アスファルトシングルとは?メリット・デメリット、代表製品、費用を解説

  • 【更新日】2024-07-22
アスファルトシングルの基礎知識

アスファルトシングルは、洋風のおしゃれなデザインが人気の屋根材です。

しかし、屋根を選ぶのであれば、デザイン性だけでなく、防水性能や耐久性、価格なども気になりますよね。

本記事では、アスファルトシングルについて初めて調べる方に向けて、アスファルトシングルの代表商品・特徴・工事費用について解説しています。

小林成光(コバヤシマサミツ)さんのプロフィール写真 監修者:外装劣化診断士 小林 成光

600件以上の現地調査を実施する過程で得た専門性を生かし、日本発のネット見積もりシステムでビジネスモデル特許を取得。ヌリカエにて、外装工事の専門家として、顧客・加盟企業のサポート・コラムの監修に従事。 ▼略歴・プロフィール
「監修者|小林 成光(株式会社Speee)」

アスファルトシングルとは

アスファルトシングルの表面
アスファルトシングル材の表面イメージ

アスファルトシングルとは、ガラス繊維にアスファルトを浸透させたシート状の屋根材です。
別名で、単に「シングル(材)」と呼ぶ業者もいます。

アスファルトシングルの原料であるガラス繊維とアスファルトはどちらも防水性に優れているため、雨漏りに強い屋根を求める人に最適です。

ただし、表面に水が留まり藻が生えやすいことと、強風でめくれることがあるのえ定期的にはがれのチェックが必要な屋根材でもあります。


▼住宅の主な屋根材の種類や特徴については、以下の記事で詳しく解説しています。
>> 代表的な屋根材の種類と特徴

アスファルトシングルの代表商品

日本販売されているアスファルトシングルの代表商品とメーカー名、施工費用(材工費)を以下にまとめました。

商品名 特徴 材工費
「アルマ」のデザイン
アルマ
  • 最も安価
3,500円/㎡~
「リッジウェイ」のデザイン
リッジウェイ
  • 定番品のひとつ
5,830円/㎡~
「シングルライン マスター」のデザイン
シングルライン
  • 色・デザインが豊富
5,800円/㎡~
「オークリッジスーパー」のデザイン
オークリッジスーパー
  • 最も定番品
  • 高い耐風性
  • メーカー保証が充実
8,000円/㎡~
田島ルーフィング「SHINGLE」
SHINGLE(シングル)
  • 田島ルーフィングが製造
11,000円/㎡~

各商品の特徴を捕捉で解説します。

アルマ

アスファルトシングル「アルマ」

画像出典:ニチハ

価格が安価であることと、セルフシーラント(自着材)のはたらきで耐風性・防水性に優れるのが特徴のアスファルトシングル。
ちなみにアルマとはラテン語で「鎧」を指し、英語のアーマー(armor)の語源となっている言葉です。

製品の価格は3,500円/㎡~、メーカーは10~20年で葺き替えかカバー工法を推奨しており、実質的な耐用年数もこの長さと判断できます。

多雪地域では施工不可

アルマは施工地域が限定されており、北海道、東北地方の日本海側、北陸などの多雪地域では施工できません。

リッジウェイ

アスファルトシングル「リッジウェイ」

画像出典:「ファイバーグラスシングル リッジウェイ」(旭ファイバーグラス)

メーカー独自の2層構造により「防水性・耐久性」と「表面の深みのあるデザイン」を実現したアスファルトシングルです。
風速46m/sの強風試験にも耐える高い耐風性と、釘を打っても穴が水分を通しにくいシール性が実証されています。

製品の価格は5,830円/㎡~で、メーカーによる10年保証がついています。

シングルライン

アスファルトシングル「シングルライン」

画像出典:「アスファルトシングル屋根材商品紹介」丸鹿セラミックス

ベーシックな「マスター」、うろこ模様の「トラディッショナル」、ハニカム(六角形)模様の「モザイク」の3種類のデザインがあり、それぞれカラーバリエーションも6色・3色・5色が用意されています。

シングルラインのデザイン例

製品の価格は5,800円/㎡~です。
また、ヨーロッパの寒冷地域での使用実証されており、機能性も心配ありません。

オークリッジスーパー

アスファルトシングル「オークリッジスーパー」

画像出典:「OAKRIDGE SUPER (オークリッジスーパー)」(オーウェウンスコーニングジャパン)

