戸建て住宅のリフォーム工事には、いったいどのような種類があり、どのように使い分ければよいのでしょうか?
本記事では、部分的なもの・全体的なものまで7種類の屋根リフォームと、そのリフォームが最適となる状況、リフォーム費用などをご説明します。
屋根リフォームの7つの種類と費用相場
屋根リフォームは全部で7種類あります。
7種類のうち、屋根全体を直すリフォームが「葺き替え」「カバー工法」「塗装」の3種類、屋根の一部を直すリフォームが「屋根材の修繕」「棟板金の交換」「雨樋修理・交換」「漆喰補修」の4種類です。
リフォーム種類は、劣化箇所、範囲、屋根材の種類などによって最適なものが決まります。
以下のリフォーム名をクリックすると、それぞれの屋根リフォームの解説箇所にジャンプします。
7つのリフォームの詳細より先に、次章「2. 屋根材別のメンテナンス時期とおすすめリフォーム」を読んでも役立ちます。
屋根リフォームの種類1:葺き替え(ふきかえ)
リフォーム内容 | 古い屋根材と下地を新しいものに交換 |
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費用相場(30坪の場合) | 140~200万円 |
必要日数(工期) | 10~15日間 |
時期の目安 | 築30~40年目 |
リフォーム可能な屋根 | スレート屋根、金属屋根、瓦屋根 |
特徴・注意点 | もっとも大規模・高額なリフォーム |
葺き替え(ふきかえ)とは、屋根の全交換リフォームのことです。
表面の「屋根材」をすべて撤去したあと、屋根の下地である「防水シート(ルーフィング)」「下地木材(野地板)」を交換・補修し、新しい屋根材を葺きます。
屋根リフォームとしては、もっとも大規模な作業となり、屋根のトラブルや経年劣化を全体的・根本的に解消できます。
「葺き替え」のメリット
●トラブルを根本解決できる
●表面の屋根材だけでなく、下地も新しくなる
●屋根材を変えられる
「葺き替え」のデメリット
✔ 費用がもっとも高い
✔ リフォームがもっとも長い
✔ アスベストを含む場合、追加費用が発生
トラブルを根本的に解決させたい、老朽化が著しい屋根を新調したい方にはおすすめです。
>> 屋根葺き替えの費用はいくら?工事のメリットデメリット、屋根材の選び方 >> 屋根の張り替えの費用相場はいくら? 新しい屋根材はどう選べばいい?
屋根リフォームの種類2:カバー工法(重ね葺き)
リフォーム内容 | 古い屋根の上に新しい下地と屋根材をかぶせる |
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費用相場(30坪の場合) | 80~120万円 |
必要日数(工期) | 5~10日間 |
時期の目安 | 築30年目。葺き替えが可能ならそちらが良い |
リフォーム可能な屋根 | スレート屋根、金属屋根 |
特徴・注意点 | 費用が安い。古い屋根が傷んでいるとリフォームが無駄に |
カバー工法(別名:「重ね葺き」)とは、今の屋根の上から新しい屋根を重ねて建てるリフォームのことです。
「葺き替え」と目的や効果は同じですが、既存の屋根の撤去作業がないぶん、リフォームの材料費や工賃、時間が節約できます。
「カバー工法」のメリット
●葺き替えに比べて安価。工期も短い
●遮熱性や断熱性が上がる
●アスベストの撤去費用が不要
「カバー工法」のデメリット
✔元からある部分の異常や劣化は直らない
✔屋根の重量増加により耐震性が下がる
✔使用できる屋根材がほぼ金属系のみ
✔その後の屋根修理費用が高くなる
カバー工法の工事後に異常が見つかった際はさておき、とにかく今回の修理費用を安く抑えたい方にはおすすめです。
>> 【初心者向け】カバー工法ってどんな工事?メリット・デメリット、費用相場まで徹底解説
>> 住宅のアスベストの危険と除去するための3つのリフォーム方法
屋根リフォームの種類3:塗装(塗り替え)
リフォーム内容 | 屋根の表面を塗りかえる |
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費用相場(30坪の場合) | 40~80万円 |
必要日数(工期) | 10~15日間 |
時期の目安 | 築15~20年目 |
リフォーム可能な屋根 | スレート屋根、金属屋根 |
特徴・注意点 | 瓦屋根は塗装が不要 |
屋根の塗装(塗り替え)とは、屋根材に新しい塗料を重ね塗りするリフォームのことです。
同じ色で塗り直すだけでなく、違う色を選ぶことで家のイメージチェンジもできます。
「塗装」のメリット
●屋根の美観が回復する
●屋根のイメージチェンジができる
●屋根材の寿命がのびる
「塗装」のデメリット
✔屋根下地の寿命はのびない
✔「縁切り」を忘れると、逆に雨漏りが増える
今回の工事の目的は、防水対策ではなく、美観の回復や屋根材の寿命を延伸である、という方はおすすめです。
