本記事では、住宅用の屋根瓦の外見の画像とともに
「名称」「耐用年数」「メリット・デメリット」「費用相場」などをご紹介します。
- 今使っている屋根瓦がどんな種類か知りたい
- リフォームに使う屋根瓦を選びたい
- 瓦屋根にするかどうかも含めて、屋根材を検討したい
といった方々に、お役立ていただければ幸いです。
- 屋根瓦は原料・釉薬の有無・仕上げ方により「9種類」ある
- 陶器系の瓦の特徴は「重量」「長い耐用年数」「メンテナンスの少なさ」
- セメント系の瓦の特徴は「費用の安さ」「メンテナンスの多さ」
監修者:外壁劣化診断士 小林 成光
600件以上の現地調査を実施する過程で得た専門性を生かし、日本発のネット見積もりシステムでビジネスモデル特許を取得。ヌリカエにて、外装工事の専門家として、顧客・加盟企業のサポート・コラムの監修に従事。
▼略歴・プロフィール |
屋根瓦の種類と特徴一覧
本記事で解説している屋根瓦は以下の9種類です。
▼瓦の画像や名称をクリックすると、それぞれの解説にジャンプします。
屋根瓦の種類 | 特徴 | 耐用年数 |
---|---|---|
いぶし瓦 |
銀黒色。一般的な日本瓦のイメージに近い | 50年以上 |
釉薬瓦 |
黒・青・緑など多彩。表面がガラス質で光沢が有る | 50年以上 |
窯変瓦 |
オレンジ・赤・茶・濃茶色。一枚ずつ色合いや濃淡が異なる | 50年以上 |
練込み瓦 |
マーブル柄。ほとんど使われていない | 50年以上 |
素焼き瓦 |
赤茶色。沖縄や欧風の屋根のイメージになる | 50年以上 |
セメント瓦 |
灰色。他の瓦と異なり耐用年数が短く、塗装が必要 | 20~30年 |
軽量セメント瓦 |
セメント瓦をさらに軽量化 | 約20年 |
プラスチック瓦 |
重量が陶器瓦の6分の1。耐震性はもっとも高い | 20~30年 |
ガラス瓦 |
天窓の代用。戸建ての屋根全体に使うことはまずない | ― |
屋根瓦① いぶし瓦
いぶし瓦は、最終工程で煙でいぶすことにより、表面を炭素膜で覆われた瓦です。
外見はにぶいツヤのある銀色をしています。
釉薬によるコーティングよりも渋い光沢が特徴で、和風のデザインに最適です。
いぶし瓦の耐用年数
いぶし瓦の耐用年数は50年以上で、破損するまで繰り返し使用可能です。
ヒビ、欠け等が発生した場合はその瓦は交換が必要となります。
いぶし瓦の施工費用
瓦の施工費用は、屋根の形状と使う瓦の形状(デザイン)によって変わります。
いぶし瓦の場合、切妻屋根では和形瓦で11,000円/㎡、洋形瓦で11,500円/㎡、平板瓦で12,600円。寄棟屋根では和形瓦で12,500円/㎡、洋形瓦で13,000円/㎡、平板瓦で13,500円がそれぞれ目安です。
瓦の形状 | 屋根の形状 | |
---|---|---|
切妻屋根 | 寄棟屋根 | |
和形瓦(J形) | 11,000円/㎡ | 12,500円/㎡ |
改良洋形瓦(S形) | 11,500円/㎡ | 13,000円/㎡ |
平板瓦(F形) | 12,600円/㎡ | 13,500円/㎡ |
いぶし瓦の施工例
兵庫県南あわじ市内の一戸建ての屋根をS形のいぶし瓦で葺いた例。
洋形といっても日本風に仕上がらないわけではなく、ギンクロ色の重厚さ、甍の波など伝統的な日本瓦の特徴が感じられる。
兵庫県内南あわじ市の一般住宅のF形いぶし瓦の施工例。
いかにも日本瓦らしい外見ではないので、周囲の家からも浮きづらい仕上がり。
京都の美観地区内にある住宅に施工されたJ形のいぶし瓦の施工例。
数寄屋造りの形状が現代風にアレンジされている。
屋根瓦② 釉薬瓦
