トタン屋根の塗装手順や必要な道具を、写真つきでくわしく解説。塗装で直る症状か?も判断します。
年月が経って、色あせやサビが目立ってきたトタン屋根。
この古くなったトタン屋根は、どのように塗装すればよいのでしょうか?
本記事では、以下のような事柄について解説していきます。
- トタン屋根を塗装すべきサイン
- トタン屋根の塗装手順
- トタン屋根の塗装に必要な塗料や用具
さっそく始めていきましょう。
「トタン屋根」についてイチから知りたい方は、下記の記事もご覧ください。
>>「トタン屋根とは? 古くなったトタン屋根、いつ修理すべき?」
- 塗装が必要なサインは、トタン屋根の「色あせ」「錆び」「塗膜の剥がれ」など
- 塗装後に長持ちさせるには、塗料を塗る以外に「ケレン」「下塗り」などの作業も重要
- 下塗り材は、必ず「プライマー」(さび止め材)を使用すること
監修者:外装劣化診断士 小林 成光
600件以上の現地調査を実施する過程で得た専門性を生かし、日本発のネット見積もりシステムでビジネスモデル特許を取得。ヌリカエにて、外装工事の専門家として、顧客・加盟企業のサポート・コラムの監修に従事。
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トタン屋根に塗装が必要なサイン
トタン屋根に起こっている異常が、塗装で直る症状なのか・そうではないかをまず確認しましょう。
塗装で対応可能な劣化症状
もしあなたのご自宅トタン屋根に以下の症状がひとつでも出ていたら、塗装によるメンテナンスをおすすめします。
- 色あせ、変色
- サビの発生
- チョーキング(粉ふき)
- 塗装の剥がれ
- カビ・コケ・藻の発生
- 釘の浮き
- 継ぎ目の外れ・隙間の発生
これらの症状ならば、塗装やその前の下地処理でしっかり直すことができます。
もしこれらの症状をそのままにしてしまうと、穴あきや腐食などのより大きな症状につながりかねません。
そうなると塗装より高額な費用がかかってしまうため、早めに対処をするのがオススメです。
塗装では直らない劣化症状
トタン屋根の以下の症状は、塗装では直りません。
かわりに「葺き替え」や「カバー工法(重ね葺き)」といった工事が必要です。
- トタンの穴あき
- 屋根下地の木材の傷み
- 屋根から雨漏りが発生
葺き替えやカバー工法については、後の「塗装では直らない場合に行う工事と費用相場」で解説しています。
トタン屋根の塗装手順
トタン屋根の塗装は、塗料を塗る以外にも屋根の研磨・洗浄・周辺養生・下塗りなどの作業が必要です。
また、作業時間や塗料の乾燥時間を考えると、数日以上かかるでしょう。
当編集部が初心者の方におすすめする、トタン屋根塗装の作業の順番やスケジュールは以下のとおりです。
- 表面をワイヤーブラシで磨く
- 隙間をコーキングする(ここまでが1日目)
- モップで全体を拭く
- 周囲を養生する
- 塗料をよく混ぜる
- 下塗り(ここまでが2日目)
- 中塗り(ここまでが3日目)
- 上塗り(ここまでが4日目)
①塗装前の状態
塗膜が劣化して下地の白い部分が見えていたり、キズがついたりしています。
また、山の部分などに隙間も見受けられます。メンテナンスが必要な状態です。
②表面をワイヤーブラシで磨く
まずは、トタン屋根全体をワイヤーブラシやヘラでこすり、錆びや汚れ、剥がれかけた古い塗膜などを取り除きます(「ケレン作業」といいます)。
ワイヤーブラシには、上図のような柄付きのものもありますので、あると作業が早く進むでしょう。
この手順で使う道具
チャネルブラシ、ワイヤーブラシ、スクレーパー(ヘラ) 等
「ケレン作業」について詳しく知りたい方は、下記の記事もご覧ください。
>>「ケレンとは?塗装に欠かせない理由や費用相場について解説」
③トタンの隙間をコーキングする
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トタン板にできている隙間を、コーキング材で埋めます。
