陸屋根の防水工事4種を徹底比較! おすすめは「塩ビシート」防水

  • 【更新日】2023-06-15
陸屋根の防水工事4種を徹底比較! おすすめは「塩ビシート」防水

本記事は、ご自宅の陸屋根(屋上)の防水工事をお考えの方に向けて、

・陸屋根の防水工事にはどんな種類があるか?
・自分が選ぶべき陸屋根防水の工事方法はどれか?

が判断できる解説を行いました。

先に結論から申し上げると、陸屋根防水工事のなかでもっとも多くの方にオススメできるのは「シート防水」です。

その理由は、「耐久性」と「費用」のどちらの面でも、シート防水には弱点がないからです。

もちろん、他のベランダ防水工法である「FRP防水」「ウレタン防水」「アスファルト防水」などを選ぶほうが理にかなう場合もあります。
今から、陸屋根の防水工事それぞれの特徴、メリット・デメリットを比べていきましょう。

本記事のポイント
  • 陸屋根防水の工事は「メンテナンス費用」を基準に選ぶべき
  • メンテナンス費用がもっとも抑えられる「シート防水」がオススメ

陸屋根の防水工事、私の家だといくら?

※1時間以内に74人が ヌリカエで料金診断しました。

陸屋根防水はなぜ必要?

陸屋根とは?

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陸屋根(りくやね、ろくやね)とは、傾きのない平らな屋根のことです。
陸屋根のある住宅は、屋上スペースを洗濯物干し場等に活用できるのがメリットです。
ただし、傾斜がないため雨水が屋根に溜まりやすいというデメリットがあります。
そのため、陸屋根は雨漏りしやすく、防水工事が必要不可欠なのです。

>>【参考記事】「陸屋根とはどんな屋根?メリット・デメリットや工事方法を解説」

もしも陸屋根に防水工事をしなかったら?

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もしも陸屋根に防水工事を施さなかった場合、その家は雨漏りの絶えない家となってしまうでしょう。

仮に、家の材質が塗れても平気なコンクリートや金属だったとしても、「1年間の3分の1は雨」と言われる日本の気候の中で、建材の内部には日々雨が染み込んでいます。
その水が屋内側の天井や壁に雨漏りとして染み出してきます。
その時、家の内部では腐食などの劣化が進行していることでしょう。
そうなってしまった家は、長く住むことができなくなるだけでなく、家財や家具などにも水濡れ被害が及びます。
屋根の防水性は、それだけ重要なのです。

ましてや、傾斜がなく雨が溜まりがちな陸屋根では、なおのこと防水の重要性は高まります。 陸屋根には排水口(ドレン)と、ドレンに雨水を流すためのわずかな傾斜がついているものの、防水工事の品質やメンテナンスの大切さは三角屋根の比ではありません。

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陸屋根防水のメンテナンスが必要な症状・不要な症状

陸屋根防水の工事は今のあなたの家に必要なのか、必要だとしたらどの程度の規模の工事が最適かをご説明します。
のちのち、業者の言いなりで不要な工事まで発注してしまわないようにお役立てください。

メンテナンス不要と思われる症状

苔の発生(屋外床) 排水口(ドレン)の詰まり
コケの発生 排水口(ドレン)の詰まり

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こんな症状ならばメンテナンス不要

  • コケが生えている
  • 排水口(ドレン)が詰まっている

陸屋根の床面や排水口の清掃で間に合います。 ただし、掃除をしても異常が解消しなかったり、掃除した床面にヒビや傷などが見つかった場合は次項を参照してください。

小規模なメンテナンス・補修が必要と思われる症状

雑草の発生 屋外床の剥がれ
雑草の発生 ヒビ・剥がれ

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こんな症状ならばメンテナンス・部分補修が必要

  • 雑草が生えている
  • 床面にヒビ割れがある
  • 水溜まりが長引く
  • 排水口を掃除しても詰まりが直らない

陸屋根の防水層に破損があったり、防水層自体の寿命を超えてしまっている可能性があります。
悪化がすすんで工事規模が大きくなる前に、早めに業者へチェックやメンテナンスを依頼することをオススメします。
また、雑草を見つけても自分で抜かないようにしましょう。防水層の傷みが悪化する場合があります。

早急に修理工事をすべき症状

天井の雨漏り 床の膨れ
屋内側の雨漏り 床の膨れ

[ 画像出典: ]

こんな症状ならば早急に修理が必要

  • 屋内側で雨染み、雨漏りが発生している
  • 陸屋根の床が膨れている
  • 床面が大きく剥がれている・裂けている

陸屋根の防水効果がほぼ失われています。
家の躯体にまで水が染み込みだしている場合があり、進行度によっては陸屋根の土台から全面工事が必要になることも考えられます。
早急に業者に対応を依頼したほうがよいでしょう。

上記に加え、新築もしくは前回のメンテナンスから12~3年以上経過している場合は大至急業者を探して連絡をとることをオススメします。

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陸屋根防水の工事を選ぶ前に

陸屋根に施工できる防水工事にはいくつか種類があります。 では、防水工事は一体どのような基準で決めればいいのでしょうか?