釉薬瓦(別名:陶器瓦)は、表面がガラス質でコーティングされており、つやつや光沢があります。
また、釉薬によって着色ができるため、カラーバリエーションが豊富です。
また、表面の小さな孔が釉薬で塞がれているため、耐水性にも優れています。
釉薬瓦の耐用年数
釉薬瓦の耐用年数は50年以上で、破損するまで繰り返し使用可能です。
ヒビ、欠け等が発生した場合、その釉薬瓦は交換が必要となります。
釉薬瓦の施工費用
釉薬瓦の施工にかかる費用は、切妻屋根では和形瓦で9,500円/㎡、洋形瓦で10,500円/㎡、平板瓦で9,600円。寄棟屋根では和形瓦で11,500円/㎡、洋形瓦で12,000円/㎡、平板瓦で10,000円がそれぞれ目安です。
いぶし瓦の施工費用よりも若干安いのが特徴です。
瓦の形状 | 屋根の形状 | |
---|---|---|
切妻屋根 | 寄棟屋根 | |
和形瓦(J形) | 9,500円/㎡ | 11,500円/㎡ |
改良洋形瓦(S形) | 10,500円/㎡ | 12,000円/㎡ |
平板瓦(F形) | 9,600円/㎡ | 10,000円/㎡ |
釉薬瓦の施工例
兵庫県南あわじ市内の戸建住宅にS形釉薬瓦を使用した例。
無釉の瓦にはない青緑色のカラーリングが実現。
兵庫県神戸市内の連棟戸建て住宅にJ形釉薬瓦と使用した例。
隣り合った棟同士で瓦の色をイエローで揃えているが、若干色味を変えることでメリハリがついた好例。
屋根瓦③ 窯変瓦
窯変瓦は、焼成中に窯に送り込む酸素の量を変えながら焼き上げた瓦です。
外見は、灰色に近いものから明るい赤茶色まで幅があり、かつ1枚ごとにバラつきがあるのが特徴です。
窯変瓦の耐用年数
窯変瓦も、他の陶器系瓦と同様に50年以上の耐用年数をもっています。
もちろん、破損するまで繰り返し使用可能です。
窯変瓦にヒビ、欠け等が発生した場合はその瓦は交換が必要となります。
窯変瓦の施工費用
窯変瓦の施工費用は、いぶし瓦のものに準じますが、窯変瓦を屋根に葺く際には1枚ごとの色味の個性を計算してバランス良くなるよう並べる手間がかかるため、5~15%ほど工賃が高くなることがほとんどです。
窯変瓦の施工例
兵庫県洲本市の一般住宅の屋根にJ形の窯変瓦を葺いた例。
1枚ごとに濃淡が微妙に異なる窯変瓦が、遠近どちらから見ても美しく良く見えるよう計算されて配置されている。
上の例よりもややモダンなデザインの住宅の屋根に施工されたS形の窯変瓦。
近づいた写真をみると、瓦1枚のなかにもグラデーションがかかっているものがいくつか確認できる。
兵庫県・西宮市内のモデルハウスの屋根に葺かれたF形の窯変瓦。
黄色や茶色を多用した洋風な外壁ともよくマッチしている。
屋根瓦④ 練込み瓦
粘土にマンガンなどの金属系顔料を練り込んでから焼成した瓦です。
金属系の発色を利用した、ムラのあるナチュラルな質感が特徴となっています。
練込瓦は、4種類のなかではあまり一般には使用されていないタイプです。
練込み瓦の耐用年数
練込み瓦の耐用年数は50年以上で、破損するまで繰り返し使用可能です。
ただし、ヒビ、欠け、割れ等が発生した場合は再利用はできず交換が必要です。
練込み瓦の施工費用
練込み瓦の施工費用は、いぶし瓦のものに準じますが、練り込み瓦自体が希少な屋根材であるため多くの場合で高くなると思われます。
屋根瓦⑤ 素焼き瓦
素焼き瓦は、粘土をそのまま焼成することにより、土そのままの色が出ているのが特徴です
見た目はレンガのようなザラつきが感じられる赤茶色が主流となっています。
日本では沖縄の赤瓦が、国外では南欧のオレンジ色の瓦が、素焼き瓦と同系統です。
素焼き瓦の耐用年数
