外壁塗装における塗装とは?施工の各工程や必要な道具、塗料について

  • 【更新日】2024-09-12
初めての塗装を成功させるコツ

塗装とは、ものの表面を塗料の被膜で覆うことです。
塗料が乾燥したあとの被膜を「塗膜」と呼び、色や光沢、デザイン、機能(遮熱性など)のことなる様々な種類があります。

その中でも外壁塗装とは、建物の外壁に塗料を塗布して塗膜を形成させる作業です。

家の外壁や屋根にそろそろ塗装が必要…と思っても、一体何から始めればいいのか分からない!という方は多いのではないでしょうか

本記事では、ご自宅の塗装リフォームを初めて考えた方向けに、どんな作業なのかを解説いたします。

Point
  • 塗装の方法は「刷毛塗り」「ローラー塗装」「吹き付け塗装」の3種類が一般的
  • 塗装の工程は「下塗り」「中塗り」「上塗り」の3回塗りが基本
  • 塗装で使う塗料は「下塗り塗料」「中・上塗り塗料」の2つに分けられる

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小林成光(コバヤシマサミツ)さんのプロフィール写真 監修者:外装劣化診断士 小林 成光

600件以上の現地調査を実施する過程で得た専門性を生かし、日本発のネット見積もりシステムでビジネスモデル特許を取得。ヌリカエにて、外装工事の専門家として、顧客・加盟企業のサポート・コラムの監修に従事。 ▼略歴・プロフィール
「監修者|小林 成光(株式会社Speee)」

塗装方法の種類

塗装方法の種類一覧
方法 作業
刷毛塗り 刷毛を使って塗り広げる
ローラー塗装 ローラーブラシで塗り広げる
吹き付け塗装 スプレーガンで塗料を吹き付ける

塗装には「刷毛塗り」「ローラー塗装」「吹き付け塗装」の3つの方法があります。

これらの基本的な違いは、使用する道具です。
どの方法で塗装をするかは、使用する塗料や、塗装する素地、塗装環境によって決定をされます。

ここからはそれぞれの塗装方法がどんな作業なのか解説をします。

刷毛塗り

刷毛塗りは、文字通り、刷毛(ハケ)を使って、塗料を広く伸ばしていく塗装方法です。

刷毛塗りは、作業スピードが遅いですが、塗料のロスが少なく、塗料が飛び散りにくいことが特徴です。

その特徴から、細かい部分は刷毛塗りで、広い部分は他の塗装方法で、といったように工事方法が棲み分けされることがあります。

また、様々な場所、形状に対して簡単に塗装することも可能です。

刷毛塗りの中でも、使用する道具によって使用用途にそれぞれ違いがあります。

それぞれの道具の特徴について下記で解説をします。

平刷毛

用途:平らな面や広い面を塗るときに使用

通称、べた刷毛とも呼ばれ、刷毛の部分と持ち手となる柄が一直線になっています。
ローラーが普及する前は、平刷毛が外壁塗装の主な道具として使用されていました。

筋交い刷毛

用途:角や細かい部分を塗るときに使用

刷毛の部分と柄が45度に曲がっていることが特徴です。

刷毛と柄に角度がついていることで、塗りやすく、この形は日本独自のものです。

えんぴつの持ち方と同じで、手先を細かく動かす繊細な作業ができます。

寸胴刷毛

用途:粘度の高い塗料を伸ばして塗るときに使用

形は平刷毛と同じですが、平刷毛よりも毛量が多いことが特徴です。

塗料の希釈率は塗料メーカーによって異なるのですが、塗料を濃いめの希釈で塗るときに使用します。

かつては刷毛といえば、寸胴刷毛が一般的でしたが、現在は筋交い刷毛やローラー刷毛がメインに使用されています。

画像出典:モノタロウ

刷毛の材質

刷毛の材質一覧
材質 特徴
馬毛 柔軟性・弾力性に優れ、普及率が高い
豚毛 硬くコシのある材質で高粘度用の刷毛としての使用が多い
ヤギ毛 馬毛同様、塗装に広く普及している
化学繊維 水性塗料用の刷毛での使用が多い
刷毛には材質の違いもあり、大きく、獣毛と化学繊維の2種類に分けられます。

獣毛には、馬毛・豚毛・ヤギ毛の三種類があります。

馬毛やヤギ毛は、体や部位によって毛の柔らかさに違いがあります。

使用用途によって、最適な刷毛の材質も異なるため選定時には注意が必要です。

ローラー塗装

コンクリート塀の塗装作業

ローラー塗装は、ローラーを使って、塗料を広く伸ばしていく塗装方法です。

刷毛ほどではありませんが塗料の飛び散りが少なく、広い範囲を効率よく塗装できます。

しかしローラー塗装は、使用する道具によって仕上がりの質が大きく左右されます。

劣化したローラーを使うと、塗装にムラがつき、塗料が期待通りの効果を発揮しない原因にもなります。

塗装時によく利用されるローラーは、レギュラーローラーとミドルローラーの2種類です。

ここからはそれぞれのローラーの特徴についてここから解説をします。

レギュラーローラー(9inch)

