あなたは今、お家の屋根か外壁の工事を検討中で、業者に「ガルバリウム」を勧められていませんか?本記事では、そんな状況の方へ向けて、以下のような解説を行っています。
- 「ガルバリウム」とは何か? どんな性質があるか?
- ガルバリウムは、ほかの屋根材・外壁材とどう違うか?
- もしガルバリウムを使った場合、家の外見はどう変わるか?
- ガルバリウムとは金属系の建築材料の一種。
- トタンよりも錆びにくく、長持ちする。
- 「ガルバリウム」とは元素や物質の名前ではなく、メーカーがつけた商品名。
- 外壁にガルバリウムを使用すると、金属調のモダンな外見になる。好みは分かれる。
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監修者:外装劣化診断士 小林 成光
600件以上の現地調査を実施する過程で得た専門性を生かし、日本発のネット見積もりシステムでビジネスモデル特許を取得。ヌリカエにて、外装工事の専門家として、顧客・加盟企業のサポート・コラムの監修に従事。
▼略歴・プロフィール |
ガルバリウムとは?

ガルバリウムとは、めっきされた金属材の一種
ガルバリウムは、金属(主に鋼)を「亜鉛」「アルミニウム」「ケイ素」の3つからなる合金でめっき(コーティング)した製品です。
めっきする目的は、錆びからの保護と耐用年数の向上です。
ガルバリウムは、トタン(亜鉛100%のめっき)と似ていますが、トタンよりも耐久性に優れた金属が作れます。なお、「ガルバリウム」という元素や物質が存在するわけではありません。
「めっき」とは?
めっき(鍍金)とは、素材の表面処理方法の一種で、金属または非金属の材料の表面に、薄い金属の膜を被せることを言います。
「ガルバリウム鋼板」とは?
鋼板とは、板状に加工された鋼(鉄)の表面にめっきを施したものです。ガルバリウム鋼板とは、特定の割合の「亜鉛」「アルミニウム」「ケイ素」からなる合金でめっきを施された、薄い板状の鋼です。日本では、主に外壁や屋根の建築材料として使われます。また、「ガルバ」という略称で多く呼ばれるほか、「ガリバリウム」「ガルバニウム」と呼称される場合もあります。
ガルバリウムの特徴は?
ガルバリウムには、主に次のような特徴があります。
- 錆びに強い
- 金属素材のなかでは、比較的安い
- 金属素材のなかでは、日射で表面が熱くなりづらい
>> ガルバリウムのメリットについて、もっと詳しく知りたい方はこちら
ガルバリウムはなぜ錆びに強いの?
ガルバリウムは、めっき層に使用されている「亜鉛」「アルミニウム」「ケイ素」の働きにより、金属の弱点である「錆び」に強くなります。
元素 | 質量比率 | はたらき |
---|---|---|
亜鉛 | 55% | 母材の腐食(錆び)を防ぐ |
アルミニウム | 43.4% | 亜鉛が流失するのを防ぐ |
ケイ素 | 1.6% | 全体の強度を上げる |
ガルバリウムは、亜鉛100%でめっきされる「トタン」よりも錆びへの強さそのものは低下しています。
しかし、トタンには含まれていないアルミニウムのはたらきにより、めっき表現に皮膜が形成されるので、全体としては高い防食性(錆びへの耐性)を発揮します。
ガルバリウムの耐用年数は何年?
最低でも20年、ほとんどの場合30年以上はメンテンナンス不要と言われています。各メーカーは、20~25年間の塗装不要を保証しているところが一般的です。メーカーは、実際に劣化しだす期間の約6割を保証期間と定めるのが通例なので、20年保証の製品であれば、普通に使えば30年はもつことが確かめられているでしょう。ただし、潮風により劣化が早まる沿岸地域などでの使用は、保証の対象外としています。
ガルバリウムの価格はいくら?
価格帯 | 金額目安 | 製品例 |
---|---|---|
低価格帯 | 5,500円~6,500円/㎡ | アイジー工業「スーパーガルテクト」など |
中価格帯 | 9,000円~10,000円/㎡ | ディートレーディング「ディプロマットスター」など |
高価格帯 | 12,000円~13,500円/㎡ | 元旦ビューティ工業「断熱ビューティルーフ2型」など |
「次世代ガルバリウム鋼板」とは?
ガルバリウム鋼板の発売から約30年後にあたる、2016年に新日鉄住金(現:日本製鉄)が開発した製品です。
「SGL」とも呼ばれています。