素焼き瓦の耐用年数は50年以上で、破損するまでは繰り返し使用可能です。
ヒビ、欠け等が発生した場合はその素焼き瓦は交換が必要となります。
素焼き瓦の施工費用
素焼き瓦の施工費用は、いぶし瓦のものに準じます。
屋根瓦⑥ セメント瓦
セメント系は、粘土瓦に比べると形が揃っていて施工しやすいのがメリットです。
かわりに、美観の維持のためには塗装メンテナンスが欠かせないことと、古くなると急速に劣化するのがデメリットとなっています。
セメント系は、粘土系の瓦を使うより安く瓦屋根にしたい向けの商品でした。
ひと昔以上前は一定の需要がありましたが、スレート屋根材が登場してからは価格的・性能的にあえて選ぶ理由がない素材となってしまいました。
セメント瓦の耐用年数
セメント瓦の耐用年数は使用開始から20~30年です。
コケや退色など美観の問題が発生した場合は塗装、ヒビ、欠け等が発生した場合は瓦の交換が必要となります。
屋根瓦⑦ 軽量セメント瓦(防災瓦)
軽量セメント瓦は、伝統的な瓦の重厚感を感じるデザインをなるべく維持したまま、耐震性を高めた屋根瓦です。
製品としては、ケイミューの「ROOGA(ルーガ)シリーズ」が著名です。
軽量セメント瓦の耐用年数
軽量セメント瓦の耐用年数は約20年です。
使用開始から約10年で塗装が、約20年の経過もしくは全体にヒビ等が発生した場合は葺き替えが必要となります。
軽量セメント瓦の施工費用
軽量セメント瓦の代表製品であるROOGA(ルーガ)シリーズの実勢価格は、9,200円/㎡が目安です。
軽量セメント瓦の施工例
いぶし瓦の外見に近い「ルーガ雅(みやび)」を使った一戸建てです。
陶器というよりも天然石に近い、重厚感・ランダム感のあるイメージの「ルーガ鉄平(てっぺい)」を使用した一戸建てです。
屋根瓦⑧ プラスチック瓦
プラスチック瓦は、FRP(繊維強化プラスチック)などの樹脂素材を瓦状に成形した屋根材です。
最大の特徴は陶器瓦の6分の1という軽量さからくる耐震性の高さです。
素材がプラスチックであることから、メンテナンス頻度はやや高くなるでしょう。
プラスチック瓦の耐用年数
プラスチック瓦の耐用年数は20~30年が目安です。
耐用年数迎える前でも、ヒビ・欠け等が発生した場合は交換ないし葺き替えが必要となります。
プラスチック瓦の施工例
伝統的な和瓦の形状に近い「カルカ・ルーフ 天平(てんぴょう)」を使用した施工事例です。
屋根瓦⑨ ガラス瓦
ガラス瓦は、その名の通り透明なガラスを瓦状に成形した素材です。
他の屋根瓦のように屋根全面に葺く用途ではなく、トップライト(天窓)の代わりとして部分的に使用するのが一般的です。
昼夜の明るさの変化や、断熱性、プライバシー保護などの観点から、戸建ての屋根をすべてガラス瓦で葺くことはまずないでしょう。
▼住宅の主な屋根材の種類や特徴については、以下の記事で詳しく解説しています。
>> 代表的な屋根材の種類と特徴
屋根瓦の形状と選び方
屋根瓦の形状には主に4種類あります。
なお、瓦のうち形状の違いがあるのは「いぶし瓦」や「釉薬瓦」などの陶器系のものが中心となっています。
▼瓦の画像や名称をクリックすると、それぞれの解説にジャンプします。
屋根瓦の種類 | 特徴 | 価格 |
---|---|---|
J形瓦 |
最もスタンダードな形状。別名「和形瓦」 | やや安い |
F形瓦 |
フラットな形状をした瓦。別名「平板瓦」 | 普通 |
S形瓦 |
S字形にふたつの丸みがある瓦。別名「改良洋形瓦」 | やや高い |
本葺き瓦 |
平らな瓦の上に丸い瓦がかぶさっている瓦。寺社に多い | 高い |
