FIT買取価格にみるこれからの太陽光発電設置のメリット

  • 【更新日】2019-01-04
FIT買取価格にみるこれからの太陽光発電設置のメリット

太陽光発電が盛り上がった2009年には、各所の空き地やビルの屋上などにソーラーパネルが設置され、これからの再生可能エネルギー活用が開かれるという風潮でした。
しかし、東日本大震災など大きな震災を経験しその意味は大きく変わってきました。より緊急性を増し、経済的・環境的な課題が具体的になったことで、太陽光発電による電力の売買価格も変動しています。
ここでは2012年に始まった再生可能エネルギーの固定価格買取制度と、その代表である太陽光発電の現状と具体的な設置の流れを紹介します。

固定価格買取制度について

再生可能エネルギーは、火力発電や大規模な水力発電と比べて発電量に対する発電コストの高さなどの理由から、なかなか普及が進んでいませんでした。
そこで、電気を利用する人が公平に支援することで再生可能エネルギーを普及させ、将来自立した電源となることを目指し2012年7月からスタートしたのが「再生エネルギーの固定価格買取制度(FIT:Feed-in Tariff)」です。

固定価格買取制度の仕組み

「再生エネルギーの固定価格買取制度」は、再生可能エネルギーで発電した電気を、電力会社が一定価格で一定期間買い取ることを国が約束する制度です。電力会社による買取費用の一部を、利用する人が支払う「賦課金」でまかない、まだコストの高い再生可能エネルギーの導入を支えます。発電設備にかかる高い建設コストに回収の見通しを立てやすくなり、普及をより進めようとしています。

対象となる再生可能エネルギー

固定価格買取制度は、「太陽光」「風力」「水力」「地熱」「バイオマス」の5つのいずれかを使い、国が定める要件を満たす事業計画を策定し、その計画に基づいて新たに発電を始める人が対象です。発電した電気は全量が買取対象ですが、住宅の屋根に載せるような10kW未満の太陽光の場合は、自分で消費した後の余剰分が買取対象となります。

余剰買取制度と全量買取制度の違い

固定価格買取制度には大きく分けて、「余剰買取制度」と「全量買取制度」の2種類があります。今最も普及している太陽光発電を例にそれぞれを比較してみましょう。

余剰電力買取制度

これは太陽光で発電した電力の一部を自宅で利用し、それ以上発電した電力を10年固定で電力会社が買い取る制度です。そのため自宅での消費量が多いほど買い取ってもらう電力は減り収入は少なくなります。この制度が適用されるのはソーラーパネルの総出力が10kW未満の場合です。日本の標準的な住宅の屋根に設置できるソーラーパネルの総出力は5kW程度であるため、個人住宅のほとんどに適用されています。

全量買取制度

こちらは太陽光発電による電力を20年間固定で、電力会社が全てを買取制度です。そのため設備を設置している人はその電力を一切使いません。この制度はソーラーパネルの総出力が10kW以上と大規模で広い面積が必要なため、産業用途のものがほとんどです。

エネルギー別のFIT買取価格の推移

固定価格買取制度(FIT)の調達価格や調達期間は、各電源ごとに、事業が効率的に行われた場合、通常必要となるコストを基礎に適正な利潤などを勘案して定められます。コストの構成や割合の変化に応じて、中立的な調達価格等算定委員会の意見を尊重し、経済産業大臣が決定します。

太陽光

太陽光発電は、太陽の光エネルギーを太陽電池で直接電気に換えるシステムで、家庭用から大規模発電用まで広く導入が広がっています。比較的メンテナンスが簡単で、非常用電源としても利用できるメリットの反面、天候により発電出力が左右されやすく、一定の地域に集中すると送配電系統の電圧上昇につながり、その対策費用がかかるというデメリットもあります。
発電した電力は「蓄電しておく」ことができないため、常時需要と供給のバランスをとって維持されています。そのバランスを取ることが「出力制御」です。一般的な住宅用太陽光発電の場合、出力制御対応機器の費用は1kWあたり17,000円であるため、買取価格に差を設けています。

住宅用太陽光(10kW未満)

現在、2019年度までの買取価格を決定しており、2020年度は決定していません。
電源 規模 2017年度(参考) 2018年度(参考) 2019年度(参考) 2020年度
太陽光(出力制御対応機器設置義務なし) 10kW未満 28円 26円 24円
太陽光(出力制御対応機器設置義務あり) 10kW未満 30円 28円 26円
太陽光(出力制御対応機器設置義務なし、ダブル発電) 10kW未満 25円 25円 24円
太陽光(出力制御対応機器設置義務あり、ダブル発電) 10kW未満 27円 25円 26円

非住宅用太陽光(10kW以上2,000kW未満)

2018年度の買取価格が決定しています。
電源 規模 2017年度(参考) 2018年度
太陽光 10kW以上2,000kW未満 21円+税 18円+税

非住宅用太陽光(2,000kW以上)

2017年度より入札制に移行しました。2018年度は入札を2回、上期・下期各1回ずつ実施する予定です。

風力

風の力で風車を回し、その回転運動を発電機に伝えて電気を起こします。ウインドファームのような大規模なものから学校などの公共施設に設置される小型のものまでさまざまです。広い平野・風況のよい適地が限られますがコストが低いのが大きなメリットです。

