内装解体をするケースと言えば、退去時が多いです。引き渡し時の原状回復のために行う工事が、イメージしやすいかと思います。そのほか、アパートやマンションのオーナーが、リフォーム前に内装解体を行うこともあるでしょう。
気になるのは、その際の工事単価はいくらかという点でしょう。現時点では解体発注の予定がないとしても、移転や老朽化で必要になることがあるかもしれません。予算を準備しておくためにも、内装解体工事の相場を確認してみましょう。
内装解体工事の種類
内装工事の単価を知る前に、内装工事の種類に関して把握しておきましょう。内装工事は3種類に大分され、それぞれA工事、B工事、C工事と呼ばれています。A工事は、ビルなど建物のオーナーが工事費を負担し、自ら発注する工事のことです。ビル全体に関わる工事を行うもので、廊下やエレベータなどの共有部分や、インフラ整備などが主です。建物の資産価値を維持するための工事を指します。
B工事より先にC工事を説明しますと、こちらは内装工事としてイメージしやすいでしょう。テナント(入居者)が使いやすいようにするための工事を指し、専有部分のみの工事で、LANなどの配線工事や、カウンター設置などです。
B工事は、テナントがオーナーに依頼して工事を行うものです。C工事と混同しがちですが、テナント側の都合による変更でも、ビル全体に関わるものを指します。
例えば、空調や電気設備の変更、給排気の設備、防災に関する補強工事などです。B工事はビル全体にも関わるため、テナントが勝手に業者を決めて、工事を発注してはなりません。費用はテナントの負担ながら、オーナーに依頼して発注してもらうことになります。
B工事に関わる問題点
しばしば問題になるのが、B工事に関する費用です。A工事やC工事のように、発注側と支払側が一致していれば、相見積や値段交渉を行うでしょう。しかし、B工事に関しては発注側に支出がないため、費用を考慮する必要がありません。オーナーは、建築を依頼した際の業者に、そのままお願いするケースが多いです。よって、テナントは競争原理が働かない費用を支払わねばなりません。そのため、テナントである場合は、オーナーとしっかり話し合いをすることをおすすめします。
内装解体工事の坪単価
リフォーム含む内装工事全体となると、使われる素材等で価格が大きく異なります。ここでは、解体のみについて説明します。また、A工事やB工事は、相場から1.25〜2倍程度の価格になることが多いため省略します。また、C工事をする場合でも、物件の種類によって金額に変動があります。それぞれについて詳しく見てみましょう。マンション
居住用のマンションの場合、1坪あたりの相場は15,000円〜40,000円程度です。ただし、見積書には1m2あたりの単価で書かれることが多くみられます。実際にあった解体工事の事例で見てみると、30坪のマンション内装解体の総額は約90万円でした。内訳としては下記の通りです。
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30坪(99m2)のマンションだと3LDKくらいのマンションに相当します。キッチンは別で解体するため、単純に「間取りの広さ×単価」にはなりません。スケルトン解体工事自体は1m2あたり6,000円なので、坪単価は18,000円で相場内となっています。しかし、厨房の解体やエレベータや廊下などの養生費は別です。この物件の場合は、常駐のガードマンもいました。
さらに、廃材の運搬や処分費が加わります。廃材は木材とコンクリートガラ、その他の産廃の1tあたりの単価が加算されています。この物件では8tの廃材が出ました。これらの合計額に消費税が加算されると、約90万円になります。
アパート
居住用アパートの内装解体も、マンションとそれほど違いはありません。ただ、単価は少し安く13,000円〜40,000円程度が相場です。ただし、アパートの場合は賃貸なので、居住者が内装解体を依頼することは少なく、事例は確認できませんでした。アパート全体のリフォームで、オーナーが依頼することが多いようです。
オフィス
ビル内のオフィスの場合は、退去時に原状回復として、内装解体工事を依頼するケースが多いです。相場は1坪あたり、6,000円〜38,000円が相場とされています。ただし、原状回復の程度にもよるので、価格の開きは大きいです。3つほど内訳の事例を紹介しましょう。【事例1.10坪のオフィスの原状回復】
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【事例2.70坪のオフィスのパーテーション撤去】
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【事例3.トイレを含む2階建てオフィスの内装解体】
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三つ目の事例については、産廃処分費が込みなのか不明ですが、価格に開きがあることは分かったと思います。家具や什器の撤去が入ると高くなるため、解体に不要なものは排除しておきましょう。
飲食店
飲食店は厨房設備の解体と処分が含まれるため高くなりがちです。それらがなく、内装解体だけの相場であれば1坪あたり15,000円〜40,000円となっています。安く済んだ解体工事とわりと高めの解体の2つの事例を見てみましょう。高いほうがどうしてその値段になったのかに注目すると、わかりやすいです。
【事例1.12坪の飲食店の内装解体】
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【事例2.11坪の飲食店の内装解体】
