外壁カバー工法とは、今の外壁を外さずに、上から新しい外壁を張りつける工事のことをいいます。
外壁カバー工法は、張り替え工事よりも費用が安いかわりに、数々の欠点が伴います。
本記事では、
- 「外壁カバー工法がどのような工事か知りたい」
- 「自分の場合、外壁カバー工法がほんとうに最適な工事か知りたい」
- 「工事費用の目安が知りたい、自分の見積もり額が適正か知りたい」
という疑問にお答えできる解説をしていきます。
- 外壁カバー工法の費用は160~220万円が相場
- メリットは、費用の安さ、工期の短さ、防音性・断熱性の向上など
- デメリットは、内部の老朽化は直らないこと、耐震性がわずかながら下がることなど
外壁カバー工法とは
外壁カバー工法とは、古い外壁の上から新しい外壁を重ね張りする工法です。
外壁カバー工法は塗装よりも耐久性の向上を見込めるほか、費用相場は160~220万円と張り替えよりも安価なことから昨今で人気のある工法とされています。
そのほか外壁のデザインを一新できることに加えて、工期の短さや防音性・断熱性の向上などが大きなメリットとして挙げられるでしょう。
一方で劣化が著しい場合はそもそもカバー工法が使えなかったり、古く傷んでいる壁や基礎部分は放置されてしまうので、家の内部の老朽化は止まらないというデメリットも存在します。
外壁カバー工法を検討する際は施工業者との相談のうえ、今後住む予定の期間がどれくらい長いか・現在の外壁の劣化はどの程度かなどを加味して考えることがおすすめです。
外壁カバー工法の費用はいくら?
住宅を外壁カバー工法でリフォームした場合の、工事費用や内訳、家の大きさごとの金額の目安についてご説明します。
工事費用は160~220万円が相場
外壁カバー工法にかかる費用相場は、一般的な30坪住宅の場合で160~220万円が相場です。
工事費用の内訳は、新しいサイディングの張り付け工事が「90万円」、内側に張る防水シートや土台の工事が「22万円」、足場代が「15万円」などです。
外壁カバー工法の費用内訳
外壁カバー工法が何にいくらぐらいかかるか、実際の見積書と同じ形式で内訳を紹介します。
見積もりをとったあと、単価や費目が適正かどうかの判断にもお役立てください。
外壁面積122㎡の戸建てで行った、外壁カバー工法の工事費用と内訳
費用名目 | 金額 | 備考 |
---|---|---|
仮設足場 | 156,100 | 単価:700円/㎡、足場面積223㎡ |
透湿防水シート | 73,200 | 単価:600円/㎡ |
胴縁取付け | 146,400 | 単価:1,200円/㎡ |
サイディング張り付け | 890,600 | 単価:7,300円/㎡。材料費含む |
目地コーキング | 273,600 | 単価:1,200円/m、施工長228m |
運搬費・諸経費 | 98,950 | ここまでの合計の5~10%が相場 |
合計 | 1,802,735円 | (消費税10%込み) |
上記の計算のもとになった、実際の見積書はこちらから確認できます。
外壁面積100~200㎡での外壁カバー工法の費用試算
上記は外壁面積が122㎡の場合の金額例です。
外壁面積が異なる場合の総工費の相場は以下のように変わります。
外壁面積 | 工事費用 | 備考 |
---|---|---|
100㎡ | 148万円 | 大きさ目安:20坪前後の家 |
120㎡ | 177万円 | 目安:25坪前後の家 |
140㎡ | 207万円 | 目安:35坪前後の家 |
160㎡ | 237万円 | 目安:45坪前後の家 |
180㎡ | 266万円 | 目安:50坪前後の家 |
200㎡ | 296万円 | 目安:55坪前後の家 |
外壁カバー工法のリフォーム事例
戸建住宅を外壁カバー工法でリフォームしたビフォーアフターを、費用や日数、使用素材など一緒に5例ご紹介します。
築20年住宅の外壁を金属系サイディングでカバー工法
所在地 | 愛知県豊田市 |
---|---|
施工内容 | 外壁カバー工法(ガルバリウム鋼板使用)、屋根カバー工法 |
施工費用 | 390万円 |
施工日数 | 4週間 |
依頼先業者 | 地域工務店 |
外壁カバー工法で、古い外壁の上に金属系サイディングを重ね張りしたものです。
元の外壁には、日本で最も普及率の高い「窯業系サイディング」が使用されていました。
もともとは白系のマットな外壁でしたが、新築後の20年でだいぶ色あせていました。
カバー工法により、黒い外観のスタイリッシュな建物に生まれ変わっています。
レンガ調ツートンカラーから、モダンなブラウン系の家に
施工内容 | 外壁カバー工法(ガルバリウム鋼板・よこ張り) |
---|---|
使用サイディング | アイジー工業「SF-ビレクト」 |
使用カラー | Fクールブラウン |
参考設計価格(税抜) | 8,400円/㎡ |
