新しい住宅を建てる際に採用されることはほとんどなくなりましたが、今住んでいる家の屋根に使われているという方もいるでしょう。
本記事では、セメント瓦の見分け方や特徴、セメント瓦のリフォーム・補修方法やアスベスト入セメント瓦の見分け方についてもご紹介します。
セメント瓦について詳しく知りたい方は、ぜひチェックしてください。
>>【全10種】屋根材おすすめ人気ランキング!価格・耐用年数・メンテナンス頻度で採点
監修者:外装劣化診断士 小林 成光
600件以上の現地調査を実施する過程で得た専門性を生かし、日本発のネット見積もりシステムでビジネスモデル特許を取得。ヌリカエにて、外装工事の専門家として、顧客・加盟企業のサポート・コラムの監修に従事。
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セメント瓦とはどんな屋根?
セメント瓦とは、セメントに川砂を混ぜて作られた屋根材のことです。
ほかの瓦と比較すると価格が安かったため、とくに1970〜1980年代の住宅が不足していた時期に多く生産されていました。
この時期に建てられた住宅に住んでいる場合は、屋根にセメント瓦が使用されている可能性があります。
その後、化粧スレートやガルバリウム鋼板など、コストパフォーマンスに優れた屋根材が多く開発されたため、新築住宅においてセメント瓦が使用されることはほとんどなくなりました。
現在ではセメント瓦はほとんど生産されていません。そのため、セメント瓦を手に入れたい場合は、解体や撤去等で余った中古の瓦をもらってくる必要があります。
セメント瓦のアスベスト含有リスク
セメント瓦は1970年~1980年代によく使われた屋根材です。
この頃の建材は、断熱性や耐久性の向上を目的としてアスベスト(石綿)が含むものがほとんどでした。
セメント瓦も例外ではなく、アスベストを含む商品が一定数存在します。
セメント瓦はもともと厚みがあるためアスベストを含む商品はそれほど多くありませんが、気になる方は、国土交通省の運営する「アスベスト含有建材データベース」で検索をしてみましょう。
または、瓦を一枚実際に割ってみて、内側に繊維状のもの(アスベスト)が露出するかを見ればアスベストを含むかは判断できます。
ただし上記作業は危険を伴うため、必ず専門業者に依頼して確認してもらいましょう。
なお、アスベストが含まれていた場合でも、瓦が割れていたりしない限りは健康被害が起こる可能性は低いです。
「アスベスト」について詳しく知りたい方は、下記の記事もご覧ください。
>>「アスベスト含有住宅の見分け方3つを徹底解説!リスクや除去方法まで知っておこう」
>>「アスベスト入り住宅の外壁塗装前に知っておきたい知識と注意」
セメント瓦と他の瓦の見分け方
次に、ご自宅の屋根がセメント瓦かどうか判断するために、セメント瓦と他の瓦の見分け方を確認していきましょう。
セメント瓦と他の瓦はどのように違うのでしょうか?
この章では、セメント瓦と「陶器瓦」「モニエル瓦」「スレート」の3つを画像で比較していきます。
セメント瓦と陶器瓦の違い
セメント瓦 | 陶器瓦 |
---|---|
セメント瓦と陶器瓦は同じような形状ですが、陶器瓦は釉薬が塗られているため表面がツルツルとしているのに対し、セメント瓦の表面はザラザラとしています。
また、セメント瓦は表面を塗装することによって着色しているので、経年とともに塗膜の剥がれや色あせが起こります。
なお、陶器瓦は粘土瓦の一種で、粘土瓦にはほかにも「いぶし瓦」「素焼き瓦」という種類があり、「和瓦」「洋瓦」という瓦も、粘土瓦に含まれます。
セメント瓦とモニエル瓦(コンクリート瓦)の違い
セメント瓦 | コンクリート瓦 |
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画像引用:http://machiyane-shunan.com/column/monieru20190908.html |
セメント瓦とモニエル瓦は、屋根を上から確認しないと判別ができません。
瓦の小口(縁)がフラットなものがセメント瓦、ゴツゴツとして凹凸があるのがモニエル瓦(コンクリート瓦)です。
セメント瓦とスレートの違い
スレートとは、現在の戸建住宅の屋根としてもっとも普及している屋根材です。
スレートの原料はセメントなので、セメント瓦とスレートは大きく捉えると同じものといえるでしょう。
スレートとセメント瓦の定義に明確な基準はありませんが、厚みが1cm以下の薄い屋根材はスレート、1cm以上の厚い屋根材はセメント瓦と捉えるのが分かりやすいです。
>>スレート屋根とは? 特徴・修理方法・メンテナンス周期・費用を全解説
セメント瓦のメリット・デメリット
