無機塗料はその耐候性の高さから、近年注目されているということを以前にもどこかで聞いたことがありますが「聞きなれないので自宅に採用するとなると不安…」と悩まれている方も多いのではないでしょうか。
そこで本記事では、無機塗料とはどのような塗料なのかについて詳しく解説するとともに、相場やおすすめのメーカ・商品などについてもご紹介します。無機塗料によくあるトラブルについても解説していますので、ご自宅の塗装について考える際の参考になれば幸いです。
塗料全般について詳しく知りたい方は、下記の記事も併せてご覧ください、
無機塗料とは
無機塗料とは、セラミックやケイ素などの無機物を主成分とした塗料のことです。他の塗料と比較して耐候性が高く、一般的には20年弱の寿命をもちます。無機塗料の耐候性が高い理由は、無機物が紫外線で劣化しにくい性質があるためです。
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ただし、無機物のみでは固くなりすぎてしまうため、実際には有機物も含まれています。
無機塗料は、アクリル塗料やフッ素塗料などと比較して最も耐候性に優れています。これは、先述の通り紫外線で劣化しにくい無機物が多く含まれているためです。
塗料は見た目をおしゃれにするだけでなく、外壁を守るためのものでもあります。そのため、紫外線で劣化しにくい無機塗料は現状で最も優れた塗料といえるでしょう。
無機塗料とフッ素塗料の違いとは
無機塗料とよく比較される塗料としてフッ素塗料が挙げられます。
フッ素塗料はフッ素樹脂を主成分とした有機塗料で、耐用年数に優れていたり、汚れが付きにくく変色も起きにくい塗料ため、長期間美観を保てるのが特徴です。
無機塗料とフッ素塗料の違いを比較するために「特徴」「耐用年数」「価格相場」で比較していきます。
<無機塗料とフッ素塗料の違いの比較ポイント>
比較項目 | 無機塗料 | フッ素塗料 |
---|---|---|
特徴 | 耐候性が高く、不燃性がある カビやコケが発生しにくい |
耐候性や耐久性に優れている 長期的に美観を保てる |
耐用年数 | 約20~25年 | 約15~20年 |
価格相場 | 5,000~5,500円/㎡ | 4,300円/㎡ |
特徴で比較
無機塗料と有機塗料であるフッ素塗料は、どちらも耐候性が高かったり、耐熱性が高かったりすることに特徴があります。
機能が非常に優れている両者ですが、より性能が高いのが無機塗料です。
基本的に有機成分が主成分であるフッ素塗料は、無機塗料よりもやや劣化しやすい傾向にあります。
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人生において外壁塗装の回数を減らしたい場合は、耐久性が高い無機塗料を選択するとよいでしょう。
耐用年数で比較
耐用年数はどちらも約20年程度を見込ますが、より長期間の耐用年数となるのは無機塗料です。
耐用年数が長ければ、メンテナンスの回数は減り、手間も少なくなるのは大きなメリットといえるでしょう。
なお、無機塗料であっても有機物の含有量によって耐用年数は変わってくるため、事前に塗料の成分を確認しておくことが大切です。
価格相場で比較
㎡あたりの単価ではフッ素塗料の方が安くなります。
どちらも約20年の耐用年数を誇りますが、コストパフォーマンスという点ではフッ素塗料が優れていると考えられるかもしれません。
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これからも現在の自宅に住み続け、生涯の外壁塗装の費用を抑えたいと考えている人は、フッ素塗料がおすすめです。
無機塗料のメリット
無機塗料のメリットには、主に下記の4つがあります。
- 耐候性が高い
- カビ・コケが発生しにくい
- 低汚染性と防汚性に優れている
- 不燃性がある
各メリットについて詳しく解説します。
耐候性が高い
無機塗料は無機物を主成分としているため、雨や紫外線の影響を受けにくいので劣化しにくいという特徴があります。そのため、外壁表面を長期間にわたって保護できるでしょう。
一般的には、有機塗料のなかでも最高グレードのフッ素塗料を超える耐候性があるといわれています。
カビ・コケが発生しにくい
無機塗料は有機物の含有量が少ないため、これを餌とするカビやこけの発生を抑えることができます。
カビやコケは、見た目の問題はもちろん、建材の性質を変化させて劣化を早めてしまうため注意が必要です。そのため、特に一年を通して雨量の多い地域であれば、無機塗料の使用を検討するのが良いでしょう。
低汚染性と防汚性に優れている
無機物は親水性が非常に高く、表面に汚れが付着しても汚れを浮かせて雨水で洗い流せやすいという特徴があります。
静電気も起きにくいので、ホコリなどのゴミを寄せ付けづらいこともメリットですす。
不燃性がある
無機物は不燃性のため燃えません。そのため、無機塗料であれば火災などの際にも延焼を防ぐことができます。
ただし、無機塗料は少量の有機物も含まれていますので、全く燃えないわけではありません。あくまでも「有機物よりは各段に燃えにくい」といった認識にとどめておきましょう。
無機塗料のデメリット
無機塗料のデメリットには、主に下記の4つがあります。
- ひび割れしやすい
- 価格が高い
