「ウレタン塗装ってどんな塗装?」「ウレタン塗料ってなにに何に使うものなの?」
普段塗料を使わない方からすると、塗料はたくさん種類があって「どの塗料をなにに使うのか」が分かりにくいですよね。
この記事では、「ウレタン塗料で塗装できるもの」「ウレタン塗料で外壁塗装を行う場合のメリット・デメリット」など、ウレタン塗装の基礎知識を広くご紹介します。
この記事を読み終えることで、ウレタン塗装について正しく理解することができるはずです。
私の家だといくら?
ウレタン塗料は何の塗装に使う?
ウレタン塗料とは、名前の通りウレタン樹脂を原料とした塗料です。
一般的な塗料の中ではアクリル塗料に次いで二番目に安い塗料で、様々なものの塗装に使われます。
樹脂の中でもウレタンは柔軟性があり、密着度が高いのが特徴です。また、光沢感がほかの塗料よりも強く、塗装面は艶のある仕上がりになります。
最もメジャーなウレタン塗装としては、車・住宅の塗装が挙げられます。
住宅に関しては、屋根や外壁はあまり用いられなくなりましたが、付帯部の塗装などには現在でもよく使われています。
ウレタン塗料が木材部・塩ビ製素材部・鉄部など幅広い箇所に使用できるためです。
また、ギター・バイク・食器・家具などはよくウレタン塗装が施されます。
これは、ウレタン塗料の「光沢があり、汚れをつきにくくする塗膜を作れる」という特徴からきています。
代表的なウレタン塗料
ウレタン塗料というのはあくまで商品の種類のことを指すので、実際には使用用途ごとに異なった商品名のウレタン塗料があります。
よくウレタン塗装が施される車・住宅の外装・ギター・バイク・家具の5つにおいて、代表的な塗料を確認してみましょう。
【使用用途別の代表的なウレタン塗料】
使用用途 | 代表的なウレタン塗料の名前 |
---|---|
外壁塗装 | ・エスケー化研:クリーンマイルドウレタン ・日本ペイント:ファインウレタンU100 ・関西ペイント:セラMレタン |
屋根塗装 | ・エスケー化研:ヤネフレッシュU ・日本ペイント:ファインUVベスト ・関西ペイント:スーパーウレタンルーフペイント |
車のボディ塗装 | ・イサムエアゾール:エアウレタン ・関西ペイント:レタンPG80 ・サンデーペイント:2液ウレタンスプレー |
ギターの塗装 | ・サンデーペイント:2液ウレタンスプレー |
バイクのボディ塗装 | ・サンデーペイント:2液ウレタンスプレー ・イサムエアゾール:エアウレタン |
家具の塗装 | ・ユニオンペイント:EGジャストワン ・和信化学工業:エコフィーバーラック |
ウレタン塗料の価格
ウレタン塗装は、塗料の中では比較的安めのグレードになります。
一般的によく用いられる汎用塗料のなかでは二番目の安さです。
樹脂 | 耐久年数 | 設計価格(/㎡) | 特徴 |
---|---|---|---|
アクリル | 5~7年 | 1,400円~1,600円 | 最安価。住宅にはほぼ使われない |
ウレタン | 7~10年 | 1,700円~2,200円 | 価格が安いがやや低耐久 |
シリコン | 10~12年 | 2,200円~3,000円 | 現在最も頻繁に使われる |
フッ素 | 12~15年 | 3,800円~4,800円 | 高耐久だが価格が高い |
ウレタン塗料の安全性
ウレタン塗料の中に含まれるイソシアネートは毒性がありますが、乾くとプラスチックのような塗膜が形成されるので、基本的に安全面での問題はないといえるでしょう。
ただし、ウレタン塗料は溶剤としてシンナー・ベンジンを利用するケースも多いため、塗装時には換気をしないと身体に悪影響を及ぼすおそれがあります。
ウレタン塗装の作業工程
ウレタン塗装の作業工程は、何に塗るかによって大きく異なります。
外壁の塗装に用いる場合には、以下のような流れになっています。
- ①下地処理
- ②養生
- ③下塗り
- ④中塗り
- ⑤上塗り
ここで確認しておきたいのは、「塗装は最低3回行われる」という点です。
塗装の回数が少ないと施工不良を引き起こすので、ウレタン塗装の場合は3回塗りを徹底してください。
ウレタン塗料の種類
ウレタン塗料には油性(溶剤系)と水性があり、さらに1液型と2液型があります。
油性ウレタン塗料と水性ウレタン塗料
油性ウレタン塗料と水性ウレタン塗料の違いは、塗料を希釈する溶剤の違いです。
水性ウレタン塗料は水で、油性塗料はシンナーなどの有機溶剤で希釈します。
