「コロニアルってどんな屋根?」
「費用はどのくらいかかるの?」
あまり聞き慣れない屋根の名前に、このような疑問を持つ人は多いでしょう。
本記事では、
- コロニアル屋根とは何か? その特徴
- コロニアル屋根の施工費用やメンテナンス方法
- コロニアル屋根のアスベストの危険性
について解説しています。
▼「屋根材の種類と特徴」についてより広く知りたい方はコチラ
コロニアルとは?
コロニアルとは屋根材の一種で、セメントや繊維を薄い板に加工した屋根材です。
1枚あたりタタミ1畳ほどの大きさで、住宅の屋根に敷きつめたあと釘や接着剤で固定して使われます。
コロニアルは、[本の住宅の屋根材としてはもっとも普及しており、修理やリフォーム工事に対応している業者も数多くいます。
コロニアル製の屋根は、平らなシワのある板が張り合わされた見た目をしています。
業者によっては、コロニアルを別名の「スレート」「カラーベスト」と呼ぶこともありますが、基本的には同じものです。
コロニアル屋根のメリット・デメリット
次に、コロニアル屋根の特徴を、他の屋根材と比べながら見ていきましょう。
今回は、他の代表的な屋根材である「ガルバリウム鋼板(金属屋根)」と「陶器瓦(和瓦)」と比較を行いました。
屋根材の種類 | メリット | デメリット |
---|---|---|
コロニアル |
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ガルバリウム鋼板 |
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陶器瓦 |
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「ガルバリウム鋼板屋根」「陶器瓦の屋根」について詳しく知りたい方は、下記の記事もご覧ください。
>>「ガルバリウム屋根のメリット・デメリット。他の屋根材と徹底比較!」
>>「瓦屋根の修理方法は4種類! 工事の選び方、費用、業者の決め方は?」
コロニアルのメリット
コロニアル屋根には主に3つのメリットがあります。
メリット①価格が安い
コロニアルは価格が安価な屋根材で、施工費用を安くすることができます。
3種の屋根材と価格を比較すると以下のようになります。
屋根材 | 屋根材の価格 |
---|---|
コロニアル | 4,000円~8,000円/㎡ |
ガルバリウム鋼板 | 6,000円~12,000円/㎡ |
陶器瓦 | 9,000円~16,000円/㎡ |
メリット②色やデザインが豊富
コロニアル屋根は、黒・茶・グレーなどの定番色から、ブルーやグリーンなど様々なカラーリングの製品が販売されています。
色だけでなく表面の模様にも多くの種類があり、デザインの選択肢が豊富な屋根材といえます。
メリット③軽くて耐震性が高い
金属屋根材には一歩劣りますが、コロニアルは重量が軽いの屋根材です。
軽いことで建物にかかる負担を小さくし、地震の揺れで建物が傷ついたり、倒壊してしまう危険を下げることができます。
屋根材 | 重さ | 重量比 |
---|---|---|
コロニアル | 18kg/㎡ | 100 [基準] |
ガルバリウム鋼板 | 5kg/㎡ | 28 |
陶器瓦 | 48kg/㎡ | 960 |
コロニアルのデメリット
コロニアルはすぐれた屋根材ですが、一方でデメリットもいくつかあります。
デメリット①割れやすい
コロニアルは薄いセメントの板なので、上に人が乗ったり、強い風が吹いたりするとヒビが入ることが多い素材です。
瓦やガルバリウム鋼板に比べて割れやすい屋根材と言えるでしょう。
デメリット②メンテナンス頻度が多い
前述の屋根材のもろさもあって、コロニアルの屋根は異常がなくても5年を目安に点検・補修を受けることをオススメします。
他の屋根材に比べてメンテナンスの機会が多くなるため、負担に感じる方もいるでしょう。
コロニアル屋根に必要なメンテナンスは、「3. コロニアル屋根のメンテナンス方法」で詳しく解説しています。
デメリット③耐用年数が短め
コロニアルの耐用年数(寿命)は、他の屋根材に比べてやや短めの年数です。
屋根材 | 耐用年数 |
---|---|
コロニアル | 25年~30年 |
ガルバリウム鋼板 | 30年~40年 |
陶器瓦 | 50年以上 |
デメリット④アスベストの処理費用がかかる場合がある
古いコロニアル屋根には「アスベスト」(石綿)が使われているものがあります。
普通に住んでいるだけなら問題はないのですが、屋根リフォームや解体工事をする場合は、アスベストが飛散しないための対策費用が追加で20~60万円ほどかかります。
アスベスト入りのコロニアルの判別と対策は「アスベストが含まれているコロニアルはどれ?」で解説しています。
コロニアル屋根の工事費用
家の屋根をコロニアルにする工事には「葺き替え」と「カバー工法」の2種類あります。
工事名 | 費用相場 | 工事内容 |
---|---|---|
葺き替え | 140~200万円 | 屋根材・ルーフィングを新しく交換 |
カバー工法(重ね葺き) | 80~120万円 | 今の屋根に新しい屋根材・ルーフィングを重ね張り |
「葺き替え」とは?