[ 画像出典:日鉄鋼板 ]
SGLでは、ガルバリウム鋼板のめっき成分である「亜鉛」「アルミニウム」「ケイ素」の3つにさらに「マグネシウム」を加えることで、錆びへの耐性が強化されています。
実は、現在販売されているガルバリウム鋼板は、すでにこの「SGL」が主流になっています。
ガルバリウムのメリット
ガルバリウムが、他の金属建材(トタンなど)に対してもっているメリットは主に次の2つです。
- 錆びに強い
- 金属素材としては安価
メリット① 錆びに強い
ガルバリウムは、めっき層に使用されている「亜鉛」「アルミニウム」「ケイ素」の働きにより、金属素材でありながら錆びに強いのが特徴です。
「金属素材といえばトタン」だった時代は、金属系建材は軽量で加工がしやすいかわりに錆びに弱いことが難点でしたが、ガルバリウムはこの難点を克服しました。
具体的な年数でいうと、トタンは10年で錆びると言われているのに対し、ガルバリウムは30年は錆びないとされています。
メリット② 金属素材としては安価
ガルバリウムの価格は、他の金属系建材の約「2分の1~3分の1」程度と非常に安価です。ガルバリウム(鋼板)が安価な理由は、表面のめっき層以外は、ありふれた鉄で出来ているからです。
項目 | ガルバリウム | ステンレス | アルミニウム |
---|---|---|---|
目安価格 | 6,000~9,000円/㎡ | 10,000~14,000円/㎡ | 18,000~25,000円/㎡ |
耐用年数 | 約30年 | 約50年 | 約50~100年 |
特徴 | 安い | 錆びに特に強い | 耐用年数が特に長い |
上記の表にない「トタン」は、ガルバリウムとほぼ同価格で、錆びやすく耐久性では劣ります。
そもそも、金属系建材のメリットはなに?
金属系同士の比較ではなく、金属系とそれ以外の代表的な建材のメリット・デメリットを比較してみましょう。
「屋根」に金属系素材をつかうメリット
項目 | 金属(ガルバリウム) | スレート屋根 | 和瓦 |
---|---|---|---|
目安価格 | 6,000~9,000円/㎡ | 4,500~7,000円/㎡ | 9,000~15,000円/㎡ |
耐用年数 | 約30年 | 約25年 | 約60年 |
メリット | 軽量、加工しやすい、防水性が高い | 安価、施工業者が多い | 高耐久 |
デメリット | 低断熱性、雨音が大きい | 耐用年数が短め | 高価格、高重量 |
ガルバリウムを主流とする金属根材は、価格としては中程度だが、そこそこ長い耐用年数をもち、防水性が高いのが特徴と言えます。
「外壁」に金属系素材をつかうメリット
項目 | 金属(ガルバリウム) | 窯業系サイディング | モルタル |
---|---|---|---|
目安価格 | 4,000~6,000円/㎡ | 3,500~5,000円/㎡ | 2,000~4,000円/㎡ |
メンテナンス周期 | 約15年 | 約10年 | 約10年 |
メリット | 高防水性、メンテナンス周期が長い | 低価格、デザインが豊富 | 防火性が高い |
デメリット | 錆びる可能性がある | メンテナンス頻度が高い | ひび割れしやすい |
金属外壁材は、価格としては高めな部類だが、長い耐用年数をもち、雨漏りや凍害に強いのが特徴と言えます。
ガルバリウムのデメリット
反対に、ガルバリウムの弱点は以下の3つです。
- 夏場に屋内が暑くなる
- 雨音が大きい
- 欠点を補うと価格が高くなる
デメリット① 夏場に屋内が暑くなる
金属であるガルバリウムは、セメントやコンクリート、陶器系の素材に比べて日射によって表面温度が高くなります。夏場は80℃に達することもあり、熱が伝わった屋内が暑くなる原因にもなります。
ガルバリウムの表面温度対策
表面温度が屋内に伝わらないように、裏側(建物側)に断熱材をつけたガルバリウム鋼板が販売されています。また、ガルバリウムの表面を白色や薄い色に塗装することで、表面温度をかなり低減できます。
デメリット② 雨音が大きい
ガルバリウムを屋根材として用いる場合、薄い金属板であることから、雨が降るとパタパタという大きめの音が鳴ってしまいます。
ガルバリウムの雨音対策
表面に細かい石粒をコーティングした製品(「ジンカリウム鋼板」などの商品名で販売)を選ぶことで、落ちた雨粒を分散して音を小さくする効果が期待できます。

