外壁カバー工法とは、今の外壁を外さずに、上から新しい外壁を張りつける工事のことをいいます。
外壁カバー工法は、張り替え工事よりも費用が安いかわりに、数々の欠点が伴います。
本記事では、
- 「外壁カバー工法がどのような工事か知りたい」
- 「自分の場合、外壁カバー工法がほんとうに最適な工事か知りたい」
- 「工事費用の目安が知りたい、自分の見積もり額が適正か知りたい」
という疑問にお答えできる解説をしていきます。
- 外壁カバー工法の費用は160~220万円が相場
- メリットは、費用の安さ、工期の短さ、防音性・断熱性の向上など
- デメリットは、内部の老朽化は直らないこと、耐震性がわずかながら下がることなど
外壁カバー工法とは
外壁カバー工法とは、古い外壁の上から新しい外壁を重ね張りする工法です。
外壁カバー工法は塗装よりも耐久性の向上を見込めるほか、費用相場は160~220万円と張り替えよりも安価なことから昨今で人気のある工法とされています。
そのほか外壁のデザインを一新できることに加えて、工期の短さや防音性・断熱性の向上などが大きなメリットとして挙げられるでしょう。
一方で劣化が著しい場合はそもそもカバー工法が使えなかったり、古く傷んでいる壁や基礎部分は放置されてしまうので、家の内部の老朽化は止まらないというデメリットも存在します。
外壁カバー工法を検討する際は施工業者との相談のうえ、今後住む予定の期間がどれくらい長いか・現在の外壁の劣化はどの程度かなどを加味して考えることがおすすめです。
▼外壁リフォームの方法や費用相場については以下の記事で詳しく解説しています。
>> 外壁リフォームの主な方法と費用目安
カバー工法には、金属サイディングがおすすめ!
カバー工法では、重量の増加による耐震性の低下リスクの少ない「金属系サイディング」が主流です。
金属系サイディングは軽量であるため耐震性の維持に有効であり、また加工がしやすいため、既存外壁から重ねるカバー工法に最も適した外壁材と言われています。
窯業系サイディングなど、その他の外壁材でも不可能ではありませんが、耐久性・長期的コストを考慮すると金属系サイディングがもっともよいと思われます。
「外壁カバー工法」と「張り替え」・「塗装」を詳しく比較
同じ外壁全体の修理工事である、サイディングの「カバー工法」と「張り替え」「塗装」を比較しました。
比較項目 | カバー工法 | 塗装 | 張り替え |
---|---|---|---|
サイディングの張り方 | 解体せず古い外壁の上から張る | 張らない | 古い外壁を解体してから張る |
費用 | 160~220万円 | 80万円~140万円 | 200~250万円 |
工事の日数 | 2~3週間 | 1~2週間 | 3~4週間 |
野路板(下地)の劣化 | 直せない | 直せない | 直せる |
施工可能なサイディング | 金属系サイディングほぼ一択 | 下地は選ばない | 自由に選べる |
そもそも、外壁カバー工法以外の工事方法にはどんなものがある?