セメント瓦の基本的な情報については、前章まででお分かりいただけたかと思います。
ここからは、セメント瓦のメリット・デメリットを詳しく見ていきましょう。
セメント瓦のメリット
まずはセメント瓦のメリットをご紹介します。セメント瓦のメリットは、主に以下の3つです。
1.工事が簡単であり施工費用が安い
セメント瓦のメリットのひとつとして、施工費用が安いことが挙げられます。
前述のとおり、製品としての価格が安いだけでなく、工事も比較的しやすいため施工費用も安いのです。
多くの工事業者で対応できることも、メリットといえるでしょう。複数の工事業者から見積りを取り、費用を比較しながら安い業者を選ぶことも可能です。
2.さまざまなデザインの瓦がある
豊富なデザインの瓦があり、好きな形状や色のものを選びやすいことも、セメント瓦のメリットといえるでしょう。
セメントはさまざまな形に加工しやすいため、和風のものや洋風のものなど、多くの種類の瓦があります。
塗装によって色も変えられるため、明るい色や落ち着いた色など、自分好みの屋根を実現できます。3.耐火性能が高い
耐火性能が高いこともセメント瓦のメリットのひとつです。
セメントは燃えにくいため、万が一、火事が発生したときの被害を抑制できます。
火災が隣家などへ燃え広がるのを抑えたり、近所の火災が燃え移ることを防いだりすることにつながるでしょう。
セメント瓦のデメリット
次にセメント瓦のデメリットを解説します。セメント瓦には、主に以下の3つのようなデメリットがあります。
1.陶器瓦と比較すると耐用年数が短い
陶器瓦と比較すると耐用年数が短いことは、セメント瓦のデメリットといえるでしょう。
一般的なセメント瓦の耐用年数は30年程度です。一方、陶器瓦の耐用年数は約50年ととても長いのが特徴です。ただし、陶器瓦は施工費用が高く、重いため耐震性が低下する可能性もあります。
また、化粧スレートやガルバリウム鋼板などの耐用年数も20〜30年程度であるため、セメント瓦の耐用年数が屋根材のなかで特別低いというわけではありません。
2.衝撃に弱く割れやすい
ほかの屋根材と比較すると衝撃に弱く割れやすいことも、セメント瓦のデメリットのひとつです。
大きな揺れや飛来物などの影響により、セメント瓦がひび割れてしまうこともあります。ひび割れをそのままにしておくと、セメント瓦が剥がれてしまったり、雨漏りの原因になったりするため、早めに補修することが大切です。。
3.色があせるため定期的に塗装する必要がある
セメント瓦の表面には塗料が塗られているため、定期的に塗装しなければなりません。
セメント瓦の塗装は、時間が経つと色あせたり剥がれたりしてきます。
色あせた部分や塗装が剥がれた部分は、雨水を吸収しやすく苔が生えやすい状態となっており、そのままの状態にしておくと美観が悪いだけでなく雨漏りの原因にもなります。
セメント瓦の塗装をすべきタイミング
セメント瓦の屋根の美観や耐久性を維持するためには、定期的な塗装が大切です。
使用した塗料の耐用年数や建物がある場所の環境にもよりますが、目安としては10年ごとに塗り直しを行うとよいでしょう。
ただし、劣化状況によっては、10年よりも早いタイミングで塗り直しをすべきケースもあります。
以下、セメント瓦を塗装すべき劣化状況について解説しますので、塗り直しのタイミングを決める際は参考にしてください。
なお、築40年を過ぎている場合は、塗装ではなく葺き替えの検討がおすすめです。詳しくは「屋根全体を新しいものに交換する「全面葺き替え」」の章で解説しています。
1.セメント瓦の塗料が激しく剥がれている
セメント瓦の塗料が激しく剥がれている場合は、早めに塗り直すべきでしょう。
塗料が剥がれた部分は、瓦本体がむき出しの状態となっています。瓦本体が雨水を吸収して劣化してしまったり、建物内部で雨漏りが発生したりする可能性もあります。
2.セメント瓦が色あせてきている
セメント瓦の色あせも、塗り直しのサインのひとつです。
色あせは、塗料が劣化してきていることを示しています。近い時期に塗装の剥がれなどが発生する可能性もあるため注視しておきましょう。
セメント瓦に苔やカビが発生している場合も注意が必要です。
塗料が劣化すると、瓦本体が雨を吸収して苔やカビが発生しやすくなります。苔やカビの周囲を点検して、剥がれなどがないか確認することも重要です。
3.セメント瓦の表面がふくれてきている
セメント瓦の表面がふくれている場合も、塗り直しを検討すべきでしょう。
瓦表面のふくれは、塗料が剥がれかけているサインといえます。ふくれの程度にもよりますが、屋根の耐久性を維持するため早めに対処することが大切です。
セメント瓦の塗装費用
セメント瓦の塗装にかかる費用は、屋根の形状や面積、劣化状況、使用する塗料の種類などによって異なりますが、目安としては1㎡あたり1,800〜3,500円程度です。
