窯業系(ようぎょうけい)サイディングとは、国内の新築住宅で最も多く使われている外壁材です。
しかし「リフォームは窯業系サイディングにしようかな?」、「金属サイディングとどっちがいいの?」といった疑問や悩みがある方も多いのではないでしょうか。
そこで本記事では、
・窯業系サイディングとは何か
・窯業系サイディングのメリット・デメリット
外壁を窯業系サイディングにした事例
・窯業系サイディングの耐用年数、メンテナンス頻度
・窯業系サイディングと金属サイディングの比較
について詳しくご紹介します。
外壁材について詳しく知りたい人は、以下の記事をご覧ください。
- 「窯業」は "ようぎょう" と読む!
- 耐用年数の目安は20年~40年
- 点検は5年前後、塗り替えは20年前後の周期で行う
- 金属サイディングは窯業系サイディングよりも耐用年数が長いが価格が高い
監修者:外壁劣化診断士 小林 成光
600件以上の現地調査を実施する過程で得た専門性を生かし、日本発のネット見積もりシステムでビジネスモデル特許を取得。ヌリカエにて、外装工事の専門家として、顧客・加盟企業のサポート・コラムの監修に従事。
▼略歴・プロフィール |
窯業系サイディングとは?
窯業系サイディングとは、セメントと木材繊維などを薄い板状に加工した外壁材です。
優れたコストパフォーマンスがありデザインも豊富なことから、現在多くの建物の外壁が窯業系サイディングとなっています。新築ではほとんどが窯業系サイディングです。
窯業系サイディングは、安価でデザインが豊富であり、耐震性や耐火性にも優れた機能性を持っています。
窯業系サイディングの施工は、モルタルのように現場でイチから作り上げる素材は違い、工場で一定規格に加工されたボードを現場で組み立てるだけ済みます。
また、窯業系サイディングは「塗装仕上げ」と現場で塗装される「無塗装板」に分けることができます。ただし、ボード自体は工場で生産されているため、品質が安定しており大量生産が可能です。
これにより「材料費・施工費ともに安い」「色や柄の種類が豊富」という特徴があります。
窯業系サイディングのメリット・デメリット
窯業系サイディングは、戸建ての外壁で約80%のシェアがあります。その点メリットは多くありますが、デメリットもあることに注意してください。
ここでは、窯業系サイディングにおけるメリットとデメリットについて詳しくご紹介します。
窯業系サイディングのメリット
窯業系サイディングのメリットは、以下の通りです。
- 価格が安い
- 耐火性に優れている
- デザイン・カラーバリエーションが豊富
- 施工が簡単
初期費用が抑えられる
窯業系サイディングのメリットとして、他のサイディング材と比較すると初期費用が安く抑えられることが挙げられます。
平均的な30坪の住宅の場合、160〜250万円でリフォームが可能です。費用が安いことの理由としては、ボード自体は工場で大量生産されている、施工が簡単であるため人件費が抑えられるなどがあります。
耐火性に優れている
窯業系サイディングは、防火外壁材と言われるほど耐火性に優れています。住宅がどの程度火に強いかを示す「耐火等級」で、火災による火熱を遮る時間の長さが45分~60分といった3~4級の窯業系サイディング製品が多く流通しています。
デザイン・カラーバリエーションが豊富
窯業系サイディングは大変デザインの自由度が高いです。
洋風、和風、モダンなどのテイストはもちろん、木目調、レンガ調、石柄、タイル柄、ストライプ柄などデザインバリエーションから選べます。質感も様々なので、外壁材のなかでは一番こだわりを再現しやすいといえるでしょう。
施工が簡単
メーカーで生産されたサイディングボードという板を外壁の大きさにカットして貼り付けていく施工方法なので、職人の技術力に頼ることなく施工できます。
窯業系サイディングにリフォームする場合、「張り替え」なら10~18日程度、「カバー工法」なら7日~14日程で完成します。
窯業系サイディングのデメリット
窯業系サイディングのデメリットは、主に下記の3つです。
- メンテナンス頻度が高い
- 熱をためやすい
- 本物の質感には劣る
多くのメリットがある窯業系サイディングですが、どんな外壁材にも言えるようにデメリットもあります。
メンテナンス頻度が多い
窯業系サイディングは外壁材の中でもこまめにメンテナンスや塗装が必要な外壁材です。
一般的な窯業系サイディングの商品であれば10年に1度は塗装が必要で、1回の塗装工事につき約80万~120万円の費用がかかります。
最近ではメンテナンスの頻度が少なくなるよう高耐久塗料を塗布してある商品などもありますので、そちらを検討をしてみるのも良いでしょう。
熱を溜めやすい
窯業系サイディングは蓄熱性があるので、熱を持ちやすい外壁材です。夏場だと外気の熱が室内にまで影響しやすいことから、室温調整にエアコンを使う頻度が多くなる可能性があります。
遮熱・断熱効果のある塗料を使用して外気を遮断する方法もありますが、通常の塗料よりも高めになる点に注意してください。
遮熱塗料・断熱塗料について詳しくは、下記の記事もあわせてご覧ください。
耐水性に劣る
窯業系サイディング自体に耐水性はありません。そのため、耐水性は耐水加工や塗料に依存することになります。
潮風のあるエリアや寒冷地で窯業系サイディングにすると、水分によって外壁の劣化が早くなってしまうケースもあるので注意してください。
耐水性のあり頑丈な外壁は、昔から北米で主流の樹脂系サイディングになります。
【工法別】窯業系サイディングの費用相場はいくら?
