地震の発生件数の多い日本で暮らしていくうえで、自宅の耐震性を高める耐震リフォームは必須とも言えます。ただ、費用の面で諦めてしまっている方もいるのではないでしょうか。
この記事では、工事する箇所や築年数別の費用相場について詳しく解説しています。工事のポイントを抑え、費用を節約して耐震リフォームを行いましょう。
②耐震リフォームすることで安心して長く住める
③耐震リフォームは補助金が適用される場合がある
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耐震リフォームの費用相場
木造住宅の全体を耐震改修したい場合、100~150万円未満の工事が最も多く、全体の半数以上の工事が190万円以下で行われています。築年数や家の広さによっても変わってくるので、どこまで耐震改修工事が必要になるのか、まずは業者に問い合わせるのも良いでしょう。
また、屋根の補強や耐震パネルの設置など、部分的に耐震リフォームすることも可能です。
ただ、耐震リフォームには最優先すべき箇所があります。それは、壁の補強です。壁の強度が安定していないのにも関わらず基礎の部分を補強しても、家全体のバランスが崩れてしまい、リフォームの効果を得ることが出来ません。
②屋根:100万円以上
③基礎:30~60万円
壁の筋交いによる補強→約25万円
壁に筋交いと呼ばれる部材をたすき状にかけることで、地震の横揺れを防ぐことができます。
▼壁リフォームの費用相場について詳しく知りたい方は、下記の記事もご覧ください。
>>壁のリフォームにはいくらかかる?費用相場・予算別のリフォーム内容を紹介│ヌリカエ
屋根の軽量化と補強→100万円以上
屋根の補強は大きく分けて「基礎の補強」「接合部の補強」「壁の補強」の3つがあります。
屋根の軽量化は、重い屋根から軽い屋根に葺き替えることです。最近では、日本瓦のがっしりとした屋根から、軽い金属系の屋根に変える場合が増えてきています。
軽量化の耐震効果は高い一方、工事費用は最も高額な点がデメリットと言えるでしょう。
耐震パネルの取り付け→約30万円~60万円
耐震パネルを設置することで、かかる力を分散することができ、建物のねじれや変形も防ぐことができます。壁を取り払う必要がなく、既存の壁に取り付けるだけのものも増えています。
耐震金物の設置→約40万円
木造住宅の場合、地震や台風などにより強い力が加わることで、木材のつなぎ目が緩み、劣化してしまいます。土台部・柱・筋交いなど住居を支える構造部の接合部分に耐震金物を設置することで、より強固な建物になります。
築年数ごとの費用相場
築年数が長くなることで、耐震リフォームにかかる費用が増える傾向にあります。
特に、現行の耐震基準を満たしていない建物は、壁の量や接合部の金物など、工事費用が高額になりやすいです。
築20~29年:130万円前後
築30~39年:170万円前後
築40年以上:190万円前後
仮住まいが必要になる場合も
耐震リフォームの種類は様々あるため、住みながら可能か仮住まいが必要になるかは、工事内容によります。
出入り口の補強
外側からの耐震補強
一方で全面的なリフォームを検討している場合、リフォームをしている間は仮住まいをする必要があります。一般的には、1ヶ月で約80万円、3ヶ月で約100万円が相場です。
現在の耐震基準
建築基準法で定められている耐震基準について解説します。耐震リフォームを行った際の補助金にも関係するものです。
1981年|建築基準法の改正
耐震基準の見直しが行われ、1981(昭和56)年6月1日以降に適用されている耐震基準を、新耐震基準と呼んでいます。大震災による被害状況を鑑み、旧耐震基準は見直され、新耐震基準が新設されました。建物が新耐震基準を満たしているかどうかは、建築確認を受けた年月日で判断してください。昭和56年6月1日以降に建築確認を受けていれば新耐震基準を満たしていることになります。
2000年|木造住宅の耐震基準改正
木造住宅の耐震性に大きく関わる改正が、2000年6月に行われました。1995年に起きた阪神・淡路大震災で、多くの木造住宅が倒壊したことによるものです。地盤調査を行わないと建築出来ないルールになり、壁の量やバランス、柱や土台などの接合金方法に関する規定が新たに盛り込まれました。
耐震リフォームするべき家
続いては、耐震リフォームを検討すべき家のポイントをいくつか紹介します。
柱の腐食・劣化がある
柱の太さは、耐震強度を左右する重要なポイントです。ですが、経年劣化とともに腐食・劣化が生じてしまいます。また、シロアリの被害を受け、建物の耐震性が著しく損なわれることも。
被害の拡大を防ぐためにも、早めに専門業者に依頼するようにしましょう。
地盤が弱い
地盤が軟弱である場合、地震の揺れが増幅され被害が大きくなります。また、川や池を埋め立てた土地は、液状化現象が起きる可能性も高いです。そのため、基礎の補強工事は必須とも言えます。
壁の量が少ない家
壁は地震のエネルギーを吸収してくれます。つまり、壁の量が少ない家は耐震性が低いです。
また、壁の中でも耐力壁は水平方向からの力に抵抗し、建物を支える役割をしています。そのため、壁を配置するバランスも大切なポイントです。
吹き抜けのある家
吹き抜け部分は床面積が不足しているため、横方向の力に弱いです。吹き抜けが大きいと特に注意が必要になります。
築年数が浅くても本当に大丈夫?
