外壁塗装では古い塗膜を除去する作業が発生します。
古い塗膜があることで、新しく塗料を塗ったとしても密着ができず、施工不良につながってしまうためです。そんな古い塗膜の除去に利用されるのが「剥離剤」です。
本記事では外壁塗装で利用される剝離剤の比較から、ケレン作業や高圧洗浄機で塗膜を剥がす場合の比較などを解説していきます。
- 塗装剥離剤とは、現在の塗膜を剥がすために利用される溶剤のこと
- 塗装剥離剤にはジクロロメタン、水性、非塩素系などの種類がある
塗装剝離剤とは?
塗装剝離剤とは、現在の塗膜を剥がすために利用される溶剤のことです。
具体的には現在の塗膜にスプレーで吹き付けたり、ハケで塗り込んだりしながら、古い塗膜を浮かせていきます。
-
塗膜が浮き上がることで、ヘラや高圧洗浄機で簡単に除去が行えるようになるのです 。
塗装剥離剤の種類を成分別に比較
剥離剤といっても、さまざまな種類が存在します。
それぞれの種類に使われている成分を比較することで、どの種類が利用に適しているかを判断できます。
剥離剤の種類(成分) | 特徴 | 利用に向いている外壁材 |
---|---|---|
ジクロロメタン(塩素) | 塩素の力で強力に塗膜を剥がす 環境や人体に有害な成分も含まれている |
金属・コンクリート |
水性 | 水の成分で作られ、塗膜を柔らかくして剥がす 環境や人体に優しい |
木材・住宅用外壁材 |
非塩素系(アルコール) | アルコールによって塗膜を柔らかくして溶かす ジクロロメタンほどではないが、刺激臭がある |
さまざまな外壁材に利用可能 |
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外壁塗装業者に依頼した場合、非塩素系の剝離剤を利用していることが多いです。
ジクロロメタン
ジクロロメタンとは、塩素を利用して塗膜を強力に剥がすことが可能な成分です。
塗装剝離剤の中では、もっとも強力な剝離剤といっても過言ではありません。
効果は強力な反面、環境や人体に悪影響となる成分も含まれているため、昨今ではほとんど利用がされていない種類でもあります。
また、蒸発しやすく強烈な刺激臭もあるため、作業時にはマスクや手袋などを必ず装着し、万全な状態で作業する必要があります。
水性
水性は文字通り、水性の溶剤で作られている剥離剤です。
ジクロロメタンとは異なり、塗膜に徐々に浸透しながら柔らかくしていくのが特徴です。
浸透時間が8時間以上と長いため作業に時間はかかり、浮いてきた塗膜をヘラなどで除去する時間も必要になります。
一方で刺激臭が少なく作業がしやすい種類のため、環境や人体にも優しいのもメリットです。
非塩素系(アルコール)
非塩素系とは、主にアルコールを利用して塗膜を柔らかくして溶かす剝離剤です。
アルコールを利用しているため、環境や人体にも優しく、多くの外壁塗装業者が活用しています。
水性と比較すると浸透時間が長くかかったり、刺激臭がしたりしますが、塗膜は剥がしやすいのが特徴です。
塗装剥離剤ジクロロメタン系おすすめ商品ランキング
強力な剝離剤であるジクロロメタン系が適していそうだと感じた場合は、以下の3つの商品から価格などを確認して選択してみてください。
順位 | プライマー | メーカー | 特徴 | 価格 | 参考剥離時間 (20℃) |
---|---|---|---|---|---|
1位 | ![]() ネオリバー #100 |
三彩化工株式会社 | 幅広い塗膜に対応可能 インキや接着剤にも有効 強力な剥離性能を発揮 |
4kg:2,750円 | 10〜30 分 |
2位 | ![]() |
三彩化工株式会社 | 2液型塗料の除去に強い 信頼性の高い製品 |
4kg:3,998円 | 10〜60 分 |
3位 | ![]() |
菊水化学工業株式会社 | 垂直面でも液ダレしにくい 長時間効果が持続する 水洗い不要で再塗装OK |
20kg:26,000円 | 外装薄塗材E:8分~25分 |
※ランキングは2025年度実績のデスクリサーチをもとに作成
ジクロロメタン系おすすめ商品第1位:ネオリバー #100