陸屋根防水の工事は「メンテナンス費用」で決めよう

私は、陸屋根の防水工事は「メンテナンス費用で選ぶ」のが最も良いと考えています。

その理由は主に3つ挙げられます。

    1. 施工不良がない限り、防水性能に差はないから
    2. 工事費用にも大きな差はないから
    3. メンテナンス費用のみ、選ぶ工事によって差が出るから

 

それぞれ理由をご説明します。

① どの防水工事でも、陸屋根の防水力に大きな差はない

陸屋根防水に求められるのは、言ってしまえば「建物に水を染み込ませないこと」の1点に尽きます。
「水を染み込ませない」という効果においては、施工のミスがない限りどの防水工事も一緒です。
そのため重要なのは、「水を通さない状態を保つのに、どれだけの費用と手間がかかるか」だと言えます。

② どの防水工事でも、工事費用に大きな差はない

陸屋根に用いられる防水工法の種類については後ほどご説明しますが、施工費用に関してはほぼ横並びとなっています。

陸屋根防水の種類 工事費用(1㎡単価)
FRP防水 4,000~7,500円
シート防水 2,500~7,500円
ウレタン防水 3,000~7,000円
アスファルト防水 5,500~8,000円

最低額・最高額に若干差はありますが、どの工事でも施工は「約4,500~5,800円/㎡」となる場合がほとんどでしょう。
このため、陸屋根防水の工事の種類を決めるにあたり、施工費用は大きな理由にはなりません。

③ 防水工事によって、メンテナンス費用には差が出る

工事によって施工時の費用にさほど差がでないことはただ今説明したとおりですが、
防水層を万全な状態に保ち、トラブルなく陸屋根を使い続けるためのメンテナンス費用には差が出ます。
それは、防水工事ごとに必要なメンテナンスの「費用」と「頻度」がバラバラだからです。

ここに、陸屋根防水の選択基準を「メンテナンス費用」とするべき理由があります。
メンテナンス費用については、今からの各防水工事の紹介とともに、30年間分の比較を行ってご説明していきます。

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陸屋根防水の種類は4つ。それぞれのメリット・デメリット

陸屋根防水の種類は4種類

 

陸屋根に用いられる防水工事には4種類あります。
施工費用、維持費用ともに安い「シート防水」、軽量で固く、衝撃に強い仕上がりになる「FRP防水」、高耐久・高重量な「アスファルト防水」、陸屋根の広さや形状を選ばず施工できる「ウレタン防水」の4つです。

今から、陸屋根防水の4つの工法について、それぞれ「メリット・デメリット」と「費用」を軸に比べていきたいと思います。

陸屋根向け「シート防水」のメリット・デメリット

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シート防水は、工事費用が安くメンテナンスもほぼ不要

シート防水は、充分な防水性能を持ちながら、施工費用・メンテナンス費用ともに安価な防水工法です。

シート防水の床は、塩化ビニール製などのシートを熱や接着剤で貼り付けることで完成します。
シートの寿命が来るまでメンテナンス不要なため、費用面でかなりオススメきます。
また、シートの色やデザインも豊富なため、人目につく陸屋根にも最適です。
反面、風が強い場所には向かない、仕上げが難しく業者の腕を選ぶのがデメリットです。

30年間でみた「シート防水」の陸屋根のメンテナンス費用

塩ビシートの寿命は12~13年です。
30年間でみたメンテナンス費用は、1㎡あたり「16,800円」と4工法中首位の安さを誇ります。
万全を期してトップコートが塗られることもありますが、塩ビシート自体の寿命にはさほど影響を与えません。

 

【表:「シート防水」の維持費用シミュレーション(30年間)】

 

経過年数 メンテナンス内容 メンテナンス費用
0年目 新規施工 約4,800円
12年目 寿命・張り替え 約4,800円
24年目 寿命・張り替え 約4,800円
30年目 (端数6年分)寿命・張り替え 約2,400円
累計 約16,800円

 