表面に粒状石のコーティングを施し、紫外線による退色と藻の発生を抑える効果をもたせています。

製品の価格は8,000円/㎡~です。
また、経過年数に応じて損傷復旧費用の20~100%を保証する40年以上の長期保証制度がメーカーにより付帯されています。

SHINGLE(シングル)

ルーフィングシート(屋根の防水紙)の大手メーカーである田島ルーフィングが製造・販売しています。
屋根材およびアスファルトシートの扱いに長けた同社ならではの信頼性・高級感があります。

製品の設計価格は11,000円/㎡~です(既存スレート屋根にカバー工法で施工の場合)。

使うならどの製品がいい?

4製品を比較すると、

  • 「価格の安さ」ならアルマ
  • 「耐風性」「保証年数の長さ」ならオークリッジスーパー
  • 「色・デザインの豊富さ」ならシングルライン

 

が優れていました。
これを参考にして、希望する性能・特徴に合わせて選びましょう。

日本では現状、海外での実績が豊富な「オークリッジスーパー」か「リッジウェイ」を取り扱う屋根工事店が多いようです。

アスファルトシングルのメリット

アスファルトシングルの屋根には、主に以下の5つメリットがあります。

  1. 雨漏りを起こしづらい
  2. 屋根の下地が長持ちする
  3. 遮音性が高い
  4. 施工費用が安い
  5. 家を選ばず施工可能

メリット①雨漏りを起こしづらい

アスファルトシングルは非常に耐水性の高い屋根材です。
耐水性が高い理由は、原料のガラス繊維とアスファルトが高防水性なことと、接着剤で貼るので屋根に釘等の穴が開かないことの2つあります。

このことから、住んでいて雨漏りが起きづらい屋根材と言えます。

メリット②屋根の下地が長持ちする

1つ目と同じく、高い防水性からくるメリットです。
雨が降っても下地木材が濡れることが少ないため長持ちし、屋根材が耐用年数を迎えても下地の交換はせずに済む場合が多いのです。

下地は引き続き使える状態であれば、リフォームのときに「カバー工法」という安価な工事が選べるので、維持費の節約にもなります。

「カバー工法」とは?

屋根のカバー工法とは屋根全体をリフォームする方法の一つで、既存の屋根にそのまま新しい屋根材を張りつける工法です。古い屋根材を剥がしてから新しい屋根材を張る「葺き替え」よりも工事費用が安いことがメリットですが、下地の劣化が進んでいる場合は工事ができません。

メリット③遮音性が高い

アスファルトシングルの表面には、細かく砕かれた石粒が吹き付けられています。
これにより、雨が当たっても分散され、雨音が屋根裏や室内に響きにくい屋根材と言えます。

反対に、トタンやガルバリウムのような金属屋根だと、雨音がよく鳴るためよく響くことがあります。

メリット④施工費用が安い

アスファルトシングルの施工費用は、他の屋根材と比べても比較的安い部類に入ります。
具体的にはもっとも安価なスレート屋根とほぼ同程度の価格です。

主な屋根材5種類と施工費用の比較
屋根材の名称 施工費用の目安
アスファルトシングル 3,500円~8,000円/㎡
スレート 4,000円~8,000円/㎡
トタン 5,000円~6,000円/㎡
ガルバリウム鋼板 6,000円~12,000円/㎡
陶器瓦 9,000円~16,000円/㎡

もちろん、高級品のアスファルトシングルを選べば、製品の価格のぶん費用が上がり、他の屋根材よりも高くなる場合があります

メリット⑤家を選ばず施工可能

アスファルトシングルの施工は、100cm×30cmほどのシートを屋根に敷き詰めていく工事になります。
そのため、他の板状の屋根材よりも融通が利きやすく、屋根の形や傾きに左右されることが少ない屋根材と言えます。

