フラットな形状が特徴の陸屋根ですが、屋根としての機能にはどのような特徴があるのでしょうか?
本記事では、デザイン的な人気から住宅でも用いられることが多くなってきている陸屋根のメリット・デメリットや必要なメンテナンスについて主に解説します。
- 陸屋根とは、勾配のない屋根のこと
- 陸屋根のメリットは、屋上として活用できること、天井が高くとれること等
- 陸屋根のデメリットは、雨漏りのリスクが高いこと、メンテナンス間隔が短めなこと等
陸屋根とは?
陸屋根(ろくやね、りくやね)とは、勾配のない平面状の屋根のことです。
別名で「平屋根(ひらやね)」「フラット屋根」ともいいます。
平らな屋根を陸屋根と呼ぶのに対し、傾斜のある屋根は「勾配屋根」と呼びます。
陸屋根の構造
陸屋根には勾配が全くないわけではありません。
「排水勾配(水勾配)」という、雨水が残らないようにつけられるわずかな傾斜があるのが一般的です。
さらに、雨漏りを防ぐため、表面にはウレタンやFRPによる防水工事が不可欠です。
陸屋根の利用と注意点
陸屋根には、ビルの屋上などのように人の立ち入りができるものとできないものがあります。
また、出入り口や収納・機械室として、屋上に突き出たペントハウスという小さな部屋が置かれることもあります。
陸屋根は、建物がスタイリッシュな見た目になるためデザインの観点からも採用例が増えています。
戸建て住宅では屋上施設や屋上緑化としての利用も多くあります。
陸屋根を採用した一般住宅の例 |
陸屋根の注意点
陸屋根は雨水が溜まりやすく、雨漏りにつながるという特徴があるので、水分に弱い木造住宅には向いていません。
陸屋根のメリット
勾配がない陸屋根には、一般的な三角屋根に比べて以下のようなメリットがあります。
メリット① 屋上スペースとして活用できる
平坦なことで人が立ち入れる陸屋根は、その多くが屋上として利用されています。
人気の用途は、洗濯物干し場やガーデニング、太陽光発電の設置などです。
メリット② 屋根メンテナンスが簡単・安価
簡単に出入りでき、傾きで滑り落ちる心配もないため、屋根工事に必須の足場費用が不要です。
工事のたびに約15万~20万円の節約になります。
また、日頃の屋根の掃除や簡単な補修も、住人が自ら行えます。
メリット③ 居室空間が広くなる
陸屋根は屋根裏のスペースが必要ないので、同じ高さの家でも室内の空間が広くなります。
部屋の天井が高くなることで、居室内で開放感を感じることができます。
陸屋根のデメリット
屋根勾配がないことから、陸屋根は以下のようなデメリットも抱えています。
デメリット① 水はけが悪い
陸屋根の最大の特徴でありデメリットがこれです。
傾きのある屋根であれば、雨や雪は自然と地面に流れ落ちますが、平らな陸屋根ではそのまま床に溜まってしまいます。
溜まった水は雨漏りを引き起こすいため、陸屋根には防水工事やそのメンテナンスなどの雨漏り対策が欠かせません。
デメリット② メンテナンス頻度が多い
陸屋根の床面に施される防水加工は、三角屋根に比べて耐用年数が短く、屋根メンテナンスの頻度は多くなります。
スレート屋根の寿命が20~30年であるのに対し、陸屋根防水の寿命は種類により10~20年が目安です。
デメリット③ 断熱性が低い
屋根裏の空間がないことは、デメリットにもなります。
陸屋根の家では、屋根に当たった太陽熱が直接天井に伝わるため、上の階の室内が暑くなりやすいのです。
しかしこのデメリットは、施工の際に断熱材や遮熱塗料などをつかうことで軽減できます。
陸屋根の種類と特徴
陸屋根の床をさして「ウレタン」や「FRP(エフアールピー)」と言っているのを聞いた事がありませんか?
また、自宅の陸屋根はゴム質なのに、スーパーの屋上は固いなど、床の材質の違いに気づかれたことはありますか?
