古民家リノベーションを行うと、日本家屋の良い風情を残しながら、機能面でも使いやすい家にすることができます。
ただ、建物の状態によっては建て替えよりも費用がかかる場合もあるため、費用相場を把握しておくことが大切です。
本記事では、古民家リノベーションの魅力や基礎知識から、費用相場、利用できる補助金、注意点について解説します。
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古民家リノベーションとは?
古民家リノベーションとは、古い日本家屋の伝統的な造りや雰囲気を生かしながら、機能や設備、デザインの面で現代に合った暮らしやすい家に改修することです。古民家は一般的に築50年を経過した建物をいいますが、参考までに一般社団法人「全国古民家再生協会」では以下のように定義されています。
昭和25年の建築基準法の制定時に既に建てられていた「伝統的建造物の住宅」
古民家の特徴は、豊富な種類の木材が最適な形で使われていること。例えば、梁(はり)や柱などの構造部分には丈夫なマツを、台所には水に強いクリやケヤキを、壁や床には木目が美しいスギを、といった具合です。
また、リノベーションなどによる古民家再生の意義としては、大きく以下の3点が挙げられます。
- 古材(こざい)の再利用による環境問題への貢献
- 日本の伝統技術・家屋の継承
- 人口流入による地域の活性化
昨今の時代の流れとしては、木造の住宅はどんどん減っており鉄骨や鉄筋コンクリートの一戸建ても増えつつあります。ですが、そんな時代だからこそ古民家リノベーションには多くの意義があるのです。
古民家リノベーションのおしゃれな実例3選!
2階をなくしてロフト化。リビングを吹き抜けに
昔ながらの古民家を内装・外装を含むフルリノベーションによって再生させた実例です。
2階に二部屋あった和室の片方をなくして吹き抜けに。開放感抜群のリビングになりました。
2階の和室のもう片方はフローリングに。味わい深い天井はあえてそのままの状態を保っています。
↑ロフトから見たリビング
施工費 | 約1,280万円 |
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工期 | 2か月半 |
古民家の良さも残る和モダンバリアフリー住宅
築100年を越える古民家をリノベーションによって再生、ならびにバリアフリー住宅化させた実例です。
高齢である施主の希望により土間の段差を軽減。
空間を広くとり、家の中の移動が円滑となりました。
施工費 | 約618万円 |
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工期 | 約1か月半 |
立派な梁(はり)をそのまま活かした古民家リノベーション
伝統的な古民家における梁をそのまま活かしたリノベーションの実例です
元は天井裏に隠れていた梁をあえてむき出しに。和洋が入り混じった独特の空間です。
廊下がフローリングになり掃除のしやすさと導線が向上。元は部屋の行き来のたびに土間に降りる必要がありました。
玄関はあえて元の状態を維持。趣深い雰囲気です。
施工費 | 約1,680万円 |
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工期 | 約4か月半 |
古民家リノベーションの3つの魅力
ここからは古民家リノベーションの3つの魅力をお伝えします。
- 古民家特有の趣・雰囲気がある
- 住み心地の良い家にできる
- 税金面・補助金面で費用を抑えられる
それぞれ解説します。
古民家特有の趣・雰囲気がある
古民家リノベーションの一番の魅力は、古い建物に特有の、空間や色味や質感を活かせることです。伝統的な日本の古民家は、部屋数が多く天井も高い傾向にあるため、柱や梁など、木材本来の魅力を活かした間取りにすることができます。
また、日本人が安心感を感じることの多いヒノキやケヤキなどの木材が使用されていることもポイントです。
一般的な住宅にはトレンドがありますが、古民家の場合は、長い時間をかけて生まれた雰囲気や趣きがあるため、流行に左右されることがなく、新築では生み出すことのできない価値もあります。
古民家リノベーションによって、新築にはない特有の趣きを感じながら、現代的な設備や機能のある快適な暮らしができるでしょう。
また、リノベーションによって古民家の寿命を伸ばすことで、先人の技術や文化を後世に伝えられることも意義のあるポイントです。
住み心地の良い家にできる
古民家は古くて雰囲気や趣がいいと言っても、耐震面の不安や、寒い・暗い・じめじめする、といったネガティブな印象もあります。
そのため、実際に住むためには、機能や設備、間取りなど、現代的な快適さも大切です。
古民家リノベーションでは、耐震性や断熱性の補強を行ったり、現代の暮らしに合わせた間取りに改修したりすることで、住みやすさを向上させることができます。リノベーションを行う範囲は人によりますが、キッチンや浴室、トイレなどの水回りを行うケースが多くなっています。
必要な工事箇所については、業者と相談して決めると良いでしょう。
また、古民家が二階建ての場合、階段が急になっていることもあるため、老後も長く住むことを検討している場合には、段差を無くしたり、階段に手すりをつけたりするバリアフリーリフォームもおすすめです。
税金面・補助金面で費用を抑えられる
古民家リノベーションは税制面でもメリットがあります。
