことから、多くの住宅で選ばれている工法です。
「屋根工事の費用」について詳しく知りたい方は、下記の記事もご覧ください。
「アスベストのリスクと対処」について詳しく知りたい方は、下記の記事もご覧ください。
>>「アスベスト含有住宅の見分け方3つを徹底解説!リスクや除去方法まで知っておこう」
屋根カバー工法のデメリット
続いて、カバー工法のデメリットを紹介します。
カバー工法のデメリット
カバー工法には多くのメリットがある一方で、デメリットもいくつかあります。
まず、既存の屋根の上から新しい屋根材を重ねる工法であるため、屋根内部の劣化やキズなどを確認・補修することができず内部に問題があっても見逃されるリスクがあります。
また、工事後に不具合が起きた場合は、屋根材が二重になっていることで撤去作業が複雑となり、修理や再リフォームにかかる費用が通常より高額になってしまうでしょう。
重量のある屋根材を使うと建物全体の耐震性に影響を与えるため、使える屋根材が軽量なものに限られます。基本的にはガルバリウム鋼板などの金属サイディングしか使えません。
屋根のリフォームに補助金を使うことを検討している場合、耐震性を弱める工事は支給対象外となる可能性もあります。耐震性は建物の耐久性に関わるため、カバー工法を選ぶ際は注意してください。
屋根カバー工法のビフォーアフターを比較
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ヌリカエで屋根カバー工法を実施した事例をビフォーアフターを交えて5つ紹介します。
- ガルバリウム鋼板を活用した屋根カバー工法の事例①
- ガルバリウム鋼板を活用した屋根カバー工法の事例②
- 高耐久塗料等と合わせて実施した屋根カバー工法の事例
- 費用を抑えて実施した屋根カバー工法の事例
- 遮熱も考慮した屋根カバー工法の事例
ガルバリウム鋼板を活用した屋根カバー工法の事例①
家の下屋根をガルバリウム鋼板を活用して屋根カバー工法を行った事例です。
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約5年おきに起こる塗替えの手間を減らすためにカバー工法にて対応しました。
軽量なガルバリウムをカバーすることで、耐震性への影響を最小限にできています。また、塗り替えの頻度を考えると、屋根材自体を新しくする方が経済的な場合もあるでしょう。
今回のように築年数が経っている家の屋根では、塗装によるメンテナンスでは限界がある場合もあります。今後も長期的に住まう予定があるのであれば、カバー工法で一気に屋根を新しくする方が良いかもしれません。
物件の種類 | 一戸建て |
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築年数 | 44年 |
工事金額 | 50~100万円 |
工期 | 67日 |
事例の詳細については、ぜひ事例のページをご覧ください 。
ガルバリウム鋼板を活用した屋根カバー工法の事例②
屋根を長持ちさせたいという要望に応じて、高耐久の屋根材を活用して外壁カバー工法を行った事例です。
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本事例では最長25年のメーカー保証が付いているのも特徴です。
色褪せやカケが見られる古い屋根材を新しくガルバリウム鋼板でカバーすることで、新築のような外観になっています。メーカーによる長期保証によって、万が一トラブルが発生した場合でも安心です。
物件の種類 | 一戸建て |
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築年数 | 20年 |
工事金額 | 200~250万円 |
工期 | 35日 |
事例の詳細については、ぜひ事例のページをご覧ください 。
高耐久塗料等と合わせて実施した屋根カバー工法の事例
屋根カバー工法に加えて、外壁塗装も行った事例です。
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高耐久塗料の提案に加えて、サイディング交換の提案も行っています。
高耐久塗料を塗布することで、屋根材自体の寿命を大きく伸ばすことができます。塗料には、太陽光を反射に熱の伝わりを抑える遮熱塗料もあり、これを使うことで夏場の室内気温の抑制にも期待できるでしょう。
遮熱塗料を使った事例については後程ご紹介します。
物件の種類 | 一戸建て |
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築年数 | 17年 |
工事金額 | 250~300万円 |
工期 | 24日 |
事例の詳細については、ぜひ事例のページをご覧ください 。
費用を抑えて実施した屋根カバー工法の事例
費用を100万円以内に抑えて実施した屋根カバー工法の事例です。
カバー工法は張り替えよりも費用を安く抑えらえるため、予算に限りのある方でも検討しやすい工事となります。
劣化した屋根材を放置しておくと、後になり高額な補修費用が発生する可能性もありますので、雨漏りなどが心配な方は、カバー工法でできる限り早く対処することをおすすめしkます。
物件の種類 | 一戸建て |
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築年数 | 18年 |
工事金額 | 50~100万円 |
工期 | 47日 |
事例の詳細については、ぜひ事例のページをご覧ください 。
遮熱も考慮した屋根カバー工法の事例
耐久性の良い外壁と屋根にしたいという要望に応えた、屋根カバー工法の事例です。
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外壁塗装はフッ素遮熱プランによって外観のイメージを変え、あわせて屋根もきれいになっています。