>> 屋根塗装パーフェクトガイド~費用相場・時期・工法・屋根材・見積り~
塗装の効果と必要性について詳しく知りたい方は、下記の記事もご覧ください。
>>「塗装はなぜ必要?効果・種類・費用や業者の選び方をやさしく解説」
屋根リフォームの種類4:屋根材の修繕
リフォーム内容 | 破損した部分の修理・交換 |
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費用相場(30坪の場合) | 3~30万円 |
必要日数(工期) | 1~3日間 |
時期の目安 | 異常を発見次第 |
リフォーム可能な屋根 | スレート屋根、金属屋根、瓦屋根 |
特徴・注意点 | 高所だと足場が必要。約20万円かかる |
屋根材の修繕とは、屋根表面の瓦・スレート・ガルバリウム鋼板・トタンなどを部分的に修理・交換するリフォームのことです。
「屋根材の修繕」のメリット
●壊れた部分だけを直すので経済的
「屋根材の修繕」のデメリット
✔直した箇所の色合いが周囲から浮くことも
また、修理箇所がハシゴでは届かない高所で、ベランダやバルコニーなどからも登れない屋根の場合には、足場設置費用として、20万円ほど上乗せされます。
>> 屋根の修理費用はいくら?工事別の相場価格を徹底解説
屋根リフォームの種類5:棟板金の交換
リフォーム内容 | 外れやすくなった屋根棟の改修 |
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費用相場(30坪の場合) | 10~30万円 |
必要日数(工期) | 2~4日間 |
時期の目安 | 築15~20年目 |
リフォーム可能な屋根 | スレート屋根、金属屋根 瓦屋根の場合は「棟の取り直し」 |
特徴・注意点 | 棟下地の木材も必ず交換すること |
棟板金の交換とは、屋根の頂上にある金属製のフタを交換するリフォームのことです。
リフォームの対象となるのは、スレート屋根もしくは金属屋根です。
「棟板金の交換」のメリット
●劣化した部分だけを直すので経済的
「棟板金の交換」のデメリット
✔下地木材の交換を忘れるとリフォームの意味がない
屋根のなかで棟板金だけは、寿命のサイクルが早い部分です。
築15年を過ぎたあたりで、棟の下地木材が雨でやわらかくなり、釘が緩まって棟板金が飛んでいってしまうリスクが高まるため、耐用年数の15~20年に達している方はリフォームを検討しましょう。
>> 屋根棟の修理費用の相場は? ウチの見積もりは適正? 火災保険で直せるの?
屋根リフォームの種類6:雨樋修理・交換
リフォーム内容 | 壊れたり詰まったりした雨樋の回復 |
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費用相場(30坪の場合) | 3~30万円 |
必要日数(工期) | 1~4日間 |
時期の目安 | 築10~20年目 |
リフォーム可能な屋根 | スレート屋根、金属屋根、瓦屋根 |
特徴・注意点 | 詰まりの掃除なら3万円、全交換なら30万円 |
雨樋修理・交換とは、雨樋の詰まりを掃除したり、壊れた雨樋や固定金具を交換したり、塗料を塗り替えたりするリフォームです。
「雨樋修理・交換」のメリット
●劣化部分だけを直すので経済的
「雨樋修理・交換」のデメリット
✔修理部分の色が周囲から浮く可能性
✔低所の掃除ならDIYでも可能
壊れた雨樋を放っておくと、水が窓枠から屋内に入ってきたり、外壁の傷みが早くなってしまうため、修理や交換が必要です。
>> 雨どいの修理方法は? 原因・直し方・費用は「外見」で分かる
屋根リフォームの種類7:漆喰交換
リフォーム内容 | 瓦屋根側面の白い接着剤の塗り直し |
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費用相場(30坪の場合) | 10~25万円 |
必要日数(工期) | 2~4日間 |
時期の目安 | 築15~20年目 |
リフォーム可能な屋根 | 瓦屋根 |
特徴・注意点 | 重ね塗りではなく、はがして交換すること |
漆喰交換とは、古くなった漆喰を一度剥がし、新しいものに塗りかえるリフォームになります。
「漆喰交換」のメリット
●劣化部分だけを直すので経済的
「漆喰交換」のデメリット
✔土台の強度が上がるわけではない
✔交換ではなく重ね塗りだと、むしろ雨漏りの原因になる
剥がれた漆喰を放置しておくと、屋根内部に雨水が入り込んで腐食や雨漏りにつながるので、漆喰交換が必要になります。
漆喰は年月とともに剥がれてしまうものなので、耐用年数に達している方はリフォームを検討しましょう。
築年数別|屋根リフォームの適正時期
屋根のもっとも重要な機能は「防水性」、つまりは雨漏りを起こさないことだと私たちは考えています。では、屋根の防水性を保ったまま安心して住み続けるには、いつ・どのような屋根リフォームを行えばよいのでしょうか?
