初めて外壁塗装を検討する場合によくある疑問が、外壁塗装をする前の工程にある「高圧洗浄」の必要性です。
高圧洗浄は費用がかかるため、「塗り替えをするなら、わざわざ古い外壁を洗浄しなくても…」と考える方は多いです。
しかしながら、高圧洗浄は外壁塗装に絶対に必要です。高圧洗浄をしなければ、外壁塗装の耐久性が低下してしまうためです。
本記事では、高圧洗浄の必要性、注意点、適正な費用相場を紹介します。高圧洗浄に対する納得感を持って、工事の検討を深めてください。
![]() |
監修者:外装劣化診断士 小林 成光
600件以上の現地調査を実施する過程で得た専門性を生かし、日本発のネット見積もりシステムでビジネスモデル特許を取得。ヌリカエにて、外装工事の専門家として、顧客・加盟企業のサポート・コラムの監修に従事。
▼略歴・プロフィール |
外壁塗装に高圧洗浄が必要な理由
外壁塗装に高圧洗浄が必要な理由は、「塗料本来の耐久性を発揮させるため」です。
外壁表面の付着物を洗い流さず塗装を行うと、塗料が密着せず不具合を起こす可能性が高くなります。詳しく解説していきます。
そもそもどうして外壁は劣化をするのか
外壁の表層へ塗装する塗膜は、太陽光や雨水の影響を受けることによって劣化しています。
劣化が進むと、下記のような症状が外壁に現れてきます。
このような劣化症状が発生している状態だと、外壁の粘着性が失われているため、新しい塗料はうまく外壁に密着しません。
新しく塗装する塗膜と、外壁との密着性を高めるためには、外壁に生じている汚れを洗い落とすことが必要です。
この汚れを洗い落とすための作業が高圧洗浄なのです。
高圧洗浄機の威力は非常に強い
外壁のメンテナンスでは、ブラシやスポンジを使ったお手入れがなされることもあります。
しかし数十年に一度の塗装工事においては、外壁の汚れを確実に取り除くために、ブラシやスポンジではなく威力の強い高圧洗浄機が必要になるです。
一般的な外壁塗装の耐用年数は10年といわれていますが、高圧洗浄を省略して工事をした場合はそれより早く耐用年数を迎えてしまう可能性が高くなります。
なぜ高圧洗浄でないといけない?
工事を行う業者にとっては、効率化・職人の手間・人件費削減のために、高圧洗浄機を使った方が合理的なのが主な理由です。
高圧洗浄機が開発される前は、ワイヤーブラシなど人力で外壁や建物が洗浄されていました。
しかし、建物をまるごと一棟工事する外壁塗装で、壁表面のコケ・カビをワイヤーブラシを使って綺麗に除去・洗浄する場合、それだけでもかなりの労力と時間がかかります。
チョーキングの粉は取り除きづらく、また仕上げがザラザラしている外壁を洗浄する場合は、ブラシの毛が切れるだけで汚れが落ちないこともあります。
高圧洗浄なら、手間がかかる手ブラシでの作業、水圧を利用することにより短縮することができ、また危険な屋根のキワなど高い箇所を脚立無しで洗浄することも可能です。
外壁の高圧洗浄の注意点
以上の点から、高圧洗浄は外壁表面の付着物を洗い流すために必要な工程であることは、お分かりいただけたと思われます。
一方で、「自分で定期的に高圧洗浄を行えば、業者に依頼する必要がなくなる」とお考えの方も多いのではないでしょうか?
