長く住んで古くなってきたマンションは、リフォームによって快適な住環境を取り戻すという方法があります。
リフォームをする際には事前にかかる費用や期間などを知っておくことが大切であり、綿密に計画を立てなければなりません。マンションのリフォームで失敗しないためにも、スムーズに行うための事前知識を身につけておきましょう。
- マンションの場合は設備製品の交換、壁や仕切りの撤去、収納の増設などの工事が人気
- 費用はフルリフォームで300~700万円が目安
- キッチンだけのリフォームなら60~300万円が目安
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リフォームするといくら?
マンションリフォームではこんな事ができる!
マンションという限られた空間でも、工夫次第でさまざまなリフォームが実現可能です。
ここでは、規模の小さめのものから大きなものまで、施工結果のわかる写真とともに事例を解説します。
リフォーム内容 | かけた費用 | 施工箇所 |
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キッチンとリビングの仕切りを撤去 | 138万円 | キッチン |
キッチンをL型に変更 | 240万円 | キッチン |
水回り3箇所を新しい設備に入れ替え | 250万円 | 浴室、洗面台、トイレ 他 |
2世帯同居開始のためバリアフリー化 | 1,100万円 | 家全体 |
全て作り変えるスケルトンリフォーム | 1,500万円 | 家全体+配管 |
キッチンとリビングの仕切りを撤去して明るいLDKに
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リフォーム費用 | 138万9,800円(※編集部試算) |
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工事内容 |
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使用製品 | クリナップ「ステディア」ペニンシュラI型・マンション用 |
家族構成 | 2人(夫・妻) |
画像出典:クリナップ「キッチンな暮らし。」 ※『積算資料ポケット2023 リフォーム編』をもとに、吊り戸棚撤去2万4,000円、キッチン交換124万9,800円、レンジフード交換11万6,000円と試算
「キッチン収納」と「リビングとの間の壁」を兼ねていた吊り戸棚を撤去し、設備も対面キッチンにリフォームした例。
システムキッチンの扉や前面収納にはウッド柄を選び、リビングの床やテーブルと一体感のある、明るいLDK空間に生まれ変わりました。
マンションだと、壁を動かしたり間取りを変えたりできないと思いがちですが、工夫次第で視界や動線を変える工夫も可能です。
プラスワンポイント!
コンロの前の覆いにも工夫が見られます。ガラス製のものを選び、キッチンの明るさと見通しの良さを向上させてているのもポイントです。
キッチンをL型に変えて作業スペースを拡張
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リフォーム費用 | 240万円 |
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工事内容 |
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使用製品 | タカラスタンダード「エーデル」対面L型 \900,000 |
家族構成 | 4人 |
作業スペースが狭いことが悩みだったI型キッチンを、L型の製品にリフォームすることで作業領域を新たに確保。
小さな開口部でのみ繋がっていたリビングと台所を、広く開放感のあふれるLDKにリニューアルしました。
プラスワンポイント!
新たにリビングから見えるようになったキッチンの天井に板材を張り付けているのにも注目。
リビング側にあるテーブルや収納と統一感をもたせることで、ひとつながりの広い空間として見せる工夫がうまくいっています。
お風呂・洗面・トイレを同時にリフォーム
「お風呂」ビフォーアフター
「洗面台」ビフォーアフター
「トイレ」ビフォーアフター
リフォーム費用 | 250万円 |
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工事内容 |
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使用製品 | |
家族構成 | 2人 |
マンション専有部分内のお風呂・洗面台・トイレの計3箇所を10日間で一括交換したリフォーム工事です。
お風呂リフォームの目的は「掃除しやすさの向上」でしたが、浴槽を人造大理石に変えたことで、お湯が格段に冷めにくくなったとのことです。
また、洗面台はコスメ用品を置けるスペースが広いドレッサータイプに、トイレは
プラスワンポイント!
