本記事は、主に住宅の外壁塗装をお考えの方に向けて、
- ウレタン塗装のメリット・デメリット
- ウレタン塗装と他の塗装方法の比較
- ウレタン塗装はどんな場合に向いているか
を解説しています。
はじめに結論を申し上げると、建物のウレタン塗装は「初期費用を抑えたい場合」か「10年以内に退去や解体が決まっている場合」に適しています。
また、塗装箇所としては家の雨どいや破風、水切りなどの塩ビ・木材・鉄製の箇所にウレタン塗装がよく選ばれます。
反対に、外壁や屋根用としてはやや耐久性が不足しがちな塗装方法です。
今から、理由とともに分かりやすく解説していきます!
- 耐久性を重視する場合は、ウレタン塗装よりもシリコン塗装等がオススメ
- 屋根や外壁よりも、雨樋などの付帯部分に多く選ばれる方法
なお、はじめての外壁塗装を検討されている方は、こちらの記事がおすすめです。
監修者:外壁劣化診断士 小林 成光
600件以上の現地調査を実施する過程で得た専門性を生かし、日本発のネット見積もりシステムでビジネスモデル特許を取得。ヌリカエにて、外装工事の専門家として、顧客・加盟企業のサポート・コラムの監修に従事。
▼略歴・プロフィール |
ウレタン塗装とは?
ウレタン塗装とは、名前の通りウレタン塗料を使って塗装をすることです。
ウレタン塗装に使用されるウレタン塗料とは、塗料の成分のひとつである樹脂の主原料がウレタンである塗料のこと。柔軟性があり、塗装した素材との密着度が高いことが特徴です。また、光沢がほかの塗料よりも強く、塗装面は艶のある仕上がりになります。
そのほか外壁のウレタン塗装にかかる費用は1,700円~2,200円/㎡と、他の塗装方法と比べて低価格なことが魅力と言えるでしょう。ただし、近年ウレタン塗料よりも耐用年数の長い塗料が多く普及していることから、ウレタン塗料が選ばれることは無くなりつつあります。
ウレタン塗装のメリット
外壁塗装にウレタン塗装を選ぶメリットは以下の通りです。
- 塗料の価格が安い
- 塗膜に光沢・高級感がある
- ひび割れしにくい
- DIYでも扱いやすい
- 塗装可能な素材が多い
- 塗料の種類が豊富
それぞれについて説明します。
メリット① 費用が安い
ウレタン塗装の最大のメリットは、費用が抑えられることです。実際、ヌリカエ編集部が85人を対象に行ったアンケートによると、ウレタン塗装を選んだ理由として最も多かったのは、「費用が安かったから」で全体の43.5%を占めました。
外壁のウレタン塗装にかかる費用は1,700~2,200円/㎡目安。これはひとつ上のグレードのシリコン塗料を使った塗装よりも1~2割ほど安い価格となっています。
塗膜の耐久性が10年前後でいいならば、外壁はウレタン塗装を施すのが最適です。
メリット② 光沢・高級感がある仕上がりになる
ウレタン塗装した外壁には美しいツヤが生まれ、高級感のある仕上がりになります。光沢のある仕上がりが好きではない場合は、つや消し剤を混合してマットな仕上げにすることも可能です。
ひと口memo
ウレタン塗装の光沢があって高級感がある仕上がりは、家具やフローリングの仕上げとしても好まれるので、高級家具やフローリングなどにも数多く使用されています。メリット③ ひび割れしにくい
ウレタン塗装をした後の外壁の表面は柔らかくて弾性があるので、乾燥した後もひび割れしにくい外壁になります。
一方、シリコンやフッ素だと耐久性は高いものの、表面は固い仕上がりになるため、それほどひび割れに強くありません。
メリット④DIYでも扱いやすい
ウレタン塗装に使用するウレタン塗料は柔らかく伸びが良いため、素人でも扱いやすいのもメリットです。DIYで塗装を行う場合は、ウレタン塗装を候補に検討しましょう。
反対に、業者がよく採用するシリコン塗装は難易度が高いため、DIYにはあまりおすすめできません。
メリット⑤ 塗装可能な素材が多い
ウレタン塗料は下地との密着性が高いため、比較的幅広い素材に塗装可能です。とくに、鉄部・木部・塩ビ部などにはウレタン塗装がよく採用されます。
メリット⑥ 塗料の種類が豊富
ウレタン塗装は一昔前までは主流だった工法なので、実績が多く優秀な塗料が各メーカーから発売されています。
国内の塗料メーカーには、「日本ペイント」「エスケー化研」「関西ペイント」などの大手メーカーのほか、「ロックペイント」「菊水化学工業」などの中小優良メーカーがあります。
ウレタン塗装のデメリット
ウレタン塗装のデメリットととしては以下のような点が挙げられます。
