モルタルとは、水・セメント・砂などを混ぜ合わせて作る素材です。
モルタルで塗られた外壁は、継ぎ目がなく美しい仕上がりや高い耐火性から日本において高いシェアを誇っていました。
ご自宅の壁がモルタルであるという方も少なくないのではないでしょうか。
この記事では、「モルタルの外壁のメンテナンスをしたい!」という方向けに、モルタル外壁の特徴や見分け方、劣化症状、メリット・デメリットなどについて詳しく解説しています。
モルタル外壁とサイディングの違いについても解説していますので、参考になれば幸いです。
モルタル外壁とは?
モルタル外壁とは、セメント・水・砂を2:1:6で混ぜ合わせて作った素材で作られる外壁のことを指します。
モルタルそのものは、以下のような塗材となっています。
モルタルの外壁は継ぎ目のない見た目と高い耐火性能が特徴で、90年代以前の日本においては最も高いシェアを誇る外壁でした。
しかし、サイディングボードが市場に出回るようになってからは、コストパフォーマンスの面で劣るといわれ、徐々にその人気は衰えていきました。現在、モルタルの外壁の新築物件は全体の5.8%まで減少しています。
【新築戸建て住宅の外壁材シェア】
築年数 | 外壁の状態 |
---|---|
窯業系サイディング | 78.3% |
アルミサイディング | 8.8% |
モルタル | 5.8% |
金属サイディング | 3.7% |
その他 | 2.4% |
木質系サイディング | 0.8% |
ALC | 0.4% |
このように、モルタルの外壁は現在ではやや珍しい外壁となりつつありますが、「継ぎ目のない美しい仕上がりが好き」といった方には、未だに根強い支持を得ています。
▼住宅の主な外壁材の種類や特徴については、以下の記事で詳しく解説しています。
>> 代表的な外壁材の種類と特徴
モルタル外壁の見分け方は?
モルタル外壁を見分け方は、下記の3つを確認すれば確実に見分けることができます。
- 表面の凹凸を確認
- 目地の有無を確認
- 建物の築年数を確認
それぞれ詳しく解説します。
表面の凹凸を確認
モルタル外壁の表面には、独特の凹凸があります。
モルタルはセメントと砂、石粒や骨材など含んでいるため、凹凸のある見た目とザラザラした手触りが特徴です。表面に模様をつけることもあるため、波模様や陰影が見られる場合もあります。
また、モルタル外壁はその仕上げ方によって「リシン」「スタッコ」「吹き付けタイル」「左官仕上げ」の4つに分かれています。
仕上げごとに見た目がかなり異なるため一見すると別の外壁に見えますが、いずれもモルタル外壁です。
4つの仕上げごとに、写真や特徴について解説しますので、ご自宅の外壁に当てはまるものはないか確認していきましょう。
リシン
リシンは、セメントに骨材(細かい石砂粒)や樹脂を混ぜたものをスプレーで吹き付けたモルタル外壁です。
壁面の凹凸が目立つことに加えて、細かい石粒のようなものがあればリシン仕上げのモルタル外壁と判別できます。
なお、リシン仕上げは1960年~1980年代のモルタル外壁で最もポピュラーなものでした。
スタッコ
スタッコは、セメントに骨材を混ぜた材料を吹き付けたモルタル外壁です。「化粧漆喰」とも言われます。
見た目はリシンに似ていますが、凹凸と石粒がより大きくなる点で見分けることが可能です。
モルタル外壁のなかでは、最も肉厚で重厚感のある印象になります。
吹き付けタイル
吹き付けタイルは、セメントに骨材や樹脂を混ぜ合わせた材料をタイルガンという道具で吹き付けたモルタル外壁です。「玉吹き塗装」とも言われます。
表面に丸いタイルのような見た目を持つため、すぐに判別可能です。耐久性が高く安価であることから、マンションなどの比較的大きな建物の外壁にも用いられます。
左官仕上げ
左官仕上げは、職人がコテを使用して模様を付けるモルタル外壁です。
自由に塗れるため決まった模様はありませんが。多いのは湾曲した線や不規則な横線で仕上げたパターンです。