メーカー | 三彩化工株式会社 |
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容量/価格 | 4kg:2,750円 |
乾燥時間 | 10〜30 分 (20℃) |
ネオリバーは、油性・水性・ラッカー塗膜はもちろん、一般合成樹脂系塗膜に対しても優れた剥離性能を持つ汎用型の塗装剝離剤です。
用途が幅広いため、どの塗膜か迷う場面でも対応力が高く、扱いやすい製品です。はじめての塗膜剥離にも安心して使用できるスタンダードな1本といえます。
ジクロロメタン系おすすめ商品第2位:ガンクリーナー

メーカー | 三彩化工株式会社 |
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容量/価格 | 20kg:26,000円 |
乾燥時間 | 10〜60 分 (20℃) |
ガンクリーナーは、硬化剤を使用する2液型の塗料に特化した剥離剤で、従来の剥離剤では落としにくい強固な塗膜も強力に除去できます。
素材を傷めにくく、扱いやすいのが特長で長時間の剝離作業でも効果が持続するため、高い信頼性を誇る製品です。
ジクロロメタン系おすすめ商品第3位:キクスイ リムーバーS

メーカー | 菊水化学工業株式会社 |
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容量/価格 | 4kg:3,998円 |
乾燥時間 | 外装薄塗材E:8分~25分 |
キクスイ リムーバーSは、作業性と効率性を両立した塗膜剥離剤です。
粘性が高く、垂直面でも液ダレが少ないため、外壁などの縦面施工でも扱いやすい仕様となっています。揮発性が低く、剥離力が長く持続するため、広範囲の作業に適しています。塗装剥離剤水性おすすめ商品ランキング
時間をかけても問題がなく、身体にも優しい塗装剝離剤を選ぶのであれば水性がおすすめです。以下の3つの商品から価格などを確認して選択してみてください。
順位 | プライマー | メーカー | 特徴 | 価格 | 参考剥離時間 |
---|---|---|---|---|---|
1位 | ![]() 水性タイプ塗料はがし剤 |
株式会社カンペハピオ | 塩素不使用で安心・安全 低蒸発性で効果が長持ち 油性・ラッカー塗膜にも対応 |
1L:3,998円 | 5~30分 |
2位 | ![]() |
三彩化工株式会社 | 非塩素系で環境負荷が低い 油性・ラッカー系塗膜に対応 効果が長時間持続する設計 |
3.5kg:3,998円 | 60〜90 分 (20℃) |
3位 | ![]() |
株式会社マノール | 水で希釈して使える安全設計 仕上材の接着性を妨げない 引火性・揮発性が極めて低い |
4L:5,598円 | – |
※ランキングは2025年度実績のデスクリサーチをもとに作成
水性おすすめ商品第1位:水性タイプ塗料はがし剤

メーカー | 株式会社カンペハピオ |
---|---|
容量/価格 | 1L:3,998円 |
乾燥時間 | 5~30分 |
水性タイプ塗料はがし剤は、人や環境への負荷が少ない安全設計が特長です。
低蒸発性のため剝離力が長時間持続し、厚塗りの塗膜にもじっくり対応できます。油性、水性、ラッカー、ニスなどさまざまな塗膜を除去できるため、住宅外壁や木部のメンテナンス用途にも最適です。
水性おすすめ商品第2位:ネオリバー #346

メーカー | 三彩化工株式会社 |
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容量/価格 | 3.5kg:3,998円 |
乾燥時間 | 60〜90 分 (20℃) |
ネオリバー #346は、ジクロロメタン不使用の環境配慮型塗膜剥離剤で、一般的な油性・水性・ラッカー系の塗膜に有効です。
即効性はやや控えめですが、蒸発が緩やかで剥離力が長時間持続するため、広範囲や厚塗りの塗膜にも対応しやすい仕様です。
人や建物への影響を抑えながら、しっかりとした除去性能を求める方に適した、安全性と実用性を両立した一本になります。
水性おすすめ商品第3位:マノール水溶性万能剥離剤