工事方法 | 工事内容 | 工事費用 | 工期 |
---|---|---|---|
カバー工法 | 【低予算な全体修理】 古い外壁を新しい外壁で覆う |
160~220万円 | 2~3週間 |
張り替え | 【全体修理】 古い外壁を外し、新しい外壁を張りつける |
200~250万円 | 3~4週間 |
塗装 | 【メンテナンス】 外壁の塗料を塗り替える |
約50~70万円 | 10~14日間 |
外壁の工事には、カバー工法のほかに「張り替え」と「塗装」があります。
張り替えは、古い外壁を解体・撤去してから新しいサイディングを張る工事です。外壁カバー工法に比べて費用が高いかわりに、劣化や異常の根本解決ができます。 塗装は、外壁の表面の塗料を塗り替え、美観と防水性を向上させる工事です。
外壁にトラブルがおこった場合の修理ではなく、定期的なメンテナンス作業と捉えたほうがよいでしょう。
外壁カバー工法の失敗事例
外壁カバー工法が何かは分かったけど、実際トラブルが起きるのではないか?と不安に感じるかもいらっしゃるのではないでしょうか。
ここではヌリカエ編集部が調査した外壁カバー工法で失敗した・後悔したという事例を紹介します。
失敗事例①:壁の内部結露が発生し、壁の腐食が起こったケース
外壁カバー工法を実施した際に、内部結露が発生してしまった事例をご紹介します。
-
施工から数か月後、室内にジメジメとした湿気が感じられるようになり、調査を行ったところ、壁内部で結露が発生していることが判明しました。原因は、新しい外壁材と既存の外壁の間に十分な通気層が確保されていなかったことです。
このケースでは、施工前の段階で通気層の設計について十分な検討が行われていなかったことが問題でした。
通気層が不足していると、壁内部に溜まった湿気が外に逃げられず、結露を引き起こします。この結露は、建物の内部構造を腐食させたり、カビの発生を促進したりするリスクを高めます。結果的に、外壁だけでなく建物全体の耐久性が損なわれる恐れがあります。
本事例では、追加の修繕工事が必要となり、余計な費用と時間がかかる結果となりました。このような失敗を防ぐためにも、施工前の入念な確認や設計が欠かせません。特に外壁カバー工法では、見えない部分での施工ミスが長期的な問題につながる可能性があるため、慎重な準備が重要です。
失敗事例②:下地の劣化を放置してカバー工法を実施したケース
外壁カバー工法を実施した際に、下地の劣化を見逃してしまった事例をご紹介します。
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施工後、雨漏りが発生し調査を行ったところ、下地が腐食していることが判明しました。原因は、施工前に十分な下地調査が行われず、劣化した状態のまま外壁材を施工してしまったことです。
このケースでは、施工前の下地調査が不十分だったことが問題でした。
外壁カバー工法は既存の外壁に新しい外壁材を重ねる方法のため、下地を直接補修することができません。そのため、下地の劣化や腐食に気づかずに施工を進めると、雨漏りや外壁材の固定力低下といったトラブルが発生する可能性があります。特に下地の傷みが激しい場合、地震や強風といった外部からの衝撃に対する耐久性が大幅に低下する危険性も考えられます。
本事例では、追加の修繕工事が必要となり、予想以上の費用と時間がかかる結果となりました。このような失敗を防ぐためには、施工前に信頼できる業者による十分な下地調査を行い、必要に応じて適切な補修を実施することが欠かせません。
外壁カバー工法の事例と工事費用
全面ブラックの金属サイディングの外壁カバー工法:390万円
所在地 | 愛知県豊田市 |
---|---|
施工内容 | 外壁カバー工法(ガルバリウム鋼板使用)、屋根カバー工法 |
施工費用 | 390万円 |
施工日数 | 4週間 |
依頼先業者 | 地域工務店 |
外壁カバー工法で、古い外壁の上に金属系サイディングを重ね張りしたものです。
元の外壁には、日本で最も普及率の高い「窯業系サイディング」が使用されていました。
もともとは白系のマットな外壁でしたが、新築後の20年でだいぶ色あせていました。
カバー工法により、黒い外観のスタイリッシュな建物に生まれ変わっています。
横張りの金属サイディングの外壁カバー工法:250万円(推定)
施工内容 | 外壁カバー工法(ガルバリウム鋼板・よこ張り) |
---|---|
使用サイディング | アイジー工業「SF-ビレクト」 |
