遮熱塗料とは?
遮熱塗料とは何なのでしょうか。断熱塗料とは何が異なるのでしょうか。
本記事では、遮熱塗料とはどのようなものなのか、遮熱塗料をおすすめする理由、遮熱塗料の選び方、おすすめの遮熱塗料について説明しています。
遮熱塗料は高反射塗料
遮熱塗料とは、太陽光を高い反射率で跳ね返すことで、建物の温度上昇を防ぐことができる塗料をいいます。
通常は、屋根や外壁が光を吸収して、その光が熱に変わることで建物や室内の温度が上がります。しかし、遮熱塗料はこの温度上昇の元となる光を吸収せずに反射するため、屋根や外壁の温度が上がりません。
よく似た名前のものに、断熱塗料というものもあります。断熱塗料は遮熱塗料とは異なり、建物の内側と外側の熱の出入りを遮断することで、夏場における温度上昇を抑えるメカニズムの塗料です。
夏場の室内の温度上昇を抑えるという効果では似たようなところがありますが、メカニズムが異なるものです。
断熱塗料より割安
断熱塗料は、上記の通り建物の内側と外側の熱の移動を遮断する効果があるため、夏場は暑い外気の熱を建物内に入れない、冬場は暖かい室内の空気が持っている熱を外に逃がさないという、両方の効果があります。一般の塗料と比較すると高価です。
遮熱塗料は、太陽光の高反射で温度上昇を抑えるメカニズムを持ちつつも、断熱塗料よりは安価です。夏場の温度上昇抑制を考えるのであれば、遮熱塗料の方が割安です。
遮熱塗料をおすすめする理由5つ
遮熱塗料をおすすめする理由は、大きく5つあります。
夏場の室温上昇を抑えられること、電気代の節約になること、屋根・外壁の熱による劣化を防ぐこと、建物の寿命が延びること、ヒートアイランド現象抑制を期待できることがその理由です。以下、それぞれを説明します。
1:夏場の室温上昇を抑えられる
おすすめする1つ目の理由は、夏場の室温上昇を抑えられることです。一般の建物は、夏場に太陽光の熱で屋根や外壁自体が熱くなり、その屋根や外壁から伝わった熱が建物の中の空気を暖めて、結果として室温が上がります。
遮熱塗料は太陽光を反射する機能が高いものです。そのため、この塗料を塗装した屋根や外壁はそれ自体が熱くなりにくく、故に建物内の空気を暖めないため、室温上昇を抑えることができます。
2:電気代の節約になる
おすすめする2つ目の理由は、電気代の節約になることです。遮熱塗料を屋根や外壁に塗装すると、室温上昇を抑えることができます。冷房は高温の状態を快適な温度まで下げる最初の冷却の時に大量の電力を使用します。
室温がそれほど高くない状態から冷房をつけると、冷却器が動作している時間を短くできること、また屋根や外壁からさらに追加で熱が入ってくることが少なくなります。そのため、室温を維持するための冷却器動作も少なくでき、電気代を節約することができます。
3:屋根・外壁の熱による劣化を防ぐ
おすすめする3つ目の理由は、屋根・外壁の熱による劣化を防ぐことです。遮熱塗料は太陽光を高い反射率で跳ね返します。そのため、太陽光の吸収による加熱が少なく、屋根や外壁自体の温度が上がりにくくなります。
一般的に物質は、高い温度に長時間晒されると熱劣化が進みやすくなりますが、遮熱塗料を塗装した屋根や外壁は高温になりにくいため、熱劣化を防ぐことができます。
4:建材の寿命が延びる
おすすめする4つ目の理由は、建材の寿命が延びることです。屋根や外壁も建材の1種のため、上記の通り劣化を防ぐことができれば、寿命は延びます。
屋根や外壁自体の温度上昇を抑えられるということは、屋根裏を支える部材、外壁と内壁の間の部材、屋根や外壁に直接接している建材の温度上昇も抑制できるということです。
このように、建物全体の温度上昇を抑制することができれば、全ての建材の寿命を延ばすことができます。
5:ヒートアイランド現象抑制を期待できる
おすすめする5つ目の理由は、ヒートアイランド現象抑制を期待できることです。ヒートアイランド現象とは、住宅やオフィスが密集している都市部の気温が、郊外よりも高くなる現象をいいます。
昼間の気温上昇はもちろん、夜の気温も下がらない熱帯夜の日数も増えています。ヒートアイランド現象の原因はいくつかありますが、遮熱塗料を使うとその抑制を期待できます。
遮熱効果の高い遮熱塗料の選び方5つ
遮熱塗料を選ぶ際には、いくつかポイントがあります。
日射反射率の高さで選ぶ、耐候性の高さで選ぶ、汚れにくいものを選ぶ、塗りやすさで選ぶ、JIS規格を確認するの5つがそのポイントです。以下、それぞれを説明します。
1:日射反射率の高さで選ぶ
1つ目のポイントは、日射反射率の高さで選ぶ、です。日射反射率とは、降り注いでくる太陽光のうちどれだけの部分を反射しているかを数字で表したものです。
上記の説明した通り、遮熱塗料は太陽光を反射して屋根や外壁の温度上昇を抑えるというメカニズムで、室温の上昇を防いでいます。そのため、日射反射率は高ければ高いほど、温度上昇を抑制する効果は高くなります。
2:耐候性の高さで選ぶ