天然石粒つきのガルバリウム鋼板には、ディートレーディング社の「ディプロマット」などがあります。
デメリット③ 欠点を補うと価格が高くなる
2つのデメリットと一緒に対策方法を紹介しましたが、これらの対策になるガルバリウム鋼板は中価格帯以上の製品となるため、イニシャルコスト(初期費用)が高くなってしまいます。
ガルバリウムの賛否両論点
ガルバリウムを使用した家の、金属系の外装材特有のメタリックな外見は、人によって好みの分かれるポイントです。
とくにガルバリウムの諸製品には、販売時の色が黒やダークカラーなものが多いので、シックでモダンな家になるでしょう。これまで、白やアイボリー、ベージュといった明るい色の家に住んでいた方は、印象の変化に注意が必要です。
「外壁」にガルバリウムを使った住宅のデザイン例

[画像出典:アイジー工業]
外壁に、アイジー工業「SF-ビレクト Fマットブラック」を使用。

[ 画像出典:アイジー工業 ]
外壁に、アイジー工業「SF-ビレクト Fネオホワイト」と「同 Fチャコールメタリック」を組み合わせて使用。

[ 画像出典:旭トステム ]
外壁に、旭トステム「ラスティウッドPZ ラスティダークブラウンP」と「ラスティウッドP ラスティシダーP」を組み合わせて使用。

[ 画像出典:旭トステム ]
外壁に、旭トムテム「セドナRF SWミストホワイト」と「プレシャスウッドRF DBミストビターブラウン」、「ジオストライプS エストガンメタル」を組み合わせて使用。
「屋根」にガルバリウムを使った住宅のデザイン例

[ 画像出典:アイジー工業 ]
屋根に、アイジー工業「スーパーガルテクト Sシェイドブラウン」を使用。

[ 画像出典:鶴弥 ]
屋根に、鶴弥「レコルーフ ブラック」を使用。

[ 画像出典:元旦ビューティ工業 ]
屋根に、元旦ビューティ工業「断熱ビューティルーフ2型」を使用。

[ 画像出典:福泉工業 ]
屋根に、福泉工業「efルーフ ブラック」を使用。
ガルバリウムはこんな人におすすめ
ガルバリウム屋根がオススメの人
メリット・デメリットの両面をふまえて、ガルバリウムを使った家は以下に当てはまる人には向くと判断できます。
- 「耐震性」を重視する人
- 「カバー工法」を希望する人
- 今の家に「30年以上」住む予定の人
- 金属の「モダンなデザイン」が好みの人
ガルバリウムは、屋根材のなかで最も軽い素材であり、使用することで耐震性の高い家にすることができます。
また、重量が軽いことで、「カバー工法」(今の屋根や外壁の上から重ねて、新しい屋根や外壁を作る工事)に、耐震性をあまり下げず済むので最適です。
また、今の家に30~40年以上住む予定の方は、スレート屋根や窯業系サイディングではやや耐久年数が足らず、リフォームの回数が増えてしまうため、ガルバリウムがオススメです。
黒に近いメタリックな外見の家が好みであれば、ぜひガルバリウムの使用をおすすめします。モダンなデザインであると同時に、初期費用と維持費用の両面のバランスがよい家を手に入れることができるでしょう。以上、本記事の解説がリフォームのお役に立ちましたら幸いです。
建築工事研究会『積算資料ポケット版 リフォーム編 2021年度版』一般社団法人経済調査会 2019 みんなの建材倶楽部『使える!内外装材[活用]シート』エクスナレッジ 2011 菊池克弘『住宅リフォーム重要事項32選』都市環境建設 2015
▼インターネット
METAL supermarkets「What is Galvalume?」(英語)
Sheffield Metals「Galvalume® vs. Galvanized Metal Roofing」(英語)
YouTube みんなの屋根の相談所|石川商店「ガルバリウムは「 フライパン 」と思えばかんたん。特徴、価格、注意点まとめ」