温かみ和モダンな印象を演出できることから、現在でもおしゃれな外壁として人気があります。
目地の有無を確認
モルタルは外壁全体に一体成型されるため、パネル同士の隙間やつなぎ目(目地)が発生しません。
目地とは下記の部分です。
外壁に目地がある場合は、サイディングボードやALCパネル使われている可能性が高いです。これらの外壁は一定規格のボードを貼っていくため、どうしても各所につなぎ目が発生します。
外壁を周ってみて写真のような継ぎ目がなければ、ご自宅の外壁はモルタル外壁です。
築年数を確認
建物の築年数も、外壁がモルタルであるかどうかを判断するポイントです。
モルタル外壁は、1980年代以前に多く採用された外壁となります。そのため、2025年時点で築45年以上の建物の場合は、モルタル外壁であるケースが多いです。
1990年代以降は、施工が簡単でメンテナンス性に優れたサイディングボードが主流となっています。
サイディングボードによってはモルタルに似たデザインもあるため、見た目で見分けが付かなければ築年数を確認しましょう。
モルタル外壁の劣化症状
モルタル外壁が劣化すると、以下の症状が現れることがあります。
お住まいの家の外壁と照らし合わせて、劣化状況を確認してみましょう。
剥がれ・爆裂
塗膜の剥がれや爆裂は、大規模な地震や寒暖の差によるモルタル外壁の熱伸縮によって生じます。
症状が現れた箇所から雨や虫が入り込み、外壁や住宅の基礎が脆弱化してしまい、雨漏りや倒壊を起こす危険性があります。
すぐに塗装業者に問い合わせて、早めに修理してもらいましょう。
構造クラック
幅が0.3mm以上・深さ5mm以上の大きなひび割れのことを構造クラックと呼びます。
放置すると住宅の基礎が弱くなり、建物自体を支えられなくなり倒壊する危険性があるので、すぐに補修しなければなりません。
できるだけ早く業者に相談して、コーキング剤などで構造クラックを埋めてもらってください。
ヘアークラック
ヘアークラックとは、幅が0.2mm~0.3mm以下の、髪の毛のように細いひび割れのことです。
ひび割れた箇所から雨水や害虫が浸入し、住宅の基礎部分まで浸水したり、柱が虫に食われたりする危険性があります。
危険度はやや高めで、モルタル外壁との密着度が高い下塗り剤を使って、ヘアークラックの中に刷り込む補修が必要です。
DIYでの補修だと仕上がりがうまくいかないことも多いので、できればプロに補修工事を依頼しましょう。
塗膜の膨れ

カビやヘアークラックを放置した場合、防水機能がなくなった塗膜に膨れが生じることがあります。
外壁材と塗膜の間に入り込んだ水分が蒸発し、水蒸気が溜まると塗膜を内側から押し上げるため膨れているように見えます。
雨漏りに繋がりやすく、かなり危険性が高いため、塗膜の膨れを除去したうえで外壁塗装が必要です。
塗膜の膨れはDIYで補修できないので、必ず業者に相談しましょう。
チョーキング
チョーキングとは、外壁に触れると指にパサパサした白い粉が付く劣化症状を指します。
チョーキングが現れるということは塗膜の防水性が低下している可能性があるため、外壁が雨や湿気などの水分を吸収してしまい、コケやカビが発生する可能性が高いです。
また、雨水が住宅の内部に侵入するおそれもあります。
チョーキング現象はDIYで解決することはできません。
できるだけはやめに塗装業者に相談し、外壁塗装を行いましょう。
変色・カビ
モルタル外壁が紫外線や雨風などにより劣化したり、住宅が湿気が多い地域に建っていたりすると、変色・カビの発生を引き起こします。
危険性は低いものの手入れをしないと症状が悪化する場合があるので、再び外壁を塗装して丈夫な塗膜を作る必要があります。
変色している範囲が狭い場合、スポンジで洗い流すこともできますが、広範囲の場合は業者に連絡することをおすすめします。
モルタル外壁のメンテナンス周期は?