- 再塗装が難しい
- 職人の腕で効果に差がでやすい
ひび割れしやすい
無機塗料では固い塗膜となるので、外壁表面がひび割れした場合に無機塗料の塗膜も一緒にひび割れを起こすことがあります。そのため、無機塗料はひび割れしやすい外壁には不向きな塗料といえるでしょう。
近年では弾性力の高い無機塗料も開発されていますので、ひび割れで不安な方は業者への相談をおすすめです。他に力の高い塗料としては、アクリル塗料やシリコン塗料などがあります。
価格が高い
無機塗料は塗料のなかで最も耐候性が高く人気なため、価格や施工費が高いというデメリットがあります。
特に、屋根や外壁など広い面積を塗る場合は最終的な施工費がかなり変わってくる[/text]ため注意が必要です。
再塗装が難しい
無機塗料には、塗膜表面に汚れが付着しにくいという特徴があります。そのため、無機塗料を塗ってすぐに再塗装すると、新しい塗料が早期に剥がれてしまう可能性があります。
再塗装できないということはありませんが、有機塗料と比べると塗装工程や施工費用が増える恐れがある点にも注意が必要です。
使用する無機塗料の耐用年数が経たない間の再塗装は、よほどの理由がなければおすすめしません。職人の腕で効果が異なる
無機塗料の高い耐候性を発揮させるためには、一定の厚みで塗装する職人の技術が不可欠です。
高価で高性能の塗料になるほど、施工実績豊富な熟練の職人に工事を依頼する必要があります。
そのため、無機塗料での施工を希望されている場合は、無機塗料での施工実績が豊富な塗装業者であるかを確認しておきましょう。
無機塗料のメーカーとおすすめの商品5選
日本ペイント「パーフェクトセラミックトップG」
日本ペイントの「パーフェクトセラミックトップG」は、最新の技術でフッ素塗料を超える耐候性を実現した無機塗料です。
有機物とのハイブリット化によって微弾性となり、機塗料の弱点である「ひび割れやすさ」も発生させにくくなっています。
日本ペイント「アプラウドシェラスターⅡ」
日本ペイント「アプラウドシェラスターⅡ」は、”建物寿命の最大化” をコンセプトとして開発された無機塗料です。同社が展開してい塗料のなかでは、最も強固な塗料となります。
一般住宅はもちろん、頻繁なメンテナンスが難しいビルにも最適な無機塗料です。
エスケー化研「エスケープレミアム無機」
エスケー化研の「エスケープレミアム無機」は、無機塗料の特徴である低汚染性を極限まで高めた無機塗料です。
親水性の高さや帯電性の低さに加え、塗膜表面が非常に滑らかなため汚れが溜まりにくい構造となっています。
エスケー化研「エスケープレミアム無機マイルド」
エスケー化研の「エスケープレミアム無機マイルド」は、弱溶剤系の無機塗料です。弱溶剤系は水性系と比べ、耐候性や耐摩耗性に優れ密着力が高くなります。
同社の「エスケープレミアム無機」に比べ、光沢性が強い点も特徴です。
関西ペイント「アレスダイナミックMUKI」
関西ペイントの「アレスダイナミックMUKI」は、無機物と有機物の特性を最大限に活かして開発された無機塗料です。
塗膜劣化の原因となるラジカルの発生を抑えることで、20年以上のわたり建材を保護することができます。
無機塗料によくあるトラブルと対策
塗料のなかで最も優れているといえる無機塗料ですが、その施工にあたって下記のようなトラブルも発生しています。
- 施工費用の大幅な予算オーバー
- 塗装後にひび割れしてしまった
- 再塗装したときの劣化が早い
各トラブルについて詳しく解説します。
施工費用の大幅な予算オーバー
無機塗料は他の塗料に比べて平米単価が2,000円ほど高いため、施工費は相場よりもかなり高くなります。
一般的な塗装の施工費用で考えていると、無機塗料で見積もりを行うと大幅な予算オーバーとなるため注意してください。そのため、見積もりの際には複数の塗料で金額を出してもらうことをおすすめします。「塗料は耐候性を重視したいけど費用が厳しい」とお悩みの方は、同程度の性能を持つフッ素塗料やラジカル塗料の使用も検討してみましょう。
塗装後にひび割れしてしまった
無機塗料は伸縮性に欠けるため、ひび割れしやすいです。地震による建物の動きに耐え切れずひびが発生するといったパターンもあります。
近年は弾性力を高めた無機塗料も開発されていますが、ひび割れの発生を完全に防ぐことは難しいです。ひび割れを防ぐためには、塗装前の下地処理を丁寧に行うことが重要になります。
塗装の下地処理について詳しくは、下記の記事をご覧ください。
再塗装したときの劣化が早い
無機塗料はあらゆる物質をはじく性質があることから、すぐに新しい塗料を上から塗っても剥がれてしまう可能性があります。そのため、塗装後に壁面のDIYなどを考えている方は注意してください。
無機塗料を塗ってから15年~20年間は、屋根や壁面への塗装が難しくなります。塗料を選ぶ際には、長期的なリフォーム計画も立てながら慎重に選ぶようにしましょう。
まとめ
無機塗料は、セラミックやケイ素などの無機物を主成分とした塗料です。塗料のなかで最も高い耐候性をもつため、家を丈夫に長く保つことができます。
ただし、価格が高いことやひび割れしやすいといった性質があるため、本当に無機塗料がご自宅に最適なものであるかは慎重に検討しましょう。
塗料の特性をしっかりと理解して、納得のいくかたちで塗装をすることが大切になります。