アクリル樹脂は日用品や看板・照明器具のカバー・事務用品など、身近に多数の製品がありますが、塗料の原料としても広く利用されています。今回はアクリル塗料の基礎知識と、新しい技術で開発されたピュアアクリルのすごさを解説します。
- ● アクリル塗料のメリットは安価で種類が豊富であること
- ● 新技術で開発されたピュアアクリル
私の家だといくら?
アクリル塗料とは

アクリル塗料とは、アクリル樹脂を主成分とする塗料で、1950年頃から開発・製造が始まりました。当時は発色の良い画期的な塗料として人気を集め普及していきましたが、その後ウレタン樹脂塗料やアクリルシリコン樹脂塗料などの高性能な塗料が次々に開発され、現在の需要は少なくなっています。
しかし、安価で購入できることやカラーバリエーションが豊富なこと、扱い(希釈や攪拌)が容易なことなどでDIY塗料としては人気があります。また、使用用途・使用箇所によってはアクリル塗料が適している場合もあります。
アクリル塗料のメリット・デメリット

アクリル塗料のメリットとデメリットを以下に解説します。
メリット
・費用が安い
塗料の費用が安い(
1,200~1,800円/㎡
)ことは大きなメリットといえます。店舗など数年毎に外壁のリフレッシュをしたい場合などにオススメの塗料です。
・カラーバリエーションや種類が豊富
アクリル塗料は発色が良いため、
カラーバリエーションが大変豊富
です。また、塗料としての歴史が長いため、各メーカーからもさまざまな種類の塗料が販売されています。
・使いやすい塗料
アクリル塗料のほとんどが1液型となっており、DIYで多く使われているように素人にも使いやすい塗料です。旧塗膜がアクリル塗料の場合は、シーラーレスでも塗装できるものがあり、重ね塗りができて手間がかかりません(塗膜が劣化している場合は注意が必要)。
デメリット
・紫外線に弱いため劣化が早い
アクリル塗料は紫外線によってラジカル(劣化因子)が発生しやすく、塗料の組織が破壊されるため劣化が早く進みます。
数年で塗膜の光沢が失われ変色や褪色が目立つ
ようになり、さらに劣化が進むと塗料の機能が十分に発揮されなくなってしまいます。
・塗膜が硬くひび割れが起きやすい
一般的なアクリル樹脂は常温では硬く、柔軟性を持たせるために可塑剤が加えられています。可塑剤は紫外線によって
3~5年
程度で徐々に抜けていきます。可塑剤が抜けると塗膜の柔軟性が失われひび割れが発生します。
・塗り替えサイクルが短い
アクリル塗料は他の塗料に比較して
耐用年数が5年~7年程度と短い
ため、頻繁な塗り替えが必要になってきます。イニシャルコストは低くても、ライフサイクルコストで計算すると決してコストパフォーマンスが良いとはいえなくなります。
他の塗料との比較

樹脂の種類による塗料の特徴や耐用年数・価格などを比較してみました。
【ウレタン塗料】
ウレタン樹脂が主成分の塗料で、密着性や弾性に優れています。シリコン塗料が登場するまでは外壁塗装の主流でした。現在でも用途や目的によって採用されている人気の塗料です。
耐用年数は8年~10年程度。費用は1,800~2,200円/㎡程度。
【シリコン塗料】
アクリルシリコン樹脂を主成分とする塗料で、価格のわりに性能が優れていることから、現在は外壁塗装に最も多く採用されています。耐用年数は10年~15年程度。費用は2,500~3,200円/㎡程度。
【フッ素塗料】
フッ素樹脂を主成分とする塗料です。耐用年数は15年~20年と長く、最高級のグレードを誇りますが、まだ価格が高いため一般住宅などへの普及は遅れています。費用は3,500~4,500円/㎡程度。
【無機塗料】
無機塗料とは、鉱物などの無機物を配合している塗料のこと。100%無機物では塗料として使用できないため、有機物である合成樹脂にセラミックなどを配合しているハイブリッド塗料です。耐用年数は主成分となる樹脂の種類によっても異なりますが、フッ素樹脂配合の無機塗料は18年~22年と、フッ素樹脂塗料よりも長くなっています。費用は日本ペイントの「アプラウドシェラスターNEO」の場合3,560円/㎡~になっています。
↓↓塗料全般について詳しく知りたい方は、こちらの記事も併せてお読みください↓↓代表的なアクリル塗料
大手3大メーカーの代表的なアクリル塗料を以下にご紹介します。
日本ペイント