写真では、塗料と同じ青色のコーキングを使用しています。
この手順で使う道具
トタン用防水充填材(コーキング)、コーキングガン、継ぎ柄
「コーキングのコツ」について詳しく知りたい方は、下記の記事もご覧ください。
>>「コーキングを上手に仕上げるコツとは?5つの注意点と費用相場」
ここまでが第1日目の終了目安です。
次以降の工程を同日に行う場合は、コーキング材を指定時間に従って乾燥させてから行いましょう。
④屋根をきれいにする
塗料を塗る前に、モップを使って屋根全体の汚れをきれいに拭きます。
この手順で使う道具
モップ、バケツ、中性洗剤 等
⑤周囲を養生する
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屋根の塗料が付くと困るところ(外壁、軒先、室外機、窓サッシ、照明など)をマスキングテープ等で覆い、汚れないようにします。
この手順で使う道具
マスキングテープ、テープ付き養生シート(マスカー)、ビニールシート 等
⑥下塗りをする
塗料に応じた下塗り材で、トタン屋根全体を塗ります。
屋根から降りる地点が最後になるように、順番を考えて塗ります。
この手順で使う道具
下塗り材(シーラー、プライマー等)、塗装ローラー、ロング多用途ハケ など
2日目はここまでを終えるのが目安です。もし同じ日に作業を続ける場合は、下塗り材の乾燥時間が過ぎてから次の工程に移ります。
⑦塗料をよく混ぜる
塗料の缶をあける前に、逆さにして振ってよくかき混ぜます。
フタを開けた後も、使う前に刷毛等で下からよく混ぜて濃さを均一にします。
⑧中塗り
いよいよ塗装作業です。
まずは、屋根の端から塗りはじめます。
続いて、トタンの出っ張っている部分である瓦棒(かわらぼう)を、刷毛をつかって1本ずつ塗ります。
端や瓦棒を塗り終わったら、広い平面をローラーを使って塗ります。
下塗りのときと同様に、屋根から降りる場所が最後になるように順番を考えて塗りましょう。
この手順で使う道具
トタン屋根用塗料、刷毛、塗装ローラー、ロング多用途ハケ など
3日目はこれで終了です。同じ日に上塗りを行う場合は、塗料の乾燥時間が過ぎてから次に移ります。
⑧上塗り
中塗りの乾燥後、同様に2回目(上塗り)の塗装を行います。
上塗りと中塗りは同じ塗料を使います。
⑨塗装後の状態
屋根の美観と耐久性が回復しました。
DIYでトタン屋根を塗装した場合、3~6年おきに塗装するのがよいとされています。
トタン屋根塗装に必要な塗料・用具
トタン屋根の塗装に向く塗料や、作業に必要な用具をリストアップしました。
塗料
トタン屋根用の塗料には、遮熱効果のある「サーモアイSi」と、同製品用の下塗り材「サーモアイプライマー」がオススメです。
また、仕上がりの耐久性が劣る代わりに、下地処理や下塗りが不要な初心者向け塗料も販売されています。
表内の商品名・画像を押下すると、ネットショップの購入ページにジャンプできます。
塗料名 | 価格 | 説明 |
---|---|---|
サーモアイSi |
14,630円(約100㎡分) | カラートタン屋根に向く屋根用中塗り・上塗り塗料。遮熱効果により、夏場の表面温度や内部温度の上昇を防ぐ。全40色。 |
サーモアイプライマー |
19,800円(約100㎡分) | トタンをはじめとした金属屋根材の塗装時に使う下塗り材。さび止め効果あり。上記のサーモアイと組み合わせて使用。 |
ニッペ 油性塗料 高耐久シリコントタン屋根用 |
11,856円(150㎡分) | 下地処理や下塗りが不要で、サビの上からそのまま塗れる初心者向けの塗料。DIY作業に自信がない人に。全7色。 |
「サーモアイ」について詳しく知りたい方は、下記の記事もご覧ください。
>>「サーモアイって本当にいい塗料?遮熱性能やメリット・デメリットを比較」
「トタン屋根向けの塗料」について詳しく知りたい方は、下記の記事もご覧ください。
>>「トタン屋根向けの塗料をランキング形式で紹介」
塗装用具
塗料や下塗り材を、屋根に塗り広げるための道具は以下の通りです。
