アスベスト含有住宅の見分け方3つを徹底解説!リスクや除去方法まで知っておこう

  • 【更新日】2023-03-31
アスベストのリスクと対策

安価で耐火性・断熱性に優れたアスベストは、「奇跡の鉱物」として、高度経済成長期のあらゆる場面において非常に重宝されました。

しかしながら、その有害性が周知されてからは法律で使用が制限され、現在ではアスベストを含む建材は全面禁止となっています。

アスベストを放置すると、目に見えないくらい微小なアスベストの繊維が肺に入り、石綿肺や肺がんなどの健康被害をもたらす可能性があるので、注意が必要です。

今回は、外壁に使用されているアスベストの見分け方3つと放置するリスク、除去方法などを解説します。

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小林成光(コバヤシマサミツ)さんのプロフィール写真 監修者:外壁劣化診断士 小林 成光

600件以上の現地調査を実施する過程で得た専門性を生かし、日本発のネット見積もりシステムでビジネスモデル特許を取得。ヌリカエにて、外装工事の専門家として、顧客・加盟企業のサポート・コラムの監修に従事。 ▼略歴・プロフィール
「監修者|小林 成光(株式会社Speee)」

アスベストが含まれた住宅を見分ける3つの方法

アスベストを含む住宅の見分け方の解説

外壁にアスベストが使われているか見分けるには、次の3つの方法があります。

1. 家の建築時期で見分ける

外壁をはじめとした建築物へのアスベスト使用は、1950年代からはじまり、高度成長期の60年代がピークです。

1975年の労働安全衛生法施行令で含有率5%以上の吹き付けアスベストの使用禁止を皮切りに、アスベストへの規制が数回に渡って行われ、2006年の法改正では、一般的な戸建住宅でアスベストを含む建材を使用できなくなりました。

したがって、2006年以降に建築された一戸建て住宅は、建物の構造体にアスベストが含まれていることはありません。

一方、2006年以前に建てられたものであれば、外壁などにアスベスト含有の建材が使用されている可能性があります。
とくに1988年以前に建築された家は、アスベストを使用している可能性が高いと見分けることができるでしょう。

まずは登記簿謄本や重要事項説明書で、建築時期を確認してみましょう。

アスベストに関する労働安全衛生法改正・特定化学物質等障害予防規則の変遷は次のとおりです。

  • 1975年:含有率5%以上の吹き付けアスベスト使用禁止(労働安全衛生法施行令)
  • 1995年:有害性の高いアモサイト・クロシドライトの製造禁止(労働安全衛生法施行令)、含有率1%以上の吹き付けアスベスト使用禁止(特定化学物質等障害予防規則)
  • 2004年:石綿を含有する建材・摩擦材・接着剤など10品目の製造禁止(労働安全衛生法施行令)
  • 2006年:代替えが難しい適用除外製品等を除いた、石綿及び石綿をその重量の0.1%を超える含有量の物の製造等を全面禁止(労働安全衛生法施行令)
  • 2012年:石綿及び石綿をその重量の0.1%を超える含有量の物の製造を全面禁止(労働安全衛生法施行令)

 

2. 使用している外壁(屋根)材で見分ける

一般的な住宅で使用されている建材のなかで、アスベスト含有の可能性があるものは次のとおりです。

建材 使用年代
建築用仕上げ塗装材 1970~1999年
建築用下地調整塗材(フィラー) 1970~2005年
石綿含有金属系サイディング 1960~2004年
繊維強化セメント板 1960~2004年

また上記は外壁材ですが、屋根材にもアスベスト入りのものがあります。
屋根に使用されている素材は主に、スレート・瓦・金属の3種類です。
この屋根材の中でアスベストが含まれている可能性があるのは、スレート、セメント瓦などです。

屋根材に関して上記の素材が使用されていて、2004年より前に建てられたスレート屋根の建物であれば、アスベストが含まれていると考えた方が良いでしょう。

また、2006年以前に建てられた住宅で、アスベスト含有の建材を使用している可能性がある場合は、仕様書や矩計図を確認してみましょう。

建材の商品名が分かるのなら、メーカーのサイトなどでアスベスト含有量を確かめることができます。

3. 専門業者に調査依頼をする

自宅の外壁にアスベストが含まれているか正確に見分けるには、専門業者に調査を依頼する必要があります。
1988年以降の古い家屋を建て替えや土地売却などで撤去する場合は、事前にアスベスト調査を行っておきましょう。

もし外壁などの建材にアスベストが使用されていたら、解体作業中にアスベストが飛散してしまうからです。

アスベストを放置することのリスク

アスベストの拡大図

外壁材や塗料に含まれているアスベストは、合成樹脂やセメントで固められているため、放置しているだけなら飛散するリクスは極めて低いでしょう。
含有量も少なく、通常、そのまま住んでいるだけでは悪影響を及ぼすことはありません。