2つ目のポイントは耐候性の高さで選ぶ、です。どれだけ日射反射率が高くても、遮熱塗料自体がすぐに劣化して、時間経過とともに日射反射率が大きく低下すれば意味がありません。
従って、遮熱塗料の耐候性の高さも選ぶ際の重要な要素の1つです。
3:汚れにくいものを選ぶ
3つ目のポイントは、汚れにくいものを選ぶ、です。
遮熱塗料は太陽光を反射することで効果を発揮するものです。そのため塗装表面が汚れてしまうと、太陽光を反射できなくなってしまいます。さらには汚れに太陽光が吸収されて熱に変わってしまえば、遮熱塗料の効果はかなり下がるでしょう。
塗装直後の日射反射率と耐候性がどれだけ高くても、汚れやすければ遮熱塗料を塗装した意味がなくなってしまいます。そのため、汚れにくいものを選ぶ必要があります。
4:塗りやすさで選ぶ
4つ目のポイントは塗りやすさで選ぶ、です。遮熱塗料は、太陽光を反射するために、反射剤として顔料やセラミックなどを配合しています。そのため、通常の塗料と比較すると塗りにくいといわれています。
慣れていない人が塗るとムラができてしまい、十分な遮熱効果を得ることができない可能性もあります。現場職人の不足で、熟練の塗装職人の確保が厳しくなっている状況もあるため、塗りやすい遮熱塗料を選ぶことも、重要な要素の一つです。
5:JIS規格を確認する
5つ目のポイントは、JIS規格を確認する、です。屋根用の遮熱塗料は、2011年にJIS K 5675「屋根用高日射反射率塗料」が制定されました。この規格には成分で1種・2種の種別と耐候性で1級〜3級の等級が定められています。
また、JIS K 5603「塗膜の熱性能-熱流計測法による日射吸収率の求め方」も制定され、この計測方法による業界基準も定められました。
使おうとしている遮熱塗料が、きちんとJIS規格に該当するものかどうか、該当している場合は耐候性がどのレベルのものなのかを確認することが重要です。
出典:高日射反射率塗料|一般社団法人日本塗料工業会
参照:https://www.toryo.or.jp/jp/anzen/reflect/index.html
おすすめの遮熱塗料7選
ここからは、具体的におすすめの遮熱塗料を紹介します。
日本ペイント株式会社「サーモアイ4F」、株式会社日進産業「ガイナ」、株式会社アステックペイント「スーパーシャネツサーモF」、関西ペイント株式会社「アレスクール2液F」、株式会社アサヒペン「水性屋根用遮熱塗料」、日本中央研究所株式会社「アドグリーンコート®GL」、エスケー化研株式会社「クールタイトSi」の7つです。
それぞれを説明していきます。
1:日本ペイント株式会社「サーモアイ4F」
おすすめの1つ目は、日本ペイント株式会社「サーモアイ4F」です。4フッ化フッ素樹脂というものを使用しており、耐候性、光沢保持性に優れていて、長期にわたって遮熱機能を維持できることが特徴です。
成分 | フッ素 |
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適用素材 | スレート、鉄、トタン屋根、ガルバリウム鋼板 |
日射反射率 | 91% |
耐用年数 | 12〜15年 |
施工相場 | 3720円/平米〜 |
2:株式会社日進産業「ガイナ」
おすすめの2つ目は、株式会社日進産業「ガイナ」です。
国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構のロケット技術を応用して開発された製品で、遮熱性と断熱性の両方を備えたことが特徴です。
成分 | 水性特殊セラミック |
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適用素材 | 明記なし(屋根・外壁) |
日射反射率 | 約90% |
耐用年数 | 15〜20年 |
施工相場 | 3800円/平米〜 |
3:株式会社アステックペイント「スーパーシャネツサーモF」
おすすめの3つ目は、株式会社アステックペイント「スーパーシャネツサーモF」です。フッ素樹脂塗料の中でも最高ランクの耐候性を持っており、かつ遮熱性にも優れていることが特徴です。
成分 | フッ素系塗料 |
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適用素材 | カラー鋼板、ガルバリウム鋼版・ステンレス、波形スレート、セメント瓦、モニエル瓦、カラーベスト |
日射反射率 | 80%以上 |
耐用年数 | 15〜20年 |
施工相場 | 4100円/平米〜 |
4:関西ペイント株式会社「アレスクール2液F」
おすすめの4つ目は、関西ペイント株式会社「アレスクール2液F」です。
赤外線を反射する特殊顔料を、上塗りだけでなく下塗りにも配合して、この組み合わせで上塗りを通り抜けた一部の赤外線を下塗りで反射する「Wブロック効果」を高い昇温抑制効果を発揮することが特徴です。
