ガルバリウム鋼板とは?屋根や外壁に使うメリット・デメリットを解説

屋根や外壁のリフォームをご検討されている方であれば、「ガルバリウム鋼板」を一度は耳にしたことがあるでしょう。
ガルバリウム鋼板は金属の外壁材・屋根材として、特にリフォーム領域においてよく使われる屋根材の一つですが、営業トークに「メンテナンスフリー!」や「一切錆びない!」などの誇張表現が使われがちな素材でもあります。
これらの表現は本当に正しいのでしょうか?
本記事では、ガルバリウム鋼板の特徴に加え、これら過大表現の真相と正しい見極め方、知っておきたい注意点などを解説していきます。
この記事でわかること
- ガルバリウム鋼板は、金属の外壁材・屋根材の中で最も「総合力」が高い
- ガルバリウム鋼板を採用する前に、特に業者選びや保証内容に注意
- 「横葺き」か「縦葺き」か?SGLか?を事前に確認する
この記事を監修しました
株式会社Speee
小林 成光
所有資格
外壁アドバイザー、外装劣化診断士、ホームインスペクター
専門分野
外壁工事
職業
外壁アドバイザー、外装劣化診断士、ホームインスペクター
600件以上の現地調査を実施する過程で得た専門性を生かし、日本発のネット見積もりシステムでビジネスモデル特許を取得。ヌリカエにて、外装工事の専門家として、顧客・加盟企業のサポート・コラムの監修に従事。
ガルバリウム鋼板とはどんな素材?
ガルバリウム鋼板(読み方:がるばりうむこうはん)について、リフォームを検討する最中に聞いたことがあるけど詳しいことはわからないという方もいるのではないでしょうか。
以下で、ガルバリウム鋼板とは何なのかを解説していきます。
ガルバリウム鋼板は、屋根にも外壁にも使える素材

ガルバリウム鋼板とは、アルミニウムと亜鉛を主とした金属板の一種です。外壁材・屋根材として用いられます。
例えば外壁材の時は金属サイディングと呼ばれることが多いですが、同じ金属板のことを指しています。
業界では「ガルバ」や「GL鋼板」などと略されます。(よく使われるので、覚えておくと良いかもしれません。)
ガルバリウム鋼板は、表面がアルミニウム55%/亜鉛43.4%/シリコン1.6%で構成されためっき鋼板です。アルミニウムの耐食性と亜鉛の防食作用により、20年以上の長期にわたり錆を防ぐ(※注)ことが特徴です。
アルミニウムと亜鉛の強みを兼ね合わせた「良いとこどり」の材質と言えるでしょう。
メッキ鋼板の種類
メッキ鋼板はガルバリウム鋼板だけではなく、身の回りにも様々な種類のメッキ製品があります。
| メッキ製品 | 素材 | 使用例 |
|---|---|---|
| ガルバリウム | アルミ+亜鉛+シリコン | 屋根・外壁 |
| トタン | 亜鉛 | 塵取り・漏斗 |
| ブリキ | スズ | 缶 |
| SGL(スーパーガルバリウム) | アルミ+亜鉛+シリコン+マグネシウム | 将来の主流 |
トタンやブリキも同じメッキ鋼板ですが、トタンは亜鉛で、ブリキはスズによってメッキ加工されています。
このように、どのような成分によってメッキされるかによって、鉄の錆やすさは変わるのです。
耐久性
ガルバリウム鋼板の耐用年数は30~40年です。メンテナンスの周期もふまえると、もっともコストパフォーマンスの高い屋根材となります。
代表的な他の屋根材と耐用年数・メンテナンス周期を比べてみました。
ガルバリウム鋼板は、錆が原因で生じる穴さえメンテナンスができれば、長期にわたって利用することができます。寿命を延ばすためにも適切にメンテナンスを行うことが重要です。
断熱・防音などデメリットにも対応
ガルバリウム鋼板は非常に厚みが薄い屋根材です。その薄さから、「断熱性」「遮音性」の低さがデメリットとして懸念されていました。
しかし現在使用されているガルバリウム鋼板は、屋根の裏面に断熱材を張り付けた製品が主流です。断熱材が使用されることにより、これまでの懸念点であった「断熱性」「遮音性」の問題を大きく改善することができました。
ガルバリウム鋼板の商用流通が始まったのは30年前。保守的な建設業界において、販売当初はほとんど売れることがありませんでしたが、2022年現在は、屋根をはじめ、外壁材としても施工事例が多数あります。
ガルバリウム鋼板は今やなくてはならない建材です。

