塗装における下地処理とは、上塗りする塗料がしっかりと密着するように塗装面を均一に整えることです。下地処理をすることで、塗料の性能を最大限に引き出すことができます。建物の耐久性を保つ上でも重要な工程です。
築後数十年が経ったご自宅や「外壁のひび割れや剥がれなどが目立つな」とお悩みの方のなかには、外壁ご自宅の外壁・屋根の塗り替えを検討されている方も多いのではないでしょうか。
塗装について調べていくうちに、下地処理という工程を知った方もいるかと思います。そこで「下地処理ってどのような工程?」とお考えの方もいらっしゃるかもしれません。
そこで本記事では、塗装における下地処理はどのようなことが行われるのかについてご紹介します。下地処理が重要である理由や費用についても詳しく解説していますので、大切なマイホームや建物を、末永く綺麗に保つための参考になれば幸いです。
塗装の下地処理は何をするのか
塗装の下地処理では外壁の周りに足場を設置し、高圧洗浄などで汚れを落とした後にパテなどで表面を平らにする作業を行います。
ここでは、下地処理における具体的な工程について、塗装箇所ごとに詳しくご紹介します。
塗装における下地処理の大まかな流れ
塗装の下地処理は、通常下記の流れで行われます。
- 塗装面の汚れを落とす
- 傷の補修
下地処理では、まず高圧洗浄機などを用いて塗装面の汚れを落とします。その後、ひび割れなどの傷を補修して下地処理は完了です。
外壁や屋根の塗装工事が始まるとまず足場が組まれますが、その直後に行われるのが下地処理となります。
塗装箇所ごとの下地処理方法
下地処理は、塗装面の状態によってその方法が異なります。
ここでは「サイディング外壁」「モルタル外壁」「鉄部」「壁紙」の4か所ごとの下地処理の方法についてご紹介します。
サイディング外壁
サイディング外壁の下地処理は、下記の流れで行われます。
- ひび割れ部分のカット・清掃
- シーリング充填
- 表面を埋める
まずはひび割れ部分とその周辺をカットし、汚れなどを落とします。その後、シーリングを充填して防水処置を施し、モルタルで表面を埋めて完了です。
ただし、ひび割れの幅によっては下地処理での対応が難しい場合がある点に注意が必要です。
モルタル外壁
モルタル外壁の下地処理は、下記の流れで行われます。
- クラック部分のカット・清掃
- シーリング充填
- モルタルの塗布
モルタル外壁の下地処理は、サイディング外壁の場合とほとんど同じです。クラック部分はカットして清掃した後、シーリングを充填してモルタルを塗布します。
モルタル外壁はセメントが主原料であるため、他の外壁と比べて防水性が低いです。そのため、表面のひび割れや剥離が目立つ場合は、早めに補修しておきましょう。
鉄部
鉄部の下地処理は、下記の流れで行われます。
- 表面の塗膜やさびを落とす
- 表面を拭き取る
- さび止め塗料を塗る
鉄部の塗装における下地処理では、まず表面に浮いている塗膜やさびを落とす必要があります。旧塗膜やさびをそのままにしておくと、塗料を塗っても塗膜が密着しません。そのため、塗料の性能が最大限に発揮されなくなります。
特に、さびはしっかりと落とさないと塗料を塗った後から再発する可能性があるでしょう。
表面の汚れを落とした後は、表面を平滑にするために細かい汚れやさびを拭き取りさび止め塗料を塗ります。
壁紙
壁紙の下地処理は、下記の流れで行われます。
- 表面の汚れを拭き取る
- 穴や剥がれの補修
壁紙の下地処理では、表面のほこりや油分などを拭き取り、穴や剥がれなどがあれば平滑にします。画鋲の穴などの小さなものでも、塗料の塗布後には空気穴ができる可能性があるため、できるだけ塞ぐことが重要です。
穴や剥がれは、コーキング材やパテなどを使って補修します。
壁紙は他の箇所と比べて表面が最初から平滑になっていることが多いため、工程としてはそれほど多くありません。
塗装の下地処理が必要な理由
外壁や屋根の下地処理は、塗装を美しく長く保つために非常に重要な工程です。下地処理が不十分だと、再塗装をしても長持ちしません。
長期間にわたって風雨や紫外線にさらされる壁面は、目に見えないひび割れやさびなどの傷や汚れが多く発生しています。そのため、下地処理をしないまま塗料を塗ると、壁面の異常が再発する可能性が高いです。