葺き替え(ふきかえ)とは、下地を含む屋根の全交換工事のことです。
表面の屋根材だけでなく、ルーフィングシート(防水紙)や下地を含む屋根全体が新しくなるので、劣化やトラブルの多い屋根や、寿命がきている屋根に向いています。
工事内容 | 古い屋根材と下地を新しいものに交換 |
---|---|
費用相場(30坪の場合) | 140~200万円 |
必要日数(工期) | 10~15日間 |
特徴・注意点 | もっとも大規模・高額な工事 |
「葺き替え工事」「ルーフィングシート」について詳しく知りたい方は、下記の記事もご覧ください。
>>「屋根の葺き替えはどんな工事?屋根材の選び方や費用相場についても解説」
>>「ルーフィングシートとは?種類ごとにメリット・デメリットを解説」
カバー工法(重ね葺き)とは?
カバー工法(別名:「重ね葺き」)とは、今の屋根の上から新しい屋根を重ね張りする工事のことです。
葺き替えに比べて、古いの屋根の撤去作業がないぶん、費用や時間が節約できますが、既存部分の異常は直らないのがデメリットです。
下地を使い続ける都合上、雨漏り等のトラブルを起こしたことがない屋根でないと選べないことがあります。
工事内容 | 古い屋根の上に新しい下地と屋根材をかぶせる |
---|---|
費用相場(30坪の場合) | 80~120万円 |
必要日数(工期) | 5~10日間 |
特徴・注意点 | 費用が安い。古い屋根が傷んでいると工事が無駄に |
屋根の状態や工事の予算にあわせて、自分にあった方法を選びましょう。
屋根工事の相場についてもっと知りたい方は下記の記事をご覧ください。
コロニアル屋根のメンテナンス方法
コロニアル屋根の修理・メンテナンスと実施時期は、「屋根のヒビ割れの点検・補修」を5年おきに、「屋根棟の交換」を15年目に、「屋根の葺き替え」を30年目に、それぞれ行うのがオススメです。
- 5年おきに「ヒビ割れ点検・補修」
- 15年目に「屋根棟の交換」
- 30~40年目に「屋根の葺き替え」
それぞれのメンテナンスについて、以下で詳しく見てみましょう。
新築から5年おきに「ヒビ割れの点検・補修」
コロニアルは割れやすいため、工事で上を歩くときにどうしても微細なキズが入ってしまいます。
そのごく細かいキズやヒビが、日光や風雨にさらされるうちに広がってくるのが、おおよそ5年目となります。
そのため、このタイミングで業者によるヒビ割れの点検・補修を受け、雨漏りや屋根の剥がれなどを未然に防ぐのがオススメです。
作業内容・費用
メンテナンス作業の内容は、ヒビが入っている部分の裏側に接着剤を注入する作業となります。
費用は2~4万円です。
以降も5年おきに同様の点検・補修を受け続けるのが理想です。
築15年目に「棟の交換」
棟(むね)とは、屋根の頂上にある板金でできたのフタのことです。
屋根の棟は、年数が経つうちに固定に使われているクギが弱くなり、台風の際に外れて飛んでしまうリスクが高まります。 そのため、予防のため築15年を目安に棟の交換を行うと安心です。
作業内容・費用
修理内容は、既存の棟板金とその下地の木材を取り外して、新しいものに交換する作業となります。
費用は10~30万円です。
「屋根棟の修理」について詳しく知りたい方は、下記の記事もご覧ください。
>>「屋根棟の修理費用の相場は? ウチの見積もりは適正? 火災保険で直せるの?」
築30~40年目に「葺き替え」
コロニアル屋根は、築30年を過ぎる頃には寿命を終えます。
このタイミングで、屋根の全交換工事である「葺き替え」(ふきかえ)が必要になります。
作業内容
葺き替えの作業内容は、古いコロニアルを撤去し、下地の木材の補強や張り替えをしたあと、新しい防水シート(ルーフィング)と屋根材を張る工事となります。
野路板(下地木材)が傷んでいる場合は、こちらの補修・張り直しも必要です。
葺き替えの費用は140~200万円です。
「屋根の葺き替え」について詳しく知りたい方は、下記の記事もご覧ください。
>>「屋根の葺き替えはどんな工事?屋根材の選び方や費用相場についても解説」
30年間でかかるメンテナンス費用は「210万円」
以上の「ヒビ点検・補修」「棟の交換」「葺き替え」の3つのメンテナンスを施しながら、コロニアル屋根の家に30年間住み続けた場合の費用を計算した結果、金額は210万円となりました。
築年数 | メンテナンス工事 | 費用目安 |
---|---|---|
