外壁や屋根材を何にするか検討されるなかで「ガルバリウム鋼板」という建材が良く出てきますが「ガルバリウム」とはどのような材質なのでしょうか。
そこで本記事では、ガルバリウムとはどのような素材なのかについて詳しく解説します。
加えて、ガルバリウム鋼板のデメリットとメリット、窯業系サイディングとの比較や施工例についてもご紹介していますので、ご自宅の外壁や屋根の建材を考えている方の参考となれば幸いです。
600件以上の現地調査を実施する過程で得た専門性を生かし、日本発のネット見積もりシステムでビジネスモデル特許を取得。ヌリカエにて、外装工事の専門家として、顧客・加盟企業のサポート・コラムの監修に従事。
▼略歴・プロフィール ガルバリウムとは、一般的に「ガルバリウム鋼板」と呼ばれる金属製の建材のことを指します。主に住宅の外壁や屋根に使われる人気の素材です。 このガルバリウム鋼板は、1972年にアメリカで開発されました。日本では1980年代頃から使われるようになり、その優れた耐久性と、金属ならではのシャープでおしゃれな見た目から、多くの住宅で採用されています。 ガルバリウムは、鉄の板を、アルミニウムと亜鉛、シリコンでめっきしたものになります。アルミニウムと亜鉛の長所である、サビにくさと耐熱性をもつ優れた金属です。 ガルバリウムは近年シェアを高めている外壁材ですが、もちろんデメリットもあります。 新築を建てる予定の方や外壁リフォームを考えている方のなかには、「よくおすすめされるガルバリウムだけど、本当に使って大丈夫?」といった不安を抱えている方も多いでしょう。 実際、ガルバリウムのデメリットは主に以下の8つがあります。 窯業系サイディングのデメリット 本章では、これら8つのデメリットごとに詳しくご紹介します。 ガルバリウム鋼板は、窯業系サイディングなどと比べて施工費用がやや高めになります。材料自体の単価と施工費が高くなるからです。 ガルバリウム鋼板はそれ自体では断熱性や防音性に乏しいため、多くの場合は断熱材も一緒になった「一体型」が使われます。「断熱材一体型のガルバリウム」の費用相場は6.500円/㎡前後が相場です。窯業系サイディングの施工費用は5,000円/㎡前後のため、ガルバリウム鋼板を使うと1,500円/㎡程度施工費が高くなることになります。 また、後ほどご紹介しますがガルバリウムは板金職人による施工が必要になるため人件費がかかる傾向にあることも、価格が高めになる理由です。 ガルバリウム外壁は、他の外壁材に比べて選べるデザインのバリエーション限られています。金属質のため木目調やタイル調といった装飾性の高いものはなく、カラーもシンプルなグレーやブラック、シルバー系が中心です。 モダンでスタイリッシュな家に仕上げたい場合には最適な反面、ナチュラルや洋風のテイストの外見にしたい場合は不向きな建材となります。 窯業系サイディングでも金属特有の光沢や滑らかな表面を再現した製品がラインナップされているため、「金属特有の雰囲気を出したい」という場合でもガルバリウムにこだわる必要はないケースもあるでしょう。 ガルバリウム鋼板は薄くて軽量な素材のため、衝撃に弱いというデメリットがあります。自転車の転倒やボールが当たったときに凹みができやすく、衣服にある固いものと接触したときにもに細かい傷がつきやすいです。
監修者:外装劣化診断士 小林 成光
「監修者|小林 成光(株式会社Speee)」ガルバリウムとは?