使用カラー | Fクールブラウン |
参考設計価格(税抜) | 250万円(推定) |
門塀のレンガに合うカラーリングはそのままに、現代的でスタイリッシュな外見に生まれ変わりました。
縦張りの金属サイディングの外壁カバー工法:350万円(推定)
施工内容 | 外壁カバー工法(ガルバリウム鋼板・たて張り)、玄関アプローチ、窓開口部の移設、別棟増築 |
---|---|
使用サイディング | アイジー工業「SF-ガルブライトJF」 |
使用カラー | Fクールブラック |
参考設計価格(税抜) | 350万円(推定) |
年月を感じさせるベージュ系の外壁から、クールなブラック系の外壁に変身。
木目の玄関ドアが目を引き、瓦屋根の和の印象が浮かない工夫も。
ブルーの金属サイディングの外壁カバー工法:150万円(推定)
施工内容 | 外壁カバー工法(ガルバリウム鋼板・よこ張り)、屋根カバー工法、玄関アプローチ |
---|---|
使用サイディング | アイジー工業「SP-ビレクト」 |
カラー | クールネイビー |
参考設計価格(税抜) | 150万円(推定) |
外壁・屋根ともにカバー工法を行ない、ホワイトをアクセントにした爽やかなブルーにイメチェン。
広い空のスカイブルーに映えるお家になりました。
外壁カバー工法のメリット・デメリット
ここからは、外壁カバー工法のメリット・デメリットを紹介します。
外壁カバー工法の4つのメリット
工事費用が安い
古い外壁の解体・撤去の作業がないため、張り替えに比べて工事費用が安くなります。工期が短い
同じく、古い外壁の解体・撤去がないため、工事に必要な期間も短くなります。
古い外壁がアスベスト入りの場合にかかる、追加費用がかからない
解体作業がないことで、特殊処理が必要な「アスベスト」が外壁に含まれている家でも、追加費用なしで外壁工事をすることができます。
防音性・断熱性が上がる
外壁カバー工法により壁の厚みが増すことで、理論上は家の防音性と断熱性の向上が期待できます。
あくまでオマケ程度の効果とお考えください。
外壁カバー工法の5つのデメリット
内部の老朽化は放置される
外壁カバー工法では古い外壁を撤去しないので、表面から見えない部分で異常が進行していても、発見することができません。 例えば、下地の木材が腐っていた場合、新しいサイディングを打ち付けてもうまく固定されず、すぐに崩れてしまうリスクが考えられます。
このように、せっかく外壁をしても、すぐにまだ修理が必要になってしまうリスクを納得のうえで工事する必要があります。
家の耐震性が下がる
新しいサイディングが重ね張りされることで、家の重量が増し、耐震性が下がることになります。
構造上耐えられる重さであれば心配ない程度ですが、気になる方もいらっしゃるでしょう。
金属系サイディングしか選べない
ほとんどの外壁カバー工法では、工事後の家の耐震性をなるべく下げないために、軽量な金属系サイディングが用いられます。 そのため、窯業系サイディングなどを使いたい場合には、外壁カバー工法は向きません。
次の工事が高額になる可能性がある
金属系サイディングのうち、「嵌合式(かんごうしき)」という種類で施工された外壁は、将来部分修理をしたい場合、費用が思わぬ高額になることがあります。
嵌合式とは、サイディングのパネル同士を引っ掛け合わせて張りつける方式です。
嵌合式の外壁は、どこか1枚だけを修理しようとしても、上下左右のパネルもはがさなければ修理・交換ができない状況になるため、材料費や工賃が膨れ上がってしまうことがあるのです。
修理に火災保険が使えない
火災保険の対象となる工事は「損害の原状回復」が原則です。
カバー工法のような、「元の壁に別の壁材を重ね張り作業」では、元の状態に戻す工事とは判断されず、補償の対象外と判断されることがほとんどです。
外壁カバー工法が向いているのはこんな人
- 工事予算が少ない人
- 費用の安さを最重視する人
- アスベスト入りの外壁で、追加の撤去費用を払えない人
利点・欠点を検討した結果、外壁カバー工法は外壁内部の異常の発見・修理を諦めるかわりに、費用を安く済ませる工事方法と言えます。
そのため、外壁カバー工法は張り替え工事では予算がどうしても足りない場合以外には、おすすめできないと、私たちは考えています。
また、外壁がアスベスト入りの素材だった場合には、特殊処理の費用の発生を避けるため、撤去工程のないカバー工法を選ぶ方も比較的多くいらっしゃいます。
外壁カバー工法の費用はいくら?
