クリア塗装とは、無色透明の塗料を利用して外壁などの塗装を行うことです。
塗料には顔料が含まれていないため、色付きの塗料とは異なり、無色透明となっています。そのため、現在の外観のデザインをそのままに塗装が行え、耐久性を高めたり、汚れがつきにくい補修が行えます。
しかし、クリア塗装で利用する塗料にはいくつかの種類があり、種類によって費用相場が異なっていたり、そもそもクリア塗装に向いていない外壁もあります。
本記事ではクリア塗装にかかる料金はもちろんのこと、クリア塗装に向いている外壁と向いていない外壁の違い、おすすめの塗料ランキングまでを解説していますので、ぜひ参考にしてみてください。
【塗料別】クリア塗装にかかる料金を比較
クリア塗装では「アクリル塗料」「ウレタン塗料」「シリコン塗料」「フッ素塗料」「無機塗料」のいずれかの塗料を利用します。
それぞれの塗料の料金、耐用年数などは以下の表の通りです。
塗料 | 費用相場(/㎡) | 耐用年数 | 特長 |
---|---|---|---|
アクリル塗料 | 1,000~1,800円/㎡ | 3〜8年 | 最も低価格だが、耐久性が低く、何度も塗り替えが必要 |
ウレタン塗料 | 1,500〜2,500円/㎡ | 5〜10年 | 弾力性があり、光沢のある仕上がりになるが、耐久性はやや劣る |
シリコン塗料 | 2,000〜3,500円/㎡ | 10〜15年 | コスパに優れた塗料で人気があり、多くの住宅の外壁で利用されている |
フッ素塗料 | 3,000〜4,800円/㎡ | 12〜20年 | 耐用年数が長くメンテナンスの手間がかからないため、公共の建物にも利用されている |
無機塗料 | 3,500〜5,500円/㎡ | 10〜25年 | 最も高価な塗料だが、耐用年数が長く、性能が長続きする |
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上記の表の価格は目安となるため、詳細な工事費用については必ず業者に詳細な見積もりを依頼することが大切です。
アクリル塗料
アクリル塗料でクリア塗装を行う場合の費用相場は、1,000~1,800円/㎡です。
アクリル塗料とはアクリル樹脂を主成分とした塗料で、安価で利用できることやカラーバリエーションが豊富なことから人気を博してきた塗料になります。
安価である反面、紫外線に弱く劣化が早く起こってしまうことから、現在ではアクリル塗料を利用している人はほとんどないのが現状です。
耐用年数が短いため、数年以内に建物の取り壊しがあるなど限定的な状況では向いている場合もあります。
アクリル塗料については、以下の記事に詳細をまとめていますので、あわせて参考にしてみてください。
ウレタン塗料
ウレタン塗料でクリア塗装を行う場合の費用相場は、1,500〜2,500円/㎡です。
ウレタン塗料とは、ウレタン樹脂を主成分としており、柔軟性や密着性が高い塗料になります。また、艶が生まれ高級感のある仕上がりにもなることも魅力的な塗料です。
アクリル塗料と比較して実用性は高いですが、耐用年数は短いため、低コストでクリア塗装を行いたい人向けの塗料になります。
ウレタン塗料については、以下の記事に詳細をまとめていますので、あわせて参考にしてみてください。
シリコン塗料
シリコン塗料でクリア塗装を行う場合の費用相場は、2,000〜3,500円/㎡です。
シリコン塗料とは、シリコン樹脂を主成分として、断熱性や防水性に優れた塗料のことです。耐用年数とコストのバランスが良く、現在ほとんどの建物で利用されている塗料になります。
多くの建物で利用されていることから、商品のラインナップも豊富なことも特長で、ご自宅のクリア塗装に適した塗料も見つけやすい塗料でもあります。
シリコン塗料については、以下の記事に詳細をまとめていますので、あわせて参考にしてみてください。
フッ素塗料
フッ素塗料でクリア塗装を行う場合の費用相場は、3,000〜4,800円/㎡です。
フッ素塗料とは、フライパンのコーティング剤にも用いられているフッ素を主成分とした塗料のことです。耐候性が非常に高く、メンテナンスの手間がほとんどかからないことから、公共の建物にも利用されています。
また、親水性も非常に高く、雨水によって建物の汚れが落ちるセルフクリーニング機能も有しています。一方で機能性に優れている分、相場はほかの塗料と比較すると高めです。
フッ素塗料については、以下の記事に詳細をまとめていますので、あわせて参考にしてみてください。
無機塗料
無機塗料でクリア塗装を行う場合の費用相場は、3,500〜5,500円/㎡です。
無機塗料とは、セラミックやケイ素などの無機物を主成分とした塗料のことで、耐候性に優れているのが特徴です。耐用年数も長くなるため、自宅の外壁を長年に渡って保護したい方や、メンテナンスの回数を減らしたい方にはおすすめの塗料になります。
一方で非常に高価な塗料になるため、ほかの塗料よりも費用は高くついてしまいます。
無機塗料については、以下の記事に詳細をまとめていますので、あわせて参考にしてみてください。
クリア塗装に向いている外壁と向いていない外壁の違い
クリア塗装には向いている外壁と向いていない外壁があるため、塗装前に自宅の外壁がどちらに該当するかを確認しておくことが大切です。
クリア塗装に向いている外壁と向いていない外壁は、以下の比較表の通りです。
向いている外壁 | 向いていない外壁 |
---|---|
劣化が少ない外壁 デザイン性が高い外壁 |
光触媒などでコーティングされた外壁 劣化が激しい外壁 汚れが顕著な外壁 |
クリア塗装に向いている外壁
クリア塗装は現在の外壁の状態やデザインをそのまま活用する塗装になるため、「劣化が少ない外壁」や「デザイン性が高い外壁」はクリア塗装に向いています。
たとえば新築であったり、前回の塗装から10年以内の外壁であれば劣化は比較的少ないため、クリア塗装に向いていると考えてよいでしょう。