一般的な30坪の戸建てのセメント瓦を塗装する場合は、40万~50万円ほどかかると考えておきましょう。
以下が、セメント瓦の塗装工事の内訳の相場になります。
費用内訳 | 1㎡あたりの費用 |
---|---|
足場設置 | 700〜800円 |
高圧洗浄 | 200〜300円 |
下地調整 | 400〜500円 |
塗装 | 2,200〜3,500円 |
縁切り | 150〜200円 |
合計 | 3,250〜5,300円 |
>>屋根工事の費用相場は?葺き替え・塗装・カバー工法・雨漏り修理の相場まとめ ▼「塗料」について詳しく知りたい方はコチラ
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セメント瓦の塗装の流れ
セメント瓦を塗装する際は、足場設置や高圧洗浄などを行ったうえで、実際の塗装を進めます。
ここでは、塗装の流れをわかりやすく解説しますので、参考にしてください。
1.建物の周囲に足場を設置する
高圧洗浄や塗装作業の前に、建物の周囲に仮設足場を設置します。仮設足場は、安全かつ効率的に作業を進めるために欠かせません。費用を節約したいからといって、足場設置を省略することは避けましょう。
塗料や道具が落下したり飛散したりしないよう、必要に応じて養生シートを設置することも重要です。
とくに隣家が近い場合は、塗料の飛散により迷惑がかからないよう、しっかりと対策しておきましょう。
2.高圧洗浄によって屋根の汚れを落とす
仮設足場の設置が完了したら、高圧洗浄によって屋根全体の汚れを落とします。
屋根に汚れが残っていると、塗料がうまく付着せず剥がれやすくなったり、美しく仕上がらなかったりするため、高圧洗浄はとても大切な作業です。
3.セメント瓦のひび割れなどを補修する
セメント瓦のひび割れやずれなどが発生している場合は、塗装の前に補修しなければなりません。
高圧洗浄で取り切れなかった細かな部分の汚れも落とします。この作業を下地調整といいます。
下地調整の程度は屋根の劣化状況によって異なり、劣化が激しい場合は塗装以外の補修方法を検討する必要があります。
4.セメント瓦を塗装する
下地調整が完了したら、実際にセメント瓦を塗装していきます。
塗装は、下塗り・中塗り・上塗りの3回に分けて行うのが一般的です。下塗りは、塗装面と中塗り材や上塗り材の密着性を高めるための重要な作業です。下塗りを省略すると、塗料が剥がれやすくなったり、色ムラの原因になったりするため、確実に行いましょう。
下塗り後は適切な乾燥時間を設けてから、中塗りの作業に移ります。乾燥時間も、塗膜に耐久性を持たせるために重要です。
5.上塗りが乾燥したら縁切り作業を行う
上塗りが乾燥したら、縁切りという作業を行います。縁切りとは、セメント瓦の間の塗膜を切断し、水が流れやすい状態を作ることです。
縁切り作業を行わないと、セメント瓦同士が密着しすぎてしまい、雨水が溜まってしまいます。雨漏りの原因になる可能性もあるため、確実に縁切りをすることが大切です。
セメント瓦の塗装以外の補修方法
劣化したセメント瓦の塗装以外の補修方法として、部分差し替えや全面葺き替えが挙げられます。
専門業者に現地を確認してもらったうえで、適切な方法を選ぶことが大切です。ここでは、部分差し替えと全面葺き替えについて簡単に解説しますので、確認しておきましょう。
劣化したセメント瓦のみを交換する「部分差し替え」
部分差し替えとは、劣化したセメント瓦のみを新しいものに交換する補修方法です。
ただ、セメント瓦はほとんど生産されなくなったため、入手が難しい屋根材といえます。
実際には、シーリングで応急処置をする、塗装や葺き替えなどの方法を選択する、といったケースが多いでしょう。
屋根全体を新しいものに交換する「全面葺き替え」
全面葺き替えとは、セメント瓦を取り除き、新しい屋根材を設置し直す補修方法です。
全面葺き替えを行う場合、ガルバリウム鋼板や化粧スレート(コロニアル)など、コストパフォーマンスに優れた屋根材を用いるケースが多いでしょう。専門業者とも相談しながら、建物の立地や日当たり、建物全体のバランスなどを考慮して、最適なものを選ぶことが大切です。
>>屋根の葺き替えの費用はいくら? 費用の内訳や補助金制度を知ろう
まとめ
今回は、セメント瓦の特徴やほかの屋根材との違い、メンテナンス方法などについて解説しました。
セメント瓦には、さまざまなデザインの瓦がある、耐火性能が高い、といったメリットがある一方で、衝撃に弱く割れやすい、色あせるため定期的なメンテナンスが必要、というデメリットもあります。
セメント瓦の耐久性や美しさを維持するために、定期的な塗り直しを検討するようにしましょう。