陸上風力

2018年度より20kW未満と20kW以上の区分を統合しました。現在2020年度までの買取価格を決定しています。
電源 規模 2017年度(参考) 2018年度(参考) 2019年度(参考) 2020年度
陸上風力 全規模 20kW以上:21円+税
20kW未満:55円+税
20円+税 19円+税 18円+税
陸上風力(リプレース) 全規模 18円+税 17円+税 16円+税 16円+税

洋上風力

2019年度までの買取価格を決定しています。また浮体式洋上風力のみ2020年の買取価格を決定しています。
電源 規模 2017年度(参考) 2018年度(参考) 2019年度(参考) 2020年度
着床式洋上風力 全規模 36円+税 36円+税 36円+税
浮体式洋上風力 全規模 36円+税 36円+税 36円+税 36円+税

地熱

地下に蓄えられた地熱エネルギーを、蒸気や熱水などで取り出してタービンを回し発電します。使用した蒸気は水にして還元井で地中深くに戻されます。日本は火山国で、世界第3位の豊富な地熱資源があります。出力が安定しており大規模開発ができ、24時間可動が可能ですが、開発期間が10年と長く費用も高額です。
全区分で2020年度までの買取価格を決定しています。
電源 規模 2017年度(参考) 2018年度(参考) 2019年度(参考) 2020年度
地熱 15,000kW未満 40円+税 40円+税 40円+税 40円+税
地熱 15,000kW以上 26円+税 26円+税 26円+税 26円+税
地熱(全設備更新型リプレース) 15,000kW未満 30円+税 30円+税 30円+税 30円+税
地熱(全設備更新型リプレース) 15,000kW以上 20円+税 20円+税 20円+税 20円+税
地熱(地下設備流用型リプレース) 15,000kW未満 19円+税 19円+税 19円+税 19円+税
地熱(地下設備流用型リプレース) 15,000kW以上 12円+税 12円+税 12円+税 12円+税

中小水力

ダムなどの落差を利用して落下のエネルギーを使って発電します。現在は農業用水路や小さな河川でも発電できる中小規模のタイプが注目されています。安定した供給が見込める「分散型電源」として期待されていますが、コストが高く水利権の調整が必要などデメリットもあります。
2020年度までの買取価格を決定しています。
電源 規模 2017年度(参考) 2018年度(参考) 2019年度(参考) 2020年度
中小水力 200kW未満 34円+税 34円+税 34円+税 34円+税
中小水力 200kW以上1,000kW未満 29円+税 29円+税 29円+税 29円+税
中小水力 1,000kW以上5,000kW未満 27円+税 27円+税 27円+税 27円+税
中小水力 5,000kW以上30,000kW未満 20円+税 20円+税 20円+税 20円+税
中小水力(既設導水路活用型) 200kW未満 25円+税 25円+税 25円+税 25円+税
中小水力(既設導水路活用型) 200kW以上1,000kW未満 21円+税 21円+税 21円+税 21円+税
中小水力(既設導水路活用型) 1,000kW以上5,000kW未満 15円+税 15円+税 15円+税 15円+税
中小水力(既設導水路活用型) 5,000kW以上30,000kW未満 12円+税 12円+税 12円+税 12円+税

バイオマス

動植物などの生物資源(バイオマス)を使って発電します。資源の有効活用・廃棄物の削減に貢献でき、天候に左右されないメリットがありますが、原料の安定供給や収集・運搬・管理コストがかかるデメリットがあります。

一般木材等・バイオマス液体燃料

一般木材等・バイオマス液体燃料は2018年から別に区分されました。また10,000kW以上の一般木材等と全規模のバイオマス液体燃料は2018年から入札制に移行し下期に実施する予定です。10,000kW未満の一般木材等は2018年度の買取価格が決まっています。
電源 規模 2017年度(参考) 2018年度
バイオマス(一般木材等) 10,000kW未満 24円+税 24円+税

その他の区分

2020年度までの買取価格を決定しています。
電源 規模 2017年度(参考) 2018年度(参考) 2019年度(参考) 2020年度
バイオマス(バイオマス由来のメタン発酵ガス化発電) 全規模 39円+税 39円+税 39円+税 39円+税
バイオマス(間伐材等由来の木質バイオマス) 2,000kW未満 40円+税 40円+税 40円+税 40円+税
バイオマス(間伐材等由来の木質バイオマス) 2,000kW以上 32円+税 32円+税 32円+税 32円+税
バイオマス(建築資材廃棄物) 全規模 13円+税 13円+税 13円+税 13円+税
バイオマス(一般廃棄物・その他のバイオマス) 全規模 17円+税 17円+税 17円+税 17円+税