住宅を外壁カバー工法でリフォームした場合の、工事費用や内訳、家の大きさごとの金額の目安についてご説明します。
工事費用は160~220万円が相場
外壁カバー工法にかかる費用相場は、一般的な30坪住宅の場合で160~220万円が相場です。
工事費用の内訳は、新しいサイディングの張り付け工事が「90万円」、内側に張る防水シートや土台の工事が「22万円」、足場代が「15万円」などです。
サイディングの種類と費用を比較
ガルバリウム鋼板やアルミ、ステンレスなどが材料の「金属系サイディング」、セメントと繊維で作られた「窯業系サイディング」、塩化ビニル製の「樹脂系サイディング」、天然木を使用した「木質系サイディング」の4つです。
4種類あるサイディングの目安価格と特徴は以下のとおりです。
サイディングの素材 | 費用相場(材料費) | 性能・特徴 |
---|---|---|
金属系サイディング | 普及品:6,000~8,000円/㎡ | 軽量、高耐久、加工しやすい |
高級品:15,000~20,000円/㎡ | ||
窯業系サイディング | 5,000~6,500円/㎡ | 安価、施工とメンテナンスが簡単 |
樹脂系サイディング | 8,000~10,000円/㎡ | 軽量、シーリングが不要ですき間がない |
木質系サイディング | 8,000~15,000円/㎡ | 味わいと風合いのあるデザイン |
外壁カバー工法の費用内訳
外壁カバー工法が何にいくらぐらいかかるか、実際の見積書と同じ形式で内訳を紹介します。
見積もりをとったあと、単価や費目が適正かどうかの判断にもお役立てください。
外壁面積122㎡の戸建てで行った、外壁カバー工法の工事費用と内訳
費用名目 | 金額 | 備考 |
---|---|---|
仮設足場 | 156,100 | 単価:700円/㎡、足場面積223㎡ |
透湿防水シート | 73,200 | 単価:600円/㎡ |
胴縁取付け | 146,400 | 単価:1,200円/㎡ |
サイディング張り付け | 890,600 | 単価:7,300円/㎡。材料費含む |
目地コーキング | 273,600 | 単価:1,200円/m、施工長228m |
運搬費・諸経費 | 98,950 | ここまでの合計の5~10%が相場 |
合計 | 1,802,735円 | (消費税10%込み) |
上記の計算のもとになった、実際の見積書はこちらから確認できます。
外壁面積100~200㎡での外壁カバー工法の費用試算
上記は外壁面積が122㎡の場合の金額例です。
外壁面積が異なる場合の総工費の相場は以下のように変わります。
外壁面積 | 工事費用 | 備考 |
---|---|---|
100㎡ | 148万円 | 大きさ目安:20坪前後の家 |
120㎡ | 177万円 | 目安:25坪前後の家 |
140㎡ | 207万円 | 目安:35坪前後の家 |
160㎡ | 237万円 | 目安:45坪前後の家 |
180㎡ | 266万円 | 目安:50坪前後の家 |
200㎡ | 296万円 | 目安:55坪前後の家 |
まとめ
外壁カバー工法とは、今の外壁を外さずに上から新しいサイディングを貼り付ける工事のことを指します。
現状の外壁を取り壊す必要がない分、費用が安いことや工期が短いなどメリットもありますが、内部の老朽化は防げないことや耐震性がわずかに下がるというデメリットもあります。
予算をあまり多く用意できない方や、外壁の撤去費用がかさんでしまうアスベスト入りの外壁をリフォーム予定の方におすすめの工法であると言えるでしょう。
本記事の内容が、今後皆様の納得のいくリフォームにつながると幸いです。
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