高いお金がかかる外壁塗装。会社員の方であれば、給与から天引きしておいた財形貯蓄を払い出して塗装費用に充てようとお考えの方もいると思います。
でも、いざ使う時になって
「財形貯蓄って引き出すのに条件がなかったっけ?」
「財形貯蓄の引き出しはどこに言えばできるの?」
など、疑問に直面していませんか?
本記事では、外壁塗装に財形貯蓄が普通に払い出せる場合・ペナルティが発生してしまう場合や、払い出し時の流れなどを、初心者向けにやさしく解説しています。
- 「一般財形貯蓄」は条件なしで払い出し可
- 「財形住宅貯蓄」「財形年金貯蓄」を外壁塗装のために引き出す場合はペナルティあり
- 払い出しには契約している金融機関へ書類提出が必要
財形貯蓄制度とは?
- 給与や賞与から一定額が天引きされ、自動で積み立てられる制度
- 制度は3種類あり、貯蓄の引き出し(払い出し)条件が異なる
- 「財形住宅」「財形年金」は利子の非課税措置が受けられるが、10年積み立てても数百円程度
会社員の方は財形貯蓄制度に入っている方も多いと思います。
貯蓄を外壁塗装に使ってしまってよいかを判断するために、まずはどんな制度だったかをおさらいしましょう。
財形貯蓄制度の3つの種類
財形貯蓄制度には「財形一般貯蓄」「財形住宅貯蓄」「財形年金貯蓄」の3種類あり、それぞれ払い出し時の条件や税制優遇の有無などが異なります。
財形貯蓄の種類 | 払い出し条件 | 利子の非課税措置 |
---|---|---|
財形一般貯蓄 |
|
なし |
財形住宅貯蓄 |
|
あり(元利合計550万円まで) |
財形年金貯蓄 |
|
あり(元利合計550万円まで) |
どの種類でも給与等から天引きで自動積み立てできる点は共通です。
相違点は、「財形一般貯蓄」は積み立てたお金の用途が自由なかわりに利子の非課税措置がないこと。
「財形住宅貯蓄」「財形年金貯蓄」の場合は、利子の優遇措置があるかわりに、引き出す際のお金の用途が制限されており、条件外の場合は優遇された利子がさかのぼって徴収されることです。
外壁塗装に財形貯蓄は使える?
財形貯蓄制度のうち、「一般財形貯蓄」ならば問題なく使用可能です。
「財形住宅貯蓄」と「財形年金貯蓄」を外壁塗装のために払い出すこと自体は可能ですが、非課税措置の取り消しなどのペナルティがあります。
財形貯蓄の種類 | 払い出し可能な条件 | 外壁塗装の可否 |
---|---|---|
一般財形貯蓄 | 条件なし | ○ |
財形住宅貯蓄 | 住宅購入・増改築の資金であること | △ ※ペナルティあり |
財形年金貯蓄 | 契約者が60歳に達すること | △ ※ペナルティあり |
「一般財形貯蓄」を契約の場合
契約している財形貯蓄が「一般財形貯蓄」の場合は、もともと目的や条件に制限がないため、外壁塗装のために貯蓄を引き出すことも問題なく可能です。
「財形住宅貯蓄」を契約の場合
財形住宅貯蓄は、名前から住宅関係の出費には使えそうな気がしますが、残念ながら外壁塗装単独では払い出し目的の対象外となっています。
これは、建築基準法の規定する「大規模修繕・大規模模様替え」に塗装工事は当てはまらないためです。
外壁塗装費用に充てるために財形住宅貯蓄の取り崩しをした場合は「目的外払い出し」となり、非課税扱いを受けた利子が過去にさかのぼって徴収されます。
「(外壁塗装の)単体工事では減税制度を受けることはできません。ただし、対象工事に必然的に付随する場合は建築士判断により対象と出来るケースがあります。」
国土交通省「よくあるお問い合わせ」(エクセルファイル)
ただし、住宅取得や増改築と同時の外壁塗装なら可能性あり
以下のような手続きや工事と同時に行う外壁塗装であれば、財形住宅貯蓄の払い出し要件内となります。
- 住宅取得(購入)
- 持ち家の増改築
- 持ち家の大規模修繕(外壁の張り替え) など
「財形年金貯蓄」を契約の場合
上記の財形住宅貯蓄と同じく「目的外払い出し」となり、積立期間中に非課税とされた利子がさかのぼって徴収されます。
財形貯蓄を外壁塗装用に崩すデメリット
契約しているのが「一般財形貯蓄」の場合は、払い出し時のデメリットはありません。
一方で、契約しているのが「財形住宅貯蓄」「財形年金貯蓄」の場合は、外壁塗装のために払い出しを行う場合、以下のようなデメリットが発生します。
解約金がかかる
