外壁張り替えとは、既存の外壁材を解体して新しい外壁材を施工するリフォーム方法です。
住宅の外壁リフォームの方法には、他に「重ね張り」や「塗装」がありますが、その中で「張り替え」はどのような人に適しているのでしょうか。
外壁張り替えがどのような工事なのかについての解説から、費用相場、失敗しない業者の選び方までを徹底的に解説します。
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監修者:外装劣化診断士 小林 成光
600件以上の現地調査を実施する過程で得た専門性を生かし、日本発のネット見積もりシステムでビジネスモデル特許を取得。ヌリカエにて、外装工事の専門家として、顧客・加盟企業のサポート・コラムの監修に従事。
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外壁の張り替えとは
外壁リフォームの一つである外壁張り替え。
ここでは、外壁の張り替えがどのような工事であるについてのご紹介や、張り替えを選んだ方がいい人の特徴についても解説します。
既存の外壁材を撤去して新しいものに張り替える工事
外壁張り替えとは、既存の外壁を撤去して下地の状態確認や補修を行ったあと、新しい外壁を張り付ける工事です。
よく比較される工事である重ね張り(カバー工法)にはできない、下地の補修ができる点や耐震性が高まるといったメリットがあります。デメリットは、重ね張りよりも高額になる点です。
外壁材や下地が劣化が激しい場合や、雨漏りが起きている場合に張り替えをするケースが多くなります。
外壁張り替えを選んだ方がいい人とは
結論から言えば、以下の特徴に当てはまる人は、外壁の張り替えを第一に考えてみてください。
外壁の張り替えを選んだ方がいい人の特徴
- 既存外壁の劣化が著しい場合
- 家の構造体にまで問題がある可能性がある場合
- 外壁の断熱性能を大幅に向上させたい場合
- 外観を完全に一新したい場合
- 長期的な耐久性を重視する場合
- 予算に余裕があり、より本格的なリフォームを希望する場合
たとえば外壁に大きなひび割れが起きている場合は、雨水が建物内部に浸水し、雨漏りなどの症状に至ってしまうため、張り替え以外の選択肢がありません。
さらに外壁を丸ごと張り替えるため、長く快適な暮らしを実現できます。
また、予算に余裕があり、外壁のイメージチェンジをしたい場合には、張り替えがおすすめです。新築と見間違うほどの外観となるため、気分を一新した住まいとなるからです。
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上記の特徴に当てはまってはいるが、自宅は張り替えを選ぶべきか不安な場合は、ぜひ専門の業者に相談してみてください。
外壁張り替えの費用相場
外壁の張り替えでは、通常100万円以上の費用がかかります。割合として最も多いのは100万円~150万円です。多くの場合は、250万円以内におさまっていることが分かります。
ただし、外壁の張り替え費用はご自宅の坪数や使用する外壁材ごとに異なります。
たとえば、窯業「窯業系サイディング」という外壁材の場合は材料+工事費で4,000円/㎡~と比較的安価です。一方、「木質系サイディング」という外壁材を選ぶと5,000円/㎡~とやや費用が高くなります。
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ご紹介する費用についてはあくまでも目安としてご覧ください 。
外壁張り替えの坪数ごとの費用相場
外壁張り替えにおける、坪数ごとの費用相場は下記の通りです。
坪数 | 費用相場 |
---|---|
20坪(約66㎡) | 120万円~172万円 |
30坪(約99㎡) | 180万円~260万円 |
40坪(約132㎡) | 240万円~344万円 |
50坪(約165㎡) | 300万円~430万円 |
60坪(約198㎡) | 360万円~510万円 |
外壁の張り替え費用は、家の坪数が広くなるにつれて高くなる傾向にあります。戸建ての一般的な広さである30坪では、180万円~260万円が相場です。
