弾性塗料とは、ゴムのように伸び縮みする柔らかな性質をもつ塗料を指します。
他の塗料と比べると、伸縮性・弾力性・防水性が高く、ひび割れを防止できることが特徴です。
本記事では、弾性塗料を使用するメリットとデメリットのほか、工法・注意点まで詳しく解説していきます。
弾性塗料とは
弾性塗料とは、ゴムのように伸び縮みする高い弾力性を持つことが特徴の塗料です。
伸縮性・弾力性を持つことによって、ひび割れが起こった時も塗料がひびに追随するためひび割れを防止する・ひびからの雨水の侵入を防ぐことができるなどの魅力があります。
モルタルやコンクリートなどのひび割れが起きやすい外壁にとっては、非常に適した塗料と言えるでしょう。
しかし一方で工法をしっかりと守らないで塗ってしまうと、塗膜の一部が風船のように膨らんでしまうなどといった欠点もあります。
主にこのような施工の難易度の高さと塗膜が膨らんでしまうことが原因で、現在では昔ほど外壁に利用されなくなりました。
ただ昨今でも外壁の状況によって弾性塗料が塗料の選択肢になることはあるため、自宅がひび割れの起きやすい外壁の方や業者に弾性塗料を勧められた方は素直に検討してみると良いでしょう。
「弾性塗料」は塗料の固さを表している
弾性塗料はシリコン塗料やウレタン塗料といった原材料の種類を表す名称ではなく、塗料の堅さを表す名称です。
塗料の堅さを表す名称としては、弾性塗料を含めて大きく分けて以下の3種類があります。
種類 | 特徴 |
---|---|
硬質塗料 | 一般的に使用される塗料 |
微弾性塗料 | 硬質塗料と弾性塗料の間の堅さを持つ塗料。伸び率は50~100% ※JISなどの厳密な規格で定められているわけではない。 |
弾性塗料 | 20度で伸び率120%以上の塗料。JIS規格で定められている。 |
原材料はシリコンやフッ素塗料
弾性塗料の原材料は従来から存在するシリコン系やポリウレタン系、フッ素系などの塗料です。
そこに柔軟性や弾性を与える可塑剤を加えることによって「弾性塗料」が作られています
したがって、製品によってシリコン系の弾性塗料やフッ素系の弾性塗料が存在することを理解しておきましょう。
弾性塗料のメリット
弾性塗料のメリットは以下の通りです。
・防水性が高く、雨漏りしづらい
・害虫の侵入を防ぐ
それぞれについて、詳しく解説して行きます。
塗膜が破れづらく、ひび割れに強い
弾性塗料は塗膜が柔らかくゴムのような伸縮性があるため、たとえ外壁がひび割れてしまった場合でも塗料の弾力性でダメージを最小限に抑えてくれます。
一般的に外壁は車の通過による振動や地震、激しい寒暖差によってひび割れ・劣化が進みますが、弾性塗料はそれらに対して強い耐久性を備えています。
ひびの発生を抑えられることは外壁の耐久性をあげるほか見栄えの悪化を防ぐ効果もあるため、大きなメリットと言えるでしょう。
特にモルタルやコンクリートなどの外的要因でひび割れを起こしやすい外壁の場合は、弾性塗料が非常に適しているためおすすめです。
防水性が高く、雨漏りしづらい
弾性塗料は外壁にピッタリと密着する性質を持っているため、建物の防水機能を高める効果が期待できます。
さらに一般的な塗料に比べて厚めに塗られることが多いため、より雨水の侵入を防ぐことができ、防水性の向上につながります。
「降雨量の多い地域に住んでいて、雨漏りが心配…」という方にもおすすめと言えるでしょう。
害虫の侵入を防ぐ
前述のとおり、弾性塗料は壁にすき間なく密着する性質をもっているため、害虫の侵入を防いでくれます。
川沿いなどに住宅が位置しており虫の侵入にお困りの方や、そもそも虫が嫌いという方にも良い選択肢になると言えるでしょう。
>> モルタル壁の基本知識 | 時期・劣化のサイン・補修方法とは?
