外壁塗装の目的は、建物を保護して耐久性を維持することばかりではありません。
外壁の塗り替えには、美観や意匠性を向上させること対しても常に高いニーズがあります。
また外壁塗装では、色の違いのみでなく、仕上げのパターン(模様)の違いによっても建物全体の雰囲気が大きく異なってしまうため、仕上げパターンを変更するだけでイメージチェンジが可能です。
今回は、外壁塗装の仕上げに関する基礎知識や仕上げの種類・方法についてご紹介したいと思います。
外壁材の種類
外壁塗装の仕上げ方法をご紹介する前に、外壁材の種類について知っておく必要があります。
そこで、代表的な外壁材について簡単にご説明しておきたいと思います。
現在の戸建て住宅の外壁は、サイディングボードとモルタル壁の2種類が多くを占めています。
サイディングボードとは、工場で生産された板状の建材のことです。
材質の違いにより、窯業系や金属系、木質系などがあります。
工場出荷時にはすでに色や模様がついているのが一般的なので、現場では貼り合わせていくだけで完成となります。
窯業系や金属系のサイディングでは、石目調やタイル調、砂壁調、木目調などの様々な模様や色の中から、お好みのものを選ぶことができます。
一方モルタル壁は、セメントあるいは石灰と砂とを混ぜて水で練ったモルタルを職人の手作業で塗り込んでいくものなので、パターン付けは現場で行います。
職人の熟練度によって仕上がりに差が出ますが、意匠性やデザインにこだわる場合にはモルタル壁が適しています。
外壁塗装の仕上げの種類
外壁がモルタルの場合には、現場で凹凸をつけて模様を作ります。
この模様のことをパターンといいますが、パターンには塗料を吹き付ける方法や、コテで模様をつける方法、ローラーで模様を付ける方法などがあり、その工法によって外壁の表情が大きく変わります。
ここではそれぞれの特徴をご説明したいと思います。
吹き付け工法
スプレーガンと呼ばれる道具を用いて、専用の容器に入れた塗料を霧状にして外壁に吹き付ける工法です。
ガンの種類によって、模様を変えることができます。
また、広範囲の塗装をスピーディーに効率的に行うことができるのもメリットのひとつです。 デメリットは、周囲に塗料が飛散してしまったり、施工中に臭いや音が発生してしまったりすることです。
施工するにあたっては、しっかりとした養生を行うなどの近隣対策が不可欠です。
吹き付け工法には、仕上げ材の違いによって種類があります。
次に吹き付け工法の代表的な3つの仕上げ方法をご紹介します。
リシン仕上げ
古くからある仕上げ方法で、塗料に骨材(砂利や砂)を混ぜてリシンガンで壁に吹き付ける工法です。
つや消しで落ち着きのある凹凸模様が特徴で、砂利の大きさにより異なる模様を作ることができます。
比較的安価ですが、ひび割れしやすいのが欠点です。
近年では、ひび割れしにくい「弾性リシン」もあります。
またリシン仕上げには、古くからある工法のひとつとして、リシンの凹凸を職人が剣山のような道具やブラシなどを使って、粗く削って仕上げる「リシン掻き落とし仕上げ」という工法もあります。
掻き落としの加減で微妙な変化を付けることが可能です。
スタッコ仕上げ
灰に大理石や砂などを混ぜ合わせたものを塗料に混ぜて吹き付ける工法です。
リシンよりも5~10mmほど厚く塗ります。
吹き付けたままの吹き放し仕上げと、吹き付けた後にコテやローラーで凸部を平らに押さえるヘッドカット仕上げがあります。
リシン仕上げよりも厚みがあるので、より立体感がある重厚な仕上がりになり、耐久性も向上します。
吹き付けタイル仕上げ(ボンタイル仕上げ)
吹き付けタイルとは、外壁用に用いる複合仕上げ材の一種で、粘土のような粘性の高い塗料です。
また吹き付けタイルは、ボンタイルと呼ばれることもあります。
主材のベースを吹き付け、さらに模様吹きの上塗りをした上で、ローラーやコテなどを使って表面に凹凸模様をつけて仕上げます。
スタッコと比べて柄が小さく、つやありが主流で、表面が陶器のようにツルツルとしているのが特徴です。
コテ工法
左官職人がコテを使って模様をつける工法です。
近年では高意匠型塗材の流行と共に、塗装職人が扱うケースも増えている模様です。
くし引きやスタンプ、扇仕上げ、マーブル調仕上げなど、自由に描くことができるので、基本的にどんな模様やパターンでも作ることが可能です。
意匠性に優れ、デザインの幅が広がります。
一方、イメージがつかみにくいので、カタログ写真などを見ながら決める必要があります。
また、職人に高い技術が必要になるため、値段は高めになります。
職人や業者により仕上がりが異なるので注意が必要です。
外壁全面ではなく、部分的なアクセントとして使われることもあります。
ローラー工法
ローラー工法は、現在の外壁塗装の主流となっている工法で、刷毛よりも効率的に塗装を行うことができます。
使用するローラーの種類によって模様が変わるのが特徴です。
主にスポンジ状のマスチックローラーと、毛状のウールローラーに分かれます。
マスチックローラー仕上げ
円柱にスポンジ状の繊維を取り付けたもので、砂骨ローラー、多孔質ローラー、パターンローラーなどとも呼ばれています。
塗料を大量に取り込めるので、簡単に厚塗りすることができます。
目の粗いものから細かいものまであって、マスチックローラーによる塗装では、砂骨材入り塗料のほか、弾性塗料、砂壁調塗料などが用いられます。
