外壁の「カバー工法」の費用相場は? 地震に弱くなるってホント?

  • 【更新日】2023-06-15
外壁の「カバー工法」の費用相場は? 地震に弱くなるってホント?

本記事は、お住まいの外壁の「カバー工法」をご検討中の方がよくお悩みの、

「工事の、良い点も悪い点も両方知りたい! 」
「カバー工法の見積もりが来たけど、適正額か心配…」
「ウチの場合、カバー工法が本当に最適なの…?」

といった点についてお答えすべく執筆いたしました。

基本的な「工事の流れ」から、「費用」について話、そしてあまり業者が教えたがらない「メリット・デメリット」についてもお話していきたいと思います。

この記事のポイントをは下記の通りです。

  • 外壁カバー工法は、どうしても予算が足りない場合の選択肢
  • 外壁カバー工法の相場は、30坪住宅で「約150万円」、50坪で「約198万円」
  • カバー工法の場合、使える外壁材は「金属系サイディング」に限られる
  • 耐震性低下はほとんどの場合心配ナシ。ただし、内部劣化の進行有無は要確認

外壁のカバー工法は「本当は張り替えが最適だが、どうしても予算が足りない場合の選択肢」という位置付けの工事です。

今から詳しく見ていきましょう。

外壁のカバー工法、私の家だといくら?

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小林成光(コバヤシマサミツ)さんのプロフィール写真 監修者:外装劣化診断士 小林 成光

600件以上の現地調査を実施する過程で得た専門性を生かし、日本発のネット見積もりシステムでビジネスモデル特許を取得。ヌリカエにて、外装工事の専門家として、顧客・加盟企業のサポート・コラムの監修に従事。 ▼略歴・プロフィール
「監修者|小林 成光(株式会社Speee)」

外壁のカバー工法の基本の「き」

外壁のカバー工法とは、古くなった外壁はそのままに、新しい壁材を重ねて張りつける工事のことです。
別名で「重ね張り」とも呼ばれることがあります。

工事によって、長年住むうちに脆くなった住宅の表面を、ふたたび雨風や火災、害獣害虫などの外的要因に強い状態にするほか、建物の見た目を新しくすることもできます。

古い壁材を剥がす「張り替え」工事に比べて費用が安く済むというメリットがありますが、
反対に、古く傷んでいる壁や基礎部分は放置されてしまうので、家の内部の老朽化は止まらないというデメリットがあります。

外壁のカバー工法の流れについて

外壁カバー工法の工事の流れは、

  1. 作業用の足場を設置する
  2. 既存の壁の上に、新しい壁材を打ち付ける板(胴縁・どうぶち)を張る
  3. 壁材同士のすき間をペーストで埋める

 

となっています。

カバー工法では、外壁を剥がす「張り替え」工事に比べて、音が出る作業が少ないのが特徴です。
また、工事中も変わらず家の中で生活することができます。

「カバー工法」と「張り替え」のメリット・デメリットの詳しい比較については、後の章「4. カバー工法のメリットとデメリット。家が地震に弱くなる?」をご覧ください。

「カバー工法」の費用と工期のざっくり目安!

工事の費用は、30坪住宅で140万円~150万円前後が相場です。
工期は早くても2週間程度が目安です。
天候に恵まれなかった場合はさらに1週間ほど長くかかることもあります。

使える外壁材は「金属系サイディング」ほぼ一択

外壁に使われる素材には、「金属系サイディング」と呼ばれる成形パネルにほぼ限られます。
なぜならば、金属系サイディングは非常に軽い素材のため、重ね張りをしたあとの建物の重量の増加が少なく、耐震性の低下が少ないからです。

住宅に使われる外壁材には、モルタルやしっくいなどの塗り壁のほか、サイディングのなかでも「窯業系(セメントや陶器)」といった他の種類もありますが、いずれも金属系サイディングに比べると重量が大きいため、カバー工法に使われることはまれです。

サイディングの種類と性能の違いについて詳しく知りたい方は、下の記事をご覧ください。

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外壁のカバー工法の費用相場

外壁カバー工事の概要について、まずは全体をざっくりご説明しました。
ここからは、一番気になる「費用」について、もう少し詳しく見ていきましょう。

外壁のカバー工法の工事費用は「足場代」「外壁材の材工費」「すき間埋め(シーリング)の材工費」「諸経費」などに分けられます。
前章で解説した工事の流れに、費用を当てはめてみると次のようになります。