窯業系サイディングへのリフォームは、工法によって大きく金額が変化するので、まずは工法をおさえましょう!
既存の外壁を窯業系サイディングに変更する場合、張り替えとカバー工法という2種類の方法があります。
窯業系サイディングの張り替え費用の相場
一般的な約30坪住宅の外壁を窯業系サイディングに張り替えた際の費用相場は、180~200万円前後です。
張り替えの場合は既存の外壁材の撤去をする必要があるため、解体撤去費用と廃棄費用がかかります。
カバー工法をしたときの費用相場
一般的な30坪程度の外壁を、窯業系サイディングでカバー工法した場合の費用相場は150万円前後です。撤去費用がかからない分、張り替えよりも総額を抑えられます。
一方で、上からサイディングボードを貼り付けるため建物の重量が増加し耐震性が弱くなってしまうのがデメリットです。そのため、塗装しても良くならないモルタル壁の上に、重量が軽い金属系サイディングを貼るケースが多いようです。
他の外壁材から窯業系サイディングに変更したい場合は、建物への負担を軽減するため張り替えの方がおすすめです。
外壁を窯業系サイディングにした事例
ここでは、ヌリカエを利用して実際に外壁を窯業系サイディングに張り替えた方の事例をご紹介します。
施工写真とともに、費用と工期なども併せてご紹介していますので、窯業系サイディングでの外壁リフォームを検討している方の参考になりましたら幸いです。149万円で窯業系サイディングに貼り替えた事例
施工費用 | 149万円 |
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延床面積 | 99.17㎡ |
工期 | 21日 |
外壁を一新しているため、150万円近い費用がかかっています。
249万円で窯業系サイディングに貼り替えた事例
施工費用 | 249万円 |
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延床面積 | 132.23㎡ |
工期 | 39日 |
3階建てであることから、貼り替え費用も相場より高めになっています。
窯業系サイディングの耐用年数とメンテナンス頻度
耐用年数
窯業系サイディングの耐用年数は、製品にもよりますが一般的には20年~40年です。ただし、この数字は外壁自体の交換が必要になるまでの目安となります。定期的なメンテナンスはこれよりも早いスパンで行う必要がある点に注意してください。
メンテナンスを怠ると耐用年数が縮まり、外壁本来の性能が発揮できなくなってしまう可能性があります。
ちなみに、同じ外壁材としてよく比較される金属サイディングの耐用年数は30年~40年前後です。窯業系サイディングと同等か少し長い耐用年数となっています。
メンテナンス頻度
窯業系サイディングは、日ごろから綺麗にしておくことで見た目や耐久性を延ばすことができます。
目立つ汚れがあれば、ホースでの水洗いや雑巾など柔らかい布で拭き取るようにしましょう。鳥の糞やカビなどは、中性洗剤を使うことで綺麗に落すことができます。積雪がある地域では土台部分や吹き溜まりに雪が溜まりやすくなるので、こまめに除雪すると藻やカビの発生を抑制できます。
高圧洗浄や固いブラシなどは、接合部にある隙間からの漏水や壁面に傷がつく可能性があるためおすすめできません。また、手の届かない高い場所にある汚れは安全に気を付け、危険な場合は無理せずに業者に頼むようにしましょう。
業者による点検・補修は5~10年周期
窯業系サイディングは、5年~10年を目安に業者による点検や補修が必要です。
年月が経ってくると、壁面を触ると白い粉が付く状態(チョーキング)になったり、表面やシーリング部分にひび割れなどの劣化が見られるようになります。このような症状が出たら、業者による点検や塗り替えを検討すべきタイミングです。
ハウスメーカーや工務店の保証期間内であれば、無料で点検してくれるケースも多くあります。部分的な劣化や傷の補修であれば費用もそれほどかかりません。
外壁の剥離や反りなどが大きい場合は張り替えが必要になり、費用も100万円以上かかることが多いです。しかし、5年~10年程度で張替をするケースは非常に稀となります。
メーカー推奨のメンテナンススケジュール
窯業系サイディングでトップシェアのニチハでは、推奨しているメンテナンススケジュールがあります。