- コストパフォーマンスで劣る
- 変色に弱い
- 防汚性で劣る
- 塗装作業中の水気に弱い
それぞれについて説明します。
デメリット① コストパフォーマンスで劣る
外壁をウレタン塗装した場合の耐用年数8~12年で、現在主流であるシリコン塗装の耐用年数10~15年や、フッ素塗料の15~20年と比較すると見劣りしてしまいます。
デメリット②変色に弱い
ウレタン塗装した面は、シリコン、フッ素などに比べて紫外線の影響による変退色がやや起こりやすいのがデメリットです。
また、ウレタン塗料は黄色く変色しやすいともいわれています。
デメリット③防汚性で劣る
ウレタン塗料の塗膜は、シリコン塗料に比べて汚れがつきやすいという欠点があります。
特にツヤ消しタイプは汚れが目立ちやすいので注意が必要です。
近年では「低汚染性」という機能のついたウレタン塗料があるので、ウレタン塗装をする場合にはこちらを選ぶとよいでしょう。
デメリット④塗装作業中の水気に弱い
ウレタン塗装で使用される硬化剤は水と反応しやすいため、雨上がりや湿度が高い時期に塗装すると、性能が落ちやすい塗膜になってしまうおそれがあります。
「防水塗装」について詳しく知りたい方は、下記の記事もご覧ください。
>>「防水塗装の種類と選び方まとめ|オススメ製品も紹介」
外壁塗装にウレタン塗装はおすすめできない!
近年の外壁塗装においてはウレタン塗装はほとんど行われなくなっていますというのもウレタン塗装は少し前までは低価格かつまずまずの耐久性が魅力で外壁塗装の主流となっていましたが、昨今では低価格と高い耐久性を兼ね備えたシリコン塗料がメジャーになってきているためです。
したがって昨今ではウレタン塗料は価格こそ安いものの、トータルの耐久性でみるとコストパフォーマンスが良くないため多くの場合でおすすめできません。
ただ近年の外壁塗装においてもウレタン塗装という選択肢が完全になくなってしまったわけではなく、住宅の状況によってはウレタン塗装が適しているケースは存在します。
本章では外壁にウレタン塗装を検討している方々のために、ウレタン塗装が最適な場合とそうでない場合を解説していきます。
ウレタン塗装が最適なケース
ウレタン塗装は、現在主流の塗装方法に比べて費用が安いかわりに、耐用年数が短いことが特徴と言えます。
したがって、
- 塗装費用をとにかく安くおさえたい場合
- 10年前後で住まなくなる建物の塗装の場合
といった、費用の安さが優先の方や、耐用年数と重視しない方はウレタン塗装を選ぶのは合理的と言えるでしょう。
また、現在主流のシリコン塗料を屋根の付帯部分に使うのはややオーバースペックなので、
- 雨樋や水切り板金などの塗装に使う場合
も、ウレタン塗装が最適と言えます。
こんな場合にはウレタン以外で塗装しよう
反対に、以下のような場合はなるべくウレタン塗装以外を用いるほうが長い目でみて得になります。
- これからも長く住む家の塗装の場合
- その他、とくに塗料のこだわりがない場合
ウレタン塗装は向こう10年以上の未来を考えると、コストパフォーマンスで他の塗装方法に劣ります。
現在もっともコストパフォーマンスに優れるのは、シリコン塗装もしくはラジカル(制御形)塗装です。
シリコン塗料で塗装した外壁は単価2,300円/㎡で12~15年、ラジカル塗料では単価2,400円/㎡で14~16年の耐用年数が、それぞれ期待できます。
どちらも、工事費用はウレタン塗装より1割強高くなりますが、次に塗装するまでの間隔が空くため結局はお得になるのです。
ウレタン塗装に強いこだわりがない場合は、この2種類の塗料のどちらかを用いるのがオススメです。
「シリコン塗料」「ラジカル塗料」について詳しく知りたい方は、下記の記事もご覧ください。
>>「シリコン塗料って本当にいいの?おすすめ製品やメリット・デメリット、注意点を解説」
>>「ラジカル塗料ってなにがすごいの?メリット・デメリットを徹底解説!」
ウレタン塗料の製品と種類
代表的なウレタン塗料の製品の製品
ウレタン塗料というのはあくまで商品の種類のことを指すので、実際には使用用途ごとに異なった商品名のウレタン塗料があります。
よくウレタン塗装が施される車・住宅の外装・ギター・バイク・家具の5つにおいて、代表的な塗料を確認してみましょう。
用途 | メーカー・製品名 |
---|---|
外壁塗装 | ・エスケー化研:クリーンマイルドウレタン ・日本ペイント:ファインウレタンU100 ・関西ペイント:セラMレタン |