「シート防水」はこんな人にオススメ

  • ●陸屋根防水の費用を安く抑えたい
  • ●陸屋根の色やデザインにこだわりたい
「シート防水」はこんな人には向かない

  • ✔強風の日が多い
  • ✔陸屋根の床が平らではない

陸屋根向け「FRP防水」のメリット・デメリット

[ 画像出典 ]

FRP防水は、軽くて丈夫な床に仕上がる

FRP(エフアールピー)防水は、洗濯物などで頻繁に人が出入りする陸屋根(屋上)に最適な工法です。

FRP防水の床は、まず「FRP」と呼ばれるプラスチック製の繊維を敷き詰め、つづいてその上を樹脂で固める方法で作ります。
デパートの屋上駐車場などにも使われる防水工法で、非常に丈夫な床に仕上がります。
そのため、人がよく歩くことのある陸屋根や、重いものを置く陸屋根に向いています。
弱点としては、下地の伸縮に弱いため「木造で広さのある陸屋根」には施工できません。

30年間でみた「FRP防水」の陸屋根のメンテナンス費用

メンテナンスは5~6年に一度、表面の樹脂(トップコート)を塗り替えていく作業を行います。
FRP自体の寿命は10~12年です。
30年間でみたメンテナンス費用は、1㎡あたり「24,300円」と、安さでは4工法中3位になります。

 

【表:「FRP防水」の維持費用シミュレーション(30年間)】

 

経過年数 メンテナンス内容 メンテナンス費用
0年目 新規施工 約5,800円
6年目 トップコート塗り替え 約2,300円
12年目 寿命・張り替え 約5,800円
18年目 トップコート塗り替え 約2,300円
24年目 寿命・張り替え 約5,800円
30年目 トップコート塗り替え 約2,300円
累計 約24,300円

 

「FRP防水」はこんな人にオススメ

  • ●陸屋根によく人が出入りする
  • ●陸屋根に重いものを置く
「FRP防水」はこんな人には向かない

  • ✔陸屋根が木造かつ面積が広い(15~20㎡以上)
  • ✔メンテナンス間隔が短いとイヤ
▼「FRP防水」について詳しく知りたい方はコチラ
>> FRP防水とは? メリット・デメリット、かかる費用を徹底解説

陸屋根向け「アスファルト防水」のメリット・デメリット

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アスファルト防水は、耐久性が抜群

アスファルト防水は、どちらかと言うと新築時に向く工法です。

アスファルト防水の床は、アスファルトでできたシートをバーナーであぶりながら貼り付ける「トーチ工法」と、同様のシートを粘着剤で貼り付ける「冷工法」があります。
防水性能は高いのですが、非常に重いため家の耐荷重によっては負担をかけてしまいます。
よって、最初からアスファルト防水を前提に新築される家向けの工法で、他の防水層でできた陸屋根をアスファルト防水に改修することは少ないです。

30年間でみた「アスファルト防水」の陸屋根のメンテナンス費用

アスファルト防水の寿命は約20年です。
30年間でみたメンテナンス費用は、1㎡あたり「17,000円」と4工法中もっとも高額です。

 

【表:「アスファルト防水」の維持費用シミュレーション(30年間)】

 

経過年数 メンテナンス内容 メンテナンス費用
0年目 新規施工 約6,800円
20年目 寿命・張り替え 約6,800円
30年目 (端数10年分)寿命・張り替え 約3,400円
累計 約17,000円

 

「アスファルト防水」はこんな人にオススメ

  • ●メンテナンス回数をとにかく少なくしたい
  • ●多少費用が高くても大丈夫
「アスファルト防水」はこんな人には向かない

  • ✔家が木造住宅(耐荷重と熱の発生)
  • ✔重量増加による耐震性が不安
  • ✔工事に熱やニオイがするとイヤ(トーチ工法の場合)

陸屋根向け「ウレタン防水」のメリット・デメリット

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ウレタン防水は、陸屋根の面積や形状を問わず施工可能

ウレタン防水は、面積や形状などの条件により他の防水工事が適さない陸屋根に向く工法です。

ウレタン防水の床は、液状のウレタン樹脂の2回ほど重ね塗りして作ります。
工法がシンプルなので、陸屋根の条件を選ばないのが特徴です。
シート防水であれば突起物や幅の狭さ、FRP防水であれば広い面積が大敵となりますが、ウレタン防水であれば問題ありません。

デメリットとしては工期が長い(3~10日)ことが挙げられます。
シートなどを使う他の防水工事に比べて、重ね塗りのたびに乾燥時間をとる必要があるからです。

30年間でみた「ウレタン防水」の陸屋根のメンテナンス費用

ウレタン防水層の寿命は約10年で、10年おきに重ね塗りを行うのが理想です。
30年間でみたメンテナンス費用は、1㎡あたり「19,200円」と4工法中2位の安さです。