ガルバリウムのデメリット
価格が高め
デザインの幅が少ない
衝撃に弱い
また、濃色の場合は傷が目立ちやすくなるでしょう。この点については事項でご紹介しています。
濃色は傷が目立ちやすい
ガルバリウム鋼板の色で黒やネイビーなどの濃い色を選んだ場合、小さな傷が目立ちやすくなります。前提として傷が付きやすいことに加え、傷によって金属の下地が見えてしまうと光の反射で白っぽく浮き上がってしまうからです。
そのため、傷が気になる方は白やグレー系の色を選ぶ、定期的に洗浄や補修を行う必要があるでしょう。
ただし「色によって傷が目立ちやすくなる」ということ自体は窯業系サイディングなどでも同じです。ガルバリウム鋼板だと、素材自体に傷がつきやすいため色によってはさらに目立ちやすくなるという点がデメリットになります。
断熱性に劣る
ガルバリウム鋼板は金属素材のため、熱を伝えやすく断熱性はあまり高くありません。外気の暑さや寒さが室内に伝わりやすく、夏は室温が上がりやすい、冬は冷えやすいと感じることがあるでしょう。
今日で使用されるガルバリウム鋼板は、ほとんどの場合で断熱材との組み合わせて使用されます。そのため、素材自体は断熱材に劣るとしても実際に外壁材や屋根材として使うときに温度について後悔するケースは多くはありません。
ただし、断熱材を組み合わせたガルバリウム鋼板は、先述の通り建材自体の単価と施工費費用が高くなります。
環境によっては錆びやすい
ガルバリウム鋼板は錆びにくいとされる素材ですが、絶対に錆びないわけではありません。特に、海沿いの塩害地域や工業地帯などでは、塩分や化学物質によって錆が発生しやすくなる場合があります。
また、傷がついて素地が露出したまま放置されると、そこから錆びが広がることもあるでしょう。錆や腐食が心配であれば、窯業系サイディングや樹脂サイディングがおすすめです。
保証条件が厳しいケースが多い
ガルバリウム外壁は長寿命な素材ではあるものの、メーカーや製品によって保証条件が細かく設定されていることが多いです。そして、その保証対象が厳しい製品もあります。
たとえば「指定された施工方法でなければ保証対象外」「現場加工をした場合は保証対象」などは、クリアすることがかなり難しいです。外壁材や屋根材はそれぞれの自宅に合わせて施工されるため、保証から外れてしまうケースは多くあります。
保証対象や条件をよく確認しないまま施工すると、万が一のときに保証が受けられない可能性があるでしょう。そのため、ガルバリウム鋼板にするときは、信頼できる施工業者に相談し保証の詳細について説明を受けることが大切です。
施工業者が限られる
ガルバリウム鋼板は金属であるため、その施工は板金業者が担当します。金属専用の工具や技術が必要なため、すべてのリフォーム業者がガルバリウム鋼板の施工に対応しているわけではありません。
屋根や外壁の板金加工に慣れていない業者では、仕上がりに差が出ることがあるので注意が必要です。施工実績が豊富な専門業者を選ぶことで、美しい仕上がりと高い耐久性が期待できます。
また、地域によっては対応できる職人が少ないこともあるため、早めに業者選びを始めるとスムーズです。
ガルバリウムのメリット
続いて、ガルバリウム鋼板のメリットをご紹介します。主なメリットは以下の3つです。
窯業系サイディングのメリット
- メンテナンスコストを抑えられる
- 耐震性を高められる
- 金属特有のシャープな質感を出せる
それぞれ詳しく解説していきます。
メンテナンスコストを抑えられる
ガルバリウム鋼板は、表面が滑らかで堅牢なため汚れがつきにくく、他の外壁材に比べてメンテナンスの頻度を抑えられます。その結果、メンテナンスコストも抑えることが可能です。
窯業系サイディングでは10年程度で塗装やコーキングの打ち替えが必要になりますが、ガルバリウムであれば15年~20年ほど大きな補修が不要であるケースもあります。
ガルバリウム鋼板は初期費用は高めですが、長い目で見ればトータルコストを抑えることができるため、外壁の手入れに手間をかけたくない方にとってはおすすめです。
耐震性を高められる
ガルバリウム鋼板は素材自体が軽いため、外壁や屋根に使っても住宅全体の重量を増やしにくいです。建物の重量が軽くなるほど地震の揺れによる負荷も軽減されるため、耐震性の向上に繋がります。
耐震性の影響が心配されるカバー工法では、ほとんどの場合でガルバリウム鋼板が使用されます。そのため、外壁または屋根のカバー工法を検討する場合は、必然的にガルバリウムを張ることになるでしょう。
地震が多い日本においては、軽量素材であることは大きな安心材です。倒壊リスクを下げられるので、安全性を重視する方におすすめとなります。
金属特有のシャープな質感を出せる
ガルバリウム鋼板は、金属ならではのクールで洗練された質感が魅力のひとつです。フラットで無機質な印象を持たせることができ、スタイリッシュで現代的な住宅デザインに最適な建材といえるでしょう。
また、光の反射や陰影によって外壁に立体感が生まれ、遠目にも高級感のある印象を出すことができます。シンプルながらも他と差がつく外観を求める方にはぴったりの素材です。