しかし、次のような状況で飛散したアスベストを吸い込むと、さまざまな健康被害を起こす危険性があります。

  • 外壁の経年劣化でアスベストが露出してしまった
  • アスベストが含まれた外壁を高圧洗浄した
  • アスベストが含まれた外壁をリフォームで切断または開孔した
  • 家の解体作業でアスベストが飛び散った

 

アスベストが引き起こす健康被害について

大気中に飛散したアスベストを吸い込むことでおこる健康被害には、さまざまなものがあります。
WHO(世界保健機構)の報告によると、アスベストの繊維には、肺繊維症や肺がん、悪性中皮腫など、深刻な病気を引き起こす原因になるといわれています。[注1]

アスベストがおこす健康被害の特徴として、アスベスト曝露から発症までの潜伏期間が平均40年と、非常に長いことが挙げられます。
なかには50年以上症状がなく、20代でアスベストを吸い込んだ人が、70代や80代の高齢になってから病気を発症する場合もあります。

アスベストが原因で発症する主な病気は次の5つです。

1. 石綿肺

肺繊維症(じん肺)の一種で、肺が繊維化してしまう病気です。
アスベストが原因で発症した肺線維症を石綿肺と呼びます。

アスベストの粉塵を10年以上吸い込んだ人におこる健康被害で、潜伏期間は20年程度です。
発症すると、息切れや運動能力の低下、重度の場合は心不全を引き起こす場合があります。

2. 肺がん

吸い込んだアスベスト繊維が肺に取り込まれると、肺細胞を刺激し、肺がんが発生するといわれています。
曝露量が多いほど発症リスクが高く、潜伏期間は15〜40年程度と人によって差があります。

3. 悪性中皮腫

胸膜や腹膜、心膜などに発生する悪性腫瘍で、進行が早く予後不良です。
若年期にアスベストを吸い込んだ場合に発症しやすいといわれており、潜伏期間は20〜50年程度です。

4. 良性石綿胸水

胸膜腔内に滲出液(胸水)が貯まる病気です。
肺がん同様、曝露量が多いほど発症率が上がります。

自覚症状がないケースが半数以上みられ、潜伏期間は10〜35年程度です。

5. びまん性胸膜肥厚

肺を包む臓側胸膜と壁側胸膜が繊維化し、呼吸に必要な肺の膨らみを損なう病気です。
繊維化が進むと胸膜が硬化し、呼吸困難を引き起こします。
潜伏期間は10〜40年程度です。

[注1]公共財団法人 大原記念労働科学研究所:クリソタイル アスベスト

アスベストには3段階の危険レベルがある

アスベストはその発じん性(飛散リスク)によって、レベル1〜3の段階に分類されます。

レベル1:発じん性が著しく高い

建築物の梁や柱、ボイラー室、立体駐車場の天井・壁などに吹き付けたアスベストが該当します。
アスベスト含有量が非常に高いため、撤去の際に大量のアスベスト粉塵が飛散します。

撤去作業には、労働基準監督署や都道府県庁に必要書類を提出しなければなりません。

レベル2:発じん性が高い

シート状のアスベスト含有耐火被覆材、断熱材、保温材が該当します。
通常が飛び散るリスクはありませんが、解体時には大量のアスベスト粉塵が飛散する危険性があるため、除去作業が必要になります。

レベル3:発じん性が比較的低い

外壁に使用するサイディングや塗料、フィラーなどの建材は、レベル3に該当します。
飛散リスクが低く、撤去作業時に厳重な保護具や隔離養生などを用意する必要がありません。

アスベストを除去する方法

アスベスト除去作業の例

レベル2〜3の吹き付けアスベストやアスベスト含有の吹き付けロックウールは、建築基準法による規制対象です。
建築物の増改築や大規模修繕の際、除去することを義務付けられています。[注2]

作業時には周囲への告知や前室、負圧除じん機を設置し、飛散防止のための処置や作業員の保護を徹底しなければなりません。

一方、一般住宅に使用されるアスベスト含有建築材は、ほとんどの場合、建築基準法の規制対象外です。
除去が義務付けられているわけではありませんが、経年劣化による露出やリフォーム、建て直しの際の飛散リスクを防止するためにも、放置せず、事前に飛散防止対策を講じておいたほうがよいでしょう。

アスベストが含まれた外壁を除去、または飛散リスクを抑えるには、次の2つの方法で対処します。

[注2]国土交通省:建築基準法による石綿規制の概要

1. 外壁を撤去する

アスベスト含有の外壁を撤去して、新しい外壁材・屋根材を設置する工法です。
除去工法と呼ばれています。

原因そのものを取り除くため、アスベストの飛散防止対策として最も効果的です。
撤去方法は、既存の外壁から粉塵が出ないよう湿潤化し、壊さないように手でばらすのが基本です。

