屋根塗装の見積書に記載されている「縁切り部材:タスペーサー」って一体なんのこと?
ほとんどの方が初めて聞く言葉で、説明がないと想像も付きませんよね。
・タスペーサーってなに?
・タスペーサーってなんのために必要なの?
・見積もりのタスペーサー費用って適正なの?
と疑問を解消するために、タスペーサーとはなにか、目的・必要性、費用相場などについての情報を詳しく紹介していきます。
監修者:外装劣化診断士 小林 成光
600件以上の現地調査を実施する過程で得た専門性を生かし、日本発のネット見積もりシステムでビジネスモデル特許を取得。ヌリカエにて、外装工事の専門家として、顧客・加盟企業のサポート・コラムの監修に従事。
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屋根塗装の見積もりに記載されているタスペーサーとは?
屋根塗装を検討していて、業者からもらった見積書に「タスペーサー」「縁切り部材:タスペーサー」「タスペーサー取り付け」と記載されていませんか?
タスペーサーとは株式会社セイムが製作・販売している、スレート屋根(コロニアル・からベスト)を塗装する際塗料が屋根材同士の隙間をふさいでしまうのを防ぐために行う「縁切り作業」に使用する道具です。(上記の画像がタスペーサー01の実物)
タスペーサーの種類と特徴
使用するタスペーサーの種類は2種類「タスペーサー01」と「タスペーサー02」があります。
※タスペーサー03もありましたが現在は廃盤
タスペーサー01は、Z型の構造になっているのが特徴で、構造上毛細管現象による浸水がおこりにくく、通気性も向上しています。
またバネのような構造になっていて、最大80㎏の負荷にも耐久可能です。
タスペーサー02は、スレートに劣化症状が少ない場合に使用されることが多いです。
多くの屋根に対応していて、手で簡単に挿入することが可能です。
タスペーサー工法と従来の縁切り工法の違い
従来の縁切り作業は屋根塗装をした後にカッターや皮スキを使用し、職人2人で約1日かけ行っていた時間と費用がたくさんかかるものでした。
その労力・コストを軽減するためにできたのがタスペーサーで、1日かかっていた作業が数時間に短縮することが可能になり人件費もその分抑えられる、業者にとっても施主にとってもありがたい道具になりました。
タスペーサーを使用した場合と、従来のカッターや皮スキを使用した場合の縁切り作業の違いを簡単にまとめました。
道具 | タスペーサー | カッター・皮スキ |
---|---|---|
作業時間 | 1~2時間程度 | 2人で約1日かかる |
費用 | 300~500円/㎡ | 400~600円/㎡ |
仕上がり | タスペーサーを入れた後に 上塗りをするため仕上がりが綺麗。 |
塗装した後に縁切りをするため屋根に足跡が付く。 縁切り作業に力が必要なため屋根材が割れる可能性がある。 |
効果 | 道具でちゃんと隙間を確保できるため、 雨水が侵入しにくく結露もできにくい |
カッターや皮スキで隙間を完全に作ることは難しいため、 期待する効果が発揮されにくい |
従来の縁切り作業と比較すると、早い・安い・仕上がりが綺麗とタスペーサーを使用するメリットは多いです。
カッターや皮スキでも代用は可能ですが、仕上がりの箇所に記載してある通り塗装し終わった後に縁切り作業が発生するため、屋根の上に足跡が付きやすくなります。
また力を入れて作業を行うため、屋根材が破損する可能性もあります。
効果の面で見ても従来の方法だと完全に隙間を作ることは難しく、塗料同士が再度密着してしまう可能性があります。
そうなると高い費用をかけても期待する効果が発揮されにくくなるので、現在はタスペーサーを使用するケースが多くなっています。
屋根塗装にタスペーサーが必要な理由・目的
タスペーサー等で縁切り作業を行う理由・目的は屋根材同士に隙間を作り、屋根の内側への浸水や結露の発生を防ぎ、屋根裏を腐食させないためです。
浸水を防ぐのになんで隙間を空けるの?と疑問に感じると思いますが、縁切り作業を行わないことで微妙にできる、狭すぎる隙間から水を吸い上げて内側に取り込んでしまう毛細管現象が起きてしまうのです。
また完全に隙間がふさがってしまう場合は、日中暖められた屋根材が夜に冷やされて内側にできる結露を外に逃がすことができず、内側が腐食していきます。
腐食が続くと画像の様に屋根材の下にある野地板が腐食し、次第に雨漏りするようになります。
このようになってしまわないように屋根塗装の際に縁切り作業を行います。
