長年住み慣れた住宅であっても加齢による筋力低下などから、高齢者の方にとっては徐々に自宅が暮らしにくいと感じることも増えていきます。
高齢者の方が安全に心地よく暮らしていくためにも、早めに住宅をバリアフリーリフォームする世帯も多くあります。この記事では、快適なバリアフリーの住まいにリフォームするための費用や利用できる補助金などを解説します。
【関連記事】
>>リフォームの費用相場
あなたのお家
リフォームするといくら?
バリアフリーリフォームをやるべき理由
なぜ65歳以上の高齢者が暮らす住宅ではバリアフリーリフォームをやるべきなのでしょうか?
それは、高齢者の事故やケガは約8割が住宅内で起きるものだからです。以下のグラフは独立行政法人 国民生活センターが平成25年に調査した65歳以上の高齢者の事故発生場所の割合です。
出典:独立行政法人 国民生活センター/医療機関ネットワーク事業における高齢者の家庭内事故について
※上記のグラフは出典先のデータをもとにヌリカエ編集部が作成したグラフです
全世代においても住宅内での事故は多いですが、特に65歳以上の高齢者の住宅内での事故・ケガは全体の77.1%で20歳~64歳の人に比べて+6%も高いのです。また、事故が起きた際の重症化率も65歳以上が6.2%、65歳未満が1.5%なので65歳以上になると事故の重症化率が非常に高まります。
自宅内でのケガには以下のような例があります。
- トイレに行こうとした際にベッドから転落し、頭部を打撲して骨折し、入院した
- 縁側から庭に降りる際に段差で転倒し、大腿部を打撲して骨折した
- 階段を2段踏み外して転落し、かかとを骨折した
- 階段の1段目から足を踏み外して転落し、尻餅をつく。太ももを骨折して入院した
これまでと同じように過ごしていても、自身の筋力や注意力低下によって思わぬところで事故が発生してしまうことが多くあります。
そんな不慮の事故を防ぐために、高齢者が暮らす住宅では段差をなくしたり、滑りにくい床材に変更したり、手すりを設置するなどのバリアフリーリフォームを実施する必要があるのです。
バリアフリーリフォームの工事内容と費用
主なバリアフリーリフォームの工事内容は、主に以下の9つが挙げられます。
以下でそれぞれの費用の目安をご説明します。
手すりの取り付け
手すりを設置することで歩行の補助や転倒防止、立ち座り動作の補助など生活の助けになる場面は多いでしょう。
箇所に応じてI型、L型の手すり設置をご検討ください。一例として、歩行補助が必要な廊下にはI型の手すり、立ち座り動作の補助が必要なトイレにはL型手すりの設置がおすすめです。
手すりを設置する費用の目安は以下の通りです。
リフォーム内容 | 費用の目安 |
---|---|
手すり設置(下地処理なし) | 7,000~8,000円/㎡ |
手すり設置(下地処理込み) | 1~3万円/㎡ |
置き型の手すりをレンタル | 3,000~10,000円/月 |
段差の解消
部屋の出入り口や玄関などにおいては、転倒防止のため段差の解消も検討する必要があります。
段差を解消する主なリフォーム方法と費用は以下の通りです。
リフォーム内容 | 費用の目安 |
---|---|
居室の出入り口の敷居を取り替え | 2~3万円/箇所 |
廊下の床をかさ上げする | 20~30万円 |
引き戸への変更
引き戸へ変更することで車いすでの移動がスムーズになります。また、介護用の製品であれば力をかけずに開閉できるように設計されているものも多いです。
引き戸への交換を検討したい箇所と、交換費用の目安は以下の通りです。
リフォーム内容 | 費用の目安 |
---|---|
玄関ドアを引き戸に交換 | 50~80万円 |
居室ドアを引き戸に交換 | 5~20万円 |
浴室ドアを引き戸に交換 | 8~16万円 |
玄関スロープの設置
ご家族が車いすを使用されている場合、玄関アプローチはスロープであることが望ましいです。
設置するスロープの長さは介助ありであれば段差の6~7倍、介助無しであれば段差の12倍の長さが必要とされています。例えば、20cmの段差を解消するためには120~240cmのスロープが必要です。十分なスペースを確保できない場合は折り返すという手もあります。
玄関スロープを設置する費用の目安は以下の通りです。
リフォーム内容 | 費用の目安 |
---|---|
アルミ製簡易スロープを設置 | 1~2万円 |
コンクリート製スロープを設置 | 40~50万円 |
ふちの低い浴槽に交換
いわゆるタイルのお風呂と言われるような在来工法のお風呂は、ふちが高いためバランスを崩して転倒するリスクが高いです。ユニットバスを床に埋め込むように設置することで、お風呂のふちをまたぎやすくなり出入りが楽になります。