洗面の壁につかった内装材の余りを、施工業者の提案で玄関壁の一部に使用。
磁石がつくようになったため、マスクや印鑑、家の鍵などをマグネット式のラックで収納できるようになりました。
2世代同居のためのバリアフリーリフォーム
築27年のマンション。もともと住んでいた夫婦とその夫両親が同居を開始するため、部屋全体のバリアフリー化と収納の増加をした例です。
リビングからキッチンの奥まで床の段差を一切なくしたのびのびとした空間。
風通しもよく、高齢の両親の様子もよく目に届くのがメリット。
LDKの一角は、目隠し用の扉つき和室のコーナー。
段差を利用のおかげで、畳の上でテレビをみていてもスムーズにリビングの床に立つことができます。
引っ越してきた夫両親の荷物も、このシステム収納と前述の小上がり和室の足元収納のおかげで、スッキリしまえたそうです。
配管まで見直した「スケルトンリフォーム」を実施
夫婦の定年を機にセカンドライフを迎える準備として、4LDから2LDKへの間取り変更を含むスケルトンリフォームを実施しました。
リフォーム費用 | 1,500万円 |
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リフォーム部位 |
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使用製品 |
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家族構成 | 2人 |
リビング(リフォーム後)
リフォーム前後の最大の変化は、冒頭の写真の場面のように和室と居間をつなげて広いLDKに変更したことです。
LDKの一角には、事務作業用のデスクも造り付けられています。
台所
キッチンは、最新式のシステムキッチン「リビングステーション」を使用。
ダイニング側と廊下側のどちらからもキッチンに出入りできるようにし、家事の効率が上がりました。
洗面所・浴室
洗面化粧台の扉と浴室の壁は、どちらも薄い木目柄で統一しました。
スケルトンリフォームとは?
「スケルトンリフォーム」とは、建物を骨格部分が露出するまで解体し、そこから内装や設備をまるごと作り変えるリフォームです。
通常のリフォームに比べて自由度が高いぶん施工費用も高くなるという特徴があります。
「スケルトンリフォーム」について詳しく知りたい方は、下記の記事もご覧ください。
マンションリフォームの費用相場
マンションの区分に行う一般的なリフォーム工事の種類と、それにかかる費用相場は以下のとおりです。
フルリフォーム:300~700万円以上
室内全部の工事を行うフルリフォームの場合は、300~700万円以上と高額です。
最新設備を導入したり、高いグレードのものを使用したりすると、費用はより高くなるでしょう。
それでも、フルリフォームは新たに住宅を購入するよりは安くつくことが多く、住み替えまでは必要ない場合におすすめです。
リフォーム中の仮住まいの費用も想定
フルリフォームの費用で忘れてはいけないのが、施工期間中の仮住まいにかかる費用です。
フルリフォーム中は、部屋の中で生活することができません。
そのため、一時的に別の住まいを確保することになりますが、その際に仮住まいの家賃と2回分の引越し費用もかかります。
また、仮住まいの家賃は初期費用も含め30~100万円程度、引越し費用は2回分で30~60万円程度が相場です。
キッチン:60~300万円
キッチンはグレードによって費用が大きく異なり、サイズが大きく機能的なものほど、金額は上がります。種類は多数ありますが、例えばアイランドキッチンやペニンシュラキッチンなどは、高額になりやすく、シンプルな形状のI型キッチンなどは比較的安価で導入できます。
お風呂:60~150万円
お風呂もこだわるならお金をかけやすい部分であり、浴槽はもちろん、床や壁、各種オプションの追加なども可能です。
特にお金がかかりやすいのは浴槽やオプションであるため、費用を削減したいなら最低限のものに留めておくことが大切です。
トイレ・洗面所:20~40万円
トイレや洗面所もそれなりに費用はかかりますが、他の2つと違って金額差はそれほど広くはないでしょう。
キッチン・バス・トイレなど水回りのリフォームは、業者によってはセットで発注すれば安くなることがあります。複数箇所まとめてリフォームを依頼するのもひとつの方法です。
フローリング床の張り替え:15,000~20,000円/㎡
クロスやフローリングの張り替え費用は、1平方メートルあたりの金額で考えます。
フローリングの施工費用は、1㎡あたり15,000~25,000円が相場です。
大量のフローリング材ほど安く、意匠性に優れた少量生産品などは高価になります。