アスファルトシングルのデメリット

アスファルトシングルには多くのメリットがある一方で、以下の4つのデメリットも存在します。

  1. 強風ではがれることがある
  2. コケや藻が生えやすい
  3. 勾配がゆるい屋根には向かない
  4. 表面の石粒が剥がれ落ちてくる

デメリット①強風ではがれることがある

アスファルトシングルの屋根は、シート状の素材を接着剤で貼り付けて作られているため、他の屋根材より風でめくれたり剥がれたりしやすいという難点があります。

そのため、万全につかい続けるためには5年おきを目安に業者による屋根のめくれ・はがれの点検(1回1~3万円)を推奨します。

デメリット②コケや藻が生えやすい

アスファルトシングル屋根の表面は、道路のように凸凹のあるザラザラした仕上がりになっています。
そのため雨が降ったあとも流れていきにくく、凹凸に多少の水の滞留が発生します。

コケや藻は乾かず水分が残った面に生えやすいので、この条件に当てはまるアスファルトシングルはコケ・藻が発生しやすいでしょう。
屋根の美観の維持・回復のためには、高圧洗浄や塗装などのメンテナンスが必要です。

デメリット③勾配がゆるい屋根には向かない

前項の水分が滞留することからくるもうひとつのデメリットです。
アスファルトシングルは、最低限の水はけを確保するために低勾配の屋根では施工ができないことがあります。

具体的には、ほとんどの製品に共通して3.5寸~27.5寸(約20度以上70度以下)が標準勾配に指定されています。

デメリット④表面の石粒が剥がれ落ちてくる

アスファルトシングル屋根の表面には、細かい石粒が吹き付けられているとご説明しました。
そのため、経年劣化で剥がれた石粒が軒先からポロポロと落ちてくることがあります。

車、園芸の草花、その他物品など家の敷地内にあるものが汚れたり傷ついたりするかもしれません。

アスファルトシングルの工事費用

アスファルトシングルの張り付け工事の様子

この章では、アスファルトシングルの屋根にするのにかかる費用や、メンテナンスにかかる費用を解説していきます。

ご自身の予算と比較しながら、アスファルトシングルにするかどうか検討するための材料にしてみてください。

アスファルトシングル屋根へリフォームする費用

戸建住宅の屋根をアスファルトシングルへリフォームする費用は葺き替えで「130~170万円」、カバー工法で「110~150万円」が相場です。

単価でいうと、アスファルトシングルの材料費と施工人件費は1㎡あたり5,000~8,000円が平均です。
高級な製品を選ばない限り、高くても8,000円を超えることは少ないでしょう。

なお屋根工事には屋根材にかかる費用のほかに、「足場費用」「下地処理費用」「古い屋根材の撤去費」などがかかります。

アスファルトシングルへの「葺き替え」の見積もり例

平均的な2階建て住宅の屋根をアスファルトシングルに葺き替える工事にかかる費用の目安を、費目や単価もわかるようにまとめました。
ご自分の見積もりと比べて高いか、安いか、不要な工程が含まれていないか等の判断にお役立てください。

工事内容・費目 単価相場 費用相場
足場架設 750円/㎡ 21,7000円
養生 200円/㎡ 58,000円
既存屋根材の撤去 1,600円/㎡ 160,000円
下地(野地板)の補修・調整 2,000円/㎡ 200,000円
防水シート張り 650円/㎡ 65,000円
アスファルトシングルの材工費 5,250円/㎡ 525,000円
棟の設置費 2,000円/m 200,000円
諸経費・運搬費 上記合計の5% 70,000円
消費税 10% 150,000円
合計 1,151,000円
上記の金額は、屋根面積を平均的な2階建ての場合の「100㎡」、足場架設・養生面積を「290㎡」、棟を「計50m」として算出

アスファルトシングルで「カバー工法」する見積もり例

カバー工法の費用は、葺き替えから「既存屋根材の撤去」と「下地調整」の工程を除いた金額が目安になります。
費目・単価・合計費用の目安は以下のとおりです。

工事内容・費目 単価相場 費用相場
足場架設 750円/㎡ 21,7000円
養生 200円/㎡ 58,000円
防水シート張り 650円/㎡ 65,000円
アスファルトシングルの材工費 5,250円/㎡ 525,000円
棟の設置費 2,000円/m 200,000円
諸経費・運搬費 上記合計の5% 55,000円
消費税 10% 112,000円
合計 1,232,000円
上記の金額は、屋根面積を平均的な2階建ての場合の「100㎡」、足場架設・養生面積を「290㎡」、棟を「計50m」として算出