また、ベンチカウンターを設置して出入りの際に座れるようにするのも効果的です。
リフォーム内容 | 費用の目安 |
---|---|
在来工法からユニットバスに交換 | 50~100万円 |
浴槽を交換 | 20~50万円 |
階段昇降機の設置
一戸建てにお住まいの場合は、階段昇降機(ステップリフト)の設置も検討しましょう。バリアフリーリフォームの中でも特に高額となるため、ご利用にはレンタルやリースが便利です。福祉機器として介護保険を適用してレンタルすることもできます。
リフォーム内容 | 費用の目安 |
---|---|
階段昇降機をレンタル |
|
階段昇降機をリフォーム | 50~150万円 |
トイレリフトを取り付け
トイレでの立ち座りの際に腰やひざへの負担を軽減するために、トイレリフトへの変更もおすすめです。アームレスト付きの便座が電動で昇降し立ち座り動作を助けれくれます。
階段昇降機と同じく、福祉機器として介護保険を適用してレンタルすることも可能です。
リフォーム内容 | 費用の目安 |
---|---|
トイレリフト取付け | 20~25万円 |
歩行便座 | 5,000~20,000円 |
通路幅を拡張
車いすでの生活が中心となる場合には、通路幅を広げることも検討しましょう。車いすでスムーズに往来するには、おおむね75cm以上の幅を確保することが望ましいとされています。
リフォーム内容 | 費用の目安 |
---|---|
浴室の入り口を拡張 | 30~50万円 |
廊下の通路幅を拡張 | 30~80万円 |
滑りにくい床材に変更
滑りにくいビニール製の床材や、やわらかいコルク系の床材に張り替えることで転倒のリスクを軽減することができます。マンションでは遮音フローリングにするのもおすすめです。
リフォーム内容 | 費用の目安 |
---|---|
ビニールのクッションフロアに張り替え | 2,000~4,000円/㎡ |
コルク床に張り替え | 8,000~15,000円/㎡ |
遮音フローリングに張り替え | 11,000~13,000円/㎡ |
バリアフリーリフォームの補助金制度
バリアフリーリフォームを行う際には、補助金や減税などの支援制度が適用される場合があります。
条件を満たしていれば、支援を受けてバリアフリー化ができるので、対象となるかをチェックしましょう。
ここでは、以下の2つの制度と補助金についてご紹介します。
- 介護保険の住宅改修支援制度
- 自治体の補助金
それぞれ解説します。
介護保険の「居宅介護住宅改修費」(介護予防住宅改修費)
要介護もしくは要支援の認定を受けている場合、バリアフリーリフォームにかかった費用に対して、介護保険の補助金を上限18万円まで受け取ることができます。 対象となる工事は、段差の解消や手すりの取り付けなど、自宅で安全・快適に暮らすために必要な工事です。補助金の対象となる具体的な工事は次の通りです。
- 手すりの設置
- 床の段差の解消・床材の変更
- 滑りの防止や移動の円滑化のための床材変更
- ドアの付け替え
- 便器の取り替え
- その他1~5に付帯して必要となる住宅改修(壁の補強、スロープ設置にともなう転落防止柵の設置など)
工事や適用要件の詳細については厚生労働省が配布している「住宅改修の概要」(PDF)をご確認ください。
なお、補助金を活用したバリアフリーリフォームを検討する際には、ケアマネージャーなどに相談の上、必要と判断された工事のみが対象となります。
申請には、改修目的を明記した申請書や書類の提出が必要となる点に注意しましょう。
工事完了後は、工事の領収書、工事費内訳書、完成後の状態を確認できる書類も必要となります。
自治体の補助金
自治体によっては、バリアフリーリフォームを行う際に補助金が支給されます。 補助金の金額や、受け取るための条件、申し込み方法などは自治体によって異なるため、自分の住んでいる地域に補助金制度があるかを問い合わせてみましょう。補助金の予算に達してしまうと、制度が早めに終了となる場合もあるので、ホームページなどでの早めの確認がおすすめです。
なお、介護保険の補助金との併用も、できる場合とできない場合とがあるため、併せて確認しましょう。
バリアフリーリフォームの減税制度
バリアフリーリフォームを行うことで、所得税や固定資産税が減税となる場合があります。
対象となる工事を行った年度に確定申告を行うと、その年の所得税に、住宅特定改修特別税額控除が適用され、還付金を受け取ることができます。
ここでご紹介するのは以下の減税制度です。
- 投資型減税
- ローン型減税
- 固定資産税の減額
なお、令和4年度の税制改正で、「投資型減税」と「ローン型減税」の適用期限が令和5年12月31日まで延長されました。