弾性塗料のデメリット
弾性塗料のデメリットは以下の通りです。
・湿気をため込みやすく、塗膜が膨張しやすい
・窯業系サイディングボードには不向き
耐用年数が約8〜12年と短い
弾性塗料は8~12年と、耐用年数がやや短いことがデメリットと言えます。
耐用年数が短ければ短い期間で塗り替えが必要となるため、結果的に金銭的な負担は大きくなってしまいます。
ひび割れを防いで見栄えを良く保ってくれる弾性塗料ですが、耐用年数・金銭面を考慮して使用するかを判断することがおすすめと言えるでしょう。
湿気をため込みやすく、塗膜が膨張しやすい
弾性塗料は通気性が低いため、内側から外側へ空気を逃がすことができません。
そのため暑い夏場などになると塗膜の一部が風船のように膨らんでしまうことがあるのです。
一度膨らんでしまった塗膜は放っておいてももとに戻りません。
この膨らんでしまう症状が主な原因となり、現在では昔ほど弾性塗料が使われることは少なくなりました。
一方で昨今では通気性を高めた弾性塗料も販売・使用されているため、気になる方は業者に尋ねてみましょう。
「自宅の外壁がモルタルではない」「なるべく長持ちする塗料を使いたい」という方には、他の塗料を検討してみることがおすすめです。弾性塗料以外の塗料について詳しく知りたい方は、こちらのコラムをご覧ください。
【2022年最新】外壁塗装の塗料6種類の特徴・価格は?選び方と人気塗料ランキングも紹介
窯業系サイディングボードには不向き
昨今で多く使用されている窯業系サイディングボードは安価で耐火性にも優れていますが、断熱材を含むため熱を吸収しやすい性質があります。
したがって窯業系サイディングボードと弾性塗料は相性が悪く、夏場にはボードが温まった際に塗料が膨張する可能性があるのです。
弾性塗料が膨れると壁にブクブクと泡のようなものが突き出し、見栄えが悪いうえに防水機能が損われてしまいます。
自宅の外壁に窯業系サイディングボードが使われている場合は、他の塗料を検討しましょう。>> 窯業系サイディングとは?メリットとデメリット、費用やデザインを比較!
弾性塗料が膨らんでしまう原因と対処法
弾性塗料の特徴であり最大のデメリットと言えるのは、湿気をため込みやすく塗膜が膨れてしまう場合があることです。
本章では弾性塗料の利用を検討している方々に向けて、膨れてしまう原因ともしも膨らんでしまった場合の対処法を紹介します。
弾性塗料が膨らんでしまう原因
弾性塗料が膨らんでしまう原因は主に次の3つです
- 経年劣化による浸水
- 塗装業者の施工不良
- 外壁材との相性が悪い
それぞれについて、順番に解説していきます。
経年劣化による浸水
弾性塗料は8~12年と、やや短い耐用年数で劣化が生じます。
経年劣化が起こるとひび割れや剥がれが起こり、そこから雨水が侵入してしまうことが主な原因として挙げられます。
さらに浸水した水分は日光で温められて水蒸気を発生させ、塗膜を下から持ち上げる形で浮き上がらせてしまうのです。
通常の塗料であればそのまま塗膜が破れますが弾性塗料は塗料の性質から水がたまり続け、風船のように膨らんでしまうことになります。
塗装業者の施工不良
弾性塗料の膨れは塗料の性質上の問題だけでなく、業者の施工不良によっても起こります。
施工不良による膨れの原因となるのは以下のような場合です。
- 下地の洗浄不足によるカビの発生
- 下塗り材の塗り方が甘く、上塗りの塗料が密着しなかった
- 下塗り塗料の乾燥不足で、水分が残ったまま塗装してしまった
弾性塗料は重ね塗りの工程が複雑のため、一般的に施工が難しいと言われています。
なるべく工期や人件費を抑えようとする悪徳業者などは十分な知識を持たずに塗装を行うことがあるため、上記のような要因から塗膜の膨れが起こることがあります。
塗装業者を選ぶ際には、しっかりと弾性塗料やひび割れ外壁の施工実績が豊富な業者を選ぶようにすることが大切です。
外壁材との相性が悪い
弾性塗料は、外壁材との相性が悪いと膨れてしまう原因となります。
例えば外壁材としてシェア率の高い窯業系サイディングは、紫外線などにより表面が高温になりやすいです。
したがって弾性塗料の塗膜も柔らかくなってしまったり、内部の水分が蒸発してしまうことにより膨らんでしまうことがあります。
弾性塗料の使用は主にモルタルやコンクリートといったひび割れやすい外壁に限定されるため、よく覚えておきましょう。
弾性塗料が膨らんでしまった場合の対処法
もしも弾性塗料が膨らんでしまったときの対処法を紹介します。
結論から言うと業者に再塗装してもらうしかないのですが、また同じように膨らみが起きないようにポイントを押さえて対処していくことが大切です。- まずは膨らんでしまった原因を突き止める
- 4~5年で膨らんでしまった場合は施工不良の可能性を疑う
- 業者を決めて再塗装してもらう
それぞれについて詳しく解説して行きます。
①まずは膨らんでしまった原因を突き止める
まずは業者に依頼して、なぜ膨らんでしまったのかを確認しましょう。
例えば内部からの結露が原因で、早々に膨らんでしまった場合はそのまま再塗装してもまた同じように膨らんでしまうことがあります。
周辺環境の問題で繁殖しやすくなったコケやカビも劣化を早める原因となります。
また膨らんでしまった箇所のほかにも塗料の密着不良が起きていることもあるため、業者に依頼して外壁のどこに問題があるのかをまとめて聞いておきましょう。