「金属特有の質感が好き」「近代的でシャープな印象の家にしたい」といった方にもガルバリウムがおすすめとなります。
ガルバリウム鋼板と窯業系サイディングの比較
ガルバリウム鋼板と並んでよく検討されるのが窯業系サイディングです。
特に外壁材ではガルバリウム鋼板と人気を二分している窯業系サイディングですが、それぞれ性能や価格などが大きく違います。
ガルバリウム鋼板と窯業系サイディングのメリットとデメリット、価格、耐用年数などの比較をまとめました。
写真 | メリット | デメリット | 価格 | 耐用年数 | デザイン性 | |
---|---|---|---|---|---|---|
ガルバリウム鋼板 | ![]() |
・錆びに強い ・金属素材としては安価 ・シャープな質感でデザイン性が高い |
・夏場に屋内が暑くなる ・雨音が大きい ・欠点を補うと価格が高くなる |
3,000円~4,000円/㎡ | 20年~35年程度 | 窯業系サイディングより少ない |
窯業系サイディング | ![]() |
・耐用年数が長い ・耐火性が高い ・デザインが豊富 |
・メンテナンスコストがかかる ・蓄熱性がある ・素材そのものが重い |
4,000円~6,000円/㎡ | 30年~40年程度 | 様々なバリエーションあり |
データ出典:「ヌリカエ」が行った2025年5月のデスクリサーチより
それぞれの項目について詳しく解説します。
メリット・デメリットの比較
ガルバリウム鋼板 | 窯業系サイディング | |
---|---|---|
メリット | ・錆びに強い ・金属素材としては安価 ・シャープな質感でデザイン性が高い |
耐用年数が長い 耐火性が高い デザインが豊富 |
デメリット | ・夏場に屋内が暑くなる ・雨音が大きい ・欠点を補うと価格が高くなる |
メンテナンスコストがかかる 蓄熱性がある 素材そのものが重い |
ガルバリウム鋼板は金属素材ながらサビに強く、比較的安価でシャープな外観が魅力です。一方で、夏の暑さが伝わりやすく雨音も響きやすいため、断熱材や遮音対策が必要な場合があります。断熱材一体型のガルバリウム鋼板は、通常のものと比べて施工費用が高くなりますのでご注意ください。
窯業系サイディングは、耐火性が高く、デザインも豊富なのが特徴です。ただし、重くて蓄熱性がありガルバリウム鋼板よりも汚れが付きやすいため、メンテナンスコストがかかります。
どちらも一長一短があるため、立地や予算、性能に応じて選ぶことが大切です。
価格の比較
ガルバリウム鋼板 | 窯業系サイディング |
---|---|
3,000円~4,000円/㎡ | 4,000円~6,000円/㎡ |
ガルバリウム鋼板の相場は1㎡あたり約3,000円~4,000円、窯業系サイディングは4,000円~6,000円/㎡が相場となります。
窯業系サイディングの方がガルバリウム鋼板よりも高めです。広い面積をリフォームする場合、1㎡あたりの差が総額に大きく影響するため、初期費用を重視する方はガルバリウム鋼板の方が価格を抑えらえるでしょう。
耐用年数の比較
ガルバリウム鋼板 | 窯業系サイディング |
---|---|
20年~35年程度 | 30年~40年程度 |
ガルバリウム鋼板の耐用年数はおよそ20年~35年とされており、しっかりと施工・メンテナンスすれば長期間使えます。
一方、窯業系サイディングは30年~40年と、素材自体の寿命はやや長めです。ただし、窯業系サイディングは塗装やコーキングの補修など、ガルバリウム鋼板よりも定期的なメンテナンスが必要となります。
外壁や屋根は長期間家を守るものであるため、数十年単位でのメンテナンスコストも考えることをおすすめしまs。
デザイン性の比較
ガルバリウム鋼板 | 窯業系サイディング |
---|---|
窯業系サイディングより少ない | 様々なバリエーションあり |
窯業系サイディングはノーマルなフラットな見た目のものから、レンガ調や石積調、タイルや木目調など様々多彩な柄やカラーのなかから選ぶことができます。
ガルバリウム鋼板は、鉄素材ならではのシンプルで直線的な印象が強く現代的で無機質なスタイルとなります。選べるデザインのバリエーションは窯業系サイディングより少ない点に注意してください。
それぞれのデザイン幅がかなり違うため、理想とする外観やイメージを固めておくと良いでしょう。
【状況別】ガルバリウム鋼板のメンテナンス方法
ガルバリウム鋼板は、年数や劣化状態によって適切なメンテナンスが異なります。
- 10年未満で目立った劣化なし:洗浄
- 15年前後で軽微な劣化がある:塗装
- 穴や下地の劣化がある:張り替え・重ね張り
各状況とメンテナンス方法についてそれぞれ詳しく解説します。
10年未満で目立った劣化なし:洗浄
ガルバリウム鋼板は耐久性に優れているため、10年未満であれば目立った劣化は少ないことが一般的です。しかし、表面にはホコリや汚れが付着しやすいため、長持ちさせるには定期的な洗浄がおすすめです。
洗浄は中性洗剤と柔らかいブラシやスポンジを使って優しく行いましょう。高圧洗浄機を使う場合は、圧力を調整して表面を傷つけないように注意が必要です。
15年前後で軽微な劣化がある:塗装