既存外壁の撤去費用・新規外壁設置費用ほか、アスベスト含有の廃材処理費用と、高いコストがかかります。

自治体によっては、撤去にかかる費用の融資制度や、補助金が降りる制度を設けている場合があります。利用したい場合は、お住まいの地域の自治体に確認してみましょう。

2. 囲い込み・封じ込めによる処理

一般住宅では大抵の場合、撤去による除去(除去工法)ではなく、囲い込みや封じ込めによってアスベスト飛散を防止します。

囲い込み工法は、既存の外壁に新しい外壁材を重ね張りする工法です。
既存外壁の撤去費用が必要ないため、除去工法よりもコストを抑えることができます。

外壁や屋根をリフォームしたいけど、アスベストの既存外壁を除去する費用までは捻出できない、といった場合におすすめです。

封じ込め工法は、既存外壁の上から塗装を施す工法です。
かかる費用は塗装費用だけなので、飛散防止対策のなかでは低コストです。

塗装を塗り重ねることでアスベストの飛散リスクを低減できますが、あくまで一時的な対策といっていいでしょう。

経年劣化により塗装が剥がれしまったときは、再度塗装をするか、ほかの対策を講じる必要が出てきます。

「アスベスト入り住宅の重ね張り・塗装」について詳しく知りたい方は、下記の記事もご覧ください。
>>「「重ね葺き」とは?メリット・デメリット、費用、日数を解説」
>>「アスベスト入り住宅の外壁塗装前に知っておきたい知識と注意」

アスベスト除去を業者依頼するときのポイントと注意点

アスベスト含有の外壁を除去したい場合は、アスベスト入り外壁の見分け方に通じ、除去の経験が豊富な専門業者に依頼しましょう。
業者選びのポイントや注意点は次のとおりです。

1. 業者が遵守するべき項目を守っているか

アスベスト除去をする業者は、次の2つの項目を遵守する義務があります。
業者のホームページなどで、きちんと実施しているかどうかを確認しましょう。

  • 石綿作業主任者を選任すること
  • 全ての従業員に対して、石綿障害予防規則に定めるアスベストの特別教育を実施すること
  • 吹付けアスベストやアスベスト含有吹付けロックウール、アスベスト含有保温材などを除去する場合は、特別管理産業廃棄物管理責任者を任命すること
  • 半年に1度、全ての従業員にアスベストの特殊健康診断を実施すること

 

2. アスベスト除去に関する資格や許可を持っているか

アスベスト除去に関する資格には、次のようなものがあります。
下記の資格がなければ、アスベストを見分けるための調査や除去工事、廃材の廃棄などが行なえません。

なお、石綿作業主任者と特定化学物質等作業主任者に関しては、そのどちらかの資格を所有していれば、アスベスト除去業者としての条件を満たすことができます。

石綿作業主任者 労働安全衛生法に定められた国家資格。アスベスト除去の指揮・監督や、作業員の衛生の確保に配慮する
特定化学物質等作業主任者 労働安全衛生法に定められた国家資格。アスベスト除去の監督等を行い、アスベストによる汚染から作業員を守る
作業環境測定士 厚生労働省認定の国家資格。アスベストの測定・分析業務を行うために必要
特別管理産業廃棄物管理責任者 アスベストの除去工事で排出した廃石綿を管理するために必要

このほか、アスベストを含む廃材を運搬・回収するためには、産業廃棄物収集運搬許可が必要です。

アスベスト調査や除去工事を依頼する業者を選ぶ際は、上記資格・許可をきちんと所有しているかどうかをしっかり確認しておきましょう。
条件を満たしている業者であれば、ホームページに記載されているはずです。

こういった資格や許可を持っていない業者に依頼してしまうと、事前調査をいい加減に行われる、除去工事が雑ほか、アスベストを含む廃材を山に捨ててしまうなど、適切な処理を行わないケースもあります。
工事費用が極端に安い業者や、ホームページの情報量が少ない業者、施工実績が全く掲載されていない業者などは注意が必要です。

まとめ

自宅の外壁にアスベストが含まれているかどうかを正確に見分けるためには、専門業者への調査依頼が必要です。
たとえ自分で見分ける自身があっても、建築時期が2006年以前の一般住宅で、建て替えやリフォームの予定がある場合は、工事前にアスベスト調査を行っておきましょう。

外壁のアスベスト除去を業者に依頼する際は、アスベスト除去に関する資格や許可を所持しているか、施工実績が豊富か、廃材の処理方法を確認しましょう。
また、時間をかけて事前調査を行ってくれる業者かどうかもしっかりチェックする必要があります。

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