また、レンガ調などの特徴的な外壁としている場合もおすすめです。現在の外壁の色味などを損なうことなく塗装ができるめ、現在の外壁デザインが気に入っている方はクリア塗装で対応できないかを確認してみるとよいでしょう。
クリア塗装に向いていない外壁
クリア塗装に向いていない外壁は、「光触媒でコーティングされた外壁」「劣化が激しい外壁」「汚れが顕著な外壁」です。
光触媒でコーティングされた外壁だと、外壁の表面にクリア塗装で利用する塗料が密着せず、耐用年数が落ちてしまう可能性があるため、クリア塗装には向いていません。
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最近では光触媒などの特殊コーティングに対応した下地材もあるため、事前に業者に確認してもらうとよいでしょう。
劣化が進んでいる外壁にクリア塗装を行っても、劣化の補修にはつながらず、かえって劣化が目立つ見た目になってしまいます。チョーキング現象などが発生している場合は、クリア塗装ではなく通常の塗装などを検討しましょう。
同様に汚れが顕著な外壁もクリア塗装には向いていません。無色透明のクリア塗装を行っても汚れが目立つことになってしまうため、色付きの塗装を行うことが無難になります。
クリア塗装を行うメリット
クリア塗装を行うメリットとしては、以下の3点が挙げられます。
クリア塗装を行うメリット
- 費用を抑えて施工ができる
- 外壁に艶が出せる
- チョーキング現象が発生しにくい
費用を抑えて施工ができる
クリア塗装は現在の外壁の状態をそのまま活かす塗装になるため、塗装にかかる塗料の量が少ないのが特徴です。また、その分工程も短く済み、施工期間も抑えられることから、費用を抑えての施工が可能です。
たとえば通常の塗装であれば、下塗り材を活用して下塗りを行った後、中塗り・上塗りといった工程が必要ですが、クリア塗装では下塗りの工程が必要ありません。
下塗りの工程が省かれるため、施工期間も短くなり費用を抑えての施工ができるのです。
外壁に艶が出せる
クリア塗装を実施した際、外壁に艶を出せるのが特長になります。艶が出せる理由はクリア塗装によって保護膜が作られ、光沢感を生み出せるからです。
外壁に艶が出ることで、新築の時と同様なきれいな外壁を演出することも可能です。
どの程度の艶が出せるかは利用する塗料によって変わってくるため、塗装前に業者と相談するとよいでしょう。防汚性の高い塗料などを選択すると、艶を長持ちできます。チョーキング現象が発生しにくい
チョーキング現象とは、紫外線や雨の影響で塗られた塗料の顔料が劣化し、塗膜が白く粉を吹く現象のことです。
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外壁を触った際、手に白い粉が付いた場合はチョーキング現象が発生していると考えてよいでしょう。
チョーキング現象は塗料の顔料が劣化して発生するため、顔料が含まれていないクリア塗装はチョーキング現象が発生しません。
クリア塗装のデメリット
クリア塗装を行うデメリットとしては、以下の3点が挙げられます。
クリア塗装のデメリット
- ひび割れの保護ができない
- 劣化の状態はそのまま
- 色褪せの補修はできない
ひび割れの保護ができない
クリア塗装の役割は表面を保護することにあります。つまり既存の状態をそのまま保護する形になるため、ひび割れなどの劣化症状もそのままの状態になってしまいます。
もちろんクリア塗装の劣化症状を塗装前に補修できますが、補修後の跡はそのまま透けて見える形になります。
補修が必要なほどの劣化症状がある場合は、見栄えが悪くなってしまうため、クリア塗装以外の塗装を検討するのがおすすめです。
劣化の状態はそのまま
クリア塗装に外壁の劣化症状を補修する機能はないため、劣化の状態はそのままでの塗装になります。
先述したひび割れはもちろんのこと、汚れや色むらなどの状態も改善することはできません。
クリア塗装後も劣化の状態はそのまま見える形になるため、劣化症状が激しい外壁や屋根などには向いていないのがデメリットです。
色褪せの補修はできない
クリア塗装は無色透明の塗料を利用するため、既存の外壁の色を補修することはできません。
色褪せの補修まで行いたい場合は、色付きの塗料で行うことを検討する必要があります。
とくに外壁の色褪せが激しい場合には、クリア塗装は選択肢から外れるでしょう。
クリア塗装を行うおすすめ塗料ランキング
実際にクリア塗装を行う際は、塗料を選定する必要あります。クリア塗装を行うおすすめ塗料については、以下の表の通りです。
なお、ランキング順位は2025年7月時点における「ヌリカエ」のデスクリサーチに基づいて作成しております。
順位 | 塗料 | メーカー | 特長 | 価格 |
---|---|---|---|---|
1位 | ![]() |
日本ペイント | 耐候性に優れた4フッ化フッ素樹脂の採用 優れた防カビ性と防藻性 |
5,350円/㎡(2工程) |
2位 | ![]() |
エスケー化研 | 超耐久・超耐候性を実現した塗料 アクリルシリコン樹脂とシロサキン結合で優れた密着性 |
2,620円/m² |
3位 | ![]() |
エスケー化研 | 緻密な架橋塗膜による低汚染性 アクリルシリコン樹脂が耐久性の高さ |
2,360円/m² |
4位 | ![]() |
ロックペイント | アクリル・ウレタン・シリコンのハイブリット塗料 高耐候性・耐紫外線性 低汚染性・防藻防カビ性に優れる |
3,400円/m² |
5位 | ![]() |
日本ペイント | 高耐久性に優れた2液形アクリルシリコン樹脂塗料 特殊セラミックが汚れの付着を防止 |
4,730円/㎡(2工程) |
データ出典:2025年7月時点における各メーカーのホームページ・ECサイトより
第1位:ピュアライド UVプロテクト 4Fクリヤー(日本ペイント)