築15年程度になると、ガルバリウム鋼板の表面に色あせや小さな傷が見られることがあります。これらの軽微な劣化は、塗装によるメンテナンスがおすすめです。
塗装前には、表面の汚れやサビをしっかりと除去し下地処理を丁寧に行います。塗料には防サビ剤を配合したクリヤータイプのものもあるので、ガルバリウム鋼板のデザインを消さないように塗装することも可能です。
塗装は専門業者に依頼するようにしましょう。プロによる提案と施工によって高い仕上がりに期待にきます。
穴や下地の劣化がある:張り替え・重ね張り
ガルバリウム鋼板に穴が開いたり下地材が劣化している場合は、塗装や部分的な補修での対応は難しくなります。そのため、外壁自体を新しくする張り替えや重ね張りが必要です。
張り替えは既存の外壁材を撤去し、新しいものに交換する方法です。下地の状態も確認・修復できるため、外壁全体の劣化が激しい場合は張り替えが適しています。 重ね張りは、既存の外壁材の上から新しい外壁材を重ねる方法です。張り替えよりも費用が抑えられますが、耐震性が弱まる、外壁内部の劣化は直せない点に注意してください。どちらが適しているかは専門業者による点検が必要となります。
ガルバリウム鋼板の色別デザイン比較
ガルバリウム鋼板には様々なデザインがあります。
色 | 外壁 | 屋根 |
---|---|---|
黒系 | ![]() |
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グレー系 | ![]() |
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ホワイト系 | ![]() |
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ここでは外壁・屋根の色として人気の高い「黒系」「グレー系」「白系」の3色ごとのデザイン比較をご紹介しますので、ご自宅を外壁や屋根の建材を検討する際の参考になれば幸いです。
黒系ガルバリウムのデザイン例
【事例①】
=45″ target=”_blank” rel=”noopener noreferrer”]画像出典:アイジー工業
黒いガルバリウム鋼板で外壁を統一させた事例です。黒に統一することで重厚感が全面に出ており、植栽や木材とのコントラストが最も生える色となります。
また、最も汚れが目立ちにくい色となるため、多少の汚れや傷でも美観を保ちやすい点がメリットです。
【事例②】
黒いガルバリウム鋼板で屋根を葺いた事例です。グレー系と並んで選ばれることの多い色となります。
「屋根を黒くすると室内が厚くなるのでは?」と心配される方もいますが、多少の差はあれど黒にしたらかといって極端に室内が熱くなるくなるということはありません。
塗料には遮熱塗料という、太陽光の熱を反射して屋根の表面温度を抑えるものもありますので、心配な方は検討してみるとよいでしょう。
グレー系ガルバリウムのデザイン例
【事例①】
グレーのガルバリウム鋼板で外壁を統一させた事例です。黒ほど重たい印象になりづらいため、シックな印象を残しつつ温かみのある雰囲気を出すことができます。
木部との相性がよいため、ドアやウッドデッキ、外溝に木材を使った家にもおすすめな色です。【事例②】
こちらは、グレーのガルバリウム鋼板で屋根を葺いた事例になります。グレーは屋根の色として広く採用されるものです。
一口にグレーといっても濃淡や質感は様々でラインナップも豊富なので、イメージに合わせて様々な選択肢のなかから選ぶことができます。
事例の詳細については、ぜひ事例のページをご覧ください
白系ガルバリウムのデザイン例
【事例①】
外壁を白いガルバリウム鋼板で統一した施工事例です。ガルバリウム鋼板は金属素材のためグレーなどの濃色が多いですが、このような白いものもラインナップされています。
白は光を反射するため、金属特有の光沢や冷たい質感が出にくくなります。そのため、ガルバリウム鋼板特有のデザインが気になる方でも選びやすい色といえるでしょう。
【事例②】
こちらは、屋根を白いガルバリウム鋼板で葺いた事例になります。一般的に屋根を白い色にすることは珍しいですが、商品としてラインナップされているため施工自体は可能です。
白は太陽光の吸収率が黒に比べて低いため、素材そのものが痛みにくくなるというメリットがあります。ただし、屋根・外壁材は色によって性能に大きな差が出ることはありません。
ガルバリウムはこんな人におすすめ
メリット・デメリットの両面をふまえて、ガルバリウムを使った家は以下に当てはまる人には向くと判断できます。
- 「耐震性」を重視する人
- 「カバー工法」を希望する人
- 今の家に「30年以上」住む予定の人
- 金属の「モダンなデザイン」が好みの人
ガルバリウムは、外壁・屋根材のなかで最も軽いため、耐震性を気にされる方におすすめとなります。
また、メタリックでシャープな外見の家が好みであれば、ガルバリウム鋼板が良いでしょう。窯業系サイディングでは金属の質感を出すことは困難であるためです。
以上、本記事の解説がリフォームのお役に立ちましたら幸いです。