用途:障害物のない幅広い面を塗るときに使用

レギュラーローラーは9inch規格のローラーです。

ローラーの種類は、一般的にインチで表記されます。

塗装時には、ハンドル部分の重さに加え、塗料がローラーに含まれることによって、ローラーの重量が増加します。

レギュラーローラー使用時には多少の腕力が必要です。

ミドルローラー(7inch)

用途:広い面、狭い面の両方を塗るときに使用

ミドルローラーは、広い面、狭い面両方を塗るときに使用できる万能なローラーです。

広い面をローラー塗装をしたいが、レギュラーローラーは重いといった場合に、使用されることがあります。

スモールローラー(4inch)

用途:狭い面を塗るときに使用

スモールローラーは、狭い面を塗るときに適したローラーです。

小回りが利くため、窓、コンセント周辺、細かな付帯部分を塗るときに使用されます。

画像出典:amazon

ローラーの素材

ローラーの素材は、大きく分けて、「ハイパイル」「ウーブン」の2種類があります。
それぞれの違いは、素材の織られ方です。

ハイパイルは、ニットにように繊維が絡み合うように織られており、現在の主力素材です。

ローラーに対して塗料を含ませやすく、外壁塗装に適した素材です。

一方のウーブンは、繊維がW字型に織られている素材になります。

ウーブンはハイパイル型に比べて塗料が含みにくいのですが、空気の抜けが仕上がりがよい点が特徴的な素材です。

ウーブンは内装の塗装に適した素材です。

吹き付け塗装

吹付塗装の写真

吹き付け塗装は、スプレーガンを使用して塗料を霧状にし吹き付けていく塗装方法です。
厳密には、エアースプレー方式とエアレススプレー方式と二つの分類があります。

どちらの場合においても、一気に広範囲を塗装することができ、その作業効率は刷毛塗りの10倍にも及びます。

しかしながら、塗料が周辺に飛び散りやすく、塗装時に騒音がすることから塗装環境の整備には注意が必要な塗装方法でもあります。

ここからは、スプレーガンでよく使用される道具の特徴について解説をします。

重力式スプレーガン

用途:細かな部分を塗装する際に使用

重力式スプレーガンは、重力に向かって落下する塗料を吹き付けるタイプのスプレーガンです。

塗装する際は、重力の利用をするため、塗料の供給原理が簡単であることが特徴です。

塗料を入れる容器が小さく、色変えが多いときや、少量だけ塗装をしたいときに使用されます。

吸上式スプレーガン

用途:広い面積を塗装する際に使用

吸上式スプレーガンは、本体下部のカップから吸い上げて塗料を吹き付けるタイプのスプレーガンです。

底が平らなカップが本体下部についていること安定性があり、作業中に地面に置くことも可能です。

重力式スプレーガンより塗料を入れる容器が大きく、広い面を塗装する際に仕様されます。

画像出典:楽天

吹き付け塗装はもったいない?

吹き付け塗装は、塗料が周辺に飛び散りやすいことから塗料のロスが多い工法です。
そのほか、下記のようなデメリットがあるため、一般的な外壁塗装で利用されなくなりました。
  • 塗装時にはシンナーも混ぜるため、刺激臭が漂う
  • 一回の塗装工事で使用する塗料がとても多い
  • これまでは吹き付け塗装でしかできなかったデザインがローラー塗装でも実現できるようになった
しかしながら、いまだに吹き付け塗装でしか実現できないような工事もあるため、今でも必要な工法なのです。

例えば、吹き付けタイル仕上げ、リシン仕上げ、スタッコ仕上げといった工法があるのですが、施工の際はそれぞれ専用のスプレーガンを利用します。

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塗装作業の流れ

住宅向けの本格的な塗装作業は、ただ塗料を塗りひろげるだけではありません。
雨や風のなかで数年~十数年以上は耐久性を発揮できるよう、「塗装を塗る」以外にも多くの工程があります

ここでは塗装の全体像をつかむため、準備から完了までの流れと、各工程をおこなう意味をご紹介します。

下塗り

まずは「シーラー」「フィラー」と呼ばれる下塗り材を、塗装範囲全体に塗ります。
下塗りをすることにより、このあとに塗る塗料の密着性が上がり、長持ちするようになります。

中塗り

下塗りの後・上塗りより前の2層目の作業を「中塗り」と言います。
中塗りをすることではじめて塗膜の厚みがじゅうぶん確保され、メーカーの意図した耐久性・仕上がりになります

塗装は通常「3回塗り」

住宅の塗装「下塗り」「中塗り」「上塗り」の3層ぶん施すのが基本です。このことを指して、見積もりなどでは「3回塗り」と表記されます。

 