戸建てとしては大きめの50坪や60坪になると、400万円前後の費用がかかるケースもあるでしょう。
外壁の張り替えるには、外壁材自体の費用に加えて足場代や養生代、既存外壁の解体費用などがかかります。そのため、相場を把握するためには費用内訳もあわせて確認しておくことが重要です。
-
外壁張り替え費用の内訳については、次項で詳しく解説しています
外壁の張り替え費用の内訳
外壁の張り替えリフォームの総費用は、一般的に150〜300万円程度とされています。
ただし、具体的な費用は建物の状況や外壁材の種類によって大きく変動します。
外壁張り替え費用の内訳
- 足場代: 17〜26万円
- 養生(飛散防止ネット等): 8〜12万円
- 既存外壁の解体・処分: 14〜22万円
- 下地調整・補強: 23〜36万円
- 透湿防水シート: 4〜6万円
- 水切り板金: 4〜7万円
- 胴縁: 15〜23万円
- 外壁材: 75〜113万円(金属系サイディングの場合)
- シーリング: 20〜31万円
- 運搬費・諸経費: 8〜24万円
-
上記の費用は、建物の規模や状態、選択する外壁材の種類、施工業者によって変動するためあくまでも目安 として捉えてください。
外壁張り替えと別の工法の費用比較
外壁張り替え以外にも「重ね張り(カバー工法)」や「塗装」などの施工方法があります。
各工法の特徴
〇重ね張り(カバー工法)古い外壁の上から新しい外壁を重ね張りする工法 のこと。耐久性の向上が見込め、外壁のデザインも一新することが可能
〇塗装
外壁の塗料を塗り替えるメンテナンスがメインの工法 のこと。美観を整え、費用も抑えて行うことが可能
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外壁張り替えはほかの工法よりも高額になりやすいため、現在の外壁の状況と費用対効果を確認したうえで進めていくことが大切です。
外壁張り替えと重ね張り(カバー工法)・塗装の費用を比較
各工法は予算・耐久性・美観維持の観点で違いがあります。
特に予算を抑えたい場合は張り替えより塗装を取られるパターンが多いですが、建物の状態や予算、希望する効果によって最適な方法が異なります。
例えば「予算はないから大規模な工事は避けたい」という方は軽微な修繕と塗装が適している場合が多いです。
しかし劣化が進行している場合だと塗装をしても、あまり効果がない場合もあるため、自宅の状態を適切に判断したうえで、どの工事を行うかを考えることが大切です。
工事方法 | 工事費用 | 工期 |
---|---|---|
外壁張り替え | 約150~300万円 | 3~4週間 |
カバー工法 | 約160~220万円 | 2~3週間 |
塗装 | 約50~70万円 | 10~14日間 |
外壁材別に見る張り替え工事の費用
外壁の張り替え工事費用は、選択する外壁材によって大きく異なります。
たとえばサイディング材の費用目安は30坪の住宅の場合で150〜230万円です。
ただし、サイディング材には金属サイディングや窯業系サイディングなど複数の種類があり、それぞれで金額が異なるので注意が必要です。
-
ほかにもタイルやモルタル、ALCなど外壁材ごとの費用相場を画像から確認してみてください。
外壁張り替えのビフォーアフター施工事例
外壁の張り替え工事は、外観や住宅のイメージを大胆に変更できるメリットがあります。
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工事前後のビフォーアフター形式で、住宅スタイルごとに、おしゃれな外壁張り替えの事例を11コ紹介します。
クールスタイルの張り替え事例
画像出典:ケイミュー
黒の金属系サイディングで張り替えた事例です。
金属特有のメタルな質感と黒の組み合わせによってクールな外観に仕上がりました。
現代的でクールなデザインをお好みの方は、黒や深い青色の金属サイディングを使った張り替え工事がぴったりです。
シンプルスタイルの張り替え事例
画像出典:旭トステム
マットな質感のあるホワイトの外壁材で張り替えをした事例です。
黒の屋根と緑のガーデニング、そしてホワイトの外壁がうまく調和し、シンプルで落ち着いた雰囲気に仕上がっています。