水性ウレタン塗料は溶剤の含有量が少ないため臭気が少なく、環境や人体への影響が少ないという利点があります。
ただし、水性ウレタン塗料は油性ウレタン塗料よりも耐久性や光沢の持ちの部分でわずかに劣るので注意が必要です。
価格は、基本的には油性ウレタン塗料の方が高価な場合が多いです。
溶剤 | 特徴 | |
---|---|---|
油性ウレタン塗料 | シンナー等の有機溶剤 | ・耐久性・光沢の持ちに優れている |
水性ウレタン塗料 | 水 | ・臭気が少なく、環境や人体への影響が少ない ・油性ウレタン塗料よりも安い |
1液型ウレタン塗料と2液型ウレタン塗料
1液型ウレタン塗料と2液型ウレタン塗料は硬化剤を使用する必要があるかどうかで分かれます。
1液型は硬化剤が不要なため、塗料缶は一つですみ、翌日にも同じ缶から塗装が可能です。
一方、2液型は硬化剤と主剤を適切な量で混ぜ合わせて使用するので、塗装缶が複数出ます。また、混ぜ合わせて作った塗料を翌日に持ち越して塗装することができません。
2液型は混ぜ合わせる工程を挟むので、知識と経験をもった塗装職人でないと扱いを誤る可能性があります。ただ、手間がかかる分、1液型よりも耐久性に優れるという大きな長所をもっています。
水性塗料のほとんどが1液型ですが、油性塗料には1液型と2液型があります。
塗装できるもの | 特徴 | |
---|---|---|
1液型ウレタン塗料 | コンクリート/サイディングボード/モルタル | ・硬化剤と主剤を混ぜ合わせて使用する ・耐久性に優れる |
2液型ウレタン塗料 | 金属/ALCパネル | ・塗装缶から出してそのまま使用できる |
ウレタン塗料を使える外装工事
近年、ウレタン塗料での外壁塗装はあまり見られなくなってきました。
しかし、雨樋などの付帯部については現在でもウレタン塗装が行われるほか、防水工事などにも使われます。
この章では、ウレタン塗料が使われる外装工事と代表的な塗料名をご紹介します。
ウレタン塗料が使われる外装工事は、以下の4つです。
- ・外壁塗装
- ・屋根塗装
- ・付帯部塗装
- ・防水工事
それぞれ簡単にご紹介していきます。
外壁塗装
先述の通り、最近ではあまり見られませんが、費用を抑えたい場合などはウレタン塗料で外壁を塗装することがあります。
ウレタン塗装は耐用年数が短いですが、数年で家を手放す予定の場合などはちょうどよいかもしれません。
外壁塗装に使うウレタン塗料としては、エスケー化研「マイルドクリーンウレタン」、日本ペイント「ファインウレタンU100」などが有名です。
屋根塗装
外壁と同じく現在では使われる機会は多くありませんが、屋根もウレタン塗料で塗装することができます。
代表的な商品としては、日本ペイント「ニッペ ファインルーフU」やエスケー化研「クールタイト」などが挙げられます。
付帯部塗装
住宅の塗装を行う際には、外壁や屋根以外にも軒天・雨樋・破風板などの付帯部の塗装が行われます。
この付帯部の塗装工事には、今でもウレタン塗装が多く利用されます。
代表的な商品は、エスケー化研の「クリーンマイルドウレタン」や「1液マイルドウレタン」、日本ペイント「ファインウレタンU100」などです。
防水工事
実は、屋上・ベランダなどの防水工事にもウレタンが用いられます。
これは、液状にしたウレタン樹脂を直接塗布して防水層を作る工事で、一般的に「ウレタン防水」と呼ばれます。
ウレタン防水は日本で最も普及している防水工事とも言われており、現在住宅の塗装にウレタンを用いるケースとしては最も多いケースかもしれません。
代表的な商品は、エスケー化研の「アーキルーフUA」、日本ペイントの「ニッペ パーフェクトプルーフ」などです。
ウレタン塗装のメリット
ここからは、ウレタン塗装で最も多い外壁塗装を例に、ウレタン塗装のメリットとデメリットをご紹介します。
ウレタン塗料の価格相場は1㎡あたり1,500円から2,000円で、ひとつ上のグレードのシリコン塗料よりも2割ほど安い価格です。
価格が安いため外壁塗装などで塗装面積が大きくなっても、比較的リーズナブルな費用で塗装できるのがメリットです。
一方価格の安さ以外にも、機能面でのメリットがたくさんあります。
ウレタン塗料のメリットを詳しく見ていきましょう。
塗膜に光沢があるため高級感がある
ウレタン塗料で塗装した塗膜には、美しいツヤが出ます。
外壁に使用した場合には、塗膜に光沢があって、高級感のある仕上がりになります。
また、シックで品のあるツヤ消し仕上げにすることも可能です。