門塀のレンガに合うカラーリングはそのままに、現代的でスタイリッシュな外見に生まれ変わりました。
ベージュ系から、ブラックとワンポイントの木目が映えるカラーリングに
施工内容 | 外壁カバー工法(ガルバリウム鋼板・たて張り)、玄関アプローチ、窓開口部の移設、別棟増築 |
---|---|
使用サイディング | アイジー工業「SF-ガルブライトJF」 |
使用カラー | Fクールブラック |
参考設計価格(税抜) | 8,400円/㎡ |
年月を感じさせるベージュ系の外壁から、クールなブラック系の外壁に変身。
木目の玄関ドアが目を引き、瓦屋根の和の印象が浮かない工夫も。
古い倉庫風の見た目から、ソリッドなブラックのガレージ風建物に
施工内容 | 外壁カバー工法(ガルバリウム鋼板・たて張り)、開口部(窓、シャッター)移設、バルコニー設置 |
---|---|
使用サイディング | アイジー工業「SF-ガルスパンJ」 |
使用カラー | Fダークメタリック |
参考設計価格(税抜) | 8,400円/㎡ |
退色と錆びが目立つ外見を、同じ金属系のサイディングで張り替え。
出入りする部分には木を使用することで、メタリックな印象のなかにメリハリも。
くすんだ印象の住宅から、ブルーの映える爽やかな外観に
施工内容 | 外壁カバー工法(ガルバリウム鋼板・よこ張り)、屋根カバー工法、玄関アプローチ |
---|---|
使用サイディング | アイジー工業「SP-ビレクト」 |
カラー | クールネイビー |
参考設計価格(税抜) | 8,400円/㎡ |
外壁・屋根ともにカバー工法を行ない、ホワイトをアクセントにした爽やかなブルーにイメチェン。
広い空のスカイブルーに映えるお家になりました。
外壁カバー工法で人気のデザイン傾向
収集した事例から、外壁カバー工法では家のデザインを以下のように変える方が比較的多いとがわかりました。
- 金属系サイディング使用による、メタリックな印象に
- ブラック、グレーなどの濃色系の製品が多い
- 1色のみだと無機質な印象、2色以上だとモダンな印象に
「ガルバリウム外壁材のデザイン種類」について詳しく知りたい方は、下記の記事もご覧ください。
>>「ガルバリウム鋼板外壁材のデザインパターンと施工事例15選。イメージ通りにリフォームするには?」
外壁カバー工法の4つの利点
工事費用が安い
古い外壁の解体・撤去の作業がないため、張り替えに比べて工事費用が安くなります。工期が短い
同じく、古い外壁の解体・撤去がないため、工事に必要な期間も短くなります。
古い外壁がアスベスト入りの場合にかかる、追加費用がかからない
解体作業がないことで、特殊処理が必要な「アスベスト」が外壁に含まれている家でも、追加費用なしで外壁工事をすることができます。
防音性・断熱性が上がる
外壁カバー工法により壁の厚みが増すことで、理論上は家の防音性と断熱性の向上が期待できます。
あくまでオマケ程度の効果とお考えください。
外壁カバー工法の5つの欠点
内部の老朽化は放置される
外壁カバー工法では古い外壁を撤去しないので、表面から見えない部分で異常が進行していても、発見することができません。 例えば、下地の木材が腐っていた場合、新しいサイディングを打ち付けてもうまく固定されず、すぐに崩れてしまうリスクが考えられます。
このように、せっかく外壁をしても、すぐにまだ修理が必要になってしまうリスクを納得のうえで工事する必要があります。
家の耐震性が下がる
新しいサイディングが重ね張りされることで、家の重量が増し、耐震性が下がることになります。
構造上耐えられる重さであれば心配ない程度ですが、気になる方もいらっしゃるでしょう。
金属系サイディングしか選べない
ほとんどの外壁カバー工法では、工事後の家の耐震性をなるべく下げないために、軽量な金属系サイディングが用いられます。 そのため、窯業系サイディングなどを使いたい場合には、外壁カバー工法は向きません。
次の工事が高額になる可能性がある
金属系サイディングのうち、「嵌合式(かんごうしき)」という種類で施工された外壁は、将来部分修理をしたい場合、費用が思わぬ高額になることがあります。
嵌合式とは、サイディングのパネル同士を引っ掛け合わせて張りつける方式です。
嵌合式の外壁は、どこか1枚だけを修理しようとしても、上下左右のパネルもはがさなければ修理・交換ができない状況になるため、材料費や工賃が膨れ上がってしまうことがあるのです。
修理に火災保険が使えない
火災保険の対象となる工事は「損害の原状回復」が原則です。
カバー工法のような、「元の壁に別の壁材を重ね張り作業」では、元の状態に戻す工事とは判断されず、補償の対象外と判断されることがほとんどです。
外壁の種類と施工費用
外壁材は、素材によって大きく4種類に分かれます。
外壁カバー工法では、どの外壁材を使えばいいのでしょうか?