ガルバリウム鋼板を使うメリット・デメリット
外壁や屋根にガルバリウム鋼板を使うメリット・デメリットをそれぞれ解説します。
ガルバリウム鋼板を使うメリット
ガルバリウム鋼板を使うメリットは以下の2点が挙げられます。
ガルバリウム鋼板を使うメリット
- 金属屋根の中でも特に「総合力」の高い素材
- デザイン性に優れている
では、それぞれ具体的にみていきましょう。
金属の中でも特に「総合力」の高い素材
ガルバリウム鋼板が金属の建材の中でも「総合力」の高い理由は大きく2つあります。
- コストパフォーマンスが高い(耐用年数が長く、価格が安い)
- (特に後述のSGLであれば)耐食性がステンレスにも劣らない
確かにガルバリウム鋼板よりも、ジンカリウム鋼板やステンレス鋼板の方が耐用年数は長いですが、その分価格も高くなるというのが難点です。
また例えば一般的な30坪(100㎡)程度の住宅の場合、ガルバリウム鋼板屋根のカバー工法の場合は60~90万円、葺き替えの場合は80~120万円ほどの費用が必要になります。
▼参考:各金属屋根の種類ごとの説明
| ガルバリウム鋼板 | トタン屋根 | ジンカリウム鋼板 | ステンレス鋼板 | |
|---|---|---|---|---|
| 施工費用(㎡) | 6000~9000円 | 5000~6000円 | 7000~12000円 | 10000~14000円 |
| 耐用年数 | 25~30年 | 10~20年 | 40~50年 | 50年~ |
| 主な特徴 | 錆びにくい | 安価だが、耐久性が低い | 防音性に優れる | 耐久性・耐候性が高い |
色・デザインが豊富