また、下地処理が不十分である場合は、ペンキ自体の性能が発揮されにくくなります。優れた耐用年数のある塗料を塗っても、下地処理を怠ると数年で色あせや剥がれなどが起きることもあるでしょう。
ここでは、下地処理の効果と、やらない場合に起きることについて解説します。
下地処理の効果
塗装における下地処理の効果は、主に下記の3つです。
- 見た目の仕上がりがよくなる
- 耐久性が増す
- コストを抑えられる
塗装前に下地処理を行うことで、壁面がなめらかになり、塗装のノリが良くなります。その結果、見た目も美しく仕上がるでしょう。
下地処理をしないままでも塗装はできますが、耐久年数がくる前に塗装面に亀裂やふくらみ、さびが発生する可能性もあります。塗装は、見た目はもちろんご自宅を守る機能も果たすものです。丁寧な下地処理をすることで、建物自体を長く綺麗に保つことができるでしょう。
また、下地処理は、ご自宅のメンテナンスコストを下げることにもつながります。下地処理をせずに塗装すると塗膜の剥がれやさびがすぐに再発してしまい、10年と経たずに再塗装が必要になる可能性もあります。
塗料の特性をしっかりと発揮される状態にすることが、壁面の耐久性や高まるりメンテナンス費用の削減につながるのです。
下地処理をしない場合に起きること
下地処理をしないまま塗装すると、下記のような3つのリスクがあります。
- ひび割れ
- 塗膜の膨れ
- 塗膜の剥がれ
- さびの発生
壁面にできたひび割れは、放置しておくと建物全体に広がってしまいます。そのため、下地処理をせず再塗装すると、元々の塗装のひび割れにつられて新たなひび割れができる可能性が高いです。
塗膜の膨れは、壁面と塗料の間に発生した水分や空気が塗膜を押し出している状態です。塗装後の乾燥時間を十分に設けなかった場合にも発生しやすい症状となります。壁面と塗膜に空洞があると、見た目の悪化はもちろん、さびの発生やひび割れなど様々な異常の原因になります。
塗膜の剥がれは、塗装面にある傷や凹凸によって塗膜にムラができることで発生します。壁面に塗料が密着してない状態のため、風雨などにより数年で剥がれてしまう可能性が高いです。壁面に塗膜剥がれがあると目立ちますので、美観の点からも塗料をしっかりと壁面に密着させることが大切になります。
さびは、外壁や屋根の鉄部でできやすく、放置すると鉄部以外の箇所に侵食して広がってしまいます。ケレンという下地処理を行い、さびを残らす取り除く必要があるでしょう。
下地処理の費用相場は?
外壁・屋根の塗り替えには必須の下地処理ですが、どのくらいの費用がかかるのでしょうか?
それぞれの下地処理の方法別に費用相場をみてみましょう。
処理方法 | 費用相場 |
---|---|
高圧洗浄 | 200円~300円/㎡ |
ケレン作業 | 500円~2,000円/㎡ |
コーキング補修 | 500円~1,200円/㎡ |
セメント補修 | 1,500円~2,000円/㎡ |
パテ埋め | 1万円~2万円/1か所 |
ここでは、それぞれの下地処理における費用の相場をご紹介しましたが、セメント補修やパテ埋めのように部分的な補修になる場合は見積書に「下地処理」として費用を一括で提示していることもあります。
ケレン作業やコーキング補修であれば作業面積・距離が明らかになりやすいですが、部分的な補修になると面積などを計算しにくいからです。
もし、見積書の中に『下地処理』とだけ記載されていて、どんな内容の工事を指しているのかがわからない場合は、遠慮なく「どこに・どんな工事を・いくらでするのか」を質問して答えてもらいましょう。
外壁塗装の相場について詳しく知りたい方は、下記の記事も併せてご覧ください。
>>【参考記事】外壁塗装の相場は?20坪・30坪・40坪・50坪・60坪の費用や見積もり額についても解説
美しく長持ちする塗り替えを実現するなら下地処理は必須!
塗装における下地処理は、表面にあるほこりやさびなどを除去し、凹凸を補修して塗装面を平滑にする工程です。塗装面の材質や状態によって、作業が若干異なります。
ご自宅の外壁・屋根の塗り替えでは、外観を整えるためはもちろん、建物自体の耐久性を保つためにも下地処理が必要です。
下地処理が丁寧に行われていないと、せっかく再塗装してもすぐにまた塗り直しが必要になる可能性もあります。
一見すると必要ないように思われがちな下地処理ですが、塗装においては欠かすことのできない重要な工程です。