外壁カバー工法の費用の内訳と金額目安

【表:住宅の外壁張り替え工事の費用(外壁120㎡・30坪弱)】
工事内容 費用 備考
1. 足場 約15万円
2. 胴縁組み 約10万円 縦組みの場合
3. 新しい外壁の張り付け 約105万円 金属系サイディングの普及グレード品使用
4. すき間のシーリング 約6万円 シーリング長60mとする
業者諸経費 約13万円 10%とする
合計
約150万円
(消費税10%込み)

外壁のカバー工法にほぼ必ず使われる「金属系サイディング」を使用の場合で、工事費用は「約150万円」になりました。

外壁カバー工法の費用を変える要素

費用に影響を与えるのは、主に「施工面積(家の大きさ)」「使用するサイディングの価格」の2つです。
前者は費用内訳の「2.」「3.」に、後者は「3.」の金額を大きく変えます。

施工面積

前述の金額表から、工事内容はそのままに家の大きさのみを変えて、20坪~50坪までの最終的な費用目安を比べてみました。

外壁面積 費用 備考
100㎡ 約126万円 20坪住宅の平均
115㎡ 約143万円 25坪住宅の平均
125㎡ 約154万円 30坪住宅の平均
135㎡ 約167万円 35坪住宅の平均
145㎡ 約178万円 40坪住宅の平均
160㎡ 約195万円 45坪住宅の平均
175㎡ 約212万円 50坪住宅の平均

ご自宅の坪数が分かっていたり、見積もり表に外壁面積が記載されている場合などに、目安にしてみてください。

外壁材のグレード

新しく張る金属系サイディングによって、「2. 新しい外壁材の張り付け」費用が変わります。
普及品の「ガルバリウム鋼板」製のものでは「1㎡あたり約8750円」(材料費・工賃含む)が目安ですが、厚さや装飾などにより「1㎡あたり10,500円」程度までは高価なものも存在します。

【表:金属系サイディング 商品と単価の例】

商品名 材工費(㎡) 備考
普及品A 8,150円 15mm厚、高耐候塗装
普及品B 8,750円 18mm厚、高耐候塗装
セリオスサイディング 木星 6,370円 12mm厚
木目グランジェットG II 7,890円 16mm厚、インクジェット塗装
ラングロン ODF18 9,650円 18mm厚、フッ素コーティング
アサヒウォール25 9,260円 25mm厚、高耐食性塗装めっき鋼板

*一般社団法人 経済調査会『積算資料ポケット版 住宅建築編 2019年度版』より。工賃はいずれも3,350円/㎡として計算。

金属系サイディングには、大きさや装飾有無などの差を含めると数百種類以上はありますが、材質はいずれも「ガルバリウム鋼板」が一般的です。
お手元に見積もりがある場合、記載の記載されている外壁材の単価との比較検討にお役立てください。

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カバー工法が最適な方、そうでない方。カバー工法の注意点

記事を通して何度か、「カバー工法はデメリットもある工事」とお伝えしてきました。
では、ご自宅の外壁を直す方法として、本当に最適なのは「カバー工法」でしょうか、それとも他の修理方法でしょうか?
本章で解説していきます。

「カバー工法」以外の修理方法と特徴

傷んでしまった外壁の修理工事には、ほかにも「張り替え」や「再塗装(塗り替え)」「部分補修」といった方法があります。
それぞれで、直せる劣化症状と、費用の違いは以下のとおりです。

カバー工法 張り替え 再塗装 部分補修
目的 安価な全体修理 根本的な全体修理 美観の回復・耐久性の延長 物理的破損の回復
特徴 古い外壁の上に新しい壁を張る 古い外壁を剥がして新しい壁を張る 表面に新しく塗料を塗る 壊れた部分のみを張り替える
費用目安(30坪) 140~180万円 160~200万円 70~100万円 数万~30万円
メリット 張り替えより安価 根本解決できる もっとも安価
デメリット 内部の老朽化は放置される もっとも高価 激しい劣化は直せない

外壁張り替えについて詳しく知りたい方は、下記記事もご覧ください。

カバー工法を選ぶ前に知っておきたい注意

カバー工法のメリットは、張り替えに比べて、既存壁の撤去が発生しないぶん費用が20~30万円ほど安くなることです。
一方で、もともとの壁にあった劣化や異常は解消されないため、内部に腐食などがあった場合には劣化の進行が放置されてしまうというデメリットがあります。