カバー工法に向くサイディング
カバー工法では、重量の増加による耐震性の低下リスクの少ない「金属系サイディング」が主流です。
「サイディングの種類」「ガルバリウム鋼板の価格」を詳しく知りたい方は、下記の記事もご覧ください。
>>「【種類別比較】サイデイングとは?種類と特徴を比較して解説」
>>「ガルバリウム鋼板外壁のおすすめ製品7選!施工費用やメリット・デメリットも」
サイディングの種類と費用を比較
ガルバリウム鋼板やアルミ、ステンレスなどが材料の「金属系サイディング」、セメントと繊維で作られた「窯業系サイディング」、塩化ビニル製の「樹脂系サイディング」、天然木を使用した「木質系サイディング」の4つです。
4種類あるサイディングの目安価格と特徴は以下のとおりです。
サイディングの素材 | 費用相場(材料費) | 性能・特徴 |
---|---|---|
金属系サイディング | 普及品:6,000~8,000円/㎡ | 軽量、高耐久、加工しやすい |
高級品:15,000~20,000円/㎡ | ||
窯業系サイディング | 5,000~6,500円/㎡ | 安価、施工とメンテナンスが簡単 |
樹脂系サイディング | 8,000~10,000円/㎡ | 軽量、シーリングが不要ですき間がない |
木質系サイディング | 8,000~15,000円/㎡ | 味わいと風合いのあるデザイン |
外壁カバー工法がおすすめの人、おすすめできない人
結論:外壁カバー工法が向いているのはこんな人
- 工事予算が少ない人
- 費用の安さを最重視する人
- アスベスト入りの外壁で、追加の撤去費用を払えない人
利点・欠点を検討した結果、外壁カバー工法は外壁内部の異常の発見・修理を諦めるかわりに、費用を安く済ませる工事方法と言えます。
そのため、外壁カバー工法は張り替え工事では予算がどうしても足りない場合以外には、おすすめできないと、私たちは考えています。
また、外壁がアスベスト入りの素材だった場合には、特殊処理の費用の発生を避けるため、撤去工程のないカバー工法を選ぶ方も比較的多くいらっしゃいます。
そもそも、外壁カバー工法以外の工事方法にはどんなものがある?
工事方法 | 工事内容 | 工事費用 | 工期 |
---|---|---|---|
カバー工法 | 【低予算な全体修理】 古い外壁を新しい外壁で覆う |
160~220万円 | 2~3週間 |
張り替え | 【全体修理】 古い外壁を外し、新しい外壁を張りつける |
200~250万円 | 3~4週間 |
塗装 | 【メンテナンス】 外壁の塗料を塗り替える |
約50~70万円 | 10~14日間 |
外壁の工事には、カバー工法のほかに「張り替え」と「塗装」があります。
張り替えは、古い外壁を解体・撤去してから新しいサイディングを張る工事です。外壁カバー工法に比べて費用が高いかわりに、劣化や異常の根本解決ができます。 塗装は、外壁の表面の塗料を塗り替え、美観と防水性を向上させる工事です。
外壁にトラブルがおこった場合の修理ではなく、定期的なメンテナンス作業と捉えたほうがよいでしょう。
「サイディングの張替え」「サイディング塗装」について詳しく知りたい方は、下記の記事もご覧ください。
>>「サイディング張り替え工事の利点・欠点は?外壁はどれがおすすめ?」
>>「サイディング塗装はなぜ必要?正しい時期と方法は?DIYで塗装できる?」
「外壁カバー工法」と「張り替え」を詳しく比較
同じ外壁全体の修理工事である、サイディングの「カバー工法」と「張り替え」を比較しました。
比較項目 | カバー工法 | 張り替え |
---|---|---|
サイディングの張り方 | 解体せず古い外壁の上から張る | 古い外壁を解体してから張る |
費用 | 160~220万円 | 200~250万円 |
工事の日数 | 2~3週間 | 3~4週間 |
野路板(下地)の劣化 | 直せない | 直せる |
施工可能なサイディング | 金属系サイディングほぼ一択 | 自由に選べる |
外壁カバー工法の工程・日数
外壁カバー工法は以下のような流れで進みます。
工事の所要日数は約2週間です。
①既存外壁のチェック・補修
既存外壁が雨漏りを起こしていないか、継ぎ目の劣化はないかなどをチェックし、必要があれば補修をします。
外壁カバー工法では、既存の外壁が新しいサイディングを打ち付ける土台になるので、先にしっかりチェックします。
大きな異常がある場合は、カバー工法で工事ができないと判断される場合もあります。
②仮設足場の組立
高所作業用の足場を設置します。
足場は、全体の工程が終わった後に解体します。
③土台水切りの設置
外壁材を張る前に、外壁の下端に土台水切りを設置します。
設置により、水が中に侵入するのを防ぐ効果があります。
「土台水切り」とは?