成分 | フッ素樹脂 |
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適用素材 | トタン、鋼板など |
日射反射率 | 80%以上 |
耐用年数 | 15〜20年 |
施工相場 | 4000円/平米〜 |
5:株式会社アサヒペン「水性屋根用遮熱塗料」
おすすめの5つ目は、株式会社アサヒペン「水性屋根用遮熱塗料」です。特殊顔料を配合していることで同じ色の塗料に比べて遮熱性能が高いこと、HALS(紫外線劣化防止剤)を配合していることで耐候性が優れているのが特徴です。
成分 | 水性シリコンアクリルエマルション樹脂 |
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適用素材 | スレート瓦、各種セメント瓦、コロニアルやカラーベストなどの新生瓦、トタン・カラートタン・鋼板の屋根 |
日射反射率 | 80%以上 |
耐用年数 | (不明) |
施工相場 | (不明) |
6:日本中央研究所株式会社「アドグリーンコート®GL」
おすすめの6つ目は、日本中央研究所株式会社「アドグリーンコート®GL」です。真球ナノ・ファインセラミックスの技術を応用した、高反射と高放熱が特徴の塗料となっています。
成分 | 水系アクリルシリコン樹脂 |
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適用素材 | 明記なし(屋根) |
日射反射率 | 80%以上 |
耐用年数 | 8〜12年 |
施工相場 | 3500円/平米〜 |
7:エスケー化研株式会社「クールタイトSi」
おすすめの7つ目は、エスケー化研株式会社「クールタイトSi」です。防かび、防藻性に優れ、汚れることでの遮熱効果の低下を抑制し、高い遮熱性を長期に保つことが特徴です。
成分 | アクリルシリコン樹脂 |
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適用素材 | 薄型塗装瓦、トタン屋根、スレート屋根 |
日射反射率 | 80%以上 |
耐用年数 | 6〜8年 |
施工相場 | 3700円/平米〜 |
遮熱塗料による塗装費用の相場
遮熱塗料による塗装費用の相場は、およそ3000円/平米〜4000円/平米です。この費用には、塗料自体の価格と塗装のための施工費が含まれています。
高価格帯の塗料を使用すれば、その分トータル費用は上がります。また、地域や塗工業者によって、施工費は異なるため、あらかじめ複数の施工業者から相見積もりを取得することが重要です。
遮熱塗料を使用する時の注意点4つ
遮熱塗料を使用する時には、注意すべき点があります。
断熱塗料と機能が違うこと、色により遮熱性能が異なること、遮熱塗料による性能差もあること、利用できる補助金を確認することの4つです。以下、それぞれ説明します。
1:断熱塗料と機能が違うこと
遮熱塗料と断熱塗料は機能が異なります。遮熱塗料は、太陽光を反射することで屋根や外壁自体の温度が上昇することを抑制し、伝熱による室温上昇を防ぎます。
断熱塗料は、塗料自体が熱を保持することで、外部と内部の熱の往来を減らします。夏場の高い外気温の熱を室内に入れないようにして室温上昇を防ぐのです。
このため、遮熱塗料には冬場の保温効果は期待できません。逆に太陽光による建物の温度上昇が小さいため、むしろ室温は上がりにくくなります。
2:色により遮熱性能が異なること
塗料はその色によって光の吸収度合いは異なります。遮熱塗料は太陽光を反射して、吸収量を減らすことで温度上昇を抑制します。すなわち、色によって遮熱性能には差があります。
白っぽい色(白、クリーム色等)は、元々光の吸収度合いはそれほど高くありません。逆に黒っぽい色(黒、濃い青、濃い茶色等)は、光をより多く吸収するため、遮熱効果は低くなります。
3:遮熱塗料による性能差もあること
遮熱塗料のメーカーごとに、どのようなものを配合することで遮熱性能やその他性能(耐候性等)を発揮させるかという素材の差があります。
顔料系なのかセラミック配合系なのか、セラミック配合系の中でも中空ビーズ系なのか真球ファインセラミック系なのかで、遮熱性能は異なってきます。遮熱性能、耐用年数、汚れにくさ等、メーカーごとに異なる特徴があるので、注意が必要です。
4:利用できる補助金を確認すること
遮熱塗料を使ったリフォームの場合は、省エネ住宅へのリフォームということで、地域によっては地方自治体から補助金がでる場合があります。
施工する自治体が補助金を出しているかどうかを確認して、支給される場合は有効活用することが大事です。
おすすめを参考に遮熱塗料を選ぼう!
本記事では、遮熱塗料についておすすめする理由、選び方、特徴や注意点について説明をしてきました。おすすめの遮熱塗料もあげているため、それを参考に遮熱塗料を選んでみてはいかがでしょうか。