軒天塗装とは、屋根の裏側(天井)である軒天に塗料を塗る作業のことです。
軒天は常に雨風にさらされるため、劣化防止のためにも定期的なメンテナンスが欠かせません。また軒天は、天井裏の換気をしたり、火災時の延焼を防いだりと、重要な役割を担う箇所でもあります。
本記事では軒天塗装の画用からメリット、手順までを解説していきます。ぜひ、参考にしてみてください。
軒天塗装とは
軒天とは住居の屋根の裏側のうち、建物からはみ出している部分を指します。軒天塗装はこの軒天に塗料を塗る作業です。
軒天塗装を行うことで屋根から雨水が壁面に直接あたるのを防いだり、建物の劣化を防ぐなどの効果を発揮します。
常に雨風にさらされる軒天をメンテナンスする役割が軒天塗装になります。
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軒天に劣化症状が見られる場合、早めの補修が必要になります!
軒天塗装が必要な3つの理由
軒天塗装が必要な理由としては、以下の3つが挙げられます。
美観を維持するため
建物の保護に直結するため
塗装が経済的であるため
美観を維持するため
軒天は建物を下から見上げた際、目に入りやすい部分になります。そのため建物全体の印象を整え、美観を維持するためにも軒天塗装が必要です。
軒天は風雨の影響を受けやすく、汚れの付着やカビの発生がしやすい箇所になります。
こうした症状が発生していると、下から見上げた際、「古い」「汚い」といった印象を与えてしまいます。
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建物の印象を損ねないためにも、軒天塗装を行い、美観を維持することが大切です。
建物の保護に直結するため
軒天の劣化を放置してしまうと、建物全体に悪影響を及ぼしてしまいます。
たとえば軒天内部の腐食が進行してしまい、害獣が住み着いてしまうなどです。
ネズミやハクビシンなどが住み着いてしまうと、糞尿によって屋根の腐食がさらに進行してしまい、塗装では対応できない被害につながってしまいます。
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大規模工事になってしまうと、費用も軒天塗装とは比較できないほどになってしまうため、適切なメンテナンスが必要になります。
塗装が経済的であるため
軒天塗装を必要とするタイミングは、外壁塗装を必要とするタイミングと同じであることがほとんどです。
もし外壁塗装を検討しているのであれば、同時に軒天塗装も行ってしまった方が、別々に塗装を行うよりも施工費用が抑えられるため経済的です。
外壁塗装と軒天塗装を別々に行うと、それぞれで足場の設置代や人件費が必要になってしまい、余計なコストがかかってしまいます。
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外壁塗装と軒天塗装を同時にやってしまえば、足場代などは1回分で済むため、結果的にコストを抑えることにつながります。
軒天に使われる材質を比較
軒天によく使われる材質は、以下の3つの種類です。材質によって塗装や補修方法が変わるため、それぞれの材質について理解しておくことが大切になります。
どの材質を利用するかは、耐用年数とメンテナンス方法で比較するとよいでしょう。
材質 | 耐用年数 | メンテナンス方法 |
---|---|---|
木材系 (ベニヤ板・化粧合板) |
約10年 | 塗装は3~5年で塗り替えを実施する 10年以上経過している場合は張り替えが必要なケースが多い |
不燃系 (ケイカル板・フレキシブルボード) |
ケイカル板:約15~20年 フレキシブルボード:約30年 |
ケイカル板:吸水性が高いため、塗装による塗膜保護が必要な場合が多い フレキシブルボード:重量があるため、下地の状態や強度に問題がないかの確認が必要 |
金属系 (ガルバリウム鋼板・アルミスパンドレル) |
約15~20年 | 15~20年程度の頻度で錆(さび)止めを行う |
外壁のカビが発生している参考画像と、コケや藻が発生している参考画像は以下の通りです。
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耐用年数に優れており、耐久性や耐火性にも優れているケイカル板が基本的にはおすすめです。
木材系(ベニヤ板・化粧合板)