画像出典1:日光鋼板株式会社
画像出典2:住宅塗り替え館.com
画像出典3:株式会社牧野製作所-施工事例-
ガルバリウム鋼板は、金属のため、基本的にはどの色を選んでもスタイリッシュかつ、シャープな印象を与えます。
また、カラーバリエーションも幅広く存在するので、与える印象を自由に変えることができます。
ガルバリウム鋼板を使うデメリット
一方、ガルバリウム鋼板を使うデメリットは以下の6点が挙げられます。
ガルバリウム鋼板を使うデメリット
- 施工費用が高くなる傾向にある
- 断熱性が低い
- 遮音性が低い
- 結露が発生しやすい
- 強風に弱い
一つずつ具体的にみていきましょう。
施工自体が難しいうえに、本職の業者を探すことも難しい
ガルバリウム鋼板は原則として、瓦屋や塗装屋ではなく、主に板金工事業者が行うことになっています。
その理由は、ガルバリウム鋼板は確かに錆びにくい素材ではありますが、実は傷には弱い素材(厚さ約0.4mm)だからです。
施工途中に角をぶつけてしまったり、切断面の鉄粉を残したままにしてしまうと、そこから腐食が進行し、錆びになりやすくなってしまいます。
そのため、ガルバリウム鋼板の施工は難しく、本職と言われる板金工事業者も、その数自体が少ないため、業者選びも含めて施工難易度の高い素材と言えるでしょう。
施工費用がやや高くなる傾向にある
実際のところ、多くの塗装業者や瓦業者がガルバリウム鋼板を含む、板金工事を請け負う営業活動を行っているのが現状です。
塗装業者や瓦業者が工事を請け負う場合、板金工事が外注になるので、いわゆる「中間マージン」が上乗せされた料金での施工になることが多く、結果的に施工費用が高くなる傾向にあります。
施工費用を安く抑えたい方は「本当に板金工事業者かどうか?」の確認は必ず事前に行いましょう。
断熱性が低い
上述の通り、ガルバリウム鋼板は薄いため、断熱性能はほとんどありません。
また、熱伝導率が高いため、夏場には太陽熱の影響で屋根直下が高温になり、室内温度が上昇しやすくなります。
そのため、リフォーム以外でガルバリウム鋼板を使用する場合は通常、断熱材とセットで販売されるか、遮熱塗料で塗装をすることが多いです。
リフォーム(カバー工法でガルバリウム鋼板屋根を採用するなど)の場合は、既存の外壁材・屋根材の断熱性能も考慮し、断熱材を組み込むか否か決めることになります。
例えば、既存屋根がスレート屋根であれば断熱材は不要ですが、トタン屋根であれば断熱材を組み込むとよいでしょう。
遮音性が低い
ガルバリウム鋼板は薄く、音や振動が伝わりやすく、雨音が響きやすいのも欠点の一つです(屋根勾配が緩いお建物の場合は、特に響きやすいです)。
カバー工法で使用する場合は特に心配ありませんが、リフォームではなく、新築でガルバリウム鋼板の使用をお考えの場合は、対策を講じたほうが良いでしょう。
その場合は、断熱材を兼用したり、天井裏に吸収材などを敷き詰める、など建築本体での対策を行うことが多いです。
結露が発生しやすい
通常の屋根材の場合、ある程度湿気が外に逃げるように施工されますが、ガルバリウム鋼板の場合は、隙間なく敷き詰めるので、室内の気密性が高まります。
加えて、ガルバリウム鋼板は熱伝導率が高いため、湿度が高いと屋根裏などに結露が発生しやすく、結露が発生すると住宅の腐食につながります。
そのため、対策として屋根下に湿気が溜まらないよう、定期的な屋根裏換気などを行う必要があります。
強風に弱い
屋根が軽いと耐震性は向上しますが、同時に強風には弱くなってしまいます。これには、大きく二つの欠点があります。
一つは「強風により屋根材が剥がれる可能性がある」という点です。
屋根と住宅本体の接合部分が弱いと、強風が原因でガルバリウム鋼板がはがれ、元の素材が丸出しになる、という可能性も考えられます。
もう一つは、「飛来物が当たった場合、へこみやすい」という点です。上述の通り、もともと素材が薄いためへこみやすく、へこみが錆びの原因になる可能性も考えられます。
ガルバリウム鋼板の価格相場は?
ガルバリウム鋼板の屋根を塗装した場合、葺き替えた場合、カバー工法(かさね葺き)を行った場合それぞれの価格相場について解説します。

ガルバリウム鋼板の価格相場は5,000円~10,000円/㎡
ガルバリウム鋼板の施工価格は、概ね1㎡あたり5,000円~10,000円です。大きく2通りある工法によって価格が変わります。
| 工法 | 価格 | 特徴 |
|---|---|---|
| 縦葺き | 5,000円~8,000円/㎡ | 防水性が高い 施工費用が安い 低勾配でも施行可 |
| 横葺き | 6,500円~10,000円/㎡ | デザインが豊富 屋根カバー工法に対応 製品・機能が多彩 |
上記のように、横葺きよりも縦葺きの方が面積あたりに使う材料が少ないため、価格が安くなることが多いです。
塗装する場合の価格相場は200万円
ガルバリウム鋼板の屋根を塗装する費用は、一般的な戸建て住宅を想定して200万円が目安です。
先述のようにガルバリウム鋼板には塗料が乗りにくいため、スレートやモルタルといった他の外装材に塗装する場合と比べて価格が高くなります。
また、塗料の種類や塗装面積によって150万円~230万円前後まで費用が変動する場合があるためご注意ください。

葺き替えの価格相場は180万円
葺き替えとは、すでにある材をすべて剥がしてから、新しいガルバリウム鋼板に張り替える工法です。一般的な戸建て住宅での価格相場は180万円が目安となります。

古い屋根材を剥がす作業と、剥がしたあとの処分費用が発生するため、施工価格は高くつきます。
なお、単価の変動や、選んだガルバリウム鋼板のグレードなどによって、総額が120万円~270万円前後までは変わる可能性があるためご留意ください。
「屋根の葺き替え」について詳しく知りたい方は、下記の記事もご覧ください。