土台水切りとは、外装の下端に取り付けられる部材です。土台水切りの設置によって、床下の換気や壁内の通気を確保することができます。
④胴縁の留め付け
既存外壁の表面に、新しいサイディングを打ち付ける「胴縁(どうぶち)」を張り付けます。
サイディングを直張りせず、胴縁をはさんで張ることにより、完成後の外壁内の通気性が高まり、雨漏りや結露を防ぐことができます。
外壁サイディングを横張りする場合胴縁は垂直方向に、サイディングを縦張りする場合は胴縁は水平方向に留め付けられます。
⑤見切り材の取り付け
窓サッシなどの周辺に、必要に応じて見切り材を取り付けます。
カバー工法の場合、新しいサイディングや胴縁の厚みが増えることで、既存の窓サッシが奥に引っ込んでしまうことがあります。
そこで、蓋のような役割をする「見切り材」を取り付け、既存サッシと新しい壁のあいだに空間ができてしまうことを防げます。
⑥サイディングの張り付け
新しいサイディング材を張り付けます。
横張りの場合、土台水切りをつけた一番下端から上に向かって貼るのが一般的です。
また、外壁カバー工法には軽量な金属系サイディングがほとんとの場合使用されます。
新しいサイディングをすべて貼り終えた状態です。
⑦防水箇所のコーキング
窓まわりの開口部や、室内から出ているエアコンのホース周辺に、防水のためコーキング材を充填します。
その後、コーキングが固まるまで3日以上乾燥させます。
⑧完了・引き渡し
仕上がりのチェックや、必要に応じて手直しを行います。
最後に足場を解体すれば、サイディングカバー工法の工事は完了です。
外壁カバー工法の良い業者の探し方
サイディングのカバー工法を検討中に、やりとりしている業者の腕や提示費用に不安を感じた場合は、他の業者からも「相見積もり」をとることがオススメです。
3~4社ほどの業者から相見積もりをとることで、
- ・あなたの適正金額が見えてくる
- ・業者の説明力や人柄が比べられる
- ・感じの悪い業者を避けられる
という利点があります。
とくに外壁工事は、業者により得意な工法や外壁材がバラバラなため、あとでもっと安く済んだ例を知り、後悔する人も多いのです。
相見積もりで、やりたい工事にピッタリな得意分野をもつ業者に出会えれば、かならず耐久年数は長くなり、工事費用は安くなります。
「相見積もりをとりたくても、業者に心当たりがない…」という方は、よろしければこのページの料金計算ツールや診断ボタンから、相見積もり照会をぜひご利用ください。
当サービスを経由して相見積もりをしていただいた方へのサービスとして、業者へのキャンセル連絡が必要な場合に、お客様にかわって当社が連絡をお引き受けいたします。
まとめ
外壁カバー工法とは、今の外壁を外さずに上から新しいサイディングを貼り付ける工事のことを指します。
現状の外壁を取り壊す必要がない分、費用が安いことや工期が短いなどメリットもありますが、内部の老朽化は防げないことや耐震性がわずかに下がるというデメリットもあります。
予算をあまり多く用意できない方や、外壁の撤去費用がかさんでしまうアスベスト入りの外壁をリフォーム予定の方におすすめの工法であると言えるでしょう。
本記事の内容が、今後皆様の納得のいくリフォームにつながると幸いです。