年々低下している太陽光発電の買取価格

太陽光発電の買取価格は年々低下しているため、事業としての旨味がなくなってきていると考えている人も多いですが、そうとばかりは言えないようです。

最も大きなコスト「設置導入費用」は下がり続けている

10kW未満の太陽光発電設備、太陽光パネル・パワーコンディショナー・架台・工事費などのシステム費用は年々下落傾向にあります。
FITを開始した2012年はシステム費用が平均で46.5万円でしたが、2017年には36.4万円と21%下がっています。内訳を見ると、太陽光パネル以外の平均費用が軒並み下がっており、システムそのものの低価格化と工事技術の向上が大きく貢献していることがわかります。

自家用の発電としてのメリット

2018年4月時点では、国産で高品質・低価格と人気のソーラーフロンティアが1kWあたり初期費用20万円を実現しています。
平均的な一般住宅の屋根に設置する6kWで考えても120万円。それをFITと同様10年間利用すると考えると、月額1万円となり、一般の4人世帯が平均使用する電気料金10,867円を下回ります。これ以上技術が進めば自家用電力だけと考えても導入した価値があるといえます。
また最近大きな災害が増え、停電や不安定供給が問題になっています。太陽光発電なら元々自家発電でまかなっているため障害はなくなりますし、専用の蓄電池を設置していれば天気が良くない日の予備電源を確保できます。太陽光発電は「電力を売る」ための設備というより、今や1つの戸別電力供給源として確立しつつあるのです。

太陽光発電の設置と電力売却の流れ

太陽光発電は、設置の検討から電力供給開始までにたくさんの作業や手続きがあります。以下はその一例です。
どちらの場合でもまず最初に、事業計画策定ガイドラインを踏まえて事業計画を立てます。ここでは太陽光発電設備の設置場所を具体的に選定し、土地の形状・造成の必要性・周辺環境を確認し、日照に合わせて積雪や凍結・塩害などの自然条件について事前調査するとともに農地法、森林法、景観条例等法令の適用についても自治体などに確認します。

太陽光発電(50kW未満)の場合

比較的規模の小さな「50kW未満」の場合は、計画から供給開始までの手順はあまり複雑ではありません。

見積もりを取り計画を具体的にする

代理店などで具体的な条件を設定し見積もりを取ります。想定する太陽光発電設備の出力を仮決定し、設備を選定して基本設計を作ります。計画時よりさらに詳細な現地調査を実施して設計を見直し、そう費用を算出し資金調達を始めます。

電力会社・経済産業省に申請する

次に電力会社へ特定契約と接続契約を申し込みます。接続契約等を締結し工事費負担金額が確定したら、電子申請により経済産業省に事業計画認定を申請します。電力会社との特定契約を締結して経産省に認定され、工事費負担金を支払えば設置工事に入ります。

設置工事から電力供給開始まで

設置工事にあたって必要な資材や機器を発注し、工事を請け負う業者を選定し工事に入ります。完成・試運転の後電力供給を開始します。
設置工事は初期費用の中でも大きな割合を占め、同時に確かな工事でなければ長期間の稼働に耐えられません。信頼できる工事業者を探すときはヌリカエWebサイトが便利です。簡単な条件を入力すれば、信頼できる業者が複数社工事を見積もります。

太陽光発電(50kW以上)の場合

50kW以上の場合は年間360時間を上限とする無補償での出力制御が必要です。そのための機器の設置が義務付けられます。

立地と設備・電力系統の状況を簡易検討する

事業計画策定の後、国に対して立地と設備について詳細を検討し、電力会社に連携希望地点付近の系統状況について簡易検討を依頼します。この簡易相談は無料で1カ月ほどかかります

電力会社に接続検討を依頼し、特定契約を申し込む

次に電力会社に対して、電圧や周波数、系統に与える影響など技術的な観点から接続の可否と必要な概算費用を算定を依頼します。かかる費用は21.6万円で、同時に特定契約と接続契約の申し込みもできます。3カ月以内に来る回答を踏まえて事業に対する意思表明書を提出します。

経済産業省に事業計画認定を受ける

事業を始める具体的なメドが立ったら、経産省に事業計画認定を申請し、認定を受けます。この頃に電力会社から工事負担金が算出されますからそれを元に接続契約等締結し、工事費負担金を支払い特定契約を締結します。この後資金調達を始めることになります。

設備の発注から電力供給開始まで

資金が調達できたら設備に必要な資材や機器を発注し、設備工事の請負業者を選定し着工します。設備の完成後試運転を経て電力供給を開始します。

自然エネルギーである太陽光発電から得られる利益

東日本大震災の後、社会が大きく自然エネルギーに注目するようになり、その代表である太陽光発電がやっと1つの電力源として確立しつつあります。太陽光発電は「電力会社の供給する大規模発電」というより「各戸別の電力をそれぞれにまかなう電力源」に向いているといえます。
それぞれが供給源を持てば、停電や電力調整を気にすることなく使うことができます。その上、蓄電池を使えば緊急時に利用でき、災害対策にも大きな効果を発揮しますし、その設置費用は年々お得になっています。

太陽光発電工事の一括見積が出来るヌリカエ

まだまだ太陽光発電システムやその工事技術は進歩し続けていますが、それも確かに工事してくれる業者があってのことです。しかし、工事をただ1社だけに任せることにはリスクがあります。より公平に、工事内容にも注意してするには複数の業者に見積もってもらうのが賢明です。
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