結論から申し上げますと、ご自身で高圧洗浄を行うことは、あまりおすすめはできません。
頻繁に高圧洗浄を掛けたり、適切な方法で洗浄を行わないと、外壁材の破損や漏水が起こる恐れも考えられます。詳しく解説していきます。
外壁を痛めてしまう恐れがある
高圧洗浄機の種類と設定する水圧次第では、外壁材への傷み、ときには破損までさせてしまう危険性があります。
前述の通り、高圧洗浄の威力は、壁表面に付着したカビやコケだけでなく、チョーキングの粉や古い塗膜を洗い流せるほど強力です。
頻繁に高圧洗浄を掛けていると、外壁材やコーキングが破損してしまったり、塗料が剥がれてしまい耐候性などの性能が弱まってしまうことも考えられます。
日頃のメンテナンスは、じっくりと丁寧にブラシで洗浄するのも検討しましょう。
漏水・漏電のリスクがある
外壁にクラック(ひび割れ)があったり、通気口の養生を行わずに高圧洗浄を行うと、建物内部に水が浸入するリスクがあります。
クラックなどから洗浄水が住宅内に浸透してしまうと、縦のモノ基礎が腐食してしまうだけでなく、最悪の場合シロアリ被害まで至るケースもあります。
また、屋外にコンセントや照明器具が取り付けてある場合、充分な対策を行わないと漏電を引き起こす可能性もあります。
近隣宅に水が飛散する可能性も
高圧洗浄を行った場合、洗浄水が近隣宅に飛散する恐れがあります。
近隣に車が止まっている場合や、洗濯物を干している場合、洗浄水の飛散がトラブルの原因になってしまうことも考えられます。
また、高圧洗浄中は駆動音や洗浄音が発生するため、人によっては不快感を覚える可能性もあります。
業者に依頼する場合でも、飛散防止の養生や静音タイプの高圧洗浄機を使用するなど、近隣の方へ迷惑を掛けないよう心掛けておりますが、飛散のリスクを0にすることはできません。
トラブルを避けるためにも、外壁の高圧洗浄を行う際は、ご自身で近隣の方へ事前にお断りを入れておくと良いでしょう。
高圧洗浄の種類
汚れの状態によっても洗浄方法が異なる場合があるように、高圧洗浄にも種類があります。
ここからは、高圧洗浄の3つの洗浄方式についてそれぞれ解説をします。
ストレート噴射
1つ目は、ストレート噴射と呼ばれるごく一般的な洗浄方法となります。
噴射する水が扇状やまっすぐ噴射されるタイプのもので、一般的な壁面によく使用されます。
適用水量が毎分12L以上の高圧洗浄機を使い、強力な水圧で汚れを落としていきます。基本的には外壁専用の噴射ノズルとなっています。
トルネード噴射
トルネード噴射タイプは、先端が回転することでより強力な洗浄ができるだけでなく、水の飛散する範囲を抑えることができます。
基本的に屋根に使用しますが、状況に応じて外壁にも使用します。
ただし、ストレートタイプのものより強力に水圧を出すことになりますので、外壁の状態によっては壁面そのものを傷つけてしまう可能性があります。
そのため、外壁に使用する際は、水圧を調整しながら壁面の状態に合わせて使用します。
バイオ洗浄
バイオ洗浄は、壁面や洗浄する箇所に洗浄剤を塗布して少し時間を置いたあと、洗浄する方法です。
外壁は経年劣化とともにカビや藻で壁面が黒色や緑色などに変色してしまいます。
通常の高圧洗浄でも汚れは水圧で落とすことはできるのですが、まれに根の部分までカビや藻がこびりついているケースもあります。
そのような場合はバイオ洗浄にてカビや藻を落とす必要性が出てきます。
サッシ周りにできる雨だれや、水田に面している壁面などにはかカビや藻が多く発生しやすいため、カビや藻が多く発生してしまっている場合はバイオ洗浄にてクリーニングしましょう。
外壁の高圧洗浄にかかる費用
高圧洗浄にかかる費用は、基本的には貸し出しの水道費用と業者の技術費用の2つです。
費用項目 | 日数 | 種類 | 費用相場 |
---|---|---|---|
水道代 | 半日~1日 | 高圧洗浄・バイオ洗浄 | 1,200~2,000円 |