ウレタン塗装の光沢があって高級感がある仕上がりは、家具やフローリングの仕上げとしても好まれるので、高級家具やフローリングなどにも数多く使用されています。
塗膜に弾性があるのでひび割れしにくい
ウレタン塗料の塗膜は柔らかくて弾性があるので、伸縮性に優れています。
そのため、ウレタン塗料で塗装した建物に外力がかかっても、ひび割れしにくい塗膜になります。
モルタル塗りなどのひび割れしやすい建物の外壁に適した塗料です。
柔らかくて扱いやすい
ウレタン塗料は柔らかいので、非常に扱いやすい塗料です。
作業性が良いので、DIYでの施工も容易に行えます。
素材に対して密着性が高い
ウレタン塗料は塗膜が柔らかいために密着性にも優れているので、塗膜がはがれにくく、雨漏りを防ぐ効果が期待できます。
耐薬品性が高い
ウレタン塗料は耐薬品性が高いので、工場などの汚染されやすい建物の塗装にも適しています。
メンテナンスがしやすい
ウレタン塗料は密着性が高くてひび割れしにくいため、傷に強く素地が傷みにくい傾向があります。
そのため、次の塗り替えの際の下地処理に手間がかからず、楽に作業ができます。
種類が豊富
ウレタン塗料は一昔前までは主流だった塗料なので、国内外の多くのメーカーが製造、販売しています。
国内でも日本ペイントやエスケー化研・関西ペイントなどの大手塗料メーカーは元より、ロックペイント・菊水化学工業などそれぞれのメーカーから様々な機能を付加した商品が販売されているので、自分の要望にあったものがきっと見つかると思います。
またウレタン塗料には、前述したように油性や水性、一液型や二液型などの種類や色が豊富で、施工する場所や用途に合わせて様々な種類の中から選択することが可能です。
さらに二液型では、混ぜる硬化剤の量を変えることで様々な場所への塗装が可能になります。
たとえば硬化剤を増やすと密着性や弾性が高まり、傷つきにくい丈夫な塗膜を作ることができます。
逆に硬化剤の量を減らせば速乾性が高まり作業効率が上がるので、塗装面の剥がれなどの補修をする際に便利です。
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ウレタン塗装のデメリット
様々なメリットがあるウレタン塗料ですが、一方ではどのようなデメリットがあるのでしょうか。
次にウレタン塗料のデメリットを見ていきましょう。
耐久性で劣る
ウレタン塗料の耐用年数は8~10年で、現在主流になっているシリコン塗料の耐用年数10~15年と比較するとどうしても見劣りしてしまいます。
また耐用年数が2~5年程度の差があるにもかかわらず、価格の違いは2割程度なので、費用対効果の面でもシリコン塗料に劣ってしまいます。
紫外線に弱く、変色しやすい
ウレタン塗料は紫外線に弱いため、外壁や屋根などの紫外線の影響を強く受ける場所では劣化の進行が早くなります。
また、紫外線の量や温度・湿度・降雨量などによって劣化の具合は異なりますが、ウレタン塗料は黄色く変色しやすいともいわれています。
これはウレタン塗料に含まれているイソシアネートという成分が原因といわれていて、ここ数年では改良型の変色しない塗料も増えてきました。
またイソシアネートは紫外線に弱い上に毒性が強いともいわれているので、注意が必要です。
光沢保持率が低い
ウレタン塗料の光沢保持率は、実験の結果シリコン塗料の8割程度といわれ、経年劣化による光沢の減少速度が速い塗料といえます。
防汚性で劣る
ウレタン塗料の塗膜は本来防汚性に劣るため、汚れが付着しやすく汚れやすいという欠点があります。
特にツヤ消しタイプは汚れが目立ちやすいので注意が必要です。
近年では低汚染性のウレタン塗料もあるので、数年で薄汚れてしまわないようにするためには、このような塗料を選ぶ必要があります。
水分の影響で塗膜性能の低下が起きる
ウレタン塗料に含まれている硬化剤は水と反応しやすいため、湿度が高い時に塗装すると塗膜性能が落ちてしまいます。
まとめ
今回はウレタン塗装についてご説明してきましたが、いかがでしたでしょうか。
ウレタン塗装はシリコン塗装に対して耐久性で劣るため、現在では外壁塗装にはあまり用いられていません。
しかし、車や家具、食器などの塗装においてはまだまだ現役と言えるでしょう。
価格は他の塗料と比較すると安い傾向にあるため、耐久性を重視しないのであれば、利用する価値はあります。
「ウレタン塗料は良くない」といった先入観は捨てて、目的や用途に応じた塗料選びをするのが大切です。