カバー工法の価格相場は155万円
カバー工法は“重ね葺き”とも呼ばれ、すでにある屋根材の上から新しいガルバリウム鋼板を重ね張りする工法です。一般的な戸建て住宅での価格相場は155万円が目安となります。

古い屋根材の撤去費がかからない分、施工価格が安くおさえられる点がメリットになります。こちらもガルバリウム鋼板のグレード等によって、総額が110万円~220万円程度まで前後する可能性があるためご注意ください。

ガルバリウム鋼板のサビとメンテナンス方法
先述のようにガルバリウム鋼板は非常に丈夫な素材ではあるものの、メンテナンスフリーというわけではありません。金属材であるガルバリウム鋼板において、特に注意しておきたいのは「錆び」です。
ガルバリウム鋼板は錆びに注意
外壁のキズを放置してしまったり、潮風や酸性雨に長期間さらされるとガルバリウム鋼板が錆びてしまうことがあります。
ガルバリウム鋼板に発生してしまうことがあるサビは以下の3種類です。
白錆:潮風や高温多湿により発生
もらい錆:アンテナなど別の金属との接触により発生
外壁や屋根の錆びを放置してしまうと、美観が損なわれるだけでなく、雨漏りや家の耐久性低下にもつながっていきます。錆びを事前に防ぐため、定期的なメンテナンスを行うことが大切です。
定期的に洗浄すると長持ちする
では、具体的にどのようなメンテナンスを行えば良いのでしょうか。

もっとも手軽なメンテナンス方法は、数か月~半年に1度の洗浄です。洗浄の際のポイントは2つあります。
まず「雨に濡れにくい箇所を重点的に洗うこと」です。雨に濡れにくい箇所は塩分や酸が付着しやすくなっていおり、重点的に水洗いをすることで白さび予防になります。
次に「高圧洗浄機の使用は避けること」です。高圧で洗浄するとガルバリウム鋼板が凹んだり、表面を傷めてしまうのでご注意ください。自宅で車を洗うときの水の量や勢いがおおよその目安です。
10~15年ごとに塗装する
ガルバリウム鋼板の屋根や外壁を長持ちさせるために、10~15年ごとの塗装も推奨されています。定期的な塗装を行うことで美観を維持できるだけでなく、耐久性や防水性をアップさせたり、錆びや汚れを予防することが可能です。
なお、ガルバリウム鋼板の塗装を依頼する業者を選ぶ際には、経験豊富な職人がいるかどうか、ガルバリウム鋼板の塗装の実績があるかどうかを必ず確認するようにしてください。
というのも、ガルバリウム鋼板の塗装はプロの塗装業者にとっても難しい作業だからです。施工不良が起きないよう、ヌリカエなどのポータルサイトも活用しつつ信頼できる業者に依頼するようにしてください。
劣化によっては、葺き替えや張り替えが必要になることも
ガルバリウム鋼板は非常に耐久性に優れているものの、劣化が進みすぎている場合には屋根全体・外壁全体の葺き替えや張り替えが必要になることもあります。
葺き替え・張り替えを検討した方が良いのは以下のような場合です。
複数箇所で雨漏りが発生している
飛来物等により穴が開いてしまっている
また、耐用年数の目安である30年以上を経過している場合にも、下地等の見えない部分の劣化が進行してきている場合があるため、葺き替え・張り替えを検討した方が良いでしょう。

まとめ
ガルバリウム鋼板はアルミニウムと亜鉛を主とした金属板の一種で、主要な屋根材の一つです。
メリットとしては「軽量で耐震性が高い」「緩い勾配でも施行可能」「デザインが豊富」があげられる一方で、「工事費用が高め」「断熱性が低い」「遮音性が低い」などのデメリットもあります。
金属の外壁材・屋根材の中でも総合力に優れていますが、使用する場合の注意点が多く慎重に工事内容を決定することが重要になります。
納得感のできる判断を下せるよう、張替工法などほかの工事方法・外壁材についても情報収集をしてみてください。最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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外壁塗装するといくら?