業者などからカバー工法を提案されている場合は、「安くて工期も短いが、家の老朽化は止められない工事」という風に理解のうえ、検討してください。
ヌリカエとしても、費用をどうしても安く抑えたい場合以外は、オススメできない工法と捉えています。

外壁の劣化症状別、最適な工事

住んでいてわかる外壁の劣化状況と、最適な工事の場合分けを写真つきでまとめました。

傷みの程度が軽いものは安く済む「再塗装」、深刻なものは根本から直す「張り替え」が最適です。
「カバー工法」を選ぶのは、「張り替え」を選ぶべきだが、どうしても予算が足りない場合のみとお考えください。

症状・外見 深刻度 適した工事 費用目安 補足
藻・カビ
必要なし 美観以外はただちに問題はなし。
退色・色あせ
塗り替え 約70~100万円 外壁材自体にダメージが発生する前に塗り替えを。
チョーキング
★★☆ 塗り替え 約70~100万円 外壁材自体にダメージが発生する直前の状態。早々に塗り替えをオススメ。
塗膜の剥がれ
★★★★ 塗り替え 約70~100万円 早急な塗り替えが必要。建材にすでに影響が出ている場合、張り替えに及ぶ場合も。
ヒビ割れ・反り
★★★
★★★
張り替え 約150~200万円 緊急で張り替えが必要。内部腐食がある場合は工事が長引く。
壁材の剥がれ
MAX 張り替え+内部改修 約150~200万円+それ以上 内部の腐食の可能性も高い。小さいものでもすぐに修理が必要。
物理的な破損
★★★★ 一部張り替え 約25~60万円 経年劣化ではないため、破損範囲以外は無事である場合が多い。

基準としては、「ヒビ割れ」以上の場合は「張り替え」をなるべく早急に判断することをオススメします。
また、経年劣化ではない破損や、全体に問題がなく一部だけの劣化の場合は、工事を「部分張り替え」で済ませることが出来ます。

外壁塗装の相場について詳しく知りたい人は、下の記事をご覧ください。

また、外壁の補修についてもっと知りたい方はこちらをご覧ください。

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カバー工法のメリットとデメリット。家が地震に弱くなる?

メリット

修理費用が安く済む


家の断熱性が上がる
デメリット

もとからある部分の劣化は止まらない


その後のメンテナンスが高額になる


金属系サイディングしか選べない
注意点 内部構造の劣化が進行中でないか要確認
・施工後に、元々の部分に異常が見つかった場合、工事が高額になる
・ガルバリウム鋼板製の金属系サイディングを用いれば、耐震性の低下はほぼ心配なし

カバー工法は、費用が抑えられるかわりに、デメリットも多い工法です。
工事方法をカバー工法に決定する前に、下記のメリット・デメリットを踏まえてよく検討してください。

カバー工法のメリット

工事費用が安い

「張り替え」の場合に必要な、既存外壁の撤去費用・新しい防水シートの設置費用がかからないため、工事費用が30坪住宅で約20万円抑えられます。 広い家であればあるほどこの効果は大きく、50坪住宅では節約額が約30万円ほどになります。

家の断熱性が上がる

今ある壁の上を、さらに新しい壁で覆うことになるため、住宅の断熱性が増します。
他にも、遮音性の向上が期待できるほか、一度壁材を剥がしてしまう「張り替え」に比べて、工事中の断熱性の低下の心配もないでしょう。

カバー工法のデメリット

カバー工法は、既存の外壁材や、内部の躯体の劣化はそのまま放置されるため、根本解決になりません。
そのことから来るデメリットが主に2点と、もうひとつ外壁材の選択肢の少なさが挙げられます。

家の老朽化は止まらない

万一、外壁材の内側部分や、さらに内部の構造の劣化が進んでいた場合、工事が無駄になってしまう場合があります。

カバー工法では、工事時に外壁材を剥がさないため、内部の劣化を発見することが困難です。
せっかく新しい外壁材を取り付けても、その土台となっている古い外壁・さらに内部の構造が腐ったりしてしまったら、カバー工法で取り付けた壁も崩れ、最悪の場合は住めなくなってしまいます。
カバー工法を採る前に、覆われる内部に異常やその兆候がないか、納得がいくまで調査・説明を受けたほうが良いでしょう。