モルタルの外壁は、一般的に10年~15年に1度のメンテナンスが必要です。
この10年~15年に1度という基準は、モルタル外壁の表面に塗られている塗料の耐用年数がもとになっています。
通常、外壁は塗料が形成する「塗膜」によって雨水などから守られています。
しかし、この塗膜は一定の年数が経過すると劣化し始め、水分の侵入を防げなくなっていきます。
そのため、耐用年数の前後で外壁塗装が必要になるのです。
外壁塗装を怠ると基礎部分にまで傷みが発生し、家全体の寿命を縮めるおそれがあります。
塗料の耐用年数を過ぎたら放置をせず、必ず外壁塗装を検討しましょう。
また、モルタルの外壁は他の外壁と比較すると「ひび割れ(クラック)」「カビ・コケ」などの劣化症状も起こりやすいです。
塗料の耐用年数が過ぎていなくても、劣化症状が現れた場合には、適宜メンテナンスを行いましょう。
モルタル外壁のメリット
モルタル外壁のメリットは、主に下記の3つです。
- デザイン性に富んでいる
- 遮熱性が高い
- 耐火性が高い
モルタル外壁は一昔前に主流の外壁でしたが、そのデザイン性の高さや耐久性の高さから根強い人気があります。
本章では、上記モルタル外壁のメリット3つについてそれぞれ詳しく解説します。
デザイン性に富んでいる
職人の手によって様々な仕上げ方が可能で、味わい深いデザインを実現できます。リシン、スタッコ、吹き付けタイル、左官仕上げなど、仕上げ方も様々で多彩な表現が可能です。
色もよく見る白やクリームのほか、グレーや青みがかったものなど様々なバリエーションがあります。仕上げや色によって、サイディングでは表現できないような見た目や雰囲気をつくりあげることができるでしょう。
このように、モルタルは建物に独特の風合いや個性を与えられることから、今なお根強い人気があります。
遮熱性が高い
モルタル外壁は、金属製の外壁材のように壁表面が熱くなりにくい特性を持っています。そのため、夏場の室内温度の上昇を抑える効果に期待できるのが特徴です。
冷暖房の負担を軽減し、環境にも優しい住まいを実現できるでしょう。
耐火性が高い
モルタル外壁の素材は水、砂、セメントと不燃性の材料であるため、耐火性に優れています。
万が一の火災発生時でも延焼しにくく安全性の高い住まいを実現できるでしょう。近隣が火災になった時でも、自宅を守ることができます。
また、燃焼時に有毒ガスが発生しないことも特徴です。
モルタル外壁のデメリット
モルタル外壁のデメリットは、主に下記の3つです。
- ひび割れが発生しやすい
- 汚れがつきやすい
- クオリティに差が出やすい
- 工期が長い
モルタル外壁は、耐久性が高い一方で汚れが付きやすく目立ちやすいというデメリットがあります。
また、基本的には職人の手作業で施工していくためクオリティに差が出やすいことも念頭に置いておく必要があるでしょう。
本章では、上記モルタル外壁のデメリット4つについてそれぞれ詳しく解説します。
ひび割れが発生しやすい
モルタルの成分はセメントと砂が主になり防水性がないため、水分が蒸発すると縮み、濡れると膨らむという特性があります。この特性によって頻繁に伸び縮みするため、表面がひび割れやすいです。
また、サイディングのように継ぎ目がないことから、地震や地盤沈下などが起こると負荷の逃げ道がなくひび割れしやすくなります。
ひび割れができると、割れた部分をシーリングで塞ぐ補修作業が必要です。
汚れがつきやすい
モルタル外壁は表面に凹凸があるため、汚れが溜まりやすいという特徴があります。特に、細かい凹凸が多いリシンやスタッコは、汚れが付着しやすく清掃が困難です。
白いやクリームといった明るい色の場合は汚れた個所がさらに目立ってしまうため、美観を保つにはこまめなメンテナンスが必要になります。
クオリティに差が出やすい
モルタルは職人による手作業で施工します。そのため、仕上がりは作業する職人の技量に大きく左右されます。
また、モルタルは施工時の気象条件や原料の品質によっても扱いや仕上がりに違いが生まれることが特徴です。
モルタル外壁を検討されている方は、モルタルの施工に実績のある業者や職人であるかを必ず確認するようにしましょう。
工期が長い
モルタルは、塗った後の乾燥時間を十分に確保する必要があります。そのため、モルタル外壁の施工には比較的長い工期が必要です。
モルタル外壁の工期は、一般的に2週間~3週間前後が目安となります。湿度が高い日や雨天時には、乾燥にさらに時間がかかるため計画的な施工スケジュールが重要です。
【比較表】モルタル外壁とサイディングの違い
デザイン性や耐久性の高いモルタル外壁にするか、サイディング外壁にするか迷っている方も多いんではないでしょうか。
そこで、下記にモルタル外壁とサイディングの違いをまとめた比較表をご用意しました。
モルタル外壁とサイディングの大きく違うところは、価格と耐久性です。
価格は、普及率が高く機械で増産できるサイディングの方が施工費用を安く抑えることができます。耐久性は、燃えにくく耐用年数の長いモルタル外壁の方が高いでしょう。
上記の違いから、モルタル外壁はオリジナルのデザインで施工したい人や、特に耐火性能を重視したい人におすすめといえます。
また、サイディングは主に「窯業系サイディング」「金属サイディング」「樹脂サイディング」の3つに分かれています。それぞれ価格や耐久性、メンテナンスコストなどに違いがある点に注意が必要です。
モルタル外壁のまとめ
モルタルの外壁はそのデザイン性の高さから、今でも根強い人気を誇る外壁の一つです。
モルタルの最大のメリットである美しい外観を保つためには、定期的なメンテナンスが必須です。
本記事で解説した内容をもとに、ご自宅に必要なメンテナンスについて考えてみてください。
一般的には、外壁塗装とクラックの補修で十分なメンテナンスをすることができます。
なお、「メンテナンスをしたいけどどこに頼めばいいか分からない……」とお悩みの方は、ヌリカエ
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