上塗り

最後に上塗り工程を行います。
上塗りはもっとも表面の層なので、下塗り・中塗りとは違い、実際に仕上げたい色で塗装します。

養生をはがすのはこのタイミング

養生は、上塗りが乾かないうちに手早く剥がします。乾いてから剥がすと、テープと一緒に塗膜が取れ、きれいに塗っても台無しになるおそれがあります。


塗装前後の状態を比べると、外壁の美観が回復しただけでなく、作業前を配色を変えイメージチェンジもできています。

塗装作業の流れは以上です。
作業にかかる期間は、早くても7~8日間、通常で2週間前後となります。

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下塗り塗料の種類

下塗り塗料の種類一覧
種類 特徴
プライマー 主に吸い込みのない金属面に使用
シーラー 主に吸い込みのある木材面に使用
フィラー 外壁の凹凸を平らにならす際に使用

下塗り用塗料には「プライマー」「シーラー」「フィラー」の3つの種類があります。

特にプライマーとシーラーの違いは、塗装をする下地によって選択される下塗り塗料が別れることが特徴です。

ここからは下塗り塗料がそれぞれどんな特徴があるのか解説をします。

プライマー

プライマーの製品画像
画像出典:アサヒペン

プライマーは、主に吸い込みのない金属面に使用する下塗り塗料です。

中・上塗りとの密着性もさることながら、基本的には金属用の下塗り塗料として扱われるため、防錆効果を期待して塗装されることが多いです。

金属面以外では、コンクリート面に対しても使用されることがあります。

この場合は、雨や凍結によって劣化している表面へ浸透させることで、耐久性向上を期待して塗装されます。

シーラー

シーラーの製品画像
画像出典:アサヒペン

シーラーは、主吸い込みのある木材などの面に使用する下塗り塗料です。

シーラーの適用下地は木材のみならず、窯業系もあてはまります。

この窯業系は日本の住宅の7割程度が採用をしている外壁材です。

窯業系の下地は、下地密度が均一ではありません。

そのため、部分によって塗膜の観測時間にばらつきが生じます。

吸い込みのある木材などの面を塗装する場合において、塗膜の密着性を高めるため、ムラない美しい外壁に仕上げるためにも欠かせない下塗り塗料です。

フィラー

フィラーの製品画像
画像出典:日本ペイント

フィラーは、主に外壁の凹凸を平らにならす際に使用する下塗り塗料です。

フィラーの中でもっともよく使用されるのが、「微弾性フィラー」です。
微弾性フィラーを塗装することによって、ひびや割れにフィラーを埋めることができます。

近年は塗装工事の場合は、「シーラー」に代わって、「フィラー」を使用することが主流になりつつあります。

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中・上塗り塗料の種類

塗装の耐久性は、選んだ塗料が大きく左右します。
そのため、予算の中でなるべく耐用年数の長い塗料を選ぶことが重要です。

塗料の種類と費用・耐用年数の違い

塗料の耐用年数の大部分は、使われている樹脂で決まります。

住宅用の塗料用樹脂のグレードは、安いものから「アクリル」「ウレタン」「シリコン」「フッ素」の4種類となっています。
それぞれの耐用年数と価格の目安は以下のとおりです。

塗料のグレードと耐用年数・価格の一覧
塗料の種類 耐用年数 価格(単価)相場
アクリル塗料 5~7年 1,400円~1,600円/㎡
ウレタン塗料 7~10年 1,700円~2,200円/㎡
シリコン塗料 10~15年 2,200円~3,000円/㎡
フッ素塗料 15年~20年 3,800円~4,800円/㎡

今の家に住み続ける予定の年数を考慮し、もっともコストパフォーマンスが良くなる塗料を選びましょう。

今、コストパフォーマンスが最も良い塗料は?

外壁用の塗料で、今もっとも価格と耐用年数のコストパフォーマンスがよいのは「ラジカル塗料」です。

ラジカル塗料の塗装費用は「2,400円/㎡」が目安で、耐用年数は約15年前後です。
この年数は、同価格帯の「シリコン塗料」に比べて2~3年長く、大変お得な製品と言えます。

▼「ラジカル塗料」について詳しく知りたい方は、下記の記事もご覧ください。

▼「塗料の基礎知識」について詳しく知りたい方は、下記の記事もご覧ください。

▼「各塗料樹脂の特徴や製品」について詳しく知りたい方は、下記の記事もご覧ください。

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まとめ

以上、塗装の基礎知識について解説をしました。

この記事を読んでいる方の中には、「自分で塗装をしてみたい」とお考えの方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。

外壁塗装DIYでは、下地素材や劣化症状などによって塗装の難易度が大きく変わります。

外壁塗装をDIYするメリットやデメリットについては下記の記事で詳しく紹介していますので、ぜひ合わせてご覧ください。

最後までご覧いただきありがとうございました!

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