②4~5年で膨らんでしまった場合は施工不良の可能性を疑う
弾性塗料の耐用年数である8~12年を大きく下回る場合、施工不良の可能性も検討しておきましょう。
契約書に保証があるかを確認して、契約によっては無償で補修を行ってくれることもあります。施工不良といっても必ずしも悪意があったわけではなく、きちんと施工をしたはずなのに正しい塗料の本質が発揮できなかったということはあります。
極端に早い劣化には業者としても親身になって相談してもらえたり、最大限の誠意感じられる対応をしてくれることも多いです。
③業者を決めて再塗装してもらう
原因を突き止めたり、施工不良の有無を確認したあとは業者を選んで再塗装をお願いしましょう。
再塗装にあたって業者の説明に不明点などがなければ、前回依頼した業者に依頼すればスムーズに手続きが進みます。
しかし前段階の説明を求めた時点で対応が悪かったなどのトラブルがあれば、別の業者を検討することも大切です。
必ずしもずっと同じ塗装業者と付き合わなければならない決まりはないので、相見積もりを取って納得のいく依頼をしましょう。
もちろん膨らむリスクを懸念して、弾性以外の塗料に塗り替えることも可能です。
代表的な弾性塗料製品
本章では弾性塗料の中でも代表的なものをご紹介します。
「弾性塗料を塗りたいけど、何を塗って良いか分からない」という方はぜひお役立てください。
- DANフィラーエポ(日本ペイント)
- アレスシルクウォール(関西ペイント)
- 水性弾性セラミシリコン(エスケー化研株式会社)
- ガイナ(日進産業)
- EC-5000PCM(アステックペイント)
- 弾性ビニロックスーパー(ロックペイント株式会社)
- 水性弾性塗料 凹凸外かべ用(アサヒペン)
DANフィラーエポ(日本ペイント)
DANフィラーエポは、日本ペイントが販売している弾性塗料です。
密着力に優れており、塗膜がなめらか・きめ細やかな仕上がりになります。
さらに、透湿性を有するため、結露・凍害・カビの繁殖などを抑える効果があります。
>>DANフィラーエポ / 日本ペイント公式サイト
アレスシルクウォール(関西ペイント)
アレスシルクウォールは、関西ペイントが販売している弾性塗料です。
高い耐久力を誇り、低汚染性があるため、長期間の美観の維持が期待できます。
また、「マイクロパウダー技法」という技術を用いているので、つやムラが生じづらい点も魅力です。
水性弾性セラミシリコン(エスケー化研株式会社)
水性弾性セラミシリコンは、エスケー化研株式会社が販売している弾性塗料です。
耐久性と低汚染性が高く、紫外線や湿気、大気中の粉塵や排気ガスに強いです。
加えて、特殊設計により、カビや藻類などの汚染を防げる衛生的な塗膜に仕上がります。
>>水性弾性セラミシリコン / エスケー化研公式サイト
ガイナ(日進産業)
ガイナ(GAINA)は、日進産業が販売している断熱塗料ですが、弾性もあります。
騒音・結露・臭い・紫外線への対策もできるので、住まいの不満を総合的に改善してくれます。
国土交通大臣から「不燃材料」と認定されているため、遮熱・断熱性を重視したい場合に向いています。
>> ガイナの断熱効果はどのぐらい?性能実験の結果と、塗料の費用やメリット・デメリットを解説
EC-5000PCM(アステックペイント)
EC-5000PCMは、アステックペイントが販売している弾性塗料です。
非常に高い防水性と耐用年数15年以上と言われる抜群の対候性・耐久性が大きな魅力となっています。
ピュアアクリル樹脂が使用されていることによる伸縮性の高さで、外壁のヒビや連動して起こる雨水の侵入を徹底して防いでくれます。
>> EC-5000PCM-IRとは?特徴や製品情報、価格を徹底解説
弾性ビニロックスーパー(ロックペイント株式会社)
弾性ビニロックスーパーは、ロックペイント株式会社が販売している弾性塗料です。
弾性塗料特有の柔軟性のほか低汚染性のため、表面タックが少なく汚れが付きづらいことが特徴です。
塗膜は光沢を持ち保持性も高いことに加えて、作業時の泡が少ないためピンホールができづらいことも魅力と言えるでしょう。
水性弾性塗料 凹凸外かべ用(アサヒペン)
水性弾性塗料 凹凸外かべ用は、株式会社アサヒペンが販売している弾性塗料です。
厚塗りしてもタレにくく塗りやすいほか、防カビ材・防藻材の配合によりカビ・コケの発生を防げることが魅力です。
通販サイトでも比較的手に入りやすいことに加えて、本格的なDIYの経験がない方でも扱いやすい塗料となっています。
>>水性シリコンアクリル外かべ用 / アサヒペン公式サイト
まとめ
弾性塗料の特徴や工法をはじめ、塗装業者の選び方などをご紹介しました。
正確なことは信頼できるプロの塗装業者に相談しないと分かりませんが、大まかにでも「弾性塗料はモルタル壁に向いている」「自力での塗装は難しい」といったことがご理解いただけたかと思います。
この記事を参考に、満足できる外壁塗装のリフォームを検討してみてください。
最後に、本記事の要点を振り返ってみましょう。
弾性塗料とはどんな塗料?
弾性塗料は他の塗料よりもひび割れに強く、塗膜が伸び縮みする性質をもつ塗料です。詳しく知りたい方は弾性塗料とはをご覧ください。
弾性塗料の工法とは?
弾性塗料の工法には、単層弾性工法・複層弾性工法・微弾性工法の3種類があります。
もっと詳しく知りたい方は、こちらもどうぞ!