シンプルなスタイルをお好みの方は、ツヤや光沢感がなく、素材感が生かされた外壁材の使用を検討するとよいでしょう。
和風スタイルの張り替え事例
画像出典:ケイミュー
平家の昔ながらの住宅に、石積み柄のサイディングで張り替えをした事例です。
和風な瓦屋根の住宅と石積み柄の外壁材がマッチし、洗練された仕上がりとなりました。
昔ながらの和風な住宅にお住いの方は、和のデザインを生かした張り替え工事を検討してみてください。
北欧スタイルの張り替え事例
画像出典:ケイミュー
レンガ調の外壁材で張り替えをし、北欧スタイルに仕上げた事例です。
北欧スタイルは、三角屋根に、レンガ調の外壁材、周囲の景観に溶け込むぬくもりある配色が特徴です。
屋根や軒など家の形状まで工事することは難しいですが、本事例のようにヨーロピアンなレンガ調の外壁材を使えば、北欧スタイルに近づけることができます。
南欧スタイルの張り替え事例
画像出典:ロビンスジャパン
ヨーロピアンの中でも南欧系のスタイルに仕上げた事例です。
南欧スタイルは、フラットな軒に、明るめの指し色・ホワイトの外壁材で外観が統一されます。
南欧スタイルといえば漆喰仕上げが定番ですが、漆喰風の真っ白な外壁材で張り替えをすれば、本事例のような南欧スタイルに近づけることができます。
アメリカンスタイルの張り替え事例
画像出典:旭トステム
こちらは北欧・南欧とはまた違った、アメリカンスタイルの張り替え事例です。
アメリカンスタイルのポイントは、ラップサイディングと呼ばれる外壁材や横張りデザインの外壁材を使用することです。
ごくごく一般的な住宅が、アメリカンスタイルな住宅へ生まれ変わりました。
ブリックスタイルの張り替え事例
画像出典:旭トステム
こちらはレンガ調の外壁材で張り替えをした事例です。
ブリックスタイルは、レンガ調の外壁材を使用することがポイントです。深い色を使用すれば、どっしりと落ち着いた印象を表現できます。
個性にやや欠ける住宅が、重厚感ある雰囲気に大胆に変わりました。
ウッドスタイルの張り替え事例
画像出典:旭トステム
こちらは、木目調の外壁材で張り替えをした事例です。
本物の木材は、腐食や変色を起こしやすいためメンテナンスが大変ですが、木目調の外壁材を使えば、面倒な維持管理の手間を省くことが可能です。
本事例のように明度の高い色で張り替えをすると、明るさ・軽さのある、おしゃれなウッドスタイルを作ることができます。
ツートンスタイルの張り替え事例
画像出典:旭トステム
こちらは二階部分をブラック、一階部分をホワイトのツートンスタイルで張り替え事例です。
本事例のように、異なる色を組み合わせて外壁を張り替えすることも実はできます。
暖色一片倒しの住宅が、モノトーンでまとまったおしゃれな外観に生まれ変わりました。
カラフルスタイルの張り替え事例
画像出典:アイジー工業
こちらは個性あふれるカラフルスタイルの張り替え事例です。
周囲の色と調和しやすかったり、清潔感もあることから、ベージュ、ホワイト、グレー、などの色が外壁ではよく使用されます。本事例のように、はっきり目立つブルーで張り替えをすれば、印象に残りやすいユニークな印象を与えることができます。
やや飾り気に欠ける住宅が、さわやか×ユニークが両立する住宅に生まれ変わりました。
キュートスタイルの張り替え事例
画像出典:旭トステム
薄いピンクベージュと、オレンジのレンガ調の外壁材を使って張り替えをした事例です。
奇抜さをなくすため、明度・清潔感のバランスを調整することがキュートスタイルのポイントです。
さりげない可愛らしさが漂うピンクベージュ外壁と、玄関口のはっきりした明るいオレンジがマッチし、絶妙にキュートな住宅に生まれ変わりました。
外壁材別のメンテナンス時期
外壁材 | 張り替えの目安 | 塗装の目安 | カバー工法の目安 |
---|---|---|---|
ガルバリウム (金属サイディング) |
25~40年 | 10~15年 | 15~20年 |
窯業系サイディング | 30~40年 | 7~10年 | 10~15年 |
トタン外壁 | 20~30年 | 5~10年 | 10~15年 |
モルタル | 40~50年 | 10~15年 | 15~20年 |