その後のメンテナンスが高額になる

後々のメンテナンスを考えると、二重なった外壁よりも、一重のままの壁のほうが工事をしやすいのは当然です。
とくに、元からあった部分に異常が見つかって工事が必要になった場合は、カバー工法でかぶせた外壁を剥がす必要があるので、工期や費用に大きく差が出ます。

金属系サイディングしか選べない

家の耐震性を低下させないため、新しい外壁材の選択肢は「金属系サイディング」のほぼ一択のみになります。
張り替え工事であれば、コストと温かみのあるデザインに優れた「窯業系(ようぎょう)サイディング」も選ぶことができます。

よく言われる「地震に弱くなる」心配はほぼナシ!

外壁のカバー工法によって家の重量が増し、耐震強度が下がってしまうのは事実です。ですが、ガルバリウム鋼板製の金属系サイディングを使っていれば、家が崩れやすくなるほどの重量の変化がでることは考えにくいと言えるレベル。
不安であれば、懸念を業者に伝え、家の設計をもとに納得がいくまで業者に説明を求めましょう。

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外壁カバー工法の費用実例

工事の最終的な金額は「2. 外壁カバー工法の費用相場」でご説明していますが、ここでは別のシチュエーションについてより細かい費用例をご紹介します。

大きめの住宅(45坪)の例

外壁の広さが160㎡の45坪住宅を想定しています。
先述の例よりも外壁面積が3割ほど増したパターンです。
費用は約150万円から「約197万円」に増えましたが、足場代に変化はないのが通常です。

工事内容 費用 備考
1. 足場 150,000
2. 胴縁組み 136,000 単価:850円/㎡。縦組みの場合。
3. 新しい外壁の張り付け 1,400,100 単価:8750円/㎡。金属系サイディングの普及グレード品使用
4. すき間のシーリング 106,700 単価:970円/m。シーリング長110mとする
業者諸経費 179,270 10%とする
合計
1,971,970円
(消費税10%込み)

また、同じ広さの外壁を「張り替え」で施工した場合は「約218万円」が費用目安になります。

部分張り替えの場合の例

参考までに、カバー工法を用いず、風災などで破損した一部分(10㎡)のみを張り替えた場合を想定した費用例です。
工事範囲は、穴などが空いてしまった範囲だけでなく、損傷のあるサイディングのボード全体になります。
やはり、足場代は面積にかかわらず同じだけかかります。

工事内容 費用 備考
1. 足場 150,000
2. 既存外壁材の撤去 12,500 単価:1,250円/㎡
3. 防水シート張り 4,700 単価:470円/㎡。損傷が認められる場合のみ
4. 胴縁組み 8,500 単価:850円/㎡。損傷が認められる場合のみ。
5. 新しい外壁の張り付け 82,150 単価:8210円/㎡。窯業系サイディングの普及グレード品使用
6. すき間のシーリング 9,700 単価:970円/m。シーリング長10mとする
業者諸経費 26,750 10%とする
合計
297,250円
(消費税10%込み)

お手元の工事費見積もりや、希望の工事パターンなどのご参考にしていただけると幸いです。

外壁のカバー工法、私の家だといくら?

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さいごに:カバー工法でとくに相見積もりが重要な理由

「外壁のカバー工法の費用と施工判断」について、内訳やデメリットなども交えてご説明してきました。
最後に、一番注意をしていただきたい話をお伝えしたいと思います。

カバー工法はデメリットも多い工事ですが、他の選択肢を提示せずに最初からカバー工法をすすめてくる業者が、残念ながらあるということです。

その理由は、業者には自分たちの扱っている外壁材のなかでしか提案をしないところがあるからです。
外壁材は、業者による工事の得意・不得意の差が激しく、偏った業者によってカバー工法に誘導されるケースが起こりやすいと言われています。

とくに、

・カバー工法を勧めてきたのが「板金業者」である(金属系サイディングを売りたいのが本音)
・部分的な修理で済むと思っていたのに、全面のカバー工法を提案された

場合などは、2社目以降の調査・見積もりをとることを強くオススメします。

本記事が、外壁のカバー工法をご検討中の方々のお役に立てば幸いです。

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