こちらのメンテナンススケジュールを見ると、5年ごとの定期点検が推奨されています。また、製品によってばらつきがあるものの、塗り替えはおおむね15年~25年ごと、張り替えは30年~40年ごとが目安です。
金属サイディングとの比較
外壁リフォームをする際、窯業系サイディングと金属サイディングのどちらを採用するか迷われる方が多いです。
金属サイディングは金属板と裏打材によって構成されるサイディングボードで、軽量でありながら耐久性や耐震性に優れてる外壁材です。いくつか種類がありますが、今日では「ガルバリウム鋼板」が圧倒的な人気となっています。
2つの外壁材を比較すると、下記のようになります。
2つの外壁材のメリットとデメリット、リフォーム費用について詳しく見ていきましょう。
金属サイディングについて詳しくは、下記の記事もあわせてご覧ください。
メリット・デメリット
窯業系サイディングは、一般的に金属サイディングよりも価格が安めです。そのため施工費用を抑えやすく、家計にやさしい外壁材といえるでしょう。
また、高温で処理された窯業系サイディングは耐火性能が高いです。商品ラインナップも豊富なため、安全性を確保しつつ自分の好きなデザインで外壁を彩ることができます。
一方の金属サイディングは、窯業系サイディングよりも耐用年数が5年~10年ほど長いです。素材自体も軽量のため、耐震性にも優れています。金属ならではの独特な質感も窯業系サイディングでは再現できず、唯一無二の魅力です。
価格とデザインの豊富さでは窯業系サイディングに軍配が、耐久性能では金属サイディングに軍配が上がるでしょう。
リフォーム費用
外壁のリフォームを検討するときの大きな悩みが費用だと思います。
すでにご紹介した通り、基本的には金属サイディングの方が施工費用が高いです。
例えば、30坪の戸建ての外壁を張り替える場合、窯業系サイディングは200万円前後、金属サイディング(ガルバリウム)は250万円前後となります。カバー工法の場合はどちらも少し安くなりますが、それでも窯業系が150万円前後に対して、金属サイディングは200万円前後です。
窯業系サイディングよりも金属サイディングの方が50万円前後高くなると考えていただくとよいでしょう。ただし、施工費用は外壁の状態などによって変動しますので、詳細な金額は見積もり書を確認してください。
窯業系サイディングと金属サイディングは結局どっちがいい?
これまで窯業系サイディングと金属サイディングの特徴や価格についてご紹介していきましたが、結局のところどちらを選べばよいのでしょうか。
ここでは、それぞれのサイディング材ごとにおすすめなケースをご紹介します。
窯業系サイディングがおすすめなケース
窯業系サイディングがおすすめなケースは下記の3つです。
- 初期費用を抑えたい場合
- 具体的なデザインのイメージがある場合
- 工期を短くしたい場合
窯業系サイディングの大きなメリットは、価格の安さとデザインの豊富さです。
「とにかくリフォームにかかる費用を抑えたい」、「外観の具体的なイメージがある」といった方は、コストパフォーマンスがよくデザインが豊富な窯業系サイディングがおすすめとなります。
また、窯業系サイディングは構造がシンプルで組み立てやすいため「なるべく早くリフォームを終えたい」と考えている方にも最適です。
金属サイディングがおすすめなケース
金属サイディングがおすすめなケースは下記の3つです。
- カバー工法をする場合
- 長期的なメンテナンスコストを抑えたい場合
- 金属の質感が良い場合
金属サイディングは軽量で耐震性が高いというメリットから、カバー工法に最適なサイディング材です。
カバー工法は外壁が重くなるため建物の耐震性が弱まりがちですが、軽量なら金属サイディングなら耐震性への悪影響を抑えて施工できます。
また、窯業系サイディングよりも耐用年数が長いため、10年単位で考えたときのリフォーム費用は金属サイディングの方が安くなるでしょう。
まとめ
窯業系サイディングは、国内における外壁材で圧倒的なシェアを誇る人気の外壁材です。
コストパフォーマンスが高くデザインが豊富なことから、窯業系サイディングでリフォームを考える方も多いでしょう。
また、窯業系サイディングと金属サイディングで迷う場合、初期費用を抑えたい場合やデザインにこだわりたい場合は窯業系サイディング、長期的なメンテナンスコストを重視する場合は金属サイディングがおすすめです。
ご予算などの状況に合わせて、後悔のないように外壁材は慎重に検討して決めるようにしましょう。