「外壁塗装はまだするな」と言われる理由として、以下の5つのケースが挙げられます。
ケース | 理由 |
---|---|
①耐用年数にまだ余裕がある | 外壁に使用している塗料の耐用年数に余裕がある場合は、慌てずに計画的行うことが求められます。 |
②季節的に工事に適さない | 外壁塗装は雨の多い時期や気温が低い時期は塗装がうまくいかない可能性があります。 |
③劣化症状が軽微 | 外壁に劣化の兆候が見られず、耐用年数に余裕がある場合は塗装を急ぐ必要はありません。 定期的な点検を実施し、必要に応じて補修を行い、外壁を長持ちさせます。 |
④数か月待てば補助金・火災保険が使える | 補助金や火災保険の手続きの都合で、すぐに塗装を依頼すべきではない場合があります。早めに依頼することで、コストが割高になってしまうこともあります。 |
⑤悪徳業者によるセールスが疑われる | 悪徳業者は外壁塗装が必要でないにもかかわらず、塗装を急かしてくる場合があります。 |
-
結論をいえば「外壁塗装はまだするな」と言われた場合は、外壁の状態を専門家に見てもらい、適切なアドバイスを受けることが大切です。
![]() |
監修者:外壁劣化診断士 小林 成光
600件以上の現地調査を実施する過程で得た専門性を生かし、日本発のネット見積もりシステムでビジネスモデル特許を取得。ヌリカエにて、外装工事の専門家として、顧客・加盟企業のサポート・コラムの監修に従事。
▼略歴・プロフィール |
外壁塗装はまだするなの理由①:耐用年数にまだ余裕がある
外壁塗装はまだするなと言われてしまう理由の1つ目は、耐用年数にまだ余裕がある場合です。外壁塗装は約10年に一度行うのが目安とされています。しかし、これはあくまで目安であり、実際の塗り替え時期は使用する塗料の種類によって異なるのです。
例えば、アクリル塗料の耐用年数は5〜7年と比較的短いですが、シリコン塗料やフッ素塗料のように10年以上長持ちする塗料も。
耐用年数に余裕がある段階で外壁塗装を行うと、無駄なコストが発生するだけでなく、塗料の効果を最大限に活かすことができなくなります。耐用年数がまだ残っているにもかかわらず、急いで外壁塗装を行うことは避け、しっかりと計画を立てて工事を進めることが重要です。
とはいえうちがどの塗料を使っているのか分からない…という方もいるかもしれません。塗料の耐用年数が過ぎると手に白い粉が付くようになりますので、これを一つの判断材料としてもよいでしょう。
外壁塗装はまだするなの理由②:季節的に工事に適さない
2つ目は、外壁塗装に適した時期ではない場合です。外壁塗装は値段・品質どちらも季節によって左右されます。
外壁塗装は屋外での作業となるため、季節や天候が仕上がりに大きく影響を与えます。塗料は丁度よい乾燥時間と温度を必要としますが、特定の気候条件下では乾燥がうまくいかない場合があります。
塗料が乾燥しにくくなります。5℃以上かつ湿度85%以下が望ましいです。
〇風が強すぎる
塗料が飛散しやすく、仕上がりにムラが出やすくなります。
〇直射日光が強すぎる
表面だけが急速に乾いて内部が乾燥しにくくなる場合があります。
したがって、外壁塗装をやるべき時期は、春(3~5月)と秋(9~11月)です。この時期は天気が安定しており、気温や湿度が適度で日照時間も長くなります。
外壁塗装をやるのに適切な時期については、以下の記事をご覧ください。
▶外壁塗装にベストな時期はいつ?適さない時期や季節ごとのメリット・デメリット
外壁塗装はまだするなの理由③:劣化症状が軽微
外壁塗装はまだするなと言われてしまう理由の3つ目は、外壁の劣化症状が軽微な場合です。以下の画像のような「影響の小さい劣化症状」の場合は、急いで外壁塗装を行う必要はありません。こまめなメンテナンスは大事ですが、あまりにも時期が早いと無駄なコストが増大してしまいます。
軽微な劣化症状としては、ごく小さなひび割れや色褪せ・汚れの付着などがあります。これらの症状は美観は多少悪くなるものの、外壁の保護機能には大きな影響を及ぼさない場合が多いです。
適切なタイミングでのメンテナンスと点検を行い、外壁の状態を見極めることが重要です。
外壁塗装はまだするなの理由④:少し待てば補助金・火災保険が使える
多くの自治体では外壁塗装に補助金を提供しており、上手く活用することで費用の一部を賄うことができます。しかし、予算には限りがあるため年度末を待たずに募集が終わってしまうことがほとんど。そのため補助金を活用したい場合には、早めの申請が重要です。
しかし、すでに予算が尽きて募集が終わってしまった場合には、あえて翌年度の4月まで待つのも良いでしょう。というのも多くの自治体では、年度初めの4月から昨年度と同様の制度の募集を再開することが多いからです。
したがって、今すぐに外壁塗装を行うのではなく、数か月待って4月からの新たな補助金制度を利用するのも一つの賢明な選択です。
お住まいの自治体で使える補助金制度や、現在の募集状況については下記を参考にしてください。
>> 全国で使えるリフォームの補助金・助成金一覧
また、自然災害によって被害を受けた場合もすぐに工事をするべきではありません。
自然災害による劣化の場合は火災保険が使える可能性がありますが、申請のための諸手続きを踏んでからの工事でないと保険金が下りないためです。
お得に工事を済ませるためにも、急いで工事を進めるのではなく業者に相談しながら決めるとよいでしょう。
外壁塗装はまだするなの理由⑤:悪徳業者によるセールスが疑われる
外壁塗装を検討する際には、業者選びも非常に重要です。特に不自然に契約を急かしてくる業者には要注意。悪質な業者は、契約を急がせることで冷静な判断をさせないように誘導してくることがあるからです。
例えば、以下のようなセールス手法には警戒が必要です。
〇急いで契約を迫る
「今すぐ契約しないとこの価格ではできません」や「今日中に決めていただければ特別な割引があります」といった、緊急性を煽る発言は典型的な手法です。
〇不自然な安値を提示する
相場よりも極端に低い価格を提示してくる場合、品質に問題がある可能性が。安価な塗料や不十分な工事でコストを削減し、後で手直し分の追加料金を請求する手口もあります。
〇具体的な説明を避ける
工事内容や使用する塗料について具体的な説明を求めても、曖昧な回答しか得られない場合も注意が必要です。信頼できる業者は詳細な説明や見積もりを提供し、質問にも誠実に対応します。
上記の特徴に当てはまる場合には、冷静に考え直し、他の業者と比較する時間を持つことが大切です。
よくある悪徳塗装業者の手口については、こちらの記事も参考にしてください。
外壁塗装を”今”やるべきか迷った場合
-
外壁塗装をまだしない方がいいのか、”今”やるべきなのかを迷った場合に適切なタイミングかどうか判断基準を解説します。
- 塗料や外壁材の耐用年数を確認する
- 劣化症状を確認する
- 塗装できる季節を確認する
- 築年数や前回の塗装からの年数を確認する
塗料や外壁材の耐用年数を確認する
塗料や外壁材には耐用年数があります。
この耐用年数以内の場合は塗装をすぐに行う必要はありませんが、耐用年数を過ぎている場合は本格的に塗装を検討するべきタイミングと言えます。
-
各塗料の耐用年数は、以下の表の通りですので参考にしてみてください。
塗料 | 費用相場 | 耐用年数 |
---|---|---|
アクリル塗料 | 1,000~1,500円/㎡ | 5~7年 |
ウレタン塗料 | 1,700~2,200円/㎡ | 8~10年 |
シリコン塗料 | 2,300~3,000円/㎡ | 8~15年 |
ラジカル塗料 | 2,500~3,300円/㎡ | 15~20年 |
フッ素塗料 | 3,500~5,000円/㎡ | 15~20年 |
無機塗料 | 4,500~5,500円/㎡ | 20年以上 |
また、外壁材の耐用年数によっても塗装の頻度は異なることがあります。例えば「タイル外壁」は劣化しにくいため塗装をすぐ検討する必要はありませんが、「窯業サイディング」や「金属サイディング」などのサイディング系やモルタルは、基本的には外壁塗装が必要です。
最近ではメンテナンスフリーと謳われている外壁材もありますが、基本的にはどんな外壁材でも塗膜の保護機能が落ちれば塗装が必要になります。
ご自宅の塗料の耐用年数と外壁材をもとに、塗装の適切なタイミングを見極めましょう。
劣化症状を確認する
画像出典:LOHAS Studio
-
以下のような劣化症状が確認できる場合も、外壁塗装や補修が必要になってきます。
劣化症状 | 発生する原因 | 発生しやすい場所 |
---|---|---|
コケやカビなどの汚れ![]() |
風に飛ばされたコケの胞子が付着し、繁殖しやすい環境のため | 日当たりの悪い場所 風通しの悪い場所 |
外壁の色褪せや色落ち![]() |
紫外線に長時間あたることで、塗膜が劣化するため | 直射日光が当たりやすい場所 |
ひび割れや剝がれ![]() |
外壁の経年劣化のため 車や電車などの振動のため 地震のため |
どこでも 交通量が多い場所 |
外壁をこすると白い粉が手につく (チョーキング現象) ![]() |
紫外線や雨風による塗膜の劣化 | 紫外線が当たりやすい場所 日陰ができにくい場所 |
シーリングのひび割れや変色![]() |
コーキングの経年劣化 | 窓サッシやドアなど 外壁材のつなぎ目 |
これらの症状を放置してしまうと、爆裂現象や雨漏りなど甚大な被害につながり、工事費用も莫大なものになります。
放置される場合のほとんどは、「まだ困ってないから大丈夫」と自己判断をしています。
-
色褪せなど本当に軽微な劣化でない限りは、一度プロにメンテナンスを依頼し適切なアドバイスを受けるとよいでしょう。
塗装できる季節を季節を確認する
外壁塗装に適した季節は「春」か「秋」になります。
なぜなら外壁塗装に適した気候条件を満たしやすい季節だからです。
- 気温が5℃以上
- 湿度が85%以下
- 雨・雪が降っていない
- 霜がおりていない
-
塗料メーカーの日本ペイントは、塗装可能な条件を「気温5℃以上、湿度85%以下」と指定しています。
「春」と「秋」は外壁塗装に適した条件になりやすく、雨などによる日程の遅延や施工不良の可能性も低いため、スムーズに外壁塗装を行うことが可能です。
一方で「春」と「秋」は外壁塗装の繁忙期にもなるため、業者には早めに依頼することがおすすめです。
外壁塗装を行う時期については、以下の記事もあわせて参考にしてみてください。
築年数や前回の塗装からの年数を確認する
外壁塗装が必要な年数の目安として、築年数や前回の塗装から約10年がひとつの目安とされています。
10年の理由は外壁塗装で利用される塗料が約10年で寿命を迎えることが多いことや、シーリングの劣化もみられるためです。
もちろん中には10年以上の耐用年数をもつ塗料だったり、劣化しにくい劣化条件に建てられた住宅の場合、外壁塗装が必要ない場合もあります。
しかし、10年に一度点検を行うことで自宅の状況を正確に把握でき、コスパ良く外壁塗装を行えます。
-
10年は一つの目安になるので、外壁の劣化が見た目にはなくでも点検を業者に依頼することがおすすめです。
外壁塗装は必要ないって本当?
「外壁塗装は本当に必要なのか?」と疑問に感じる方は少なくありません。コストもかかるため、できる限り避けたいと思うのは当然です。
しかし、外壁塗装にはさまざまな役割があり、適切に行うことで住宅の寿命を延ばすことができます。
外壁塗装の必要性とは
外壁塗装には、外観の美観を保つ役割だけでなく、家全体を守る防水性や耐候性の維持といった重要な機能があります。
特に防水性能が低下すると、外壁材や内部の木材が腐食するリスクが高まり、最悪の場合、建物自体の耐久性が損なわれます。
- 防水性の確保:塗装は雨や湿気から外壁材を守り、家の内部に水が入り込むのを防ぎます。
- 美観の維持:汚れや色あせを防ぎ、美しい外観を保つことができます。
- 断熱・遮熱効果:塗料によっては断熱や遮熱効果があるものもあり、室内の温度管理にも貢献します。
これらの要素から考えると、外壁塗装は住宅を長持ちさせるために重要なメンテナンスのひとつといえます。
外壁塗装はサイディングでは必要ない?
サイディングは耐久性が高く、塗装が不要と言われることがあります。しかしサイディングも、経年劣化によって効果が低下します。特に目地(コーキング部分)の劣化が進むと、そこから水分が入り込み、内部の腐食やカビ発生の原因となります。
そのため、目地の補修や再塗装は必要で、これを怠るとサイディング自体の耐久性も低下します。
一部のサイディングには塗装が不要なタイプもありますが、基本的には定期的なメンテナンスが推奨されています。
10年で外壁塗装は早すぎる?
「10年で塗装は早すぎるのでは?」と考える方もいるでしょう。実際は、先に述べた通り外壁塗装の適切なタイミングは外壁材の種類や家の立地条件、塗料の種類によって異なります。
たとえば、耐候性の高い塗料を使用している場合や、雨風にさらされにくい環境であれば、10年を超えても塗装が不要な場合があります。
しかし、標準的な耐候性の塗料の場合、10年を目安に点検を行うことが一般的です。
外壁のひび割れやチョーキング現象(白い粉が付く現象)が見られる場合は、塗装が必要なサインです。
住宅を保護するためにも、早すぎると判断するのではなく、定期的に状態を確認することが重要です。
外壁塗装を先延ばしにして放置するとどうなる?
外壁塗装は、外壁を雨や紫外線から守る役割があります。耐用年数は塗料によって異なりますが10年~15年で劣化が進んでしまい、爆裂現象や雨漏りなどの大規模な劣化につながってしまいます。
具体的には、外壁塗装を放置すると、築年数に応じて建物に様々なリスクが生じます。築10年で色あせやヒビ、20年で雨漏りや外壁材の劣化、30年では構造の腐食やシロアリ被害が進行し、最悪の場合、建物の耐久性や資産価値が大きく低下します。適切なメンテナンスが建物を守るカギです。
築10年まで放置した場合
紫外線や雨風による塗膜の劣化が進み、外壁が色あせたり、ツヤが失われたりします。塗料が防水機能を果たせなくなり、ヒビや亀裂が入るリスクが増します。
〇紫外線や雨風による劣化
紫外線や雨風による塗膜の劣化が進み、外壁が色あせたり、ツヤが失われたりします。塗料が防水機能を果たせなくなり、ヒビや亀裂が入るリスクが増します。
〇コケやカビの発生
防水性が失われると、外壁が湿気を吸収しやすくなり、コケやカビが発生しやすくなります。これが建物の美観を損なうだけでなく、健康被害を引き起こす可能性もあります。
〇チョーキング現象
外壁の表面を触ると白い粉がつく「チョーキング現象」が起こりやすくなります。これは塗膜の劣化サインで、防水機能の低下を示します。
築10年だと生活に支障がある劣化にはならないものの、外壁を長持ちさせるためにはメンテナンスをするとよい時期です。
築20年まで放置した場合
築20年を過ぎると、外壁の劣化はさらに深刻化し、建物自体に影響が出てくることがあります。
〇ひび割れ・クラックの進行
築20年も塗装をしないと、外壁にひび割れが目立つようになり、そのクラックを通して水が侵入するリスクが高まります。雨水が建物内部に侵入することで、壁内の腐食が進み、断熱材や木材部分が損傷します。
〇防水機能の完全な喪失
塗料の防水機能が完全に失われ、雨漏りが発生しやすくなります。雨水が家屋内部に入り込むと、天井や壁紙にシミができ、木材の腐朽やカビの発生を引き起こします。
〇防水機能の完全な喪失
モルタル壁やサイディングボードがひび割れ、剥がれ落ちるリスクが高くなります。特にモルタル壁は、水を吸収しやすく、長期間水にさらされると、剥離が発生する可能性があります。
築20年になると、外壁の剥がれなど塗装では済まない劣化が出てくる家が多いです。今は目立った劣化がなくとも、点検をしておくことをお勧めします。
築30年まで放置した場合
築30年も外壁塗装をしない場合、建物自体に深刻なダメージを与え、修復コストが大幅に増加します。
〇構造材の腐食やシロアリ被害
築20年も塗装をしないと、外壁にひび割れが目立つようになり、そのクラックを通して水が侵入するリスクが高まります。雨水が建物内部に侵入することで、壁内の腐食が進み、断熱材や木材部分が損傷します。
〇外壁材の剥離や破損
塗料の防水機能が完全に失われ、雨漏りが発生しやすくなります。雨水が家屋内部に入り込むと、天井や壁紙にシミができ、木材の腐朽やカビの発生を引き起こします。
〇漏水による内部損傷
水が建物の内部に侵入し、天井や壁の内部にカビや腐食が広がり、居住環境が悪化します。これにより健康被害が発生するリスクも高まります。
今後築30年になるまで劣化を放置することは好ましくありませんが、もし自宅が立ててから30年で点検していない場合、早急に業者にメンテナンスをしてもらいましょう。
外壁塗装の適切なタイミングを知ろう
外壁塗装を行う適切なタイミングは新築か中古か、そしてその家の劣化の状態で異なります。
家の劣化は定期的に観察し、家が塗り替え時期のサインを出していることを見落とさないようにしましょう。また劣化の状態の中には外壁塗装をまだ不要で、今は適切なタイミングではないといった場合もあります。
また外壁塗装はいざお願いしようと思っても、業者探し・見積もり・契約そして工事と時間がかかるものです。家の劣化が気になった場合は、良心的な業者に一度相談をしてみることをおすすめします。