メーカー | 株式会社マノール |
---|---|
容量/価格 | 4L:5,598円 |
乾燥時間 | – |
マノール水溶性万能剥離剤は、水で希釈して使用するタイプの塗膜剥離剤で、施工時の安全性が非常に高いのが魅力でです。
引火性や揮発性もなく、環境に配慮した現場での使用に適しています。型枠や外壁施工など幅広い用途に対応しており、扱いやすさと高い施工性を兼ね備えた製品です。
塗装剥離剤非塩素系おすすめ商品ランキング
環境に配慮し、刺激臭も少ない環境での剥離を行いたいのであれば、非塩素系の剥離剤がおすすめです。以下の3つの商品から価格などを確認して選択してみてください。
順位 | プライマー | メーカー | 特徴 | 価格 | 参考剥離時間 |
---|---|---|---|---|---|
1位 | ![]() 非塩素系塗料はがし剤 |
株式会社カンペハピオ | 塩素不使用で安心設計 刺激臭が少なく快適作業 剥離効果が長時間持続 |
300g:2,200円 | 5~30分 |
2位 | ![]() |
ナトコ株式会社 | ほとんど全塗料に対応可能 非塩素系で再塗装性も良好 難燃性で作業リスクが低い |
16kg:17,980円 | 素材により異なる |
3位 | ![]() |
エスケー化研株式会社 | 非塩素系で安全性が高い 垂れにくく作業効率が良い 石綿含有塗材にも対応 |
16kg:32,978円 | 4~48時間 |
※ランキングは2025年度実績のデスクリサーチをもとに作成
非塩素系おすすめ商品第1位:非塩素系塗料はがし剤

メーカー | 株式会社カンペハピオ |
---|---|
容量/価格 | 300g:2,200円 |
乾燥時間 | 5~30分 |
非塩素系塗料はがし剤は、塩素系独特の刺激臭もなく、住宅街などの近隣環境にも配慮できる製品です。
低蒸発性で剥離効果が長時間持続するため、広範囲の塗膜にも対応可能です。安全性と作業性の両立を求める際に最適な製品になります。
非塩素系おすすめ商品第2位:スケルトン NC

メーカー | ナトコ株式会社 |
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容量/価格 | 16kg:17,980円 |
乾燥時間 | 素材により異なる |
スケルトン NCは、反応型・蒸発型いずれの塗膜にも強力な剥離力を発揮する万能タイプの剥離剤です。
塩素系のアルカリ水溶性で、再塗装時の密着不良を防ぐ設計がされており、被塗装面の洗浄性にも優れています。
難燃性で火気にも強く、安全性が高いのも特長です。
非塩素系おすすめ商品第3位:ハクリタイトソフト