 

【表:「ウレタン防水」の維持費用シミュレーション(30年間)】

 

経過年数 メンテナンス内容 メンテナンス費用
0年目 新規施工 約4,800円
10年目 寿命・塗り替え 約4,800円
20年目 寿命・塗り替え 約4,800円
30年目 寿命・塗り替え 約4,800円
累計 約19,200円

 

「ウレタン防水」はこんな人にオススメ

  • ●陸屋根の形状が特殊
「ウレタン防水」はこんな人には向かない

  • ✔工期が長いのはイヤ
▼「ウレタン防水」について詳しく知りたい方はコチラ
>> ウレタン防水のメリット・デメリットは? 他の防水工事と特徴・費用を比較

陸屋根の防水工事、私の家だといくら?

※1時間以内に74人が ヌリカエで料金診断しました。

陸屋根防水の業者の選び方

以上が、陸屋根の防水工法選び方と、各工法の特徴と費用比較になります。
陸屋根の防水性能を充分に保ちながら、メンテナンスの手間・費用をもっとも抑えられるのは「シート防水」であることがお分かりいただけたかと思います。

最後に1点、陸屋根の防水工事を検討中の方によくある不安を解消したいと思います。
防水工事をする際、複数の業者から「相見積もり」をとることがオススメです。

3社ほどの業者から相見積もりをとることで、

  • ・価格が比較できる、適正金額も見えてくる
  • ・説明のわかりやすさなどで、腕や信頼性が比べられる
  • ・感じの悪い業者にあたっても、別の候補に頼めばよい

 

というメリットがあります。

とくに、業者の腕の差が防水性能に大きく影響するシート工法をご検討中の場合、1社だけとやりとりをして決めてしまうのはややリスキーと考えられます。

 

「そんなにたくさんの業者に心当たりがない…」という方は、よろしければこのページの相場チェックから、相見積もりの照会をぜひご利用ください。
当サービスを経由して相見積もりをしていただいた方へのサービスとして、業者へのキャンセル連絡が必要な場合に、お客様にかわって当社が連絡をお引き受けいたします。

以上、本記事があなたのご自宅の陸屋根防水の検討に役立てば大変幸いです。

コラム:防水工事の用語集

陸屋根防水に関わるもの以外にも、防水工事の種類や用語をまとめてみました。業者の説明や資料が分からない、防水工事について自分でもっと深く調べたい場合などにお役立てください。

 

防水工法・関連用語など 用語の意味
ウレタン防水 ウレタンゴムを床面に塗布して防水層を作る工法。耐用年数は10~13年程度。6~7年目にメンテナンス(トップコートの塗り替えなど)が必要。
FRP防水 床面にプラスチック繊維を敷いたあとに樹脂で固めて防水層を作る工法。耐用年数は10~13年程度。5~6年目にトップコートの塗り替えが必要。
アスファルト防水 床面にゴム系のアスファルトを溶かしながら敷いて防水層を作る工法。屋根・室内・地下などに使われる。重量があるため、ベランダには使われない。耐用年数は10~15年程度。6~7年目にトップコートの塗り替えが必要。
アクリルゴム防水 一般的に外壁に使用される。ベランダには使われない。耐用年数は10~15年程度。
セメント防水 床・壁・木造のベランダ・水槽・地下防水などに使用される。ベランダには使われない。耐用年数は10~15年程度。
塩化ビニル系シート防水 シート防水の中では近年主流になっている。歩行可能で、小規模な建物や戸建て住宅・小面積の屋上などに多く採用されている。耐用年数は13~20年程度。
合成ゴム系シート防水 シート防水の一種。かつては屋上で多く採用されていたが、密着工法のみで複雑な形状に対応しにくく、近年はあまり採用されていない。耐用年数は10~15年程度。
ポリオレフィン系シート防水 屋上の防水工事で使用される。耐用年数は10~15年程度。
エチレン酢酸ビニル樹脂系シート防水 屋上の防水工事で使用される。耐用年数は10~15年程度。
塗膜防水 液状の樹脂などで防水層をつくる工法。「ウレタン防水」「FRP防水」などが当てはまる。
複合防水 塗膜とシートの両方を用いて防水層を作る工法。
メンブレン防水 建物の表面を皮膜で覆う防水工法の総称。特定の防水工法ではない。「FRP防水」「シート防水」「ウレタン防水」ともにメンブレン防水に含まれる。メンブレン防水以外には、壁材などのつなぎ目を線状に埋めて防水する「シーリング防水」がある。
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