遮熱塗料は、太陽光を反射する機能をもつ特殊な塗料です。屋根材に熱が伝わりにくくなるため、屋根材の劣化スピードを抑えることができます。また、室内の気温の抑制効果にも期待できるでしょう。
物件の種類 | 一戸建て |
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築年数 | 30年 |
工事金額 | 150~200万円 |
工期 | 42日 |
事例の詳細については、ぜひ事例のページをご覧ください 。
屋根カバー工法がおすすめなケース
屋根カバー工法がおすすめなケースが下記の3つです。
- 築20年が経過したタイミング
- 野地板がまだ傷んでいない場合
- とにかく費用を抑えたい場合
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いずれかのケースに当てはまっていたら、屋根カバー工法を検討しましょう。
特に、野地板が傷み具合によっては葺き替えが必要になる可能性もあるので、不安な方は一度業者に点検を依頼することをおすすめします。
築20年が経過したタイミング
築20年経っているかどうかは、屋根のカバー工法をするかどうかの分かれ目となります。多くの屋根材は20年を過ぎることから劣化が目立ち始めることが多いためです。
このタイミングでカバー工法を行えば、さらに20年以上は雨漏りなどのトラブルに悩まされることなく過ごせるでしょう。
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「今はまだ大した劣化やトラブルもないから大丈夫」と思ってても、放置しておくと台風や大雨などがきたときに突然雨漏りが発生する可能性があります。
野地板がまだ傷んでいない場合
野地板とは、室内と屋根材の間にある板のことです。屋根は野地板の上に防水シートと屋根材を敷くことでできています。
この野地板ですが、基本的には木材なので時が経つにつれて劣化します。野地板の劣化は、雨漏りの直接的な原因となりうるものです。
野地板が劣化している状態でカバー工法をしても、屋根の耐久性を完全に回復させることはできません。屋根の土台部分である野地板に問題があれば、上から新しい屋根材を被せてもすぐに何らかのメンテナンスが必要になる可能性があります。
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野地板が傷んでいる場合は、屋根の葺き替えを検討することがおすすめです。
「屋根の葺き替え」については、以下の記事もあわせてご確認ください。
とにかく費用を抑えたい場合
屋根修理方法において、葺き替え、カバー工法、塗装の順番に費用が安くなります。このうち、屋根材を変えるメンテナンスは葺き替えとカバー工法ですが、費用で比べると葺き替えよりもカバー工法の方が安いです。
そのため「できるだけ費用を抑えてメンテナンスしたい」とお考えの方は屋根カバー工法が進められます。
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しかし、先述の通り野地板の傷み具合などによっては、費用をかけてでも葺き替えをした方が良い可能性もあるでしょう。
カバー工法をするかの判断チェックリスト
屋根をカバー工法でリフォームするか迷った場合は、下記の3つの観点を確認し判断するとよいでしょう。
- 既存の屋根材に大きな劣化がないか
- 建物の構造が重量に耐えられるか
- 予算はどれくらいに抑えたいか
特に、①と②の結果によってはそもそもカバー工法ができない可能性があるので注意してください。
それでは、各チェックポイントついて詳しく解説します。
1. 既存の屋根材に大きな劣化がないか
屋根カバー工法は、既存の屋根の上に新しい屋根材を重ねる工法となります。そのため、屋根の下地がしっかりしていることが前提です。
雨漏りが発生している場合や、下地の合板や垂木に腐食がみられる場合、カバー工法ではなく、葺き替えが必要になります。
下地の状態が分からない場合は、まず専門業者に屋根の状態を確認してもらい、カバー工法ができる状態かを確認しましょう。
2. 建物の構造が重量に耐えられるか
屋根カバー工法では新たに屋根材を重ねるため、屋根の重量が増します。そのため金属屋根など軽量な材料を使うことが多いですが、それでも建物の構造に負担がかかることには変わりありません。
特に築年数が古い木造住宅や、耐震性に不安のある建物では注意が必要です。構造への影響についても、施工前に建築士や施工業者に確認してもらうことが大切です。
3. 予算はどれくらい抑えたいか
屋根カバー工法は、既存屋根の撤去が不要なため、廃材処分費や工期を大幅に削減できます。そのため、葺き替えより安く済むケースが多いです。
そのため、予算を抑えたい方や、できるだけ短期間でリフォームを済ませたい方には適しています。ただし、将来的にまた施工が必要になる可能性もあるため、長期的な視点で費用対効果を比較することが重要です。
屋根カバー工法についてまとめ
屋根カバー工法は、今ある屋根材の上から防水シートと屋根材を被せることで屋根の耐久性を一新する工事です。
葺き替えと比べて安く、工期が短いといったメリットがある反面、一部の屋根や劣化状態によっては実施できないケースもあるので注意してください。
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屋根のカバー工法によってご自宅の屋根がどのようになるのかを把握した上で、最適なリフォーム方法を検討していきましょう。


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