現在主流の屋根材4種類ごとの、メンテナンス推奨時期とリフォーム内容は以下のとおりです。
どの屋根材も共通して「5年ごと」「15年目」「30~40年目」ごとにメンテナンス時期がおとずれます。
築年数 | 屋根材の種類 | |||
---|---|---|---|---|
スレート | 金属 | 和瓦・洋瓦 | アスファルトシングル | |
築5年ごと | ヒビ点検・補修 | 特になし | 特になし | はがれ点検・補修 |
築15年目 | 棟板金の交換 | 棟板金の交換 | 棟の取り直し | 棟板金の交換 |
築30~40年目 | 葺き替え | 葺き替え | 葺き替え | 葺き替え |
「スレート屋根」のメンテナンス時期・リフォーム内容
築年数とリフォーム内容
築5年ごとに「ヒビの点検・補修」築15年目に「棟板金の交換」
築30~40年目に「葺き替え」
スレート屋根は割れやすいため、築5年ごとに業者によるヒビ割れの点検・補修を受けることで、雨漏りをほぼ防ぐことができます。
屋根の棟は、築15年を過ぎたあたりで固定に使われているクギが弱くなり、強風で外れて飛んでしまうリスクが高まります。 そのため、この時期に棟板金および下地木材の交換を行うと安心です。
また、スレート屋根は、ヒビの補修や棟交換をしながら住み続けても、築30~40年で寿命を迎えます。
このタイミングで、屋根と下地の全交換リフォームである「葺き替え」が必要になります。
30年目に葺き替えをすればかなり安心です。異常がなくとも、40年目までには葺き替えることを推奨します。
>> スレート屋根とは? 特徴・修理方法・メンテナンス周期・費用を全解説
「金属屋根」のメンテナンス時期・リフォーム内容
築年数とリフォーム内容
築5年ごとの「メンテナンスは不要」築15年目に「棟板金の交換」
築30~40年目に「葺き替え」
金属(ガルバリウム鋼板)屋根は頑丈です。5年ごとのメンテナンスは特に必要ありません。
金属屋根も、築15年目を境に棟を固定しているクギが弱くなり、強風で外れる可能性が高まります。
棟が外れると雨漏りリスクも跳ね上がるので、この時期に棟板金と下地木材の交換を行うのがオススメです。
屋根材のすぐ下にあるルーフィング(防水シート)が築30~40年で寿命を迎えます。
金属(ガルバリウム鋼板)屋根材はもう少し長くもつ素材なのですが、防水シートがダメになるとすぐに雨漏りをするので、このタイミングで「葺き替え」をすべきと判断します。
>> ガルバリウム屋根とは?長所や欠点、費用、メンテナンス、注意点
「瓦屋根」のメンテナンス時期・リフォーム内容
築年数とリフォーム内容
築5年ごとのメンテナンスは不要築15年目に「棟の取り直し」
築30~40年目に「葺き替え」もしくは「葺き直し」
瓦屋根は壊れにくいため、5年ごとのメンテナンスは特に必要ありません。
瓦屋根は、築15年目ごろから棟瓦の土台の土や木材が劣化し、瓦が強風で飛んだり、地震で崩れる可能性が高まりますので、棟の取り直しを行いましょう。
また、瓦の下にあるルーフィング(防水シート)が、築30~40年で寿命を迎えます。
防水シートが傷むとすぐに雨漏りをするので、このタイミングで「葺き替え」もしくは「葺き直し」を推奨します。
>> 瓦屋根の修理方法は4種類! リフォームの選び方、費用、業者の決め方は?