外壁材ごとにメンテナンス時期と、それに対応した工事方法について解説します。
ガルバリウム(金属サイディング)
ガルバリウム鋼板は、耐久性・耐食性に優れた外壁材ですが、長期間の使用で塗装の劣化や錆びが発生することがあります。特に、海沿いの地域では塩害による腐食が早まるため、定期的な点検が必要です。
-
張り替えに適切な劣化症状は、全体的な錆びや穴あき、剥がれなどが発生したときです。
また、築年数25年~40年では、外壁表面の劣化が深刻でなくとも下地を含めて外壁全体の耐用年数が迫っているため、外壁の張り替えを検討しましょう。
メンテナンス内容 | 目安時期 | 費用相場(円/㎡) |
---|---|---|
塗装 | 10~15年 | 2,500~5,000 |
カバー工法 | 15~20年 | 5,000~8,000 |
張り替え | 25~40年 | 8,000~15,000 |
窯業系サイディング
窯業系サイディングは、セメントを主成分とした外壁材で、デザイン性と施工性の高さが魅力です。ただし、防水性がないため、表面塗装の劣化とともに吸水し、ひび割れや反りが発生することがあります。
張り替えに適切な劣化症状は、外壁のひびや浮き、反りがみられた場合です。
また金属サイディングと同じように、築年数25年~40年では、外壁表面の劣化が深刻でなくとも下地を含めて外壁全体の耐用年数が迫っているため、外壁の張り替えを検討しましょう。
メンテナンス内容 | 目安時期 | 費用相場(円/㎡) |
---|---|---|
塗装 | 7~10年 | 2,500~5,000 |
カバー工法 | 20~30年 | 5,500~7,000 |
張り替え | 30~40年 | 8,000~15,000 |
トタン外壁
トタン外壁は軽量で施工しやすいのが特徴ですが、耐久性が低く、錆びやすい欠点があります。特に雨や湿気の影響を受けやすく、適切なメンテナンスが欠かせません。
張り替えに適切な劣化症状は、外壁の崩れや剥がれが起きたときです。
また築年数20~30年では、外壁表面の劣化が深刻でなくとも下地を含めて外壁全体の耐用年数が迫っています。
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外壁の張り替えを検討したほうが良いと言われていますが、錆びに弱くもろい外壁材のため、より短いスパンで張り替えをする方もいます。
メンテナンス内容 | 目安時期 | 費用相場(円/㎡) |
---|---|---|
塗装 | 5~10年 | 1,500~3,500 |
カバー工法 | 10~15年 | 4,000~7,000 |
張り替え | 20~30年 | 6,000~12,000 |
モルタル外壁
モルタル外壁は耐久性が高く、風雨や火に強いですが、経年劣化によってひび割れ(クラック)が発生しやすい特徴があります。特に地震の影響を受ける地域では、定期的な補修が必要です。
張り替えに適切な劣化症状は、大規模なひび割れや構造的なダメージです。窯業系サイディングに比べて浮きや反りは起こらず耐用年数も長いですが、部分的な張り替えなどができない特徴があります。
また適切な補修をしていれば比較的耐用年数が長い傾向にあり、築年数40~50年頃に外壁の張り替えを検討したほうが良いと言われています。
メンテナンス内容 | 目安時期 | 費用相場(円/㎡) |
---|---|---|
塗装 | 10~15年 | 3,000~6,000 |
部分補修 | 15~20年 | 2,000~5,000 |
張り替え | 40~50年 | 10,000~20,000 |
外壁張り替えについてのまとめ
外壁張り替えは、現在利用している外壁材を解体し、新しい外壁材に付け替えるリフォームの方法です。
利用している外壁材に応じて、張り替えの目安は変わってくるため、まずは自宅の外壁材がどんな種類かを確認してみてください。
外壁を張り替えることで、家のイメージチェンジにもつながります。
-
複数の業者から相見積もりをとり、必ず費用を確認して自身にあった外壁に張り替えてみてください。


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