目的外払い出しの場合、「解約利子」と呼ばれる解約金がかかります。
財形貯蓄の解約利子は利子を含む総積み立て額の約0.1%前後ですが、契約している金融機関によって異なります。
解約利子の金額は、積み立て期間5年で「約2,000円」、積み立て期間10年で「約4,800円」です(毎月積み立て3万円の場合)。
利子がさかのぼって徴収される
積立中に非課税措置を受けた利子が5年ぶんさかのぼって追徴課税されます。
ただし、もともと利子は微々たる金額ですので、デメリットとは感じづらいと思います。
追徴課税の金額は、積み立て期間5年で「約196円」、積み立て期間10年で「約1,183円」です(毎月積み立て3万円の場合)。
財形貯蓄が自動的に解約となる
積み立て中に目的外払い出しをすると、財形住宅貯蓄ないし財形年金貯蓄は解約となります。
払い出し額も自動的に全額となり、積み立てを継続することはできません。
【シミュレーション】財形貯蓄の解約金
財形住宅貯蓄と財形年金貯蓄では、目的外払い出しをする際に貯めた積立額と利子の合計に応じて解約利子と追徴課税がかかるとご説明しました。
ここでは、毎月の積み立て額が「3万円」「5万円」の場合ぞれぞれで、払い出し時の徴収金額をシミュレーションした結果を公開します。
毎月「3万円」積み立ての場合
「毎月3万円」積み立てていた場合の目的外払い出し時の徴収額は、期間5年間では2,142円(解約しない場合より1,707円の損)、期間10年間では5,828円(同4,058円の損)でした。
積立期間 | 積み立て元利合計 | 徴収額 | 解約差益 |
---|---|---|---|
1年 | 360,015 | 365円 | -350円 |
2年 | 720,066 | 1,161円 | -681円 |
3年 | 1,080,153 | 1,130円 | -1,008円 |
4年 | 1,440,276 | 1,621円 | -1,345円 |
5年 | 1,800,435 | 2,142円 | -1,707円 |
6年 | 2,160,630 | 2,734円 | -2,104円 |
7年 | 2,520,861 | 3,398円 | -2,537円 |
8年 | 2,881,128 | 4,134円 | -3,006円 |
9年 | 3,241,431 | 4,944円 | -3,513円 |
10年 | 3,601,770 | 5,828円 | -4,058円 |
毎月「5万円」積み立ての場合
「毎月5万円」積み立てていた場合の目的外払い出し時の徴収額は、期間5年間では3,576円(解約しない場合より2,841円の損)、期間10年間では9,742円(同6,772円の損)でした。
積立期間 | 積み立て元利合計 | 徴収額 | 解約差益 |
---|---|---|---|
1年 | 600,027 | 608円 | -581円 |
2年 | 1,200,114 | 1,245円 | -1,131円 |
3年 | 1,800,261 | 1,935円 | -1,674円 |
4年 | 2,400,468 | 2,704円 | -2,236円 |
5年 | 3,000,735 | 3,576円 | -2,841円 |
6年 | 3,601,062 | 4,565円 | -3,503円 |
7年 | 4,201,449 | 5,677円 | -4,228円 |
8年 | 4,801,896 | 6,911円 | -5,015円 |
9年 | 5,402,403 | 8,265円 | -5,862円 |
10年 | 6,002,970 | 9,742円 | -6,772円 |
15年 | 9,006,705 | 18,961円 | -12,256円 |
20年 | 12,011,940 | 31,221円 | -19,281円 |
デメリットが発生しない場合
払い出し目的が目的外でも、「家屋が災害等の被害を受けた場合」「医療費の合計が年間200万円を超えた場合」などに該当すれば、税務署の確認を受けることで非課税のまま払い出しが可能です。くわしくは厚生労働省のページの「財形貯蓄、こんなときは」の項をご覧ください。
財形住宅の適格払い出しとなる工事は?
外壁塗装単独の費用は目的外とご説明してきましたが、財形住宅リフォームの目的内払い出しとなる工事はどんなものがあるでしょうか?
工事内容に関する条件
財形住宅貯蓄の適格払い出しとなる工事には大きく6種類あり、「増改築」「外装の張り替え」「内装工事」「耐震化・バリアフリー化・省エネ化」などの条件が定められています。
- 増築、改築、大規模の修繕又は大規模の模様替
- 区分所有する部分について行う一定の修繕又は模様替
- 一定の室の床又は壁の全部について行う修繕又は模様替
- 耐震基準に適合させるための修繕又は模様替
- バリアフリー基準に適合させるための一定の修繕又は模様替
- エネルギーの使用の合理化に資する一定の修繕又は模様替
外壁塗装は1項目めに当てはまりそうですが、残念ながら単独では上記には非該当な工事となります。
行うリフォーム工事が適格払い出し対象であるかどうかは、地域の建築士から証明書を発行してもらい、金融機関への手続き時に添付して証明します。
工事の規模に関する条件
工事の種類以外にも、住宅等の所有者・居住者・工事規模にも条件があります。
- リフォームをするのが財形住宅貯蓄の契約者本人の所有である
- リフォーム後、財形住宅貯蓄の契約者本人が居住する
- リフォームをする住宅の延床面積が50㎡以上である
- 施工費用が75万円以上(税込)である など
うまく増改築やバリアフリー化等の工事と組み合わせて、
財形貯蓄の払い出し手続きの流れ
「一般財形貯蓄」の払い出し手続き
一般財形貯蓄の払い出しは契約者の自由なため、特別な条件はありません。
ただし、貯蓄開始から1年間経過している必要があります。
また、企業内規程で受付時期が決められている場合がありますので、まずは勤務先の総務課や人事課に引き出したい旨を伝えて指示を仰ぎましょう。
「財形住宅貯蓄」「財形年金貯蓄」の目的外払い出し手続き
財形住宅貯蓄や財形年金貯蓄を引き出して外壁塗装に使いたい場合、手続き先は財形住宅貯蓄を契約している金融機関です。
「要件(目的)外払い出し」となるため、全額引き出しのうえ口座解約、解約利子が課税されます。
手続き先
財形住宅貯蓄を契約した金融機関の支店もしくは金融機関コールセンターまで、外壁塗装のための払い出し希望である旨を伝え、手続きをしてください。
主要金融の財形貯蓄に関する問い合わせ先を、以下にまとめました。
金融機関名 | 問い合わせ先 | 公式案内ページ |
---|---|---|
みずほ銀行 | 契約先の各支店 | |
三菱UFJ銀行 |
「財形テレフォンセンター」 0120-31-1288(平日9:00~17:00) |
|
三井住友銀行 | 契約先の各支店 | |
りそな銀行 | 契約先の各支店 |
|
埼玉りそな銀行 | 契約先の各支店 |
|
新生銀行 | 契約先の各支店 | |
ゆうちょ銀行 | 契約先の各支店 |
労働金庫、地方銀行、第二地方銀行、信用金庫、信用組合、証券会社・保険会社の問い合わせ先は「財形制度取扱金融機関一覧」(勤労者財産形成事業本部)をご覧ください。
勤務先の財形貯蓄担当部署(総務課・人事課など)にも事前相談を済ませておきましょう。
まとめ
以上、外壁塗装で使える財形貯蓄の種類やその条件、手続き方法などについて解説しました。
ここまでお読みになって、
「手続きの流れがわからない!」
「外壁塗装を頼む業者の心当たりがない…」
といった場合には、全国の外壁塗装事情にくわしい無料相談窓口
がありますので、ネットから気軽にご質問ください。
最後に、本記事の要点を振り返ってみましょう。
外壁塗装に財形貯蓄でためたお金は引き出せる?
加入しているのが「一般財形貯蓄」かあれば可能、「財形住宅貯蓄」「財形年金貯蓄」の場合はペナルティつきで引き出すことが可能です。詳しく知りたい方は外壁塗装に財形貯蓄は使える?をご覧ください。
財形住宅、財形年金を外壁塗装用に取り崩す場合のペナルティは?
財形が全額解約となること、非課税になるはずだった利子への課税などがあります。ただし、利子への課税はごく少額で、3万円を10年間積み立ていた場合でも約360円です。詳しくは財形貯蓄を外壁塗装用に崩すデメリットは?をご覧ください。
財形住宅をペナルティなしで払い出しできる条件は?
住居の増改築、外装の張り替え、内装工事や耐震・バリアフリー・省エネ化などの工事が条件です。また、リフォーム費用や、建物の床面積、所有者・居住者に関する条件もあります。詳しくは条件に当てはまらないと払い出しはできない?をご覧下さい。
財形貯蓄の引き出し手続きにはどんな書類が必要?
財形貯蓄を契約している金融機関の支店への問い合わせのほか、勤務先の総務課にも報告をしておきましょう。詳しくは財形貯蓄の払い出し手続きの流れをご覧ください。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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