屋根塗装 | ・エスケー化研:ヤネフレッシュU ・日本ペイント:ファインUVベスト ・関西ペイント:スーパーウレタンルーフペイント |
車のボディ塗装 | ・イサムエアゾール:エアウレタン ・関西ペイント:レタンPG80 ・サンデーペイント:2液ウレタンスプレー |
ギターの塗装 | ・サンデーペイント:2液ウレタンスプレー |
バイクのボディ塗装 | ・サンデーペイント:2液ウレタンスプレー ・イサムエアゾール:エアウレタン |
家具の塗装 | ・ユニオンペイント:EGジャストワン ・和信化学工業:エコフィーバーラック |
ウレタン塗料の種類には「油性(溶剤系)と水性」があり、さらに「1液型と2液型」に分かれます。
「ファインウレタンU100」について詳しく知りたい方は、下記の記事もご覧ください。
>>「ファインウレタンU100とはどんな塗料?特徴・色・使用シーン・価格の4つを解説」
「2液型ウレタン塗料」について詳しく知りたい方は、下記の記事もご覧ください。
>>「2液ウレタンのメリット・デメリットは?1液型と結局どちらがいい?」
油性ウレタン塗料と水性ウレタン塗料の違い
塗料の種類 | 溶媒 | メリット |
---|---|---|
油性塗料 | 有機溶剤(シンナー等) |
|
水性塗料 | 水 |
|
油性ウレタン塗料と水性ウレタン塗料は、塗料を希釈する溶媒が異なります。
水性ウレタン塗料は水で、油性塗料はシンナーなどの有機溶剤が溶媒です。
一般に、水性塗料は有機溶剤を使用していないため臭気が少なく、環境や人体への影響が少ないという利点があります。
ただし、水性塗料は油性塗料よりも耐久性や光沢のもちの部分が劣るので注意が必要です。
「水性塗料」について詳しく知りたい方は、下記の記事もご覧ください。
>>「水性塗料と油性塗料の違いとメリット・デメリットは?」
1液型塗料と2液型の違い
塗料の種類 | 塗装できる素材 | メリット |
---|---|---|
1液型塗料 | コンクリート/サイディングボード/モルタル 等 |
|
2液型塗料 | コンクリート/サイディングボード/モルタル/金属部/塩ビ樹脂 等 |
|
1液型塗料と2液型塗料は、使用前に硬化剤と混ぜる必要があるかどうかで分かれます。
1液型は硬化剤が不要なため、塗料缶は一つですみ、翌日にも同じ缶から塗装が可能です。
一方、2液型は硬化剤と主剤を適切な量で混ぜ合わせて使用するので、塗装缶が複数出ます。
また、混合後は数時間で固まってしまうため、作った塗料を翌日に持ち越せません。
2液型は混ぜ合わせる工程を挟むので、知識と経験をもった塗装職人でないと扱いを誤る可能性があります。ただ、手間がかかる分、1液型よりも耐久性に優れるという大きな長所をもっています。
あなたのお家
外壁塗装するといくら?
まとめ
今回はウレタン塗装についてご説明してきましたが、いかがでしたでしょうか。
ウレタン塗装はシリコン塗装に対して耐久性で劣るため、現在では外壁塗装にはあまり用いられていません。
しかし、車や家具、食器などの塗装においてはまだまだ現役と言えるでしょう。
価格は他の塗料と比較すると安い傾向にあるため、耐久性を重視しないのであれば、利用する価値はあります。
「ウレタン塗料は良くない」といった先入観は捨てて、目的や用途に応じた塗料選びをするのが大切です。
最後に、記事の内容を振り返ってみましょう。
ウレタン塗装のメリットは?
ウレタン塗装には「光沢が強く高級感がある」「ひび割れしにくい」「塗膜が柔らかい」などのメリットがあります。詳しく知りたい方はウレタン塗装のメリットをご覧ください。
ウレタン塗装のデメリットは?
ウレタン塗装には「シリコン・フッ素塗装より耐久性が劣る」「変色しやすい」「汚れがつきやすい」などのデメリットがあります。詳しくはウレタン塗装のデメリットをご覧ください。
ウレタン塗装用の塗料の価格はいくら?
塗装面積1㎡あたり「1,700円~2,200円」が相場です。ウレタン塗装は、住宅用塗料のなかでは4種類中下から2番目のグレードに位置しています。詳しくはウレタン塗装の費用とコストパフォーマンスをご覧下さい。
ウレタン塗装用の塗料は何がおすすめ?
エスケー化研「クリーンマイルドウレタン」、日本ペイント「ファインウレタンU100」などが定番です。詳しくは代表的なウレタン塗料の製品をご覧ください。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。