では具体的にどのような場合にタスペーサーで縁切りをする必要があるのか?について解説していきます。
タスペーサーが必要・利用した方が良いケース
タスペーサーが必要になるのは、画像のようなスレート屋根であるコロニアル・カラーベストの塗装をする場合です。
またスレート屋根の場合でもスレートに劣化症状が少なく、硬さを保っている状態が望ましいです。
新築から初めて屋根の塗装をするという方や、塗装後の仕上がりを綺麗にしたいという方は、タスペーサーによる縁切り作業をしてもらいましょう。
>>【参考記事】「カラーベストってどんな屋根材?メリット・デメリットと工事前の注意点」
その他にも「屋根塗装の工事期間や作業時間を短縮したい」「なるべく費用を抑えたい」という場合には、タスペーサーの利用をした方が良いでしょう。
前述した通り、カッターや皮スキによる縁切り作業は、タスペーサーの使用と比較するとかなり長い時間が掛かります。
作業時間が長くなるということはその分人件費がかかるので、最終的な工事費用が高くなります。
タスペーサーの必要性について解説をしましたが、全ての屋根でタスペーサーを使用できるわけではないです。
また屋根によっては不要という場合もあるので、自分のケースに当てはまらないかを確認しましょう。
タスペーサーが不要・利用できないケース
スレート以外の屋根材の場合はタスペーサーの使用ができません。
またスレート屋根の場合でも、スレート自体の劣化が激しい場合や、屋根材の下にある野地板が劣化している場合はタスペーサーの使用ができません。
これ以外にも屋根材同士に4㎜以上の幅がある場合、タスペーサーを入れても固定されずに落ちてしまうので取り付けることができません。
自宅がスレート屋根じゃないのに見積書に「タスペーサー」と記載されていたり、築年数が経過しており屋根材の劣化が予想できる状態なのにタスペーサーが提案されている場合は要注意です。
タスペーサーを使った縁切り作業の費用相場
タスペーサーを使用した縁切り作業の費用相場は300円~500円/㎡です。
30坪のお家で屋根の傾斜が緩やかな場合は屋根面積が118.8㎡になるので、費用の目安は35,640円~59,400円となります。
屋根の傾斜が急な場合は屋根面積が148.5㎡となり、費用の目安は44,550円~74,250円となります。
※計算方法:30坪×3.3=床面積
※屋根の傾斜が緩やかな場合の計算方法:床面積×1.2=屋根面積
※屋根の傾斜が急な場合の計算方法:床面積×1.5=屋根面積
屋根の傾斜や広さによって費用は変わります。
見積もりの金額と自宅の屋根面積を照らし合わせ、費用が適正か確認をしましょう。
またタスペーサーを使用しない場合は相場が400~600円になるので、かかる費用が倍近くの47,200円~70,800円かかります。
自宅の屋根がタスペーサーを使用できない状態でない限りは、タスペーサーを使用してもらうようにしましょう。
タスペーサーのメリット・デメリット
最後にこれまで解説した、タスペーサーを使用した場合のメリットとデメリットについて確認しましょう。
メリット | ・従来の方法と比較し、工数が抑えられる ・工数が短いため、費用(人件費)が抑えらえる ・塗料が再度密着することがなくなり、再度縁切り作業をする必要がない |
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デメリット | ・屋根の状態が悪い場合は屋根材が破損する可能性がある ・タスペーサー分の費用がかかる・ 屋根材同士の幅が4㎜以上あると使用できない |
デメリットに挙げた「タスペーサー分の費用がかかる」は、道具そのものに費用がかかるため避けることができません。
業者から見積もりをもらう際は、タスペーサーを使った場合と従来のカッターや皮スキで縁切り作業をする場合のどちらが費用を抑えることができるかを確認しましょう。
縁切り作業の効果を最大化させたいのであれば、タスペーサーを使ってもらうことをおすすめします。
まとめ:屋根塗装の効果を発揮させるならタスペーサーの使用を
よほどの理由がない限り、屋根塗装の縁切り作業の際にはタスペーサーを使用してもらうことをおすすめします。
工期を短縮できる点や費用面のメリットはもちろん、なによりせっかく塗装をするなら長持ちさせたいですよね。
また適切な縁切り作業を行うことは屋根塗装の効果を最大限発揮することにも繋がります。
これから塗装を行う方は是非検討してみてください。