以前はベニヤ板や化粧合板が木造住宅の軒天に使用されていました。
美しいデザインの木目と低価格が魅力ですが、経年劣化が早く、防火性や耐水性に欠けるのがデメリットです。経年劣化が進むと表面の塗膜が剥がれやすくなるため、定期的に塗装での保護が必要になります。また、10年以上経過した木材系の軒天の場合、張替え工事も必要になります。
木材系の軒天で状態を保つためには、3~5年で塗替えを実施するのがおすすめです。
不燃系(ケイカル板・フレキシブルボード)

近年、新築やリフォームにおいてよく使用される材質が不燃系の軒天材です。
ケイカル板はケイ酸と酸化カルシウム(生石灰)から製造され、耐火性と防湿性に優れていますが、吸水性が高く塗装による保護が必要です。
高圧洗浄の場合、ケイカル板を傷つけてしまう可能性があるため、防藻・防カビ効果のある塗料を塗ることがおすすめになります。
一方、フレキシブルボードはセメントと補強繊維で作られており、強度が高く不燃性に優れています。重量がケイカル板の約2倍になるため、設置前に下地の強度確認が必要です。
金属系(ガルバリウム鋼板・アルミスパンドレル)

ガルバリウム鋼板やアルミスパンドレルなど、加工した金属板の軒天もあります。
金属板の軒天は屋根や外壁材としても普及しており、軽量で耐火性・耐水性・耐久性に優れているのが特徴です。
ガルバリウム鋼板とアルミは錆びにくい素材ですが、時間が経過すると錆が発生し、耐久性や美観が低下する可能性があります。そのため、15〜20年ごとに錆止め塗装と仕上げ塗装が必要です。
軒天塗装で使われる塗料比較
軒天塗装で使われる塗料には「EP・AEP」と「NAD」が挙げられます。
塗料 | 特徴 | 主な製品 |
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EP・AEP | 安価で利用しやすく、水溶性のため安全 | エコフラット100(日本ペイント) ビニデラックス300(関西ペイント) |
NAD | 接着性や耐水性に優れている | ケンエースG-Ⅱ(日本ペイント) アレスセラマイルド(関西ペイント) |
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軒天塗装に使われる塗料は、利用している材質や場所によっても左右されるため業者と相談して決めるのがおすすめです。
EP・AEP
EPとは「エマルションペイント」、AEPは「アクリルエマルションペイント」の頭文字をとった言葉です。
昨今ではEPとAEPに区別をつけることはほとんどありません。なぜなら流通しているエマルションペイントのほとんどが、アクリルエマルションペイントに該当するためです。
水溶性のため安全に利用でき、NADよりも安価に購入できるの点が特徴です。なお水溶性のため、接着力はNADに劣っています。NAD
NADは「アクリル樹脂系非水分散形塗料」のことで、水ではなく、有機溶剤に樹脂を分散させた塗料という意味です。
水を使用していないため、速乾性に優れており、EPやAEPよりも早く乾くため、工期を短くすることにもつながります。
ほかにも接着性や耐水性に高い特徴があり、ヤニ止めの効果もあります。
軒裏塗装に使われる色の特徴を比較
軒天塗装では「ホワイト系」「ブラック系」「クリア系」の色で比較検討されることが多いです。
それぞれの色のメリット、デメリットを比較してご自身にあった色を選んでみてください。
色 | 特徴 | メリット | デメリット |
---|---|---|---|
ホワイト系 | 明るくどんな色とも相性が良い | ホワイトやクリーム色などが人気 風景などになじみやすい 明るい印象を与えられる |
ホワイトは汚れが目立ちやすい 美観を保つために定期的なメンテナンスが必須 |
ブラック系 | モダンでスタイリッシュな印象を与える | 引き締まった見た目になる 中間色や濃い色めの外壁色であれば馴染みやすい |
軒下が暗く感じてしまうことも サビやカビなどの劣化症状が見つけにくい |
クリア系 | 色が付かず、軒天の素材の色をそのまま使える | 外壁材そのもののデザインや色味を活かせる | 下地の状態が悪いと施工ができない 軒天の痛み、汚れ、劣化症状が目立ちやすい |
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ヌリカエでは住宅のカラーイメージがしやすいようにカラーシミュレーターを用意しています。ぜひ、こちらのページから参考にしてみてください。