建物の固定資産税は、原則として築年数が古くなるほど下がります。
そのため、築年数が経過している古民家は、固定資産税が新築に比べて安くなります。
また、古民家リノベーションを行う際には、住んでいる地域にもよりますが、自治体から補助金を受けて工事費用を抑えられる場合があるため、市区町村のホームページなどを確認すると良いでしょう。
具体的な補助金の内容については後述します。
古民家リノベーションの3つの注意点
古民家リノベーションの際には、知っておきたい注意点が3つあります。
- ホームインスペクション(住宅診断)が重要
- 技術のある大工職人さんが必要
- リノベーションには時間がかかる
それぞれ解説します。
ホームインスペクション(住宅診断)が重要
古民家は築年数が非常に古いため、リノベーションの際には、劣化状況を精査するホームインスペクションが大切です。 ホームインスペクション(住宅診断)とは、住宅に精通したホームインスペクター(住宅診断士)が、第三者の立場と専門的な視点で住宅の状態を調査し、改修や費用についてアドバイスをする専門業務のことです。古民家の場合は築年数が古いことから、シロアリによる腐食や、基礎部分の劣化などが多くなっています。
安心・安全な古民家にリノベーションするためにも、積極的にホームインスペクション(住宅診断)を受けるようにしましょう。
技術のある大工職人さんが必要
古民家リノベーションの場合、新築住宅とは異なり、昔の建築法や部材を見極める知識や技術を持った大工職人さんが必要です。
工場でカットされた均質な木材ではなく、古民家の場合には、古さや個性のある木材などが用いられているため、建材の一本一本をその場で緻密に調査して活かす「手刻み」と呼ばれる工法も用いられます。
古民家リノベーションを検討する際には、技術と信頼のある施工会社に依頼する必要がある点に注意しましょう。古民家リノベーションは時間がかかる
古民家の場合、建築当時の図面が残っていないこともあります。
そのため、リノベーションを行う前の建物の下見や調査では、よりいっそう時間をかけて丁寧に調査することがあります。
古民家リノベーションは、家の構造や使われている部材などが昔のものであることから、部材が流通・製造されていないことも多いため、一般的なリノベーションよりも時間がかかります。
古民家リノベーションを行う場合は、特に、スケジュールに余裕を持ってプランニングをすることが重要です。古民家リノベーションの費用相場は?
古民家リノベーションの費用については、施工内容や建物の状態によって大きく変動します。
設備の入れ替えと、内装デザインをきれいにする程度であれば、予算は500万円ほどです。 一方、自分たちの好みに合わせてフルリノベーションを行う場合は、1000万円から2000万円ほどの予算を組む人が多くなっています。古民家リノベーションの際には、どこまで機能やデザインを重視するかなど、目的をはっきりさせた上で、予算の範囲内に収まるように費用を検討しましょう。
なお、「ヌリカエ」をご利用くださったお客様の中には、相続した築50年の古民家を380万円でフルリフォームできた事例があります。LDKはダイニングと和室の間仕切りを取り、広くて明るいLDKに再生されたというご感想です。
格安フルリフォーム・リノベーションについてはこちらの記事もご覧ください。
古民家リノベーションで使える5つの補助金
古民家リノベーションでは、国や自治体の補助金や減税制度を利用することができます。
受け取れる可能性のある補助金は主に次の5種類です。
- 耐震補強の補助金
- 省エネにする補助金
- バリアフリーにする補助金
- 古民家解体費用の補助金
- 自治体による補助金
一つずつ解説します。
なお、いずれの補助金制度も、管轄する省庁や自治体ごとに金額や要件が異なります。
詳しくは各省庁の補助金制度のホームページや、古民家の所在する自治体の窓口・ホームページで確認しましょう。
リフォームで使える補助金各種については、こちらの記事もご覧ください。
>>【2020年】リフォームで使える8つの補助金と一番利用されている制度を紹介
耐震補強の補助金
耐震診断や耐震補強工事も補助金の対象となります。前述のように、自治体ごとに補助金制度は異なりますが、基本的には受け取れる上限金額は、数十万円程度で、高額な場合は100万円を超えることもあります。
適用の基準については、1981年5月31日以前に建築建設確認を受けた「旧耐震基準」の時期の建物は補助金の対象になりやすいでしょう。
古民家は、この条件に合致するのでおおむね補助金の対象です。
耐震リフォームの工事の内容と費用相場は以下を参考にしてください。
耐震診断 | 12万円~25万円 |
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耐震補強・改修工事 | 25万円~200万円 |
壁の補強(横揺れを防ぐ筋交いの工事) | 25万円 |
屋根の軽量化と補強 | 100万円以上 |
耐震パネルの取り付け | 30万円~60万円 |
耐震金物の設置(構造部の接合部分に設置) | 約40万円 |
>>耐震リフォームの費用相場は?補助金制度や事例についても解説
省エネにする補助金
断熱工事など、エコ・省エネを目的として住宅性能を向上させるリフォームも、補助金・助成金の対象です。具体的な工事内容は、壁や窓の断熱リフォームや、高効率給湯器の設置、節水効果の高いトイレを導入、太陽光発電システムの導入などが対象となります。
