[画像背景出典:NCK販売株式会社]
本記事では、遮熱塗料のひとつ「アドグリーンコート®」についてご説明します。
「アドグリーンコート®」を業者からすすめられて知った方、
ネットで遮熱塗料を調べていて「アドグリーンコート®」の評判を目にした方が
次に気になるであろう、
・アドグリーンコート®のメリット、デメリット
・アドグリーンコート®をオススメできる人
・アドグリーンコート®が向かない場合、他の選択肢
までがわかる解説を行っていきます。
読者のみなさまの、屋根リフォームのお役に立てれば幸いです。
- 「アドグリーンコート®」は、有害物質の含有が少なく「安全・低刺激」
- 他の遮熱塗料にはない「放熱機能」あり
- 費用は高め。耐用年数でみても安くはない
- 取扱業者がまだ少なく、近隣で見つからない場合も
尚、こちらの記事での価格・耐用年数は執筆時点の情報をもとに紹介しています。
「アドグリーンコート®」とは? 「遮熱塗料」とは?
「アドグリーンコート®」とは?
「アドグリーンコート®」とは、日本中央研究所株式会社が開発した、屋根用遮熱塗料のシリーズです。シリーズの内訳は全2種類です。
比較的マットなカラーをラインナップにもつ「アドグリーンコート®EX」と、
はっきり光沢がわかるカラーの「アドグリーンコート®GL」に分かれています。
どちらも水系のシリコン樹脂塗料で、他社の多くのシリーズのように、樹脂の違いによるバリエーションはありません。
【表:「アドグリーンコート®」ラインナップ】
品名 | 樹脂 | 耐用年数 | 色数 | 設計価格(*) |
---|---|---|---|---|
アドグリーンコート®EX | 水性・シリコン | 8~12年 | 14色・3分ツヤ | 3,500円/㎡ |
アドグリーンコート®GL | 22色・5分ツヤ |
*設計価格は、下塗り材に「アドクールシーラー」を使用し、下塗り1回・上塗り2回の場合。
住宅の屋根に多い濃色系カラーは「EX」に集中しています。業者からの見積り等で本塗料を知った方には「アドグリーンコート®EX」の名前を目にした方が多いと思います。
「遮熱塗料」とは? 使ったほうがいいの?
そもそも「遮熱塗料」は、普通の塗料(汎用塗料)とどう違うのでしょうか。
遮熱塗料とは、汎用の「シリコン塗料」や「フッ素塗料」に遮熱効果をもたせたもので、
ひと言でいうと「太陽光を跳ね返す力が強い塗料」のことを言います。
この効果により、
・夏場の室内の暑さを和らげる
・夏場の冷房代を節約する
・住宅の熱損傷をおさえる
効果が期待できます。
汎用塗料に比べて、価格は約2%高くなりますが、冷房代の削減や、建材が長持ちすることで元を取ることができるので、
ヌリカエ編集部では「屋根の塗装には遮熱塗料の検討をオススメ」しています。
使用によって冬場の暖房効率が少し下がってしまいますが、夏場冷房効率アップの効果のほうが大きいので、さほど気にする必要はありません(*1)。
続いて、遮熱塗料のなかでも「アドグリーンコート®」を検討する場合の判断材料を見ていきましょう。
*1 環境省の調査によると、「アドグリーンコート®EX」の空調代削減効率について、冬場の暖房効率減少を差し引いても「東京都で1,658円/年」「大阪府で7,034円/年」の電気代が節約できるとの実験結果が出ています。[ 「ヒートアイランド対策技術(建築物外皮による空調負荷低減等技術)実証試験報告書」アドグリーンコート®EXより。2019年8月15日閲覧 ]
「アドグリーンコート®」の特徴、メリットとデメリット
アドグリーンコート®のメリット
安全・低刺激
「アドグリーンコート®」は遮熱塗料のなかでは、
安全性が高く、環境負荷の少ない塗料と言えます。
その理由は、光化学スモッグの原因物質でもある「VOC」(揮発性有機化合物)の含有量が少ないためです。
多くの遮熱塗料が属している溶剤系(油性)塗料に比べて、VOCの含有量は「約1/4~1/9」(*2)。これは水性塗料であるアドグリーンコート®のアドバンテージと言えます。
塗装中のシンナー臭や、目や喉への刺激をなるべく抑えたい方は、「アドグリーンコート®」をはじめとした水性塗料を選択することで、臭気や刺激の軽減が期待できるでしょう。
日本国内では、環境省「エコマーク」「カーボン・オフセット認証ラベル」に認定。海外では、シンガポール環境省の認定する「グリーンラベル」、台湾環境省の「グリーンマーク」、中環連合(北京)環境認証センター有限公司の「中国環境ラベルプログラム」などに合格。環境配慮を意識した製品といえます。
独自の「放熱設計」
「アドグリーンコート®」には、遮熱機能によって反射しきれなかった熱を、溜め込まずに塗膜から排出する働きが強化されています。
仕組みは、遮熱機能をもつセラミック成分を、より粒が小さく形状も揃った「真球ナノ・ファインセラミックス」にすることにより、熱の抜けをよくする働きが生まれるためです。これにより、 塗膜より奥に届いた熱を、再び空気中に逃がしやすくする効果が期待できます。
また、「アドグリーンコート®」は遮熱機能も高水準です。
日射反射率(近赤外線)では、もっとも効果が高い白色で「86.8%」。日本の屋根に多い黒色では「53.5%」。
これは、エスケー化研「クールタイト」の白色「80%以上」黒色「40~50%」より高く、日進産業「ガイナ」の同「89.5%」(ガイナは淡色系のみ)に次ぐ性能です。
仕上がりが滑らかで、きれいな状態が長持ち
前項「放熱設計」でも触れた「真球ナノ・ファインセラミックス」の効果により、塗り上がりが滑らかで見栄えが良くなりやすい塗料です。
粒が小さく形状も揃った極小のセラミックス粒子により、凹凸が少ない塗面になりやすいことが理由です。
また、表面の滑らかさは、雨や泥などの汚れの定着も防ぐので、良好な状態が「長持ち」しやすくしてくれます。
アドグリーンコート®のデメリット
取扱業者がまだ少ない
「アドグリーンコート®」は、メーカーの認定を受けた「認定施工店」のみが扱える塗料です。
この認定施工店ですが、2019年時点では全国で207店(*3)でした。県によっては認定施工店がない所もあり、全国におけるカバー率は決して高いとは言えません。
アドグリーンコート®を希望しても、身近な業者が扱っていないということも想定しなければならないでしょう。
気になる業者には取り扱い可否を確認しましょう。
*3 メーカー公式ページ調べ。2019年8月15日時点。
濃い色が少なめ
「サーモアイ」「クールタイト」に比べると、濃色系のカラーバリエーションが少ない塗料です。
希望の色は、これらの塗料のほうが見つかりやすいかもしれません。
また、濃色カラーの日射反射率も、「サーモアイ」に一歩譲ります。同じブラックで比較すると、アドグリーンコート®のネオブラック53.5%よりも、サーモアイSiのクールブラック61.0%の方が高くなっています。
初期費用・トータルコストともに高い
「アドグリーンコート®」のメーカー公表の設計価格は、下塗りが断熱ソフトウォールを使用した場合は「4,200円/㎡」、それ以外の下塗りを使用した場合は「3,500円/㎡」です。
しかし他製品のような公式価格からの値引きが見込めません。
そのため、設計価格こそ近い「クールタイト」「サーモアイ」などに比べ、費用は高くなります。
塗料代は、業者による見積もり・施工時には、メーカー公表の「設計価格」より安くなる場合が多いのですが、ヌリカエの加盟店へのヒアリングによると、「アドグリーンコート®」の場合は「ほぼ設計価格のままの施工となる」との見解でした。
他塗料の実勢価格と、「アドグリーンコート®」の費用を、120㎡の屋根を塗る場合で試算したものが、以下の表です。
【表:「アドグリーンコート®」と「他塗料」のコスト比較】(120㎡塗装の場合)
品名 | 設計価格 | 実勢価格 | 塗料代(120㎡) | 耐用年数 | 1年あたりの塗料代 |
---|---|---|---|---|---|
アドグリーンコート®EX | 3,650円/㎡ | 約3,650円/㎡ |
約438,000円 |
8~12年 | 約36,500~54,750円/年 |
クールタイトSi | トタン屋根:4,020円/㎡ スレート屋根:4,060円/㎡ |
約2,200円/㎡ | 約264,000円 | 6~8年 | 約33,000~44,000円/年 |
サーモアイSi | 3,950円/㎡ | 約2,450円/㎡ | 約294,000円 | 8~12年 | 約24,500~36,750円/年 |
ガイナ | 14kg缶 66,000円(1kgあたり約4,700円) | 約3,800円/㎡ |
約456,000円 |
15~20年 | 約22,800~30,400円/年 |
*実勢価格は監修者へのヒアリングによる。「ガイナ」の価格にはトップコーティング剤(約600円/㎡。使用推奨だが任意)を含まず。
施工時の「初期費用(塗料代)」はやや高め、耐用年数からみた「トータルコスト」は高額となる結果になりました。
「アドグリーンコート®」がオススメなのはどんな人?
これまで解説したメリット・デメリットをもとに、「アドグリーンコート®使用の検討をオススメできる人」と、「オススメできない場合の他候補」を見ていきましょう。
なお「オススメできる」場合の前提として、お住まいが「アドグリーンコート®」認定店の対応可能圏にある必要があります。
「アドグリーンコート®」がオススメな人
お子様・ペットなどのために安全性を重視する人
「2.1.アドグリーンコートのメリット」で解説した、水性塗料であることのメリットとマッチします。
また、
塗装作業中のシンナー臭も少ないので、ニオイが苦手な方にもオススメです。ご近所への臭気の心配も減るでしょう。
なお、「安全・低刺激」性は、「アドグリーンコート®」固有の特徴ではなく、水性塗料全般に言えるメリットです。
近隣に認定施工店がない場合は、「ガイナ」などの水性遮熱塗料を検討するのもよいでしょう。
また、「アドグリーンコート®」や「ガイナ」などよりも費用を抑えつつ「安全・低刺激」な施工を最優先したい場合は、遮熱機能のない汎用の屋根用水性塗料も候補に入ってきます。
暑さのなかでも、夕方や夜間のムレを解消したい人
日が落ちたあとに残る暑さの解消には、「放熱設計」が活きます。
「アドグリーンコート®」独自のメリットがピッタリはまるケースです。
とくに、「リビングが2階にある」「吹き抜けがある」「天窓がある」場合などには変化が期待できます。
通常は、屋根裏にある断熱材のおかげで、屋根表面の熱さがダイレクトに上階室内に伝わる・留まる心配は少ないのですが、上記のような2階以上の室温が気になる際には、検討の価値があるでしょう。
仕上がりの滑らかさを重視する人
前述の通り、塗り上がりのツルツルした滑らかさと、その維持力に期待できる塗料です。
屋根が、部屋の中やご近所からよく見える方であれば、効果が実感できるでしょう。
アドグリーンコート®があまりオススメでない人
・費用を重視する人
初期費用も、耐用年数でみたトータルコストも、 高額な部類に入る塗料です。
トータルコストと遮熱効果のバランスが良い塗料が希望なら
「サーモアイ」、
初期費用を抑えて遮熱塗料に塗り替えたい場合は
「クールタイト」が有力候補になります。
・「濃色」かつ「遮熱効果を重視」して塗り替えたい人
濃色系の遮熱効果(日射反射率)、バリエーションともに「サーモアイ」に一歩譲ります。
ただし、「サーモアイ」は光沢のあるカラーしかないため、ツヤをおさえた色で塗りたい場合はこの限りではありません。
・対応業者が近くにない人
どうしても「アドグリーンコート®」で塗りたい場合、
遠方の業者に頼むことになりますが、
出張費が余計にかかることになるでしょう。
まとめ
ヌリカエ編集部の判断として、アドグリーンコート®は、
・近くに施工可能な業者がある
・「安全性」か「放熱」のメリットに強く魅力を感じる
の両者が揃った場合にはじめて検討をオススメできる遮熱塗料です。
「水性塗料の安全性」で選ぶなら、同程度の初期費用で、耐用年数も長い「ガイナ」を選択できます。また、遮熱性能で見ても、より実勢価格の低い「サーモアイ」に一歩譲ってしまうという判定です。
遮熱塗料「サーモアイ」の特徴・費用対効果は? こんな人にピッタリ
ヌリカエ編集部では、「アドグリーンコート®が最適」というケースは、やや限られた場合という見解です。
ここで、記事の要点を振り返ってみましょう。
アドグリーンコート®とはどんな塗料?
日本中央研究所株式会社が開発した、屋根用の水系シリコン塗料です。マットカラーが中心の「アドグリーンコート®EX」と、光沢の強いカラーが中心の「アドグリーンコート®GL」に分かれています。詳しく知りたい方は「アドグリーンコート®」とは? 「遮熱塗料」とは?をご覧ください。
アドグリーンコート®のメリットは?
安全・低刺激なこと、遮熱塗料のなかでも独自の放熱設計があること、仕上がりが滑らかで見栄えが良いことなどがメリットです。詳しくはアドグリーンコート®のメリットをご覧ください。
アドグリーンコート®のデメリットは?
初期費用・トータルコストともに高いこと、取り扱い業者がまだ少ないこと、濃色のカラーバリエーションが少ないことです。詳しくはアドグリーンコート®のデメリットをご覧下さい。
アドグリーンコート®はどんな人におすすめ?
お子様やペットがいる家庭、暑さのなかでも夕方や夜間のムレを解消したい人、仕上がりの滑らかさを重視する人におすすめです。詳しくは「アドグリーンコート®」がオススメなのはどんな人?をご覧ください。
「アドグリーンコート®」の取扱業者は少ないの?
「アドグリーンコート®」が取り扱い可能な
「認定施工店」は、全国に207箇所(2019年8月16日時点)でした。
全国にある塗装業者が約61,300店(*4)ですので、非常に限られた施工店でしか扱っていない塗料と言えます。
*4 国土交通省「建築業許可業者数調査の結果について」(平成31年)に記載の、日本国内の建設業者数と、塗装区分の許可取得割合から算出。
以上、「アドグリーンコート®」の特徴の解説と、オススメできる場合・できない場合の考察でした。内容が、リフォームを検討中のみなさまのお役に立てば、ヌリカエ編集部一同たいへん幸いです。
こちらの記事をふまえたうえで、外壁塗装の塗料の基礎知識から知りたい方は、下記の記事もご覧ください。
>>「【2022年最新】外壁塗装の塗料6種類の特徴・価格は?選び方と人気塗料ランキングも紹介」
日本中央研究所 公式
国土交通省「建築業許可業者数調査の結果について」(平成31年3月末現在)
環境省「ヒートアイランド対策技術(建築物外皮による空調負荷低減等技術)実証試験報告書」アドグリーンコートEX
▼専門家(ヒアリング)
株式会社POD 代表 長谷川佳広 氏