クロス床の張り替え:1,500~2,500円/㎡
クロスの張り替え費用は、フローリングと同様に面積単位で考えます。
クロスの単価は1,500~2,500円/㎡程度と比較的安価であり、よほどの広さを張り替えない限りは、大きな出費にはならないでしょう。
マンションリフォームの工事前の注意
マンションのリフォーム工事を行う前に、工事ができるかどうか・いま必要かどうかを把握しないと、時間やお金が無駄になってしまうおそれがあります。
具体的には、以下の4点をチェックしておけば安心でしょう。
- マンションの管理規約でリフォーム可能な範囲を知る
- リフォーム予算の上限を決めておく
- 寿命を考慮してリフォーム箇所を検討
- リフォームが完了するまでの期間の目安
それぞれについて詳しく解説します。
マンションの管理規約でリフォーム可能な範囲を知る
マンションは建物ごとに管理規約が定められており、それぞれでリフォーム可能な範囲は異なります。
構造上リフォームができないものはもちろん、規約で禁止されている内容については行えないため、どこまで可能なのか事前に確認しておかなければなりません。
規約に違反するリフォームをしてしまうと、原状回復を求められて余計な手間と費用がかかったり、場合によっては契約違反で退居を求められたりもします。
物理的にリフォーム可能な範囲だけではなく、制限的にどこまで行えるのかも必ず理解しておく必要があります。
リフォーム予算の上限を決めておく
リフォームはこだわって行うなら、どこまでもお金をかけることは可能です。
しかし、追求し続けるときりがないため、どの程度までを上限とするのか、予算は明確にしておかなければなりません。
予算を決めておかないとリフォームの範囲が際限なく広がってしまい、場合によっては住み替えたほうが安いということもあります。
また、金銭的な余裕がない場合も同じであり、必要な工事を確実に行うには、予算から見て取捨選択を行うことが大切です。
リフォームでいくらまでなら出せるかを確認すると同時に、もっとも優先して行うべきことは何かも、家族で話し合っておきましょう。
寿命を考慮してリフォーム箇所を検討
フルリフォームではなく、部位を個別にリフォームを行う場合はまだ使えるのにリフォームしたり、使う予定の年数に対して寿命が長過ぎるリフォームを避けるも、費用をおさえるうえでは大切です。
マンションの各部位と、平均的なリフォーム周期(寿命)は以下が目安になります。
マンションの部位 | 交換周期の目安(寿命) |
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キッチン本体交換 | 20~25年 |
レンジフード交換 | 15~20年 |
トイレ交換 | 15~20年 |
ユニットバス交換 | 20~30年 |
洗面台交換 | 15年 |
給湯機交換 | 10~15年 |
クロスの張り替え | 5~10年 |
フローリング | 20~30年 |
室内ドア交換 | 25~30年 |
例えば、まだ住み始めて数年程度ならリフォームの必要性はほとんどなく、5年程度でようやくクロスの張り替えを検討してもよい程度です。
しかし、20~30年以上経過すると、交換していないほとんどの箇所のリフォームが必要となるため、ある程度まとめてフルリフォームをするのが費用をおさえる上でおすすめです。
フルリフォームができないならば、各部位の寿命を考慮して緊急性の高いものから順に実施していきましょう。
リフォームが完了するまでの期間の目安
リフォーム工事は最短1日、最長では数カ月と、工期の幅が広い作業です。
そのため、完了までの期間を把握し、工事の規模に応じて仮住まい・トランクルーム・最寄りの銭湯などの利用費用を想定しておくことが重要となります。
マンションに行う主なリフォーム工事と、それぞれにかかる期間の目安は以下のとおりです。
作業内容 | 目安の期間 |
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クロスの張り替え | 1~2日程度 |
キッチン交換 | 2~3日程度 |
お風呂の交換 | 4~7日程度 |
トイレの交換 | 数時間~1日程度 |
フルリフォーム | 2~4カ月以上 |
まとめ:マンションリフォームの自由度は意外と高い!
マンションのリフォームを成功させるには、かかる費用を把握し、仕上がりをイメージしてから望むことが大切です。細かいポイントにも留意し、万全の下準備を行ってから、スムーズにリフォームを進めていきましょう。
>>>「一戸建てのリフォームの費用相場」について詳しく知りたい方は、下記の記事もご覧ください。
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