以下は、対象となる省エネ工事と相場費用の例です。
窓の断熱化(内窓やペアガラスなど) | 5万円~60万円 |
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外壁、屋根の断熱化 | 80万円~350万円 |
高断熱浴槽に交換(浴室リフォーム) | 55万円~90万円 |
高効率給湯器の設置(エコキュートなど) | 25万円~80万円 |
節水型トイレに交換 | 10万円~40万円 |
なお、経済産業省の住宅リノベーション補助制度「既存住宅における断熱リフォーム支援事業」や、エコ設備に補助金の出る「こどもみらい住宅支援事業」(国土交通省)は2022年も引き続き実施されます。
バリアフリーにする補助金
介護やバリアフリーのためのリフォームは、需要が多いことから、補助金制度の中でも一番多く利用されています。段差の解消や手すりの取り付け、開き戸を引き戸にするなどの工事が多く、代表的な工事と費用の相場は以下の通りです。
手すりの設置 | 3万円~10万円 |
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段差をなくす | 2,000円~10万円 |
扉を引き戸に変更 | 10万円~20万円前後 |
トイレを和式から洋式にする | 20万円~40万円 |
温水洗浄便座を設置する | 7万円~ |
要支援・要介護の認定を受けている場合に、自宅で安全・快適に暮らすために必要な工事に支給され、補助金の限度額は20万円となっています。
>>介護リフォームの工事内容と費用相場は?使える補助金制度も解説
古民家解体費用の補助金
古民家解体費用についても自治体によっては補助金制度を設けています。
解体費用の補助金のため、リノベーションに関する補助金ではありませんが、もし古民家解体を検討される場合は所在の自治体に問い合わせてみましょう。
自治体による補助金
自治体によっては、上述の工事以外でも補助金の対象となることがあります。地域活性化のため、その自治体が指定している業者を利用するなどの条件が多くなっています。
先述のように、自治体によって補助金制度の対象となる工事の内容や条件が異なるので、まずは自治体のHPをチェックしましょう。
古民家リノベーションの業者選びのポイントは?
古民家リノベーションをどのような基準で選べば良いのかについて解説します。
古民家鑑定士がいる業者に依頼
古民家鑑定士とは、築50年以上の日本の住宅で行われていた伝統的な工法を理解し、古民家の鑑定・評価を適切に行うための公的資格です。古民家の調査や保存だけでなく古民家リノベーションを検討しているお客様に、専門的な知識と技術を活かした適切なアドバイスを行なってくれます。
建築士がいる業者に依頼
国家資格の建築士には一級建築士と二級建築士があり、一級建築士には設計する建物に制限がありません。比較的な小規模な建物だけでなく、国を代表するような大規模建物の設計も可能です。そのため、「意匠、構造、設備」など、建築物周りにに関して高度な知識をもっています。古民家は今とは違うつくりであるものも多く、大規模なリノベーションが必要となるケースも多いため、専門性のある建築士に依頼するのがおすすめです。
一級建築士は取得が難しい資格であるため、一級建築士が在籍している業者はホームページや広告などに分かりやすく明記されていることが多いです。
古民家リノベーションの施工実績を確認する
古民家には希少価値の高い古い木材や、釘や金具を使わない伝統工法が用いられているケースがあります。ですので古民家リノベーションは、一般的なその他のリノベーションとは異なる点が多いです。そのため古民家リノベーションの実績がある会社を選ぶと良いでしょう。会社のホームページや業者と相談する中で、どんな事例があるのか・どのような要望を聞いてリフォームを行ったかまで確認するようにしましょう。
古民家リノベションの実績が豊富な業者に依頼するメリットは他にもあります。各種補助金制度に詳しいことも多く、費用の負担を軽減できることも。さらに、古民家では特に悩ましい耐震・断熱対策を上手に取り入れたリノベーションプランを提案してくれるでしょう。
アフターフォロー体制を確認する
アフターフォローが全くない業者に依頼した場合、もしもの際に困ってしまいます。アフターフォローや補償内容については事前に確認するようにしましょう。リノベーション後に定期的にメンテナンスを行っていたり、保証期間を設けていることもあります。
また地元密着型の業者に依頼するのも1つの手です。定期的なメンテナンスの要望に応えてもらいやすいだけでなく、その土地の気候や環境に合ったリノベーションの提案を期待できるでしょう。
古民家リノベーションは補助金や制度に精通した会社を選ぼう
古民家リノベーションの場合、規模にもよりますが、リノベーションには多額の費用がかかります。
しかし本記事でご紹介した通り、古民家リノベーションには様々な補助金や減税制度があります。
自治体によってもそれぞれ補助金が用意されていることもあるため、お住まいの地域のHPを確認するようにしましょう。
また、古民家リノベーションには、技術のある職人さんも必要です。
古民家リノベーションに関して、業者選びにお悩みの方はぜひ「ヌリカエ」もご活用ください。全国2,000社以上の中からあなたの地域に近く、条件の合う施工会社をご提案させていただきます。ネットでの見積もりも受け付けていますので、ぜひお気軽にご相談ください。