アスファルトシングルの耐用年数

アスファルトシングルの耐用年数は20~30年が目安です。
これは、主要な屋根材の中ではやや短めの部類になります。

主な屋根材5種類と耐用年数の比較
屋根材の名称 耐用年数の目安
アスファルトシングル 20年~30年
スレート 25年~30年
トタン 10~20年
ガルバリウム鋼板 30年~40年
陶器瓦 50年以上

耐用年数をむかえるまでに必要なメンテナンス

耐用年数が過ぎるまでの間に必要なメンテナンスは、アスファルトシングル屋根の場合5年ごとの「はがれの点検・補修」、15年目の「棟の交換」、30年目の「葺き替え」もしくは「カバー工法」です。

耐用年数の30年目までにかかるメンテナンス費用は合計140~205万円となります。

作業内容 周期目安 費用
はがれの点検・補修 5年ごと 1~3万円
棟の交換 15年目 10~30万円
葺き替え(※) 30年目 130~170万円
カバー工法(※) 30年目 110~150万円
30年間でかかる費用 125~205万円
※費用のうち「葺き替え」「カバー工法」はどちらが一方のみ

築5年ごとに「はがれの点検・補修」(1~3万円)

アスファルトシングル屋根は、大きなシートが屋根に接着剤で固定されている状態です。

接着面がはがれることがあるため、築5年目に業者によるはがれの点検・補修を受けることで、トラブルをかなり防ぐことができます。

築5年目以降も、10年目、15年目…と5年ごとに同様の点検・補修を受ければ安心です。

築15年目に「棟板金の交換」(10~20万円)

アスファルトシングル屋根も、築15年目をめどに棟板金の劣化とクギの固定力の減少が起こり、強風で飛んでいってしまう危険が高まります。

そのため、この時期に棟板金の交換と、下地が木材の場合はその交換も行うのがオススメです。

築20~30年目に「葺き替え」(130~170万円)

アスファルトシングル屋根は築20~30年で寿命を迎えます。

このタイミングで、「葺き替え」か「カバー工法」を屋根全体をリフォームすることを推奨します。

また、アスファルトシングルは防水力が高いので、他の屋根材に比べて下地が傷みにくく、安価なカバー工法が採れる可能性が高いでしょう。

塗装は必ずしも必要ではない

アスファルトシングルは、防水性の維持の観点では塗装は必須ではありません。しかし、コケ・カビ・変褪色で落ちた美観を回復させたい場合には、塗装工事を行うこともあります
アスファルトシングルを塗装する際、油性塗料を用いるとアスファルトの成分が溶けて屋根が劣化するので、必ず水性塗料で塗装をしましょう。また、屋根材の裏にまわった水を逃がす「縁切り」と呼ばれる工程も非常に重要なので、きちんと工程に含まれているかをしてください。

まとめ

アスファルトシングルは、安くて防水性も高い、優れた屋根材です。デザインが気に入れば、理想的な屋根材と言えるでしょう。

しかし、強風によって剥がれが起きやすく、そこから雨漏りにつながったりします。
安く、長く使い続けるためにも、5年を目安にマメな剥がれの点検を行ないましょう。

最後に、本記事の要点を振り返ります。

アスファルトシングルとはどんな屋根?

アスファルトシングルとは、ガラス繊維にアスファルトを浸透させたシート状の屋根材です。防水性に優れているため雨漏りに強い屋根を求める人に最適です詳しく知りたい方はアスファルトシングルとはをご覧ください。

アスファルトシングルのメリットは?

雨漏りを起こしづらいこと、屋根の下地が長持ちすること、施工費用が安いこと等があります。詳しくはアスファルトシングルのメリットをご覧ください。

アスファルトシングルのデメリットは?

他の屋根材より強風に弱いこと、コケや藻が生えやすいこと、勾配がゆるい屋根には向かないこと等です。詳しくはアスファルトシングルのデメリットをご覧下さい。

アスファルトシングルにリフォームするのにいくらかかる?

屋根全体を新しく交換する葺き替え工事で「130~170万円」、既存屋根にアスファルトシングルを重ね張りするカバー工法で「110~150万円」が目安です。詳しくはアスファルトシングルの工事費用をご覧ください。

最後までお読みいいただき、ありがとうございました。

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