マスチックローラーを使用して塗装すると、壁面の元の模様は消え、さざ波型模様(マスチック模様とも呼ばれています)の厚い塗装面に仕上がります。
基本的に、塗り替えや改修用に用いられています。
また目の細かいものを使用すると、ゆず肌模様と呼ばれる模様になります。
ウールローラー仕上げ
ウールローラーは、耐水型紙などでできた芯に繊維毛を植毛したものです。
塗膜を均一に保ちやすいのがメリットです。
現在の外壁の模様をそのまま活かして使いたい場合などに使用されます。
その他の仕上げ
吹き付けタイルやリシン、スタッコなどの塗り替えに適した仕上げ方法に、より高級感を演出できる石目調模様の塗装仕上げがあります。
2色吹きや単色吹きの他に、ローラーで塗装可能なものもあるので、吹き付け塗装のように塗料が飛散してしまう心配もありません。
上塗り材に紫外線吸収剤を配合したものや、微弾性機能があり壁のひび割れを防ぐもの、透湿性に優れ壁内部の結露を防止するものなど、見た目の豪華さだけでなく、機能性にも優れています。
自然石と比べて、コーナー部やアール部分にも比較的簡単に施工することが可能です。
サイディングボードの塗装
サイディングボードの場合には、塗料を厚塗りしてパターンを変更してしまうことも可能ですが、一般的には既存のパターンや模様をそのまま活かした塗装を行います。
外壁サイディングボードを塗装する方法は、大きく2種類があります。
透明の塗料でコーティングする「クリアー塗装」と、単色や2色塗りの「塗りつぶし塗装」です。
それぞれについてご説明します。
クリアー塗装
石目調やレンガ調、タイル調などのサイディングボードの外壁を塗装する場合には、元の柄や色をそのまま残してクリアー塗装を施すケースがあります。
新築時に選んだサイディングボードの柄やデザインが気に入っていて、塗りつぶしてしまうのはもったいないという場合には、クリアー塗装が適しています。
仕上がりには「ツヤあり」と「三分ツヤ」があります。
ピカピカの光沢のある仕上がりがお好みの場合は「ツヤあり」仕上げ、シックで落ち着きのある風合いを希望する場合には「三分ツヤ」仕上げを選ぶようにすると良いでしょう。
しかし、クリアー塗装では塗料自体が透明なので、塗装前のサイディングの状況がそのまま仕上がりに影響してしまいます。
外壁表面に汚れや傷、変色などの劣化がないことが施工する条件になるため、比較的築年数が浅い建物向きの塗装方法になります。
クリアー塗装について詳しくはこちら↓
単色塗り、2色塗り
クリアー塗装をするには色あせが進行してしまって難しい場合には、一般的には単色で塗りつぶしてしまうことになります。
しかし、タイル調やレンガ調サイディングを単色塗りしてしまうと、目地も同色で塗り潰されてしまって、せっかく意匠性が高くて高級感があるサイディングの良さが、塗り替えることによってなくなってしまいます。
そこで、凹凸感のあるサイディングの特徴を活かすための方法として、2色で塗装する方法があります。
目地にテープを貼ったり、ローラーの毛の長さを変えたりして塗り分けを行います。
テープを貼って塗り分けるのは、非常に手間と時間がかかる大変な作業になりますが、凹凸のあるサイディングの場合には、毛丈の短いローラーを使用して比較的簡単に塗り分けることが可能です。
サイディングの塗装方法に関してもっと詳しくはこちら↓
外壁塗装の塗料の種類
ここまで外壁塗装の仕上げの種類や工法についてご紹介してきましたが、塗料の種類について知っておくことも重要です。
外壁塗装で使用される塗料の主成分はいずれも合成樹脂で、そこに含まれる物質によって仕上がりの見た目や耐久性が変わります。
塗装工事を行う上では、それぞれの塗料が持つ特徴と併せて、素材や環境にあった塗料選びをすることが大切です。
アクリル樹脂系塗料
光沢があり、色をくっきりと見せる効果がある塗料です。
安価ですが紫外線に弱く、耐用年数が短めです。
ウレタン樹脂系塗料
アクリル樹脂系塗料よりも防水性や耐候性に優れています。
密着性にも優れているため、戸建て住宅を中心に幅広く使用されている塗料です。
また、塗料の中でも樹脂が柔らかい特徴を持っているため、伸縮性があり、内部がひび割れを起こしても、塗膜の表面までひび割れしにくいのがメリットです。
比較的安価ですが、耐用年数はやや短めで、耐候性はそんなに高くありません。
シリコン樹脂系塗料
耐候性や仕上がりの良さに優れたコストパフォーマンスの高い塗料です。
住宅の塗料では、現在最も多く使用されています。
フッ素塗料
耐候性、耐久性、撥水性に優れる一方で、汚れやすいというデメリットがある塗料です。
美しい光沢がありますが、価格が高いため、現在一般住宅ではあまり普及していません。
塗料に関してもっと詳しくはこちら↓
まとめ
今回は、外壁塗装の仕上げ方法についてご紹介してきましたが、いかがだったでしょうか。
外壁塗装を行う上では、
・外壁材の種類
・塗装の工法
・塗料の種類
の3つの要素が重要な役割を持っていることがおわかりいただけたと思います。
現在の外壁がサイディングなのかモルタルなのか、どんな意匠にしたいのか、塗料にどんな性能を求めるのかなどは人によって異なります。
決して業者任せにせずに、ご自身でも塗装の基礎知識を身に付けておくことで、「実際に塗装したあとのイメージが違っていた」などのトラブルを避けることができます。
今回の記事を参考にして記事の内容を良く理解した上で、既存の外壁にあった塗料や工法を選択し、ご自身のご要望に沿った塗装工事を是非実現して欲しいと思います。