「アスファルトシングル屋根」のメンテナンス時期・リフォーム内容
築年数とリフォーム内容
築5年ごとに「はがれの点検・補修」築15年目に「棟板金の交換」
築30~40年目に「葺き替え」
アスファルトシングルは接着面がはがれることがあるため、築5年目に業者によるはがれの点検・補修を受けることで、トラブルをかなり防ぐことができます。
築5年目以降も、10年目、15年目…と5年ごとに同様の点検・補修を受ければ安心です。
築15年目をめどに棟板金の劣化とクギの固定力の減少が起こり、強風で飛んでいってしまう危険が高まるため、この時期に棟板金の交換と、下地が木材の場合はその交換も行うのがオススメです。
またアスファルトシングル屋根は築30~40年で寿命を迎えます。
このタイミングで、「葺き替え」をし、屋根材とルーフィング(防水シート)の交換を推奨します。
▼「アスファルトシングル」についてもっと詳しく知りたい方はコチラ
お悩み別|適切な屋根リフォームの種類
専門的な解説だけでは、どんな屋根リフォームが適切か難しくて判断できない…
リフォームの種類はわかったけど、どんなリフォームが自分に合っているのかわからない…
ここからはそんな方に対して、よくあるリフォームのきっかけ・お悩み事別に、おすすめのリフォーム種類を紹介します。
よくあるリフォームのきっかけ・お悩み事は下記の通りです。
- 被害を自覚しており劣化箇所のみを補修したい
- 老朽化・事前災害が不安でお家の安全性を高めたい
- 業者から指摘されて屋根の耐久性を不安に思っている
それぞれのお悩みに対して、おすすめのリフォーム種類を紹介しますので、どんなリフォームが適切か迷っている方は参考にしてください。
劣化箇所のみ補修をしたい方
屋根材の修繕リフォームを行いましょう。修繕リフォームの何よりのメリットは、費用を抑えられることです。
また、屋根は強風・飛来物の影響を受けやすいことから、築年数に関わらず物理的に壊れることがあります。
被害箇所や劣化症状が特定できていて、とにかく劣化箇所のみを補修したいという場合は、修繕リフォームを行ってください。
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築年数が浅いものの、物理的な原因でリフォームが必要になった方にもおすすめのリフォーム種類です。
老朽化・自然災害が不安でお家の安全性を高めたい方
屋根の葺き替えリフォームを行いましょう。屋根全体を丸ごと直す点で葺き替えとカバー工法は似ていますが、老朽化が著しい場合は屋根全体を直すリフォームとして葺き替えリフォームを検討してください。
老朽化が著しい屋根でカバー工法のリフォームを行った場合、せっかくのリフォームが無駄になってしまうことがあります。
葺き替えリフォームは費用がかかってしまいますが、トラブルの元を丸ごと解決できるリフォームです。
葺き替えリフォーム・カバー工法(重ね葺き)のメリットやデメリットについては記事の前半でも詳しく解説しているので、参考にしてください。
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長期的にかかるメンテナンスコストの観点から、老朽化・自然災害が不安だという方には葺き替えリフォームがオススメです。
業者から指摘をされて屋根の耐久性を不安に思っている方
そもそもリフォームが必要かどうかを検討してください。屋根修理の業者は悪徳業者が多いことで有名です。
屋根は劣化症状がを目視しづらく、具体的な被害が発生していない限り、リフォームの必要性を素人で判断するのが難しい領域です。
リフォームを今回検討しているきっかけが屋根修理業者からの指摘であった場合は、本当に屋根リフォームが必要なのかどうか、まずは検討してみましょう。
▼「屋根修理業者」について詳しく知りたい方は、下記の記事もご覧ください。
>>【失敗しない】屋根修理での悪徳業者の手口とは?優良業者の見つけ方も
>>これって屋根修理の詐欺手口?詐欺の被害事例や未然に防ぐ方法
記事のおさらい
屋根リフォームにはどんな種類がある?
屋根のリフォームは全部で7種類あります。全体を直すリフォームが3種類、一部を直すリフォームが4種類で全部で7種類のリフォームがあります。詳しく知りたい方は屋根リフォームの種類をご覧ください。
適切なリフォーム種類は、屋根材によって違う?
適切なリフォームの種類と時期は、屋根材の種類、築年数によって異なります。スレート屋根、金属屋根、瓦屋根、アスファルトシングル屋根といった屋根材の種類ごとにリフォームの種類と適切なリフォーム時期は違います。詳しくは築年数別|屋根リフォームの適正時期をご覧ください。
悩み事別に適切なリフォームの種類を教えてほしい
よくあるリフォームのきっかけ・お悩み事別に、おすすめのリフォーム種類を紹介しています。詳しくはお悩み別|適切な屋根リフォームの種類をご覧下さい。
以上、本記事が屋根リフォームをご検討中の方々のお役に立てば幸いです。
YouTube みんなの屋根の相談所|石川商店「和瓦、洋瓦屋根の台風対策。予防のための補修や工事方法と費用」
YouTube みんなの屋根の相談所|石川商店「スレート、コロニアルの台風対策。予防のための補修や工事方法と費用」
▼書籍
菊池克弘『住宅リフォーム重要事項32選』都市環境建設 2015
建築工事研究会『積算資料ポケット版 住宅建築編 2019年度版』(一般社団法人経済調査会 2019)
建築工事研究会『積算資料ポケット版 リフォーム編 2018』(一般社団法人経済調査会 2018)