ホワイト系
白色やクリーム色などのホワイト系の色は、軒天塗装でもっとも人気の色と言っても過言ではありません。
ホワイト系はさまざまな色とも相性が良いことに加え、明るい印象を簡単に与えられることも人気の理由です。
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とくに色の希望がない場合は、ホワイト系を選んでおくと良いでしょう。
一方で汚れが目立ちやすい色でもあるため、美観を保つためには適度なメンテナンスが必須になります。
ブラック系
黒色やダークブラックなどの色を選択することで、モダンでスタイリッシュな印象を与えることにつながります。
人によっては白色の外壁に黒色の軒天塗装とし、コントラストをあえてつける人もいます。
一方で、軒下が暗く感じてしまったり、サビやカビなどの劣化症状が見つけにくい点は注意が必要です。
クリア系
クリア系とは文字通り、透明な塗料を使って素材の色合いを活かすものです。
木目などのデザインを活かしたい人は、あえてクリア系を選んだりします。木の色合いや質感を楽しみたい人はおすすめです。
一方で透明であるため、汚れや剥がれが目立ちやすくなります。そのためこまめに外壁の状態を確認しておくことが大切です。
軒天塗装の費用相場
軒天塗装の費用相場は、約5~15万円を見込んでおくとよいでしょう。
なお、軒天塗装を業者に依頼する場合は塗装範囲や使用する塗料、どの施工業者に依頼するかで金額が変わってきます。
また、劣化具合によってはさらに大規模な施工が必要な場合があります。各施工法の相場としては、以下の表の通りですが、あくまで参考程度に押さえておいてください。
どの材質を利用するかは、耐用年数とメンテナンス方法で比較するとよいでしょう。
施工方法 | 費用相場 | 施工内容 |
---|---|---|
軒天塗装 | 約5~15万円 | 軽度な劣化症状や部分的な補修を行うために、軒天に塗料を塗る作業 |
軒天増張り | 約20~25万円 | 既存の軒天の上に新しい材料を重ねて張る補修方法 |
軒天張替 | 約35~45万円 | 既存の軒天材を撤去して新しい軒天材で張り替える工事 |
※足場設置費用 | 約10~20万円 | – |
そのため軒天塗装での対応となる場合は、おおむね20万円から30万円程度はかかるとみてくとよいでしょう。
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軒天塗装での対応で問題ないかは、必ず業者に相談の上で決定してください。
軒天塗装のメリット
軒天塗装のメリットとしては、以下の3点が挙げられます。
軒天塗装のメリット
- 屋根からの雨水が壁面に直接当たるのを防ぐ
- 建物内部への雨水の侵入を防ぐ
- 建物の劣化を未然に防ぎ、寿命を延ばす
屋根からの雨水が壁面に直接当たるのを防ぐ
外壁からはみ出している軒天は、外壁への雨水の吹き込みや太陽光を遮る役割を担っています。言い換えれば、外壁にあたる雨水などをすべて受け止めていることになります。
そのため軒天は劣化の進行が進みやすく、定期的なメンテナンスが必要です。
軒天塗装を行うことで、屋根からの雨水が壁面に直接あたるのを防ぎ、耐久性を向上させることにつながります。
建物内部への雨水の侵入を防ぐ
軒天があることで建物内部への雨水の侵入を防ぐことが可能です。しかし、軒天が劣化してしまうと雨水の侵入を防げず、内部への侵入が進むことになります。
雨水が侵入してしまうと、建物内部の腐食が進んでしまうなど住居にとって致命的なトラブルになりかねません。
こうしたトラブルを未然に防ぎ、軒天の大切な役割を守ることが軒天塗装によって可能になります。
建物の劣化を未然に防ぎ、寿命を延ばす
建物の劣化を防ぐ役割をもつ軒天を塗装することは、建物そのもの劣化を未然に防ぎ、寿命を延ばすことにもつながります。
反対にメンテナンスを怠ってしまうと、塗装のはがれや色あせ、汚れ、雨漏れなどのトラブルが発生する原因になってしまいます。
こうした症状が出ている場合は、軒天塗装を行うタイミングです。ぜひ定期的な確認とメンテナンスをお願いします。
まとめ
建物の劣化を未然に防ぎ、寿命を延ばすメリットもあるなど、長く家に住み続けるためには軒天塗装は欠かせません。
ぜひ、家の軒天に目を向けて軒天塗装が必要かどうかを確認してみてください。