耐震基準に適合していない建物は建築確認の許可が下りず建築できないないため、基準が新しくなってから家を建てられた方は不安になりすぎる必要はありません。ですが、耐性基準は最低限のものなので、新耐震基準を満たしているから安心するのではなく、あくまでも人命を守ることができる基準だと理解をしておくことが大切です。先ほど紹介した、屋根の軽量化や耐震パネルの設置など、小さな揺れの際に気になった箇所があれば耐震リフォームを検討してみるのも良いでしょう。
耐震診断の費用相場
住宅の劣化状況や問題点を整理するために、まずは耐震診断をしてみるのもおすすめです。専門家が建物の現況を調査し、耐震性能を評価します。
お住まいの自治体や診断内容にもよりますが、無料で診断が受けられる場合があります。
また、有料の場合でも補助金の適用になることもあります。費用はかさんでしまいますが、業者が工事の見積もりやスケジュールを提案してくれるので、よりイメージしやすくなりますよ。
業者が行う耐震診断には大きく分けて2つの方法があります。
一般診断|10~40万円
壁などを壊さずに判断する方法になります。耐震改修の必要性を判定をするための診断です。
精密診断|15~45万円
壁を壊して建物内部の様子を見て判断する方法です。リフォームの必要性が高い物件に対し家の一部を壊すことで、高い精度で診断できるのが特徴になります。
耐震リフォーム例
では最後に、耐震リフォームを行った例をいくつかご紹介します。
屋根のリフォームをした例
屋根の雨漏りに悩まれていましたが、せっかくリフォームするのなら耐震対策もあわせて行いたいというご要望。そこで瓦屋根から金属製の屋根への葺き替えを行いました。これにより耐震性能が改善し、強度と重量のバランスがとれました。
リフォーム費用 | 114万円 |
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施工期間 | 30日 |
築年数 | 45年 |
壁の補強を行った例
構造計算に基づき、耐震壁を付け加え、基礎に配筋を入れ補強を行いました。外部からの補強工事だったため、工期を短縮することに成功しました。
リフォーム費用 | 140万円 |
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施工期間 | 10日 |
築年数 | 46年 |
耐震金物を設置した例
木造住宅の場合は、つなぎ目が時間とともに緩んでしまいます。壁の補強だけでなく、耐震金物の設置もあわせて行ったことで、耐震性能が向上しました。
リフォーム費用 | 134万円 |
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施工期間 | ー |
築年数 | 41年 |
基礎の補強工事を行った例
基礎に多数のひび割れが確認できていたため、強度を回復するために補強工事を行いました。基礎の劣化を防ぐことで、長く安心して住み続けられます。
リフォーム費用 | 150万円 |
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施工期間 | 1ヶ月 |
築年数 | 42年 |
築年数がかなり経った家の例
大きな地震により劣化が進んでしまい、売るに売れなくなってしまった築60年近い一戸建て。構造計算に基づき、耐力壁を付け加えたり、基礎に配筋を入れ補強を行いました。また、内装が明るくなったことにより、家の内部の印象を変えることにも成功しています。限られた予算でありながらも耐震性能を強化でき、これからも安心して長く住める家となりました。
リフォーム費用 | 1552万円 |
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施工期間 | 120日 |
築年数 | 59年 |
バリアフリーを意識した家の例
耐震補強を行うとともに間取りの変更も行いました。足腰の不自由なお母様が生活しやすくなるよう、玄関の向きを変更。対面式のキッチンにしたことで見通しが良くなり、コミュニケーションが取りやすくなりました。段差をなくす、スロープの設置などバリアフリー化を進めたことで、安心して日常生活を送ることができます。
リフォーム費用 | 1000万円 |
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施工期間 | 100日 |
築年数 | 33年 |
耐震リフォームで支給される補助金制度とポイント
耐震リフォームの費用負担を抑えられる補助金や減税制度について解説します。
主な自治体の補助金制度
自治体ごとに補助金の制度は異なるため、補助金額の上限も地域によって違います。基本的には数十万円程度ですが、中には100万円を超える高額なものもあります。東京都中央区と愛知県の耐震リフォームの補助金制度を一例としてご紹介します。
詳細は自治体によって異なるため、どのような制度が利用できるかを確認しておきましょう。
補助金の受け取りにはパターンがある
補助金制度を利用した場合の金銭の受け取り方法は、大きく2つのパターンがあげられます。
- 申請者が費用を全額払う→補助金を受けて費用負担を相殺
- リフォーム業者が補助金を受け取る→リフォーム費用の残額を申請者が支払い
基本的には、申請者が業者にリフォーム費用を一旦全額支払い、後日補助金を受けて、費用負担を相殺するという流れです。
もう一方のパターンでは、申請者ではなく、リフォームを行った業者が補助金の受け取り者となります。この場合は、業者が代理で補助金を受け取るため、支給金額をリフォームの費用から差し引き、残った分を申請者が支払って代金を精算します。
耐震リフォームで補助金を申請する時の注意点
制度が利用できる地域なら、耐震リフォームでは積極的に補助金を活用することがおすすめです。ただし、補助金の申請をする際には次の3つの注意点があるため、これらを頭に入れたうえで利用を考えなければなりません。
- 1.申請者が多いと補助金はもらえない可能性がある
- 2.制度の内容が毎年同じとは限らないため事前に確認する
- 3.業者を探す場合は事業者登録・有資格者かどうかを確認する
まとめ
耐震リフォームをする上で知っておくべき基本情報、気になる費用面や補助金制度などについて解説しました。いま住んでいる家に長く住み続けるためには、定期的なメンテナンスが欠かせません。
また、耐震リフォームは費用や工期の面で負担が大きいので、事前の情報収集が重要です。この機会に耐震リフォームを検討してみてはいかがでしょうか?