4種類の形状の特徴を見ていきましょう。
形状① J形瓦
瓦の「J形」とは、後述の「本葺き瓦」の平板部分と丸い部分を1枚に結合した形状のことです。
別名「和形瓦」とも呼ばれ、サイズはJIS規格で定められています。
J形瓦のデザイン
和風・洋風どちらの家にも幅広く使われています。スタンダードでどんな家とも相性がよい形状です。
J形瓦の価格
J形瓦の価格は、4つの形状のうち最も安価です。
ただし、F形瓦とさほど違いはなく、屋根形状によってはF形瓦のほうが安くなる場合もあります。
J形瓦の施工費用は、屋根形状や瓦の製法によって9,500円~12,500円/㎡が相場となります。
- スタンダードなデザインの瓦を選びたい
- 価格はなるべく安いほうがよい
形状② F形瓦
瓦の「F形」とは丸みがない平らな板状をした形のことです。
F形の「F」は、「フレンチ」もしくは「フラット」の頭文字と言われています。
別名「平板瓦」とも呼ばれ、明治に輸入された“フレンチ瓦”がそのルーツといわれています。
F形瓦のデザイン
瓦の直線的なラインが活かせる、モダンな雰囲気の建物に合います
。
多くの洋風住宅や現代建築のかもしだす洗練された印象には、F形瓦がひと役買っているのです。
F形瓦の価格
F形瓦の価格は、4つの形状のうち真ん中で平均的となっています。
施工費用は、屋根形状や瓦の製法によって9,600円~13,500円/㎡が相場となります。
- スタイリッシュな雰囲気の家にしたい
- 重厚なイメージではなく、オシャレな屋根にしたい
形状③ S形瓦
瓦の「S形」とは、上下の両方向に丸みがついたデザインの瓦です。
明治以降に輸入された“スパニッシュ瓦”を改良した形で、S形の「S」もこのスパニッシュの頭文字から取られています。
S形瓦のデザイン
葺いたときの凹凸が大きく、表情豊かな屋根になります。
和風・洋風のどちらでも用いられますが、やや洋風のほうが合うでしょうか。
家の雰囲気はJ形よりも重厚感が薄れ、ポップで個性的なイメージが演出できます。
S形瓦の価格
S形瓦の価格は、J形・F形よりやや高めとなっています。
施工費用は、屋根形状や瓦の製法によって10,500円/㎡~13,000円/㎡が相場です。
ただし屋根形状が寄棟の場合は、F形より安く済むこともあるでしょう。
- スタイリッシュな雰囲気の家にしたい
- 親しみやすく個性的な家にしたい
- 瓦の重苦しい雰囲気を出したくない
- 費用がやや高くなっても大丈夫
形状④ 本葺き瓦
本葺き瓦は、丸瓦と平瓦を2枚組み合わせたデザインをしています。
一般住宅のほか、寺院や城の屋根にもよく使用されている瓦です。
本葺き瓦のデザイン
本葺瓦は、日本で初めて瓦が葺かれた飛鳥時代から使われている最も源流に近い形をしています。
他のタイプよりも伝統・風格のある雰囲気の家になること請け合いです。
本葺き瓦の価格
本葺き瓦の価格は、他の3形状より1.5~2倍程度高い値段になっています。
施工費用は20,000円/㎡以上みておく必要があるでしょう。
- 費用が高価になっても、伝統美追求したい
使う屋根瓦に迷ったら、専門家への無料相談がおすすめ!
ここまでで各屋根材の特徴などについて、大まかにお分かりいただけたのではないでしょうか。
しかし、実際に自宅に用いる屋根材を決めるとなると、自分の判断だけでは不安が残りますよね。
屋根工事は専門性の高い工事なので、専門家の意見を聞いてから最終的な決定をしたいところです。
「でも、専門家を自分で見つけてくるのは面倒くさい……」
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