ピュアライド UVプロテクト 4Fクリヤーは豊富な施工実績を誇るフッ素タイプの塗料です。
耐候性に優れており、表面に付着した汚れは雨が降ると浮かせて流すことが可能のため、きれいな外壁を長続きさせることが可能です。艶の種類も「艶あり」「3分艶あり」の2種類から選定できます。
第2位:プレミアムUVクリヤーSi(エスケー化研)

プレミアムUVクリヤーSiは、アクリルシリコン樹脂と、特殊な紫外線吸収剤と光安定剤のトリプルガード効果による超耐久・超耐候性を実現させた塗料です。
雨水による洗浄作用も備えており、長期間の低汚染性を発揮するのも特徴です。耐用年数は12~15年程度で、コストパフォーマンスに優れた商品になります。第3位:SKシリコンクリヤーW(エスケー化研)

SKシリコンクリヤーWはエスケー化研が販売している、水性のシリコン系クリア塗料になります。
緻密な架橋構造によって塗膜が汚れを寄せ付けない、低汚染性を発揮するのが魅力的な商品です。使いやすい一液タイプであり、アクリルシリコン樹脂を採用していることで、優れた耐久性も発揮します。
第4位:クリスタルロック UVガードクリヤー(ロックペイント)

クリスタルロック UVガードクリヤーはアクリル・ウレタン・シリコンのハイブリット塗料で、ロックペイントが自動車補修用のトップクリヤーで培った技術が備わっている塗料です。
優れた耐久性はもちろんのこと、独自の反応硬化技術によって、紫外線のの透過を防止でき、基材の意匠性を活かして守る塗料になります。
防カビや防藻性能もあるため、清潔な住環境を整えることも可能です。
第5位:ピュアライドUVプロテクトSiクリヤー(日本ペイント)

ピュアライドUVプロテクトSiクリヤーは、強固なシロキサン結合によって高度な耐候性を発揮する2液形アクリルシリコン塗料です。
耐汚染性、耐紫外線性、耐薬品性に優れているほか、外壁の高意匠サイディングの模様をそのままに美しく保てる塗料になります。
まとめ
とくに外壁の劣化が目立つ場合などは、クリア塗装を行うことがかえって汚れを目立たせてしまう原因にもなり得ます。
クリア塗装のメリットを活かせるように、ぜひ業者と相談しながら進めてみてください。