・ニッペ水性ケンエースグロス(水性反応硬化形エマルジョン塗料)
多機能タイプの水性つや有り塗料で、内装・外壁各部位に塗装可能です。各種旧塗膜への付着性に優れ、改修時にはシーラーレスでの塗装も可能。藻やカビの発生を抑制する効果もあります。
関西ペイント

・アレスアクアグロス(水性反応硬化形つや有りアクリル樹脂塗料)
乾燥性に優れた屋内外に使用できる塗料です。光沢や肉持ちのある優れた仕上がりになります。また、水性なので臭気も少なく下地や旧塗膜適正幅が広い塗料です。
エスケー化研

・水性コンポアクリル(水性反応硬化形アクリル樹脂塗料)
1液タイプで混合不良がなく作業性に優れています。緻密な塗膜表面は塵や埃を寄せ付けにくく、カビや藻類に対しても強い抵抗を示す特殊設計になっています。
水族館にも使われるピュアアクリルは高性能

アクリル樹脂塗料は、耐候性が低く安価な塗料だと認識されていますが、ピュアアクリル塗料はフッ素樹脂塗料と同等の15年以上の耐候性があります。
ピュアアクリル塗料とは、アステックペイント(オーストラリアドルラリアの塗料メーカー)が独自の技術で開発した高性能塗料で、本来のアクリル樹脂の持つ性能を最大限に引き出すことに成功しました。本来のアクリル樹脂は耐久性と透明度が非常に高く、飛行機の窓や水族館の大水槽などにも使用されている素材です。
アクリル塗料の欠点である不純物を一切排除することにより、ピュアアクリル塗料が完成しました。
ピュアアクリル塗料の特徴を以下にご紹介します。
・600%の伸縮率
一般的な弾性塗料(防水塗料)は塗膜に柔軟性を持たせるため可塑剤が加えられています。可塑剤は3~5年で気化し弾性を失ってしまいますが、ピュアアクリル塗料は樹脂そのものが弾性を持つため、
長期間伸縮性を保持
。
クラックに追従し高い防水機能
を発揮します。
・樹脂が大きく紫外線に強い
一般的なアクリル樹脂の約50倍~100倍大きいため、紫外線で破壊される樹脂破壊ポイントが少なくなり
高い耐候性
を保持します。
・有機ガラスが配合によって、さらに高い耐候性
有機ガラス成分(ポリカーボネート樹脂)をブレンド。さらに耐候性を高めています。
※アステックペイント社のピュアアクリル塗料は、EC-5000PCM(水性形一液外壁用防水ピュアアクリル系上塗り材)、EC-5000PCM-IR(水性形一液外壁用防水遮熱ピュアアクリル系上塗り材)、EC-1000PCM(水性形一液屋根用防水遮熱ピュアアクリル系上塗り材)の3種類がラインナップされています。
私の家だといくら?
まとめ
アクリル塗料の基礎知識と新しく開発されたピュアアクリル塗料をご紹介しました。
要点をまとめますと、
・アクリル塗料のメリットは、安くて種類が豊富、使いやすいこと。
・アクリル塗料のデメリットは、劣化が早いため塗り替えサイクルが短い。
・新しい技術で開発されたピュアアクリル塗料はフッ素塗料と同程度の高性能塗料である。
塗料は大変種類が多い上、同じアクリル樹脂系塗料といっても性能に大きな違いがあります。塗料の性能をよく知り、適材適所に選ぶことが大変重要です。