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坪数は事例2のほうが少ないですが、値段は高いです。このように、解体する範囲や残置物の量で、価格は変わってきます。参考までに、別の事例でかかった金額についても記載しておきます。
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ショップ(物販)
物販のショップの場合も、どれだけの工事が必要かで全く異なりますが、一般的な解体の場合は、1坪あたり13,000円〜42,000円が相場です。再び事例を見てみましょう。20坪の洋品店を原状回復のためスケルトンにする例です。
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こちらは、入居時がスケルトンだったということでしょう。自分好みの内装にするべく、手を入れた部分全てを撤去するため、項目がかさんでいます。とはいえ、1m2あたりの単価がとても良心的なので、金額自体は膨れていません。
内装解体の事前準備と工事の流れ
内装解体の工事をするまでの流れを把握しましょう。内装解体工事は勝手に発注して終わり、というわけにはいきません。具体的な流れについて、順を追って解説します。1.オーナーとの打ち合わせ
オーナーと事前に打ち合わせることは必須です。B工事にしろC工事にしろ、内装解体をする際には廃材が出るため、搬出ルートの確保が必要となります。また、騒音も配慮すべく、同建物内の各テナントにお知らせをしてもらう必要もあります。これは、オーナー抜きでは進められないため、内装工事を依頼する前に、オーナーと相談をしておきましょう。
工事区分は事前に確認しておこう
A工事はともかく、B工事とC工事の区分は建物によって異なります。排気口やエアコン、配管、配線などが分かれやすいところです。これらの区分がどうなるかを、オーナーに確認しておく必要があります。自らの発注でよいC工事の範囲を定めてから、見積依頼に入りましょう。また、原状回復といっても、テナントとオーナーで意見が分かれてしまうこともあります。この食い違いがあるまま工事をしても、スムーズに引き渡せなくなるので要注意です。したがって、原状回復仕様書を、よく確認してください。
2.業者による調査
最初に業者へ声掛けするときに出てくるのは、仮見積もりです。仮見積もりは、依頼者から聞いた話や資料だけで見積もりをするものです。つまり、現場を見たあとで変動します。その理由は、プロの目にしかわからない条件の違いがあるからです。実際には室内のみならず、搬出ルートや駐車場の有無なども費用に関係します。
複数社への見積り(相見積)が基本
一つの業者だけに見積を頼むと比較ができず、高いのか安いのかがわかりません。また、不要な作業が紛れ込んでいても、素人には確認できないでしょう。それらをチェックする意味でも、複数社に見積もり依頼をすることが基本となります。とはいえ、自分で複数社を探し出して見積もりを取ることは、なかなか大変です。そんなときは、複数社の一括見積が可能なヌリカエを利用しましょう。
3.近隣への挨拶
工事を発注する目処が立ったら、近隣へ挨拶をしましょう。基本的には、工事予定日を伝える意味での挨拶ですが、予定日を決める前のほうがよい場合もあります。それは、テナントビルで他の店舗から工事日の要望が出るケース。たとえば「この日はイベントがあるのでどうしても工事しないで欲しい」などです。この点は、オーナーに相談して確認することをおすすめします。挨拶はテナント個人で行くのではなく、解体業者と一緒に行きましょう。工事に関する質問や要望を言われても、個人では対応しきれないからです。
4.工事予定日の擦り合わせ
業者と工事予定日を摺合せます。予定日は、事前準備に必要な期間も考慮して定めましょう。決まったらオーナーに知らせ、ビルに貼り紙をしてもらうなどの準備も必要です。5.事前準備
工事の発注までは、完了してもそれで終わりにはなりません。絶対にやっておかなければならないことがあります。そして、やっておいたほうが費用を抑えられることを紹介します。ライフラインの停止
ライフラインを停止することは必須です。ガス、電気の供給をストップさせておかなければ、作業になりません。また、インターネットも停止しておきましょう。水道に関しては、作業で使う場合があるので、業者への確認が必要です。役所への届出
役所への各種届出も業者がやってくれることがありますが、自分でやっておけば、その分の費用を抑えられます。届出には次のようなものがあります。
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不用品の排除
解体する際に、不用品の撤去まで依頼すると金額が大きくなってしまいます。よほど急ぎの工事でなければ、備品は工事前に処分しておきましょう。椅子やテーブル、棚などは解体業者に頼むより、リサイクルショップに依頼して買い取ってもらったほうがお得です。エアコンや厨房、大型冷蔵庫などを取り扱ってくれるリサイクルショップもあります。
解体工事の流れ
どこをどう壊していくかは、物件によります。全般的な流れとしては、まず搬出ルートの養生です。建物に傷がつかないように、守る役目があります。これが完了したら、まず什器や残された物品を搬出し、内装の解体にとりかかります。天井や壁などから始めて、最後に床を剥がします。剥がす作業を「ハツリ」と呼ぶので覚えておきましょう。最後に塵などを掃除して終了です。