メーカー | エスケー化研株式会社 |
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容量/価格 | 16kg:32,978円 |
乾燥時間 | 4~48時間 |
ハクリタイトソフトは、垂直面にも塗布しやすいローラー施工向きの非塩素系剥離剤です。
乾燥が遅めに設計されており、塗膜への浸透性も高く、軽い力で剥離が可能です。また、アスベスト含有塗材の除去にも対応し、公共工事基準にも適合していることから、安心して使用できる高機能タイプにもなります。塗装剝離剤を外壁に使用する際の注意点
実際に塗装剝離剤を使用して、外壁の塗膜を除去していく際には、以下の3つの点に注意しながら進めていくことが大切です。
マスクや手袋を必ず装着する
使用方法を守り、外壁を傷つけないようにする
強い臭いに対する対策をする
外壁に利用する塗装剥離剤は非常に強い匂いを発します。施工する際に自身はもちろんのこと、近隣住民へ影響が出てしまうことも多々あります。
そのため自身への対策と、近隣住民への対策の両方が必要です。
自身への対策はマスクをしたり、換気を十分に配慮したりすることが挙げられます。近隣住民については「塗装剝離剤を使うこと」「いつ使うのか」を作業前に伝え、トラブルにつながらないように配慮しましょう。
マスクや手袋を必ず装着する
前章で解説したように塗装剝離剤は非常に強い臭いを発するため、マスクを装着して防護することが大切です。
また利用する塗装剝離剤によっては、吸い込んだり、触れたりするだけで中毒症状が出てしまうなど、人体に影響が出てしまうものもあります。
作業中に健康被害を起きてしまっては、周りにも迷惑がかかってしまうため、十分な防護体制を整えて作業をしましょう。
使用方法を守り、外壁を傷つけないようにする
外壁に利用する塗装剝離剤は適切な方法で扱わないと、外壁を傷つけてしまう可能性もあります。
塗膜を剝がすことで問題ないにもかかわらず、外壁を傷つけてしまうと補修工事が必要になってしまい、さらに追加で費用や時間がかかってしまいます。
実際に塗装剝離剤を利用する場合は、利用する剥離剤の使用方法を適切に守り、丁寧に作業することが大切です。
外壁塗装工事で剥離剤が使われるケース
外壁塗装工事で剝離剤が使われるケースは、主に以下の2つのケースです。
施工不良による塗り直しのケース
ケレン作業では剝がせないケース
一般住宅で剥離剤を利用するケースは、ケレン作業によって塗膜を十分に除去できない場合です。
十分に除去ができなければ、新しい塗料が浸透しないため、剝離剤を利用して塗膜を浮かせてから剥がしていきます。
なお塗膜を塗る際は、ハケ使ったり、ローラーを使ったりなど、業者によって異なります。
施工不良による塗り直しのケース
施工不良が発生してしまうと、現在の塗膜の耐用年数が短くなってしまうため、塗膜をすべて剝がす必要があります。
施工不良であっても塗膜が外壁に浸透しているケースも少なくないため、剝離剤を利用して剥がしていくのです。
施工不良は以下のようなケースが挙げられます。
下塗り材を塗装せずに仕上げ用の塗料を塗った
塗料を規定以上に薄めてしまった
【古い塗膜の剥がし方】塗装剝離剤・ケレン作業・高圧洗浄機で比較
古い塗膜の剝がし方には剝離剤のほかにも、ケレン作業や高圧洗浄機で剥がす方法があります。
それぞれの塗膜の剝がし方について、「目的」「費用」「手間(時間)」という3つの視点から比較していきます。
比較項目 | 塗装剝離剤 | ケレン作業 | 高圧洗浄機 |
---|---|---|---|
目的 | 古い塗膜を完全に除去する場合 ※ケレン作業では対応できない場合 |
古い塗膜を完全に除去する場合 | 汚れの除去が主な目的な場合 |
費用 | 6,000~10,000円/㎡ | 1,500~2,000円/㎡ | 100~300/㎡ ※別途水道代 |
手間(時間) | 30分~12時間以上 ※塗膜の状態や剥離剤の種類によって異なる |
約1日 | 100~300/㎡ ※別途水道代 |
目的で比較
古い塗膜を剥がす目的によって、剝離剤を利用するかは判断できます。
具体的には古い塗膜を完全に除去するのが目的の場合は「剝離剤」「ケレン作業」が適しています。
なお、ケレン作業では除去しきれなかったり、作業時間を短縮したい場合には「剝離剤」の使用がよいでしょう。
ケレン作業:古い塗膜を完全に除去するのが目的で、化学的な製品が必要ない場合
高圧洗浄機:汚れの除去が主な目的な場合
費用で比較
それぞれの工法がどの程度の費用がかかるかは、以下の通りです。
ケレン作業:1,500~2,000円/㎡
高圧洗浄機:100~300/㎡ ※別途水道代
ケレン作業での除去が可能な場合は、費用面からみると塗装剝離剤よりもお得にできるでしょう。
手間(時間)で比較
結論から言えば、各工法の手間は業者に頼んでしまえば変わりません。
作業にかかる時間は異なってくるため、各工法でかかる時間を比較します。
ケレン作業:約1日
高圧洗浄機:6~8時間 ※洗浄する箇所によって異なる
作業の手間はケレン作業が圧倒的にかかるといっても過言ではありません。また、業者による高い技術力も求められます。
塗装剝離剤は塗膜の状態や使用する種類によって、時間が変わってくるため、事前に確認しておくとよいでしょう。
塗装剥離剤のリスクは?
塗装剥離剤を使うことのメリットについてお話ししましたが、では反対にデメリットにはどのようなものがあるのでしょうか?
刺激臭が近隣にとどくリスク
塗装剥離剤から発せされるニオイが、住宅内や近所へ広がって、不快感や体調悪化につながる可能性があります。
家族やご近所に過敏な方がいたり、お子様やペットがいる場合には、もっとも懸念となる影響です。
ニオイの影響が気になる場合は、可能ならジクロロメタン系と非ジクロロメタン系の剥離剤を避け、水溶系(強アルカリ性、中性、酸性)のものを選ぶとよいでしょう。
剥離作業で建物が傷むリスク
化学薬品である剥離剤の塗布や、その後の剥がし落とす作業によって、表面が多少なりとも傷つき、家の寿命が短くなってしまう可能性もあります。
このリスクは、丁寧に作業を行ってくれる、信頼できる業者で最小限にできます。
費用が高くなる
塗装剥離剤をつかった旧塗膜の除去作業は、通常の下地処理作業にくらべて高額なため、工事費全体も上がることになります。
くわしい費用については、本記事内「塗装剥離剤をつかう作業の費用相場は?」の章で解説しています。
まとめ
塗装剝離剤は、現在の塗膜を剥がすために利用される溶剤のことです。
塗装剝離剤を上手に活用することで、古い塗膜を完全に除去し、新しい塗装を行う準備が整います。
一方で目的と費用によっては、必ずしも剝離剤である必要はありません。自宅の外壁塗装を適切に行うためには、剝離剤が適当なのか、ぜひ本記事を参考に比較してみてください。