バリアフリー改修工事についての詳細な内容は、国税庁のサイトを参考にしてください。
参考:国税庁「バリアフリー改修工事をした場合(住宅特定改修特別税額控除)」
投資型減税
対象となるバリアフリーリフォームを実施した場合に、工事費の10%(上限20万円)が1年間所得税から控除されます。対象となる以下のバリアフリーリフォームを行った年度に、確定申告をすると控除を受けられます。
- 手すりの取り付け
- 段差の解消
- 床または通路面の材料の変更
- 引き戸などへの扉の取り替え
- 洋式便器への取り替え
減税の対象となるバリアフリー工事は、以下に解説する「ローン型減税」と「固定資産税の減額」も同様です。
ローン型減税
5年以上の住宅ローンを借り入れて、一定のバリアフリーリフォームを行った場合に利用できる減税制度です。令和4年度税制改正により、2022年からは、リフォームローン・住宅ローンの年末時点での残高の0.7%が所得税から控除されます。
控除期間はリフォームが完了して、居住を開始した年から5年間です。対象となるバリアフリーリフォームの内容は、前述の投資型減税と同様です。
参考:令和4年度税制改正の大綱
固定資産税の減税
一定のバリアフリーリフォームを行った場合、自治体(市区町村)に申請をすると、工事完了年の翌年度分の住宅にかかる固定資産税が減額されます。なお現時点では、令和6年3月31日までに施工した工事が対象となっており、前述の「投資型減税」と「ローン型減税」との併用が可能です。
参考:国土交通省「バリアフリー改修に関する特例措置」
バリアフリーリフォームの施工事例
バリアフリーリフォームの施工事例を3つご紹介します。
車いすでの生活導線が良くなった事例
車いすを使用される方がいる住宅でのバリアフリーリフォーム事例です。水回りと通路を中心に全面リフォームを行い、費用は約540万円となりました。
収納をなくし、広く出入りのしやすい玄関に。車いすでの通行に差し支えない範囲で段差を残し、ホコリだけは防ぎます。
ダイニングに手洗器とカウンターがあるため、食事のために家の中を移動する必要がありません。
洗面台にはTOTOの「座ってらくらくシリーズ」を採用。下が空いているため車いすに座ったままで使用することができます。
浴室やトイレのドアは開き戸から引き戸へと変更。スペースも広めに確保されています。
▼ リフォームの概要
リフォーム箇所 | 玄関、LDK、浴室、トイレ、洗面台、和室、通路 |
---|---|
工期 | 約1か月半 |
費用 | 約540万円 |
外出・帰宅がスムーズになった事例
マンションでのバリアフリーリフォーム事例です。通路幅の確保と、白を基調とした内装により広々とした印象に。かかった費用は約550万円です。
車いすで通行できる広々としたシューズインクローゼット。ゆったりと出かける支度をすることができます。
独立キッチンからセミオープンキッチンに変更。壁をなくし折りたためるカウンターとしたことで、通路幅が広くなりました。
▼ リフォームの概要
リフォーム箇所 | 玄関、クローゼット、LDK、浴室、洗面室、トイレ、寝室 |
---|---|
工期 | 約1か月半 |
費用 | 約550万円 |
古民家でのバリアフリーリフォームの事例
車いすでの生活を前提に、外装を含む家全体のバリアフリーリフォームを行った事例です。築100年超ということもありリフォーム箇所は多く、費用は2820万円となりました。
木目調の落ち着きのあるリビング。通常の引き戸よりも開口を広くとれる、3枚連動引き戸を採用している点がポイントです。
浴室はTOTOの「サザナ」。広めの1.25坪サイズを採用しています。ベンチカウンターは体を洗うときはもちろん、浴槽へ出入りする際の補助にもなります。
リビングから段差なしで直接出られるウッドデッキ。介助がなくても気軽に外の空気を吸うことができます。
▼ リフォームの概要
リフォーム箇所 | LDK、浴室、トイレ、洗面台、玄関、外装 |
---|---|
工期 | 180日 |
費用 | 約2820万円 |
まとめ
規模にもよりますが、バリアフリーリフォームには多額の費用がかかります。
一方で、本記事でご紹介した通り、バリアフリーリフォームには、国や自治体が、様々な補助金や減税制度を用意しています。
自治体の制度はそれぞれ異なるため、まずはお住まいの地域のHPを確認しましょう。
なお、リフォームの業者選びでお悩みの方はぜひ「ヌリカエ」もご活用ください。全国2,000社以上の中からあなたの地域に近く、条件の揃った業者をご提案させていただきます。
ネットでの見積もりも受け付けていますので、ぜひお気軽にご相談ください。