ほぼすべての陸屋根は、防水性を高めるため表面がウレタンや塩ビニル、アスファルトなどを使った防水層で覆われているのです。
陸屋根には防水工事が必須
そもそも陸屋根のデメリットは、平らなことからくる“水はけの悪さ”でした。
陸屋根の雨漏りを防ぐためには、防水性の高い素材で床を覆う「防水工事」を施したうえで、定期的なメンテナンスが欠かせません。
4種類の陸屋根防水
陸屋根に施される防水工事には、以下の4種類があり、特徴や維持費用が異なります。
全国的にもっとも一般的なのは、場所や環境を選ばないウレタン防水です。
新しい家の陸屋根や、小さめのバルコニーの床等では、FRP防水もよく見られます。
防水工法 | 工事費用 | 特徴 |
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FRP防水 | 12,000~15,000円/㎡ |
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ウレタン防水 | 7,600~10,200円/㎡ |
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シート防水 | 6,300~8,400円/㎡ |
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アスファルト防水 | 7,000~10,000円/㎡ |
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①FRP防水
FRP防水とは、床に張ったガラス繊維を樹脂でコーティングする防水工事です。
衝撃に強く、重量の軽い陸屋根に仕上がります。
反面、費用がやや高めで、面積の狭いの陸屋根でないと施工が難しい工事方法です。
FRP防水の耐用年数は10~12年、工事費用は1㎡あたり「12,000~15,000円」が目安です。
施工後は約5年おきに表面のコーティングの塗り替え等のメンテナンスが必要となります。
「FRP防水」について詳しく知りたい方は、下記の記事もご覧ください。
>>「FRP防水とは? メリット・デメリット、かかる費用を徹底解説」
②ウレタン防水
ウレタン(塗膜)防水とは、陸屋根の床にウレタン樹脂を重ね塗りする防水工事です。
ウレタン防水のメリットは陸屋根の広さや形状を選ばないことで、ほとんどの家で選択可能です。
デメリットは、乾燥時間が必要なため、工事期間が長くなることです。
ウレタン防水の耐用年数は10~12年、工事費用は1㎡あたり「7,600~10,200円」が目安です。
施工後は約5年おきに表面層の塗り替えメンテナンスをしながら住み続ける必要があります。
「ウレタン防水」について詳しく知りたい方は、下記の記事もご覧ください。
>>「ウレタン防水のメリット・デメリットは? 他の防水工事と特徴・費用を比較」
③シート防水
シート防水とは、塩化ビニル製やゴム製のシートを陸屋根の床に張りつける防水工事です。
施工費用が安く、シートの色やデザインの選択肢が豊富なことがメリットです。
一方で、強風の地域には向かないこと、施工業者に熟練が必要などのデメリットとなります。
シート防水の耐用年数は10~15年、工事費用は1㎡あたり「6,300~8,400円」が目安です。
施工後は継ぎ目等や破れのメンテナンスをし、耐用年数を迎えたあとは再工事をしながら住み続ける必要があります。
施工方法には、シートを床に直に接着する「密着工法」と、シートと下地の間に空気が通る「機械式固定法」の2つがあります。
④アスファルト防水
アスファルト防水とは、熱した液状のアスファルトで床に防水シートを張っていく防水工事です。
防水性が高く、寿命も長いのが特徴です。
しかし、重量が大きく家に負担をかけるため、他の防水工法で作られた陸屋根をアスファルト防水にリフォームすることはあまりないでしょう。
アスファルト防水の耐用年数は15~25年、工事費用は1㎡あたり「7,000~10,000円」が目安です。
アスファルト防水層は非常に頑丈なのでメンテンナンスの必要はほぼありません。
アスファルト防水は、あまり頻繁にメンテナンスできない陸屋根や、大型の建物の屋上に向いています。
メンテナンスは「5年に一度のトップコート」
防水工事をした陸屋根の床を長持ちさせるには、約5年おきにトップコート(表面の保護材)の塗り替えをしましょう。
5年サイクルでトップコートを塗り替えることで、床の劣化が防水層に達する前にメンテナンスできるので、維持費を最大限安くすることができます。
トップコートの塗り替え費用は1,500~2,500円/㎡が目安です。
「防水工法の比較や維持費」について詳しく知りたい方は、下記の記事もご覧ください。
>>「陸屋根の防水工事4種を徹底比較! オススメは「塩ビシート」防水」
まとめ
以上、陸屋根の基礎知識と、陸屋根に欠かせない防水工事の種類の解説でした。
陸屋根のリフォームや修理・補修をお考えの際は、一般的な工務店よりも、専門の防水工事業者に相談するほうが、安くて高品質な工事を受けられるためオススメです。
当ページからも、あなたの家のリフォーム適正金額や、業者からの相見積りを取り寄せることができますので、この機会にご利用いただければ幸いです。
最後に、記事の要点を振り返ってみましょう。
陸屋根とはどんな屋根のことですか? |
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傾きのない、平坦な屋根のことです。家がすっきりしたモダンなデザインになるため、近年人気があります。 |
陸屋根のメリットは? |
スペースが活用できること、屋根工事に足場代が不要なこと、居室空間が広くとれることなどです。 |
陸屋根のデメリットは? |
水はけが悪いこと、メンテナンス頻度が高いこと、2階が暑くなりやすいことなどです。 |
陸屋根の防水工事の種類は? |
4種類あります。軽量で衝撃に強い「FRP防水」、施工場所を選ばない「ウレタン防水」、費用が安くデザインが豊富な「シート防水」、耐用年数の長い「アスファルト防水」です。 |
最後までお読みいただき、ありがとうございました。