細かい部分には「刷毛」、広い部分には「ローラー」という風に使い分けるほか、塗料を缶から移すトレイやバケツも合ったほうが便利でしょう。
- 刷毛(細部、立ち上がり部用)
- ローラー(広い部分用)
- コテバケ(広い部分用)
- スプレー
- ローラー用トレイ、バケツ
養生・下地処理
養生用具は、塗装作業前に、汚したくない部分や、色をのせたくない部分をカバーするのに使います。
下地処理は、塗装前に表面のサビを削り落としたり、きれいに拭き上げる作業です。
- マスキングテープ
- 養生テープ
- 養生用ビニールフィルム
- ワイヤーブラシ
- サンドペーパー
- 雑巾、ウエス
その他の用具
塗装作業のために、脚立や軍手、ポリ手袋、汚れてもいい服装なども必要でしょう。
塗装では直らない場合に行う工事と費用相場
塗装では直らない症状の場合、「葺き替え」か「カバー工法」の工事が必要となります。
どちらも屋根全体にわたる工事となるので、屋根工事業者や板金業者に依頼することをオススメします。
2つの工事の内容や費用は以下の通りです。
「葺き替え」の作業と費用
葺き替えとは、すでにある屋根材をすべて剥がしてから、新しい屋根材に張り替える工法です。
トタン屋根を葺き替える費用は180万円が相場です。
劣化の程度や新しい屋根材の価格などよって、総額が120万円~270万円前後までは変わる可能性があります。
トタン屋根の葺き替えを行う場合、一緒に屋根材をガルバリウム鋼板に変えることをオススメします。
ガルバリウム鋼板とは、トタンと同じ金属系屋根材で、より耐久性・防食性(錆びにくさ)に優れた素材です。
「屋根の葺き替え」「ガルバリウム鋼板」について詳しく知りたい方は、下記の記事もご覧ください。
>>「屋根葺き替えの費用はいくら?工事のメリットデメリット、屋根材の選び方」
>>「【入門】ガルバリウム鋼板の全知識を公開!特徴・価格・勾配・選び方」
>>「屋根の張り替えの費用相場はいくら? 新しい屋根材はどう選べばいい?」
「カバー工法」の内容と費用
カバー工法とは“重ね葺き”とも呼ばれ、すでにある屋根材の上から新しい屋根材を重ね張りする工法です。
カバー工法のメリットは、古い屋根材の撤去費がかからない分、葺き替えよりも費用が安くおさえられることです。
トタン屋根をカバー工法する費用は155万円が相場です。
条件により110万円~220万円前後までは金額が変わる可能性があります。
屋根のカバー工法では、多くの場合で新しい屋根材にガルバリウム鋼板が使われます。
トタン屋根からの変更先として、性能・重量ともにちょうどよい素材なのでオススメです。
「屋根のカバー工法」「ガルバリウム鋼板」について詳しく知りたい方は、下記の記事もご覧ください。
>>「【初心者向け】カバー工法ってどんな工事?メリット・デメリット、費用相場まで徹底解説」
>>「【入門】ガルバリウム鋼板の全知識を公開!特徴・価格・勾配・選び方」
まとめ
以上、トタン屋根の塗装についての基本的な手順と用具についても参考として解説をおこないました。
トタン屋根をお使いの方は、塗装で直る間は使い続けてもよいでしょう。
しかし張り替える際は、トタンを使い続けるよりもガルバリウム鋼板を使ったほうが、費用もさほど変わらず、耐用年数も長くできます。
トタン屋根の劣化や損傷の程度によっては、ガルバリウム屋根に葺き替えたほうが、長い目でみてお得になります。
あなたのお宅の相場額診断や見積もりの取り寄せは、当ページからも可能です。
記事をお読みいただいた方に、この機会にご利用いただければ大変幸いです。
「塗装を業者依頼した場合の費用」について知りたい方は、下記の記事もご覧ください。
>>「トタン屋根の修理費用まとめ|症状別・工事別の金額をズバリ掲載」
そもそも「塗装」ってどんな意味なのだろう…こんな疑問を持つ方も少なからずいらっしゃるのではないでしょうか。詳しく知りたい方は、下記の記事も参考にしてください。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。