5年目 | ヒビ補修 | 2万円 |
10年目 | ヒビ補修 | 2万円 |
15年目 | 棟交換+ヒビ補修 | 22万円 |
20年目 | ヒビ補修 | 2万円 |
25年目 | ヒビ補修 | 2万円 |
30年目 | 葺き替えで新しい屋根に | 180万円 |
合計 | 210万円 |
コロニアルの代表製品
「コロニアル」と名のつく屋根材は以下の7製品です。
それぞれの価格や特徴を比較しました。
製品名 | 価格 | 特徴 |
---|---|---|
コロニアルクァッド |
3,933円/㎡ |
|
コロニアルグラッサ |
4,266円/㎡ |
|
コロニアル遮熱グラッサ |
4,400円/㎡ |
|
グランネクスト シンプル |
4,600円/㎡ |
|
グランネクスト サンド |
5,333円/㎡ |
|
グランネクスト ヒシ |
5,440円/㎡ |
|
グランネクスト うろこ |
5,600円/㎡ |
|
コロニアルクァッド
「コロニアルクァッド」は、コロニアルシリーズではもっとも安価な商品です。
景観や建物との相性を問いにくいスタンダードなデザインをしています。
メーカー価格は1坪あたり12,980円(3,933円/㎡)です。
コロニアルグラッサ
「コロニアルグラッサ」は、コロニアルシリーズではもっとも人気の定番製品です。
洋風だけでなく和風の家にも似合う「横一文字葺き」というデザインを採用しています。
メーカー価格は1坪あたり14,080円(4,266円/㎡)です。
コロニアル遮熱グラッサ
「コロニアル遮熱グラッサ」は、人気のグラッサシリーズに夏場の室温を下げる機能(遮熱機能)を付加した製品です。
遮熱機能を高めるため、淡色寄りのカラーランナップとなっています。
メーカー価格は1坪あたり14,520円(4,400円/㎡)です。
グランネクスト シンプル
「GRAND NEXT」(グランネクスト)は、デザイン性を高めたコロニアル屋根材のシリーズ名です。
「グランネクスト シンプル」は、コロニアルとしてはベーシックなデザインを踏襲しつつ、より美しいシンプルさを追求した製品となります。
色の種類も、高級感を感じるダークカラーが中心となっています。
メーカー価格は1坪あたり15,180円(4,600円/㎡)です。
グランネクスト サンド
「グランネクスト サンド」は、表面に砂の質感を高め、天然岩のような重厚感をもたせたコロニアルです。
カラーバリエーションも自然の石をイメージしてか、グレーやシルバーなどの明るい色もあるのが特徴です。
メーカー価格は1坪あたり17,600円(5,333円/㎡)です。
グランネクスト ヒシ
「グランネクスト ヒシ」は、格子柄のデザインを使用したコロニアルです。
チェック柄のもつクラシックさを感じさせる個性を建物に与えることができます。
メーカー価格は1坪あたり17,952円(5,440円/㎡)です。
グランネクスト うろこ
「グランネクスト うろこ」は、魚のウロコ模様をデザインにとりいれたコロニアルです。
丸みをおびたフォルムが特徴的で、コロニアルのなかではもっとも個性が際立つものとなっています。
メーカー価格は1坪あたり18,480円(5,600円/㎡)です。
アスベストが含まれているコロニアルはどれ?
古いコロニアルには、規制原料であるアスベスト(石綿)が使われているものがあります。
1979年から2001年まで製造販売されていた、「ニューコロニアル」などがそれにあたります。
製品名(メーカー) | 販売期間 | 注意点 |
---|---|---|
ニューコロニアル(クボタ) |
1979年~2001年 |
|
アスベストが使われているコロニアルの判別方法
- 2006年以降に建てた家のコロニアルは安全
- コロニアルの出荷が2004年以降なら安全
- 2004年以前に建てた家のコロニアルなら大半が含まれている
また、国交省および経産省が設置している「石綿(アスベスト)含有建材データベース」では、建材の商品名やメーカー名、型番などからアスベスト含有の有無を調べることが出来ます。
屋根材へのアスベスト使用が段階的に使用禁止されたのは2004~2006年のため、この年以降に建てられた家であれば心配はありません。
反対に、建てたのが2004年より前で、屋根材がスレートであればアスベストが使用されている可能性は高いでしょう。
アスベストが使われていたら、どうすればいい?
アスベスト入りのコロニアル屋根の家に住んでいても、リフォームや解体をして、繊維が飛散しない限り危険はないとされています(厚労省ガイドラインよる)。
つまり、屋根が大きく壊れたり傷んだりして葺き替えが必要になるまでは、特別な対処の必要はありません。
屋根の葺き替えが必要になった際には、2つの選択肢があります。
- 撤去費を払って、葺き替え工事をする
- 撤去費をおさえるため、葺き替えではなくカバー工法を選択する
1. 撤去費を払って「葺き替え」工事をする場合
コロニアルに含まれるアスベストの飛散対策のために、通常の葺き替え工事よりも1.2~1.3倍ほど費用が多くかかります。 金額にすると、25~40万円ほどの上乗せで、合計165~240万円ほどの工事費用となるでしょう。
同じ家に10年以上住み続ける予定の場合は、カバー工法よりも葺き替え工事をオススメします。
2.撤去費をおさえるため「カバー工法」する場合
予算的にアスベストの撤去費用が許容できない場合は、今の屋根を解体せずに新しい屋根で覆う「カバー工法」が採られています。
カバー工法の費用は80~120万円です。
しかし、雨漏りしたことのある家や、10年以上済む予定の家、のちのち屋根の増改築などの工事を予定している家ではカバー工法はあまりオススメできません。
「アスベスト入り住宅の工事」について詳しく知りたい方は、下記の記事もご覧ください。
>>「屋根のカバー工法とは? 費用は安いが、多くのデメリットに注意」
>>「アスベスト入り住宅の外壁塗装前に知っておきたい知識と注意」
不具合の多いコロニアル製品
以下のコロニアルは、メーカーがアスベスト入りコロニアルの製造を自粛してから、技術が確立されるまでの1990年代後半~2005年頃に使われていた製品です。
この時期の製品には、現在流通しているコロニアルよりも耐久性が著しく低く、割れや欠けなどの不具合報告が多いため、注意が必要です。
メーカー | 製品名 |
---|---|
クボタ | コロニアルNEO、グリシェイドNEO、セイバリーNEO、スペリアルNEO、ミュータスNEO、アーバニー、ザルフ、ザルフグラッサ |
セキスイ | かわらU |
ニチハ | パミール |
松下電工 | レサス、シルバス、シンフォニー |
クボタ松下 | エコシンプル |
あなたの家で使われているコロニアルが上記のものだった場合、深刻な割れや欠けが発生している可能性があります。
屋根の状態をチェックのうえ、早急に他の屋根材へ交換することをおすすめします。
なお、交換作業の費用が補償される場合があるため、工事を依頼する前にハウスメーカーや屋根材のメーカーに問い合わせてみましょう。
なお当社ヌリカエでは、お使いのコロニアルのメーカーや、ハウスメーカーへの問い合わせ方法が分からない方に向けて屋根リフォームの無料相談窓口 をご用意しています。
まとめ:コロニアル屋根はどんな人におすすめ?
最後に、コロニアル屋根がどんな方に向く屋根材なのかを見ておきましょう。
コロニアル屋根のメリット・デメリットの双方を考慮した結果、屋根材にコロニアルを選ぶのがオススメなのは次のような方です。
コロニアル屋根が向いている人
コロニアル屋根が向いてる人は、主に以下のような人です。
- 工事時点の費用を抑えたい人
- メンテナンスの費用を抑えたい人
- 定番・高普及率な素材の安心感を重視する人
屋根に対してこのようなことを重視する方には、コロニアル屋根の工事費・メンテナンス費の安さや、高い普及率からくる対応業者の多さがマッチします。
コロニアル屋根が向いていない人
反対に、次のような方々にはあまりコロニアル屋根をオススメできません。
- メンテナンス頻度の少なさを重視する人
- 費用はかかっても、屋根の防水性を重視する人
コロニアル屋根は、長期間でみたときのメンテナンス費用は高くありませんが、メンテナンスの回数は多くなります。
また、屋根の耐久性を重視する方は、ガルバリウム鋼板屋根か瓦屋根のほうがオススメです。
自分にあった屋根材を選び、快適な生活を手に入れましょう。
>> 屋根材10種を徹底解説!特徴・代表商品・耐用年数とおすすめランキング
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みんなの屋根の相談所|石川商店「コロニアル屋根材のカバー工法の費用を詳しく解説【実際の見積り公開】」
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菊池克弘『住宅リフォーム重要事項32選』都市環境建設 2015
建築工事研究会『積算資料ポケット版 リフォーム編 2021年度版』一般社団法人経済調査会 2020