技術費 | 半日~1日 | 高圧洗浄・バイオ洗浄 | 高圧洗浄100円~300円/㎡バイオ洗浄 高圧洗浄450円~850円/㎡ |
高圧洗浄用の業者に貸し出す水道費用
外壁の高圧洗浄にかかる費用の水道代は、依頼主負担です。
自宅にある水道を業者に貸し出すことが一般的で、水を業者に持ってきてもらった場合は運搬費などでかえって高額になってしまいます。
水道代はお住いの地域によって異なるのですが、一般的に東京都の場合で計算すると、約1200円~2000円が高圧洗浄の水道費としてかかると想定してください。
高圧洗浄機は1分間におよそ12~15リットルの水の使用量となります。
洗浄は外壁の汚れ具合によって作業時間が異なり、1日~半日で作業することになりますが、1日使用しても2000円程度と考えて大丈夫です。
下水道の場合は8立方メートルまで基本料金内で使用可能です。
上水道の場合は1か月の使用する水の量を日割り計算で1日当たりを算出します。
下水道は半月分で区切り算出するため、上下で異なります。
水道費の計算はかなり複雑なためここでは控えますが、おおよその金額は上記に記載した通りなので、参考にしていただいて大丈夫です。
高圧洗浄を業者に依頼する作業費用
外壁の高圧洗浄を業者に依頼する際は、作業をしてもらうための費用も必要です。
業者は専用の高圧洗浄機を持っていますので壁面や屋根のクリーニングに高い効果を出すことができます。
作業は外壁や屋根の汚れ具合によりますが半日~1日で作業は終えることができます。
基本的な費用の相場は、通常の高圧洗浄の場合は1㎡あたり約100円~300円。
バイオ洗浄を行う場合は洗浄剤が必要になりますので1㎡あたり450円~850円となります。
30坪の家で算出すると、費用はおよそ18,000円~50,000円となるのが一般的な相場です。
費用についてはしっかりと見積もりを確認し、計算式が適正に出されているかどうかを確認しましょう。
外壁の高圧洗浄の主な工程
外壁の高圧洗浄をする主な工程は基本的には、①足場組み立て後の汚水の飛散防止シートの設置→②洗浄用の水の確保・洗浄機の準備→③高圧洗浄となります。
それぞれの手順についてここから詳しく解説をします。
手順① 水の飛散防止シートの設置
外壁の高圧洗浄を行う際には、汚水が足場の外に飛んでしまい近隣の家に飛散しないように注意しなくてはなりません。
そのようなことにならないよう、飛散防止シートを足場まわりに張り、汚水が飛び散るのを防ぎます。
手順② 洗浄用の水・洗浄機の準備
外壁の高圧洗浄のための水を準備します。基本的には依頼主の水道を借りて業者が大きなタンクを持参してその中に水をためていきます。
洗浄作業は大量の水を高圧で噴射するため、タンクに水を溜めずに作業をおこなうことはできません。
洗浄機の準備も行い、ホースなどを家の周りに設置していきます。
手順③ 高圧洗浄
飛散防止シート、水、洗浄機の準備が整ったら外壁の高圧洗浄に入っていきます。
基本的に洗浄中に水が滴り汚水が流れて壁面を汚さないように屋根から洗浄をおこない、その後壁面の洗浄をします。
徐々に上から下へ汚水を流していき、最後に駐車場などのコケや汚れを落として完了となります。高圧洗浄は半日から~1日で終了し、完了後はしっかりと外壁を乾燥させます。
乾燥までしっかりとできていないと壁面が濡れた状態のままになってしまいますので、基本的には1日乾燥時間を設ける必要があります。
まとめ
本記事では、外壁塗装における高圧洗浄の必要性や高圧洗浄の注意点を解説しました。
これから工事を検討される方は是非参考にしていただき、高圧洗浄の必要性をしっかりと認識したうえで工事に取り掛かってください。
外壁や屋根を新たに塗装する際は、しっかりと高圧洗浄で家にこびりついている